2016/07/07

りゅうたまリプレイ 第七話「2つの道(1/4)」 【キャンペーン】

帰りが遅くなってしまいました。
もう、すっかり夏になってしまいましたね。寒いよりは暑い方が得意ではありますが、厳しいものがあります。
さて、今回の旅物語が遅くなったのには理由があります。お察しかもしれませんが……今回はかなり長丁場になりました。
竜の君も覚悟して聞いてくださいね?私も、覚悟してお読み致しますから。

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第七話「2つの道





森を抜け、滑り込みでアージェントに辿り着いた彼らはすぐに宿を取って眠りに就きました。(ジョルティだけはレストラン街に直行していましたが)
ゴーンという朝を告げる鐘の音まで、すっかり眠っていました。

〈コンディションチェック-1日目〉
パワー:11(絶好調)
ティエ:10(絶好調)
ノーティ:10(絶好調)
トリシア:7
ジョルティ:8

さて、新しい街に到着した彼らでしたが、これまで通ってきたカナセやゴレンと違い、アージェントは非常に広い街で、皆でまとまって回るのは止めたようです。
今回はそれぞれが街を周り、情報収集や、私用などをこなすことにしていました。ちなみに、クライブは疲れが出たのかなかなか起きてこないので、置いて行かれることになりました。(PL寝坊)





ジョルティ「あの件もあるから、みんな拉致とかされないように気をつけてね」
パワー「キャーコワーイ」
ティエ「とりあえず、ゴレンの銀製品を転売してきます」

【ティエの行動】
それでは、まずはティエの動きについて見ていきましょう。
ティエは先程の言葉通り、まずは宿泊していた宿のある東街の近くにあった商店へと向かいました。

ティエ「どうも、ゴレンの銀製品を買い取って頂きたいのですが……」
商人「おお、ゴレンからの銀製品は久し振りに見るな、どれ、見せてみてくれ」

〈春夏冬〉
ティエ:1560%アップ)

ティエ「どうです?ゴレンの中でも一二を争う腕利きの銀鍛冶、ディスト・シィルヴィアラントの作品ですよ」
商人「ううむ、これは確かに良い物のようだな。分かった、これぐらいでどうだ?」
ティエ「これぐらいではどうです?」
商人「ぐぬぬ、ちょっと厳しいな」
ティエ「では、間を取ってこのぐらいで」
商人「よし、買った!」

……というような感じで、4割引きで買った銀製品を元値の6割増しで売るという手腕を見せていました。大丈夫ですよね?訴えられませんね?

ティエは、とりあえず皆に出資された金額に応じたお金を配分し、その後は北街へ向かうというトリシアに着いて行くことにしたようです。

【トリシアの行動】
トリシアの主たる目的地は北街にある廃品店のようです。ただ、その前に一度領主の館の様子を見たいということで、まずは館の方に向かって歩いて行きました。
領主の館は町の中央の小高い丘陵にあり、周囲には石壁が巡らされています。石壁は高く、そうそう登れそうにありません。
階段を登った先には門が設置されていますが、門番が1人いるばかりで開かれており、誰でも入れるようになっているようです。

門番「どうかされましたか?」
トリシア「旅人なんだけど、この街で注意しなきゃならないことってある?」
門番「注意しなければならないこと、ですか。ふむ、法を侵さないことであれば、特にこれといって」
門番「旅人の手助けをするのも我々の勤めです。何か困ったことが有れば、誰に聞いても答えてもらえることでしょう」
門番「ただ、壁を勝手に乗り越えたりはしないで下さいね。それをされると対応しなければならなくなってしまいますから。お互い、望まない手間でしょう?」
トリシア「うっす」

トリシア「それと、あの塔ってなんか意味あるんです?」

トリシアは館の向こう側に見える、館よりも倍ほどの高さがある石塔を指差して訊きました。

門番「あの塔ですか?あれは、カランド様の亡きご夫人を供養するために建てられたものです。中には許可なく入れないようになっています。私も中を見たことはありません」
トリシア「そうなんですか~」
トリシア「偉いさんから話聞いたりとかってできるんですかね」
門番「ああ、この領主の館は役所のような役目もしておりまして。夜の鐘までは開放して、街の人達から話を聞く場所になっています」

トリシア「この街での旅人用の仕事とかも、中で聞けばいいのかな」
門番「仕事ですか。そうですね、確かに何か仕事があるときには館の中に掲示されるようになっているんですが……今朝見たところ、特に貼りだされているものはありませんでしたね」
トリシア「ありがとー」

とりあえずはこれで満足したのか、トリシアは領主の館の中までは入らず、階段を下って東街に戻りました。その後、市内の馬車交通を使って北街へと向かい、ティエと連れ立って廃品店へと入りました。

廃品店はアージェントの立地上の特性からか、木製のものばかりが置かれています。木製で作ることができそうにないものは、あまりラインナップにないように見えます。
店に入ると、早速店主の元気の良い声が2人を迎えました。

店主「いらっしゃいませー。当店のものは全てジャンク品!ノークレーム・ノーリターンでお願いします!」
トリシア「はいはい」

トリシアは元気の良い店主を適当にあしらいつつ、店の中を見て回って「壊れた木製のゴーグル」「壊れた高品質の傘を2」「壊れたコンパス」「壊れた高品質のライトシールド」をティエに持たせていきます。

シールドは、どうやらクライブから事前に頼まれていたのもののようです。傘は昨日、倒木を超える際に落としてしまったティエの分と自分の分を合わせて2つのようですね。

トリシア「おっちゃん他にオススメのもんあるかい」
店主「オススメしちゃったらノークレーム・ノーリターンできないじゃないか!」
トリシア「HAHAHAHA
店主「HAHAHAHA

と、ひとしきり笑った後、店主はさらに続けました。

店主「個人的にオススメなのはこのコントラバスだな!古くて弦が切れているが、高品質で美しく、ボディは頑丈だ!」
店主「なんと……今なら……!15000ゴールド!!」

ミンストレルなどは楽器を持ち歩いて旅をする者も多いですが、こんな大きな(サイズ5)楽器を選んでいる人は見たことがありません。……というか、コントラバスって単独で弾いてもちょっと吟遊には合わないような……。

トリシア「おっちゃんでかくて邪魔なもん押し付けたいだけじゃないのー?」
店主「ソンナコトハナイ」
トリシア「ホントー? 正直仕入れで後悔シテルンジャナイノー?」
店主「そのコントラバスはウチが創業した時からある、いわば看板楽器みたいなもんだ!あー、なくなったら困るが欲しいってんなら仕方ないなぁ!」
トリシア「HAHAHAHA
店主「HAHAHAHA

……と、まあ結局(当然ですが)コントラバスは購入せず、先ほどティエに持たせていたものを購入して店を出て行きました。
この後、修理を始める予定のようですが、まずは鍛冶屋にもいい物がないか、ということで2人でそちらの方へと向かいました。

鍛冶屋「おや、旅人さんだね?どうした、欲しいものがあるのかい」
ティエ「んー、ちょっと手持ちは少ないけど、心の栄養補給に」
鍛冶屋「ははは、変わった子だな」
ティエ「私、実家が商家だから、仕入れの目利きとか鍛えないと」
鍛冶屋「ああ、なるほど、そういう。自分で言うのもなんだが、特別なもんはないよ?普通の武器防具に調理道具ぐらいなもんさ」
ティエ「この前寄った街がゴレンだったから、ココだとどれくらいで売っているモンかなーっていうのも見たかったり」
鍛冶屋「ゴレンから来たのか。それじゃなおさらウチのモノはおメガネに敵わないかもしれんな。あっちは銀が強みだが、こっちは軒並み鉄製さ」
ティエ「近くだから流れてくるのかなー、とも思ったけど、そうでもないんですねぇ」
鍛冶屋「だなあ。ゴレンへの木材輸出が少なくなっちまってから、あまり流れて来なくなっちまった」
ティエ「あー、そうなんですねー」

ティエ(まあ、この後銀の燭台15個と銀のナイフ4本が流れてくるんですけども)

ティエが一通り鍛冶屋と話し終わると、今度はトリシアの方が話を始めました。こちらも、気になっていることがあったようです。

トリシア「鍛冶屋のおっちゃん!聞きたいことあるんだけど」
鍛冶屋「なんだね旅のお嬢さん」
トリシア「なんかこの街の方で、直接脳内に話しかけてくる匕首があるとかないとか、持っている人がいるとかいないとか聞いたんだけど、なんか知らない?」
鍛冶屋「直接話しかけてくる匕首?なんだいそりゃ、聞いたこともないねぇ」

トリシア「なんか魔具に詳しそうな人でも知らないかな」
鍛冶屋「魔具か。魔法ってことなら、ロイ様かな。最近はあまり見かけないが、少し前まではよく街中のトラブルを魔法で解決していたよ。ロイ様は領主様の直属だから、そっちで話を聞くと良いんじゃねえかな?」
トリシア「ってことは、館の方かな?」
鍛冶屋「そうだな。気さくな人だから、呼んでもらったら会えると思うぜ」
トリシア「ありがとー。なんかお金でも溜まったらまた買いによらせてもらうねー」
鍛冶屋「おう、その時はよろしくな、クラフトのお嬢さん」

トリシアはリンの持っていた「ヴェルガ」と呼ばれる隕鉄の短剣について気になっているようですね。私は隕鉄であることを知っていますが、彼らは知らないはずですし、気になるのも当然です。
それか、もしかしたら、持ち主の方の情報を聞きたかったのかもしれませんね。

一通り鍛冶屋で話を終えると、トリシアは近くの木材加工店に向かい、作業場を貸してもらって先ほど買ったジャンク品の修理を始めました。

【ノーティの行動】
次に、ノーティの動きについて見ていきましょう。
ノーティはまず、長旅で疲れた体を癒やすために、南街にある公共浴場を目指すことにしたようです。公共馬車もありましたが、歩いて向かいました。

ノーティ(濡れた布で体を拭いていただけだったから、久し振りのお風呂は気持ちが良いですね……)

さて、お風呂から上がったノーティは、次にこの街についての情報を得るために同じく南街にある郷土館へと向かいました。
この郷土館には、アージェントに関する歴史などが展示されており、無料で誰でも見ることができるようです。
入るとすぐに大きな絵が目に飛び込んできました。その絵はかつてのアージェントを描いたものらしく、現在と違って領主の館の隣にある塔がまだ描かれていません。
この絵を見て気になったのか、ノーティはまずこの塔についての情報を調べ始めました。

ノーティはすぐに塔についての記述があるであろう、『アージェント市史』を見つけました。本を読み慣れているノーティは、パラパラとページを送り、すぐに目的の部分を見つけ出しました。

ノーティ(あの塔は……カランド・アージェント氏の妻が亡くなった際に建設されたようですね。今から、8年前、ですか)

とりあえず、都市について得た新しい情報はそれぐらいだったようです。ノーティは次に、やはり同じく南街にある「占いの館」へと向かいました。
占いの館には紫のローブを被った老婆がおり、一人で占いをしているようです。

ノーティ「これで、未来について占ってもらえませんか?」

ノーティはそう言いながら50ゴールドを老婆に手渡しました。

占い師「未来についてか……随分と幅が広いもんじゃな。大雑把な占いになってしまうが良いかの?」
ノーティ「お願いします」
占い師「相分かった。それでは、目を見せてくれ……」
占い師「ふむ、どうやら、近い未来に新たな出会いがあるじゃろう。……再会もありそうじゃな」
占い師「……大きく、2つの道があるように見える。何のことかまでは、ワシにも分からんな」
占い師「仲間にはまた振り回されることになるじゃろう。お主が彼らの軸となる存在じゃ……と、こんな所かの」
ノーティ「……なるほど、ありがとうございました」

答えを聞いたノーティは深く頷いていました。まあ、恐らく振り回されることになる、というのは占い師でも分かったことかと思いますが……。

その後ノーティは近くに来ていたクライブを見つけ、彼に同行することにしたようです。

【ジョルティの行動】
ジョルティはティエから銀製品信託(やっぱり詐欺っぽい響き)の配当金を受け取るや否や、開店したばかりのレストラン街へと駆け出していきました。
まあ彼のことですから、まずは腹ごしらえということでしょう。

……と思っていたのですが、ジョルティは朝食とは思えないような食べっぷりで、まあ、ざっと5件ほどのレストランを周り、それぞれで美味しそうな食事を平らげていました。
見ているこちらが胸焼けしそうです。

飯店店主「良い食いっぷりだなあ」
ジョルティ「うまいよおっちゃん!」
飯店店主「それはなにより」

これでようやく腹ごしらえが終わったのか、あるいは他の店のために腹ごなしを始めたのかは分かりませんが、ジョルティはそれから暫くぶらぶらと歩き始めました。
すると、建物の隙間から、小高い丘にある領主の館が見えてきます。

ジョルティ「お、あれがカーチャント?の館かな? あ、そうだ、ちょっと聞いてみよう」

ジョルティは何かを思いついたのか、館の方に向かって歩き始め、丘に続く階段を登り、領主の館の門の前まで向かいました。
よく、あれだけ食べた後にこんなに軽快に歩けるものです。これには素直に感心しました。

門の前には一人の門番が立っており、ジョルティは彼に話を聞くことにしたようです。

〈礼儀作法(サブ職業:ノーブルにより習得):対抗〉
ジョルティ:7勝利
門番:5

ジョルティ「君、ちょっと良いかな?」
門番「おや、旅人の方ですね。先程もいらっしゃった方がおりましたが、どうかなさいましたが、今日は珍しいこともありますね」
門番「どうかなさいました?」
ジョルティ「私は旅の貴族だが、こちらにリンという従者は今おられるか?」

……んん?何を言い出したのでしょうか?
地方の森の村出身で竜を食べることが旅の目的の人が自分を貴族だとか言い出してますが……?

門番「貴族ですか。それはそれはお疲れ様でございます。リン……というと、レイシア様でしょうか?」

……初対面なら通用するものなのでしょうか……?一応言っておきますが、彼は串焼きの肉を左手に持ってこれをしています。

ジョルティ「おお、その方だ」
門番「レイシア様は伯爵様の直属のお方ですから、私どもでは分かりかねます」
門番「受付の方で聞いて頂ければ、分かる者がいるかもしれませんが……申し訳ありません」
ジョルティ「そうか、旅の途中で縁があってな。職務中済まなかった」
門番「はい、お気をつけて」

ジョルティ(所在掴めれば良かったんだけど、中に入るのはちょっとなー)

……なんだか気が抜けてしまいました。彼が貴族なら私も貴族で良いですよね?竜の君の直属ですもんね?

まあ、何にせよ、こんな感じでジョルティは再びレストラン街へと消えていきました。

【クライブの行動】
さて、そんなこんなで、皆が色々と動いている頃、クライブが遅まきながら目覚めました。誰かが書き置きをして行ったらしく、個別行動ということは分かったようでした。

〈コンディションチェック〉
クライブ:16(Critical)

流石にバッチリ寝ただけ有り、誰よりも体調が良さそうでした。精神的には不安定な所がありますが、いつ見ても概ね体調は良さそうで、少し混乱します。
クライブはこれといって街でやりたいこともなかったようで、一しきり思案した後、とりあえず街を回りながら情報を集めることに決めたようです。

クライブ(人がいそうな場所を回るとするか……)

まず最初に向かったのは、東エリアの公共馬車の停留所です。寝坊したとはいえまだ朝も早いせいか、停留所の近くには人影がありません。

クライブ(住宅が遠いせいか人がいないな。……南の方に向かうか)

そのまま馬車に乗って行くのかと思いましたが、体調がすこぶる良かった事もあってか、歩いて行くことに決めたようでした。私は馬車で先回りすることにしました。

南街の馬車停留所で待っていると、程なくして買い物に行く途中のような女性が現れました。丁度、私が乗ってきた馬車と入れ違いになってしまったようで、停留所のベンチに座りました。
50分程経った頃、クライブがそこに向かってきました。健脚とはいえ、この距離は時間が掛かるようですね。

クライブ「……すまないが、少し良いだろうか」

クライブは馬車を待っている女性を認めると、そう話しかけました。

女性「?どうされましたか?」
クライブ「旅の者なんだが……この街で見ておいた方が良い場所や、最近あったことなどを教えてくれないか?」
女性「ああ、旅のお方なのですね。見ておいた方が良い場所……と改めて聞かれると難しいですね。住んでいる私からするとあまり意識することはありませんが、旅人の方からは町並みの美しさが評判ですよ」
女性「最近あったこと‥…ああ、そういえば昨日の夜、雷があって倒木で道が塞がれたとか。今朝方男手が集められていましたよ!」
クライブ「ふむ……そうか、不躾なことを聞いて済まない。感謝する」
女性「いえ、これぐらいでしたら」

クライブはそう女性にお礼を言って、今度は住宅街の方へと歩き始めました。住宅街にはちらほちと人の姿が見えますが、皆忙しそうな雰囲気です。旅人の姿を見ると、会釈して通り過ぎて行きました。

クライブ(暇そうな人はいないだろうか……)

クライブが住宅街をキョロキョロとしていると、街中で遊んでいる子供たちの姿を見つけました。
そういえば、この旅で子供を見たのは初めてのような気もします。……ティエを除けば。

クライブ(子供……子供からはまともな情報が得られそうにはないな……)

クライブは結局子供には話しかけませんでした。次に、南の正門の方へと向かっていきます。南の正門も、彼らが昨日通った東の正門と同じような作りをしており、2人の番兵が立っています。


クライブ「……お勤め中すまないが、少し良いか?」
番兵「どうも、旅のお方」
クライブ「よく分かったな。……この街についてあまり詳しくなくてな、街の見どころと最近の出来事なんかを聞いて回っているのだが……」
番兵「ふむ。見どころといえばやはり領主の館ですね。この街は木材が名産なので、街中などは基本的に木造の建物ばかりなのですが、領主の館だけは見事な石造りで、人気があります」
番兵「出来事‥…そうですねぇ、カランド様が病で伏せってからは、街の人たちも心配しているようで、夜もあまり喧嘩などを見なくなりましたね」

クライブ「ふむ。夜の喧嘩が減るほどここの領主様は慕われているのか……良いことだ。しかし、病に臥せってからは一度もみんなの前には?」
番兵「そうですね。かなり重いらしく……今も執務は別の方が代行しています」
クライブ「別の方、とは?」
番兵「前まではラナ様がしておりましたが、今はルーカス様がしているかと思います」
クライブ「失礼があっては困る。そのお二人のこと、もう少し詳しく教えてもらえないか」
番兵「詳しく、ですか。ラナ様はカランド様の護衛係をされているお方ですね」
番兵「ルーカス様はカランド様のご息女の教育係をされている方です。ラナ様が体調を崩れているということで、最近になって執務を交代されました」

クライブ「ふむ、体調を崩されたと……病でも流行しているのか?」
番兵「いえ、そういうわけでは。護衛と執務の両方を請け負っていたことで過労気味だったようで」
クライブ「そうか、それなら良いのだが……。そういえば、夜も静かだと言っていたが、そんなにか?」
番兵「いえ、トラブルが少なくなったというだけで。繁華街の方などは変わらず賑わってんおりますよ」
クライブ「なるほど。有り難い、助かった」
番兵「いえいえ、お気をつけて」

ロイ・ラナ・ルーカスと、随分と人の名前が増えてきました……。ちゃんとメモしておかないと忘れてしまいそうです。

クライブは次に診療所の方に向かうことにしたようです。その途中で占いを聴き終えたらしいノーティと会い、そこからはノーティも同行することになりました。

ノーティ「クライブさんは何を?」
クライブ「色々と情報収集をな」
ノーティ「なるほど。ああ、そこの郷土館は私が先ほど調べましたので、行かなくて良いですよ」
クライブ「そうか」

クライブが診療所に入ると、待合室には街の人達が何人か集まっているのが見えました。皆病気というような感じではなく、ちょっとした寄り合いのようになっているようです。
特に目立つのがご高齢の方々でした。

クライブはすぐには話しかけず、まずはご高齢の方々がどのような話をしているのかに耳を傾けました。

老人「いやー、最近腰が痛くってねぇ」
老人2「私も私も。いやあ、歳をとると駄目ねぇ」
老人「そういえば聞いた?東出口の方で落雷があったとか」
老人2「まあ、それは怖い!」
老人「そうそう、昨日聞いたんだけど、レストランでものすごい食べる人がいたらしいわよ」
老人2「そんなに?」
老人「ええ、なんでも突然入ってきたと思ったらメニューをここからここまでーって」
老人2「凄い人もいるものねぇ」

……まあ、なんてことはない四方山話のようですね。ジョルティのレストランめぐりに尾ひれが付いて都市伝説のようになっていますが。
クライブも特に得られる情報は無さそうだということで、そちらはノーティに任せ、自分は受付をしている事務の方に話を聞きに行きました。

事務「ご来院は初めてですか?診察券はお持ちですか?」
クライブ「すまない。診療ではないんだ。実は旅のものなのだが……この街での見どころと、最近あった出来事を聞きたい」
事務「なるほど、健康そうですもんね。見どころですかぁ、特に思い付かないですねぇ。塔が良いって言う人も多いですけど、慰霊のものだと思うとちょっと気が引けてしまいますし」
事務「ニュース!ニュースならありますよ!一昨日、近所のラグさんが退院されたんです!」
クライブ「ラグさん……?」
事務「はい!ずっと胃の病で入院されてたんですけど、治って良かったですよー」
クライブ(特に特別な人物というわけでもないのか)
クライブ「なるほど、それは良かった。ちなみに、変なことを聞くが……ここ最近、同じ症状での入院や通院はないか?」
事務「いえ、そういったことは特に」
クライブ「変わった症状の人も?」
事務「はい、特にはないですね」
クライブ「なるほど、ありがとう」
事務「ええ、お大事に」

その頃、ノーティはというと、談笑をしているご高齢の方々に話しかけていました。

ノーティ「ご婦人方、ここ数週間で一番大きかった出来事は?」
老人「あらまー、若い人なんて珍しい!」
老人2「うーん、やっぱりラグさんの退院ね!」

……よっぽど人気者なのでしょうか、ラグさんというのは。ノーティも一しきり話に付き合っていましたが、特に得られる情報も無さそうだということで、クライブの話が終わった所で一緒に診療所を出ました。

彼らが次に向かうことにしたのは、診療所から少し西に行った所にある迎賓館です。領主の建物ということもあり、他の建物よりも外観からして豪勢な造りであることが分かります。
建物の前には掃除をしている男性が1人おりました。

クライブ「……ここの迎賓館の者か」
男性「こりゃどうも。ええ、そうですよ」
クライブ「そうか、それなら聞きたいことがあるのだが……この街の見どころと、最近あったことについて教えてもらえないか」
男性「ああ、旅のお方ですか。いやあ、見どころはやっぱり領主様の館だね、ありゃ見事な造りだ。最近あったこと、と言われても特には思いつかないなぁ、最近はここで掃除をするくらいしかやることがないんだ」
クライブ「なるほど」

クライブ「ふむ……ところで、この迎賓館は誰が管理をしているんだ?」
男「管理人は僕だよ。最近は全然使う人がいなくてね、カランド様が体調を崩す前は結構色んな所から人が来ていたんだがねぇ、もっぱら掃除ぐらいしかやることがない」
クライブ「なるほど、他の方々……ラナ様やルーカス様は使いにいらっしゃらないのか?」
男「ラナ様もルーカス様も、あまり外では見ないねぇ。ロイ様も最近はさっぱり見ない。やっぱり忙しいんだろうね」
クライブ「外で見かける方もいると?」
男「いや、主要な方々は見ないね」
クライブ「主要な方々……というと、どのようなお方なんだ?」
男「護衛のラナ様とロイ様、カレン様の教育係のルーカス様、後は庶務全般を担当してるレイジャ様とリン様、ってところかな?」
クライブ「ふむ……ところで、この迎賓館の中を見せてもらう事はできるか?」
男「すまんが入られるのは困るな。許可がないと。領主の館でルーカス様に聞いてきてくれるかな」
クライブ「なるほど、無理を言って済まなかった。色々とありがとう」
男「いえいえ、僕も暇だからね」

一通り話を聞き、クライブは迎賓館から離れました。今度は西街の停留所の方へと向かいますが、西町にはあまり人の気配がありません。邸宅も軒並み門が閉まっており、人影がないのが見て取れます。

クライブ「さて、人影がなさすぎるな……」
ノーティ「これでは話の聞きようもないですね」
クライブ「そうだな……まあ、このまま北に抜けるか」

西街では特に情報を得られないと判断したのか、2人は北街の方へと歩き出しました。もう結構な距離歩いていますが、さすが旅人、疲れないものですね。私はもうそこそこ疲れたので、そろそろ化身に戻ろうと思います。

北街に入ると、木材加工店が最初に目に入りました。作業場で修理作業をしているトリシアと、その様子を後ろで見ているティエがいます。
ティエはこちらに気付いたようですが、トリシアは集中しているのかこちらには全く気付いている様子がありません。

ノーティ「これはこれは、待ち合わせの場所を決めておけば良かったと思いましたが」
ティエ「あれ、合流してたんですね」
クライブ「ああ、南の街でウロついてる時にな。トリシアは色々と修理をしているところか」
ティエ「はい。頼まれていたシールドもこれから直すところです」
クライブ「そうか、助かる」

4人が合流した丁度その頃、領主の館の方からゴーン、ゴーンと2つ鐘の音が響きました。どうやら、正午を告げる鐘のようです。午前中一杯歩き続けて、もうすっかり疲れてしまいました。とは言え、暫くはトリシアの修理を待つためにこの近くに留まることになるでしょう。

クライブ「……少々用事ができた。俺はここで離れるがどうする?」

……近くに留まることになりませんでした。

ノーティ「1人で大丈夫ですか?」
クライブ「まあ、特に何かがあるわけでもない。大丈夫だろう」
ノーティ「では、ここで一旦お別れになりますね」

……まあ、愚痴愚痴言っていても仕方がありません(どうせ聞こえてませんし……)、またどこかに移動することにしたクライブに着いて行くことにしました。
何処へ向かうのかと思っていましたが、クライブは東街を抜けて、領主の館の方へと向かうようです。私にとっては本日3回目の領主の館です。

クライブは門番に会釈をして通りぬけ、領主の館の中にまで入りました。門番の人が言っていたように館は役所のように機能しているらしく、街の人達もチラホラと見かけます。
クライブは周囲を見渡しながら、受付らしい女性の所に歩いて行きました。

クライブ「私は旅人なんだが、旅をしながら見聞を広げていてね。立派な建物である迎賓館を見せてもらいたく、その許可をルーカス様にもらえないかと思ってね」
受付「はい、迎賓館の使用ですね。それでは、こちらの書類に必要事項をご記入下さい」

書類には名前や年齢、家業の他、迎賓館使用の目的などを書く項目がありました。クライブは特に虚偽を記載することもなく、さらさらと記入してそれを受付に渡しました。

受付「はい、承りました。それでは、ルーカス執務代理にこちらの書類を通しておきます。明日には許可不許可のご連絡ができるかと思いますので、また明日お越しいただけますか?」
クライブ「分かった、宜しく頼む」

クライブは礼をして受付の前を離れました。真っ直ぐ帰るのかと思いましたが、今度は領主の館の待合室を見て回り始めました。
待合室はさすがは領主の館という感じの、綺羅びやかな調度品が多く飾られています。ただ、銀を使っているものはないようです。
それともう1つ、待合室の中央付近には大きな絵画が飾られていました。絵画のタイトルから、若き頃のカランド伯と、亡き妻の絵であることが分かりました。
……凛々しい顔つきのカランド伯と、優しい微笑みのご夫人……絵画のタイトルによると「リリィ」という名前のようですね。2人しか描かれていないことから、まだご息女が生まれる前のものでしょうか。

これから相まみえることになるかもしれないカランド伯の生前の姿を見て、何かをつぶやくようにしながから、クライブは館を出て行きました。

こうして、一行の丸一日掛けたアージェント探訪は終わりました。トリシアは結局夕方近くまで修理を続けていたようで、宿に戻ってきた頃にはすっかり暗くなっていました。
その時、ゴーンと1つ、鐘の音が鳴りました。夜を告げる鐘のようです。

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さて、今回はここまでと致しましょう。今日のお話は、いうなれば「前哨戦」のようなものです。これから始まる彼らのアージェントでの活躍は、また次回以降ということにしましょう。
暑くなっていますから、竜の君も体調をお崩しになりませんように。私も注意致しますね。

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こちらは、626日に行ったオンラインセッションのリプレイです。
第七話は、恐らく3から4部構成となります。かなり長いセッションとなってしまいました。
ログも分量が多いため、次回はまた少し遅くなってしまうかもしれません。気長にお待ち頂ければ幸いです。

【参考サイト】

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