2016/07/29

りゅうたまリプレイ 第七話「2つの道(2/4)」 【キャンペーン】

各々の一日を過ごした皆は、夜になる頃には宿に戻っていました。その日あったことの報告や、情報の提供などを行った後は、特に何かをすることもなく眠ることにしたようです。
再び、彼らの目を覚ましたのは、ゴーンと響く朝の鐘の音でした。

【コンディションチェック】
パワー:7
クライブ:14
ティエ:4
ノーティ:5
トリシア:9
ジョルティ:5




ジョルティは皆で食べた食事とは別に、またレストランに繰り出して美味しい食事をとっていました。……安くもないはずなのですが、彼からすると安いものなのでしょうね。

クライブ「……さて、昨日迎賓館使用の予約を取ったわけだが」
ノーティ「館に新しく依頼が来ているかも知れませんから、それも確認したいですね」
クライブ「ふむ。じゃあ、館に向かうか」
ジョルティ「飯食う以外に何か目的あったっけ?」
クライブ(こいつ……)「どのみち、使用許可についてはあそこで聞くことになるしな」
ノーティ「それでは館に行きましょう」
ティエ「はーい」

朝のちょっとした会議はすぐまとまり、皆で連れ立って領主の館に向かうことにしたようです。まだ朝は早いものの、領主の館の門は開いており、門番が会釈して通してくれました。館の中は、やはり朝も早いということもあり、まだ市民の姿は見えません。
入ってきた彼らに気付き、受付の人がすぐに挨拶をしてきました。

ティエ「おはようございます」
受付「おはようございます。トローヴェ様、昨日の件ですね?」
クライブ「おはようございます。ええ、どうでしたか?」
受付「昨日あの後ルーカスに話を致しましたところ、直接話したいことがあるとのことです。お手数ですが、お連れの方もご一緒に執務室の方までお越し頂けますか?」
ジョルティ「リンちゃんはいるの?」
受付「レイシア様はご不在です」

ジョルティ(帰るかな?)
ティエ(素直に向かいます?)
ノーティ(依頼の張り紙もないようですし)
ティエ(では向かいますか)

ティエとノーティが目配せをして、一行は素直にまっすぐ執務室に向かうことを決めたようです。

受付「執務室は右手の階段を登りまして、突き当り左の部屋でございます。申し訳ありませんが、よろしくお願い致します」

言われたとおりに階段を登り、周囲の部屋のドアに目配せなどしながら突き当りの執務室の前まで向かいました。ドアの上には分かりやすく、執務室と記されています。

ジョルティ(見つからないようにした方が良いかな……?)

【隠密判定】
ジョルティ:11

ジョルティはなぜか突然、特に遮蔽物もない廊下でコソコソし始めました。さすが、旅の貴族様はやることが違いますね!
……そっちを見ている間に、パワーが突然、トントーントントントンとリズミカルにドアをノックし始めていました。年長者組ほど落ち着きが無いのはなぜなのでしょうか。

???「お入り下さい」

リズミカルなノックにも怯むことなく、ドアの向こうからそんな落ち着いた声が返ってきました。クライブがその声に従ってドアを開け、中に入ります。
執務室はそれほど大きくない部屋で、真ん中に執務用の机が置かれており、壁際にはいくつかの本棚が置かれています。調度品なども比較的質素なものが中心で、特徴的なものは机の横に置かれている大きめの止まり木くらいなものです。

ノーティ(一般的な執務室のようですね、当たり前ですが)

そして、執務机の向こうに、金髪の細身の男性が立っていました。

男「お待ちしておりました、トローヴェ様と、お連れの旅のお方。お初にお目に掛かります、私はルーカス・ノキシア、現在湖の街の執務全般を領主の名代として行っている者です」

ジョルティ(何かいいものないかな?)

【捜索判定】
ジョルティ:7(失敗)

ジョルティはまたこそこそしながら部屋の中を歩き回っていましたが、見つからないはずもありません。明らかにルーカスの目がそちらを向いていました。

ルーカス「そちらの方は何をしていらっしゃるのですか?」
パワー「こいつシャイなんだよ」
ティエ「すみません、ちょっと挙動不審なところがありまして」
ジョルティ「ちょっと物珍しかったので」

パワーすらフォローに回っているという、なかなか見られない光景でした。ルーカスはそれで納得した……というよりは、もうどうでも良くなったようでした。

ルーカス「まえ、そんなことはよろしいのですが……トローヴェ様は迎賓館を使用したいとのことでしたが……実は私は、あなた方が何故このアージェントに訪れたのか、レイシアからの連絡で存じております」
クライブ「そうですか……じゃあ、俺たちの目的も大体は察している、と?」
ルーカス「ギルネシアにもレイシアにも、外でアージェントについて話さないようにと確認していたのですが……まあ、実際こうしてあなた方が来てしまった以上は仕方ありません」
ルーカス「単刀直入に申し上げます。我々に協力して頂けないでしょうか?ご協力頂けるのであれば、あなた方が『疑問に思っていること』にも、ここで私がお答えします。お望みのものが有るならば、可能な範囲で融通致しましょう」

ジョルティ「ギル……誰?」
ルーカス「ギルネシアは、レイジャですよ。銀針の蠍、ご存知でしょう?」
クライブ「ああ、これの持ち主だろう」

クライブはそう言うと、レイジャから受け取ったポーチと、中に収めていた銀の短剣を見せました。ルーカスはそれを見て、少し驚いたような表情を見せます。

ルーカス「おや、ギルネシアは短剣まで託しておりましたか……やはり、信用に足る方々であると思います」
ジョルティ「リンさんはいらっしゃらないのですか?」
ルーカス「レイシアはまだ戻っておりません。近々戻る予定ではあります」

クライブ「さて、俺としては協力をしても良いのだが、お前らはどうする?」
ジョルティ「報酬と何をすれば良いのかにもよるけど」
トリシア「協力するメリットも聞いてないのに受けて良いのかな」

ルーカス「恐らく、ギルネシアもレイシアも核心に迫る部分については話していないかと思います。協力頂けるのであれば、状況についてより詳しくお話します」
ルーカス「報酬、についても、できる範囲でお応え致しましょう。全盛期に比べれば衰退しておりますが、我が都市はこれでもまだ比較的余裕があります」

トリシア「自分たちに振りかかるデメリットは?」
ルーカス「カランド伯に返り討ちに遭う可能性はもちろんございます。これは私達も同じことではありますが……」
トリシア「以外にはないのか、ってことなんだけどね」
ルーカス「ええ、他にはこれといって思い当たることはありません」
トリシア「この街に居辛くなることもないと」
ルーカス「内密に実行致しますから、その点は心配要りません。あなた方と、我々以外に事の詳細を知るものはおりませんから」

ジョルティ「同行してくれる面子は?」
ルーカス「私はもちろん、ギルネシア・レイシアの他、2名が同行致します。2名についてはご面識がないかと思いますので、決行前に紹介致します」
トリシア「……?1人、多くないかな?」
ルーカス「多い、ですか?」
トリシア「カランドの名前が入った短剣は5本あって、うち1本はカランド伯が持っていると聞きましたが、これだと、1人多くないでしょうか」
ルーカス「ああ、なるほど、そういうことですか。それで多い、と。あの短剣は、カランド様の直属の4人が持っているものです。私はカランド様ではなく、ご息女であるカレン様の直属ですから、短剣は持っておりません」
トリシア「なるほどねー」

ルーカス「いかがでしょうか、ご協力頂けますでしょうか?ご協力頂けるのであれば、そうですね、少なくとも迎賓館の使用に関してはこの場で認証させて頂きます」
ジョルティ「美味しいご飯は?」
ルーカス「お望みであれば」

クライブ「俺としては受ける事自体がメリットのようなものだ。受けることに異論はないが……お前らにまで強制はできない」
ノーティ「旅の最終目的に近づけるのであればそれで……」
トリシア「リーダーどーするー」
ジョルティ「手伝ったら報酬、プラス各々の知りたい情報開示、で交渉する?」

ルーカス「ご協力頂ける、ということでよろしいでしょうか?」
ジョルティ「リンちゃんと一席設けてくれるなら俺はいいよ」
ノーティ「私はより大きな都市への道のりが知りたいだけですから」
ルーカス「レイシアのことまで私が約束することはできませんが……話は通しておきましょう」
ジョルティ「やったぜ!」
ティエ「では、協力させて頂きます。詳しい報酬は終わってから詰めるということで」
ルーカス「承知致しました。……それでは、ご協力頂けるということで……、今アージェントに起こっていることの詳細をお話します。この事は、くれぐれもご内密にお願いします」

こうして、皆はルーカスの依頼の依頼の通り、カランド伯成仏計画に手を貸すことにしたようです。すると、ルーカスは1つ息を吐いてから、滔々と状況について話し始めました。

ルーカス「今、カランド伯がアンデッドとなり、それを殺すことを目的としている、というところまではレイシアから聞いている、ということで宜しいですよね?」
トリシア「概ね」
クライブ「ああ、そうだな」
ルーカス「……レイシアのことですから、恐らく、『何故アンデッドになったのか』については話していないかと思います」
ティエ「そうですね」

ルーカス「カランド伯がアンデッドになったのは、ご息女であるカレン様が原因です」
ルーカス「あの塔、慰霊の塔は、8年前にカランド伯のご夫人、リリィ様が亡くなられた際に建てられたものです」
ルーカス「当時12歳だったカレン様は、それまでは快活なお方でしたが……それ以来、塞ぎこむようになってしまいました」
ルーカス「……私達も暫く気づかなかったのですが、カレン様はこの時から「死」に関する魔法の研究を始めておりました」
ルーカス「その後、2年前にカランド伯が流行病で亡くなったのてすが……その時、すでにカレン様の魔法が掛かっていたようでして……カランド伯は確かに亡くなったはずなのですが、棺から立ち起き、慰霊の塔へと入っていってしまいました。カレン様も共に慰霊の塔に入ってしまい、それ以来、お二人とも塔からお出でになっておりません」
クライブ「流行病……ね」
ノーティ(つまり、カレン様が不死の魔法に類するものをカランド伯へ掛けた、と)

同じように、流行病で想い人を亡くしているクライブには、思うところが有るのかもしれません。神妙な面持ちで話を聞いています。また、魔法に造詣の深いノーティも、不死の魔法に興味を示しているようでした。

ルーカス「始めこそ、我々としてもカレン様の満足が行くまで見守るつもりだったのですが……カランド伯が亡くなってから1年ほど経った頃、慰霊の塔から夜な夜な穢れの魔物が現れるようになりました」
ルーカス「次第に、この穢も強くなってきています。……カランド伯のためにも、街のためにも、そして何よりカレン様のためにも。カランド伯の楔を解き放つしかない、という結論に至ったのです」
ルーカス「後は、皆様もご存知の通りです。ギルネシアとレイシアを銀を集める役目と致しました。暫くはラナが執務と穢れ祓いの両方を行っておりましたが、過労によって体調不良になってしまったため……今は私が執務を代行しております」

ジョルティ「銀だけで何とかなるの?」
ルーカス「正直、それは不確かです。銀はアンデッドに良く効きますが……他にどのようなことが起こっているのか、詳しいことまでは分かっていません」
トリシア「カレン本人とは話つけてないのかな」
ルーカス「何度か、窓から文を出しておりますが……ご返書はありません。塔に入るとどのようなことが起こるか分からないため、十分な準備ができるまでは直接お会いに行くことができていません」

クライブ「俺達の存在がなければ、どういう方針で攻略するつもりだったんだ?」
ルーカス「十分な銀が集まり次第、ギルネシア達4人と塔に入る予定でした」
ジョルティ「ルーカスさん、カレンちゃんのことだけど、最悪の場合も考慮していいのかな?」
ルーカス「……もう、長くお姿も見ておりません。どのような状態になっているのかは分かりませんので……当然それも考慮しております」
トリシア「領主とその娘が最悪の形となったとしても、対応はできる状況だと」
ルーカス「すぐに対応できるわけではありませんが……もし、カレン様も、ということになれば、直系の方はいらっしゃいませんから、短剣を持つ方の中から代理を選ぶことになるかと思います」

トリシア「ほんで、塔の詳細は?」
ルーカス「もともとは慰霊用のものですから、それほど複雑なものではありません。見ての通り、この領主の館の倍ほどの高さがありますが……最上階にある部屋までは、階段を登るだけで辿り着くことができます」
トリシア「ちなみに、だけど、塔に閉じこもって2年も飲み食いできるような施設なのかい」
ルーカス「いえ……あの場所は生活をすることが前提になっているわけではありませんから……本来はそんなことは有り得ません」
トリシア「だろうねえ。あとは……塔に望む具体的な準備はどうなってるんだい」
ルーカス「ギルネシアからの銀はある程度集まっており、少なくとも我々の武器だけは完成しております。皆様の分まではご用意できませんが……見たところ、皆様も銀の武器をお持ちのようですね」

ノーティ「こちらでカランド伯をどうにかして良いものでしょうか?普通は責任をもってあなた方が行うべきことで、我々のような旅人に頼むことではないかと存じますが」
ルーカス「全くもって仰る通りです。ですから、本来はギルネシアとレイシアにも内密に進めるように申していたのですが……。こうなってしまった以上、成功の確率を上げる方が良いと判断しました」
トリシア「役割分担的なのはどう考えてるんよ」
ルーカス「元々は5人で実行する予定でしたから、それほど役割分担については考えておりませんでした。生前から、カランド様は常人ならざる剣の腕を持たれておりましたから、隊を分ける余裕があるとは思っておりませんでした」
ノーティ「そんなに」
ジョルティ「え?剣からビームとか出す?」
ルーカス「ビームは出ないかと思いますが、かつて旅をなさった時には野良となった竜を1人で倒すほどの腕だったと聞いております」
ティエ(あっ、これ勝てないやつだ)
ノーティ(今更引けないかとは思いますが、ここで骨を埋めるのも……)
ジョルティ「その時竜食べたりしてた?」
ルーカス「食べ……?いえ、竜は食べるものではないのでは……?丁重にご埋葬なさったとのことですが……」

トリシア「5人がリンとレイジャ以外どんな戦い方をするかも知らないし、その5人に自分たちをどう組み込むのかな」
ルーカス「なるほど、戦術的な問題ですか。レイシア・ギルネシア、それにラナは近接戦闘を、私とロイは遠隔戦闘を得意としております。皆、比較的合わせて戦うことに長けておりますから、皆様も普段通りに戦闘に参加して頂けるかと思います」
トリシア「ほんで、そっちの武器は揃ってるとか聞いたけど、5人は今揃ってんだっけ?リンいないとか言ってた気すっけど」
ルーカス「いえ、私、ロイ、ラナはここにおりますが、レイシアとギルネシアはまだ到着しておりません。一両日中に到着する予定です」
トリシア「挑むタイミングは?」
ルーカス「彼らが戻り、準備が整い次第」

トリシア「名声云々を下げたくないとかってちらっと聞いた気がするけど、そこまで拘る理由はあるんかな」
ルーカス「大々的に死の魔法を研究していたということが知られるのは……市井にも悪影響が及ぶと思いまして。名声というよりは……このアージェントの平穏が第一目標です」
クライブ「まあ、無駄に混乱をもたらしても無意味だろう」
ルーカス「はい、私としてもそう思います」
パワー「早く決めろー 私は眠いのだー」
ルーカス「そういうことでしたら、迎賓館の方へご案内させましょうか」
クライブ「そうだな、お願いしたい」
ルーカス「昨日の内に管理人に連絡して、利用できる状態にはしております」
ノーティ「事情は大体分かりました。こちらのことはこちらで相談させて頂きます。案内をお願いします」
ルーカス「承知致しました。私は執務がございますので、直接案内することはできません。ロビーに管理人を及びしますので、暫くそちらでお待ち下さい」

ノーティ「そうだ、死に関する研究の跡は残っていますか?」
ルーカス「カレン様がカランド伯と共に塔に入る際、すべて持ち込んでしまいましたので……こちらには残っておりません」
ノーティ「なるほど」
ルーカス「それが残っていれば、こちらとしてももう少し情報を集める事ができたのですが……申し訳ありません」
ノーティ「それは仕方のない事です。それでは、我々はこれで失礼しましょう」

こうして、彼らは執務室を後にしました。……季節の竜とは別に、死の竜が存在していることは知っておりましたが……その力を魔法として使える者がいるとは、思いませんでした。竜の君はどのように思いますか?
……私達竜人や、竜の君も、死の竜によって死ぬことになるんでしょうかね?

まあ、そんな先のことを考えても仕方がありません。彼らの物語に戻りましょう。

執務室を後にしてロビーに戻ると、しばらくして管理人が現れました。この管理人は、クライブが昨日迎賓館の前であった男でした。

管理人「まさか、このような形で久方ぶりに迎賓館に人を迎える事ができるとは思っておりませんでした。館の階段の下に馬車を用意してあります」
クライブ「ああ、やはりあなたが案内してくれるのか。よろしくお願いする」
管理人「はい、皆様こちらに」

管理人はそうして皆を馬車に案内しました。2頭の馬が繋がれた馬車は十分な広さがあり、6人(+1竜人)で乗っても余裕があるほどです。皆が乗ったのを確認して、管理人は御者席へと座り、馬車を発信させました。馬車は揺れも少なく、快適に迎賓館まで向かうことができました。

管理人「お疲れ様でございました。こちらです。ルーカス様のお申し付けで、皆様に個室をご用意してありますので、どうぞご自由にお使い下さい。どうせ、他に利用される方もおりませんから」
ノーティ「これはなんとも贅沢な。ありがたい」
パワー「おやすみ!」

彼らは特に相談することもなく、各々個室を選んで荷物を置きにいきました。その後、とりあえず食事にするということで、食堂に集まることにしたようです。
皆が食堂に集まると、程なくして豪華な食事が運ばれてきました。その隙に厨房でつまみ食いをしましたが、いやはや、やはり人間の食事というのは美味しいものですね。川魚も美味しかったですが。

ジョルティ「あのさぁ(もぐもぐ)……思ったんだけどさー(はふはふ)ルーカスとかいう奴、怪しくねえ?(ムシャムシャ)」
ノーティ「怪しいというと?」
ジョルティ「だって数日なら分かるけど、数年放置っておかしくない?数年もあったら、まず解呪とか考えない、普通?」
ノーティ「出てきた魔物を倒すだけの対症療法でここまで来たんでしょうね」
ティエ「悪影響がなかったのと、アイツつえーから手が出せない、的な」
ノーティ「我々にこなせる仕事でしょうか……自信あります?みなさん」
クライブ「あろうとなかろうと、あとはやるのみ」
ノーティ「やるしかないのは分かっていますが」
ジョルティ「まあ、受けた以上はやるしかないんじゃない?飯の恩は返す主義ですし俺」
トリシア「びびって諦めたら自分の気になることも調べられないっていう。ノーティはそういう子だっけ」
ノーティ「そうですよね……」
ジョルティ「アージェントウサギの香草焼きうめえ!」

……ジョルティは真面目なのか不真面目なのか、よく分からない人ですね。案外、一番謎なのは彼なのかもしれません。
そんなこんなで食事を終えて、彼らは部屋へと戻って行きました。その頃、ゴーン、ゴーンと昼を告げる鐘の音が響き渡りました。
私は……まあ、ロビーでゆっくりしていることにでもしましょうか。

…………
………
……

特にやることもなく、ぼーっとしているといつの間にか眠ってしまっていたようです。ゴーンと鳴った夕方の鐘で目を覚ましたました。その時、ちょうどロビーに見慣れない女性が訪れているようでした。
赤い髪を後ろで束ねた、長身の女性のようです。どこか不思議な雰囲気があり、魔法的な力を感じました。……いえ、この表現は、もしかすると正しくないかも知れません。
私もこの時は、この「不思議な雰囲気」についてハッキリ分かっていませんでしたから、それはまた後ほどお話しますね。

女性「こんにちは、ゴードさん」
管理人「ああ、これはどうも、お久しぶりです、ラナ様。もう体調はよろしいのですか?」
女性「ええ、ちょっと疲れてしまっただけですから。ゴードさんもお元気そうで」
管理人「はい、まあ暇ではありますが、今日は久しぶりに迎賓館が使われて、ちょっと元気になりました」
女性「ふふ、そうですね。カランド様が病になられてからは、賓客の方もいらっしゃいませんものね。……それで、ちょっとお聞きしたいのですが。本日泊まっているという方々はどのような印象ですか?」
管理人「印象、ですか?ええ、そうですね、良く言えばバラエティ豊か、悪く言えば統一感がない、という感じでしょうか。……彼らに言わないで下さいね?」
女性「ええ、それはもちろん。ふーむ、そうですか。実はですね、ちょっと弟から彼らを連れて来てほしいと頼まれてしまいまして。今、皆さんこちらにいらっしゃいますか?」
管理人「ええ、出て行かれる所は見ておりませんから、お部屋にいらっしゃると思います。お呼びしましょうか?」
女性「はい、お願いします」

この方が、他の方々が言っていた「ラナ」という方のようですね。どこか上品というか、気品がある口ぶりです。「お前も見習え」ですか?ふふ、ご冗談を。この点では私も負けてはいませんよ。

さて、程なくして管理人の方が彼らを部屋から呼び、ロビーへと連れて来ました。

ラナ「お呼び立てして申し訳ありません。初めまして、皆様がルーカスの言っていた旅人の皆さんですね?」
ラナ「私はラナ・グローシアと申します。ルーカスからお聞きしているかと思いますが、館の護衛を担当しております」

〈???判定:目標18
パワー:6
クライブ:6
ティエ:10
ノーティ:14
トリシア:9
ジョルティ:5

皆、ラナの持っている不思議な雰囲気については、特に気になることはなかったようです。まあ……そうなるでしょうね。

ラナ「この度は、私達にご協力頂けるということで、こうして挨拶に参ったのですが……真に失礼なことではあるのですが、私の弟、ロイからの言付けをお伝えに参りました」
ラナ「ロイは、レイジャとリンの実力を非常に高く評価しております。これは私も同じことですが……、どうしても、彼らを下したのが信じられないと申しておりまして……。私としては、できれば皆さんを信用して、もちろん私達のことも信用して頂いて、共に戦いたいと思っております」
クライブ「ほう」
ラナ「それで、真に、真に失礼なことではあるのですが……今夜、領主の館までお越しいただけないでしょうか。愚弟も、皆様の実力を見れば納得するかと思います。夜の穢れ祓い、お手伝い頂くという形で、何卒」
ジョルティ「愚弟?」
ラナ「はい、私の弟、ロイ・グローシアです。私と同じく、領主の館の護衛を担当しております」
ノーティ「もちろんお手伝いさせて頂きますが、皆さん構いませんよね?一度、その穢れとやらを見なければなりませんし」
クライブ「……ああ、構わん」
ティエ「銀の効率も知りたいし、都合がいいですね」
ラナ「……ありがとうございます。夜の……そうですね、10時頃に館前にお越し頂ければ幸いです」
ラナ「我儘を申しまして申し訳ありません。それでは、……夜にお待ちしております」

ラナはそう言って深々とお辞儀をして、ロビーから去って行きました。期せずして、ルーカスに紹介される前に、5人全員と対面する形となりましたね。皆も、実力を疑われたことに関しては特に何も思っていないようですし、かえってスムーズに話が進みそうで私としては何よりです。

それから数時間経ち、夜の9時頃になると、管理人の方が馬車を用意してくれていました。皆と私は、この馬車に乗って領主の館へと向かいました。
すでに対応時間が終わっているということもあり、昼の賑わいに比べて、領主の館はひっそりと静まり返っていました。正門も閉まっており、他の場所からも入り込むことができそうにありません。
そんな門の前に、ラナが立って待っていました。先ほどは丸腰でしたが、今は両腰に剣を佩いているのが見て取れます。

ティエ「こんばんはー」
ラナ「ご足労頂き、ありがとうございます。今、門を開きます。愚弟は塔の前で待っておりますので、着いて来て下さい」

そう言うと、ラナは門を開き、皆を招き入れ、全員が入ったのを見て再び門を閉じました。それから、領主の館の中を通り、向こう側に抜けて「慰霊の塔」の前まで先導をしてくれました。
慰霊の塔は、昼にみるのとは違った雰囲気を感じさせています。暗い魔力のようなものが、特に上部の方から感じられました。その塔の前の広場には、男が1人待っていました。
銀色の髪をしており、華奢な印象です。男性にしては長身ではなく、ラナよりも少し低いぐらいのように見えます。右手には杖を、左手には魔術書と思われる本を持っています。皆を認めると、その場で小さく一礼しました。

男「すみません、こうして来て頂きまして。穢れ祓いの関係で、僕は昼にはあまり活動ができないもので、夜に来て頂くしかなかったのです」
男「……名乗るのを忘れておりました。僕はロイ・グローシア。領主の館の護衛を申し使っているものです。大まかなことは姉から聞いておられるかと思いますが……レイジャとリンを倒したというのが、どうしても僕には信じられないのです」
ロイ「……彼らは、このアージェントでも、カランド様に次ぐ実力者でした」

ジョルティ「あっそ。ロイ氏、町民にも人気あるんだって?イケメンだもんね!」
ロイ「僕が人気、ですか?そういったことを意識したことはありませんでしたが……」
ジョルティ「直接掛かって来ても良いんだぞ?」

……さっきまで、別に気にしていないようでしたのに、何故か突然ジョルティがロイに絡み始めました。……いや、これは本当に突然すぎて何を言い出したのかサッパリ分かりません。やっぱりかなり謎に満ちた人物のようです。

ロイ「……それでも、僕の目的は果たせます。僕は、カランド様の件に望むに当たって、皆さんのことをできるだけ信用したいと思っています。……そのために、実力を見せていただけないでしょうか?」
ジョルティ「ふむ、ならば16で掛かって来い!」
トリシア「おっさんちょっとみとっもないよ。紳士になるんじゃなかったの」
ノーティ「穢れは穢れで倒さないといけないんですから、二度手間でしょう。素直に協力しましょうよ」
クライブ「……仕方ない、ここは穢れ祓いをしておこうか。お前にも、興味はあるがな」
ロイ「……分かりました。もう夜も遅いですから、そろそろ、塔から穢れの魔物が現れるはずです。僕達は暫くは皆様の戦闘を見ております。……何かありましたら、すぐに参戦致しますので」

その後もジョルティは何かとロイに絡んでいましたが、何が彼をそこまで奮い立たせているのやら。まあ、なんだかんだで彼らは塔の前に配置に付き、ロイとラナは下がって来るべき戦闘に備え始めました。
そして、程なくして塔の周囲がガタガタと大きく振動し始めました。程なく、夜の闇の中でもなお暗い魔力が目の前に集結し、その果実として「穢れの魔物」が顕れました。
その姿は、いくつもの骨が組み合わさったような、大きな獣。骨の獣はどこから出しているのか分からない咆哮を上げて、突如として彼らの前に立ち塞がります。

ロイ「……?何故……このような穢れが……?」

この様子を見て、何故かロイも驚いているようでした。

【戦闘開始】
今夜は月も出ておらず、領主の館から溢れる小さな光だけが周囲を照らしています。その光さえ、闇をまとう魔力によってかき消されているように思えました。

〈イニシアチブチェック〉
前 弓 ジョルティ:12 HP30
後 弓 トリシア:11 HP24
後 竿 ティエ:9 HP18
? 大きな骨獣:8 HP??
前 剣 クライブ:8 HP20
後 短 ノーティ:7  HP16
前 斧 パワー:29 HP29

〈ラウンド1
突如現れた大きな骨にも特に動揺する様子もなく、初めに動いたのはジョルティでした。ジョルティはまずかの骨が何者であるのかを見極めようと目を凝らしましたが、大きな獣のような骨であることしか分からなかったようです。
その後相変わらず前衛から弓を引き絞って矢を放ちました。勢いはそれほど強くなかったもものの、銀製の矢はかの骨に効率よくダメージを与えているようでした。

次にトリシアも同じく骨の正体を見極めようとしましたが、やはり大きな獣のような骨であることしか分かりませんでした。それから放った銀の矢は、やはり大きなダメージをかの骨に与えたようです。

そして、ティエがついにかの骨の正体を見破りました。
ティエ「あれは万骨ですよ!」
ジョルティ「知っているのかティエ!!」
ティエ「大きな骨のアンデッドです!」
ティエはそう皆に敵の説明をして、息を整えました。すでに十分に落ち着いているようでしたが。

万骨と呼ばれた魔物は大きく吠えると、パワーに向かって攻撃を始めました。どうやら、ジョルティとクライブは銀製の鎧を着ているため、それを嫌ってパワーを狙ったようです。
大きな骨による攻撃は2回連続で行われ、パワーにもそこそこのダメージを与えたようです。本人はケロっとしているようでしたが。

続いて、今度はクライブが接近して攻撃をしかけます。振りかぶった銀の剣は万骨の骨の一部を切り飛ばしました。
クライブ「なんであろうと叩き斬るのみ」

次に、ノーティはニーナさんから受け取った名月の光証を用いて、ネームドムーンの魔法を使用しました。月のない夜に、大きな月が浮かび上がり、周囲を煌々と照らします。
ロイ「……まさか、何故彼がこの魔法を使える……?」

そして、明るく輝く月光を受けながら、パワーが大きく斧を振りかぶりました。彼の武器は銀ではないにも関わらず、万骨に対して誰よりも大きなダメージを与えました。……相変わらず規格外ですね。
この攻撃によって、万骨の一部が崩壊を始めました。

〈戦況変化〉
前 弓 ジョルティ:12 HP30
後 弓 トリシア:11 HP24
後 竿 ティエ:9 HP18
前 牙 万骨:8 HP5(-31)
前 剣 クライブ:8 HP20
後 短 ノーティ:7  HP16
前 斧 パワー:6 HP17-12

〈ラウンド2
万骨はすでにボロボロですが、それによって隙間ができてしまったせいか、ジョルティとトリシアの矢は間をすり抜けてしまいました。ティエも釣り竿を振りますが、全く気にも留められていないようです。

万骨は苦しそうな咆哮を上げながら、再びパワーへと殴りかかります。2回の攻撃はいずれも命中しましたが、ほとんどダメージにはなっていないようでした。

クライブは止めを刺そうと攻撃をしますが、動きを止めるのに十分なダメージにはなりませんでした。

そして、ノーティは月の光を浴びながら「カグヤ・レイランス」の魔法を唱えました。ロイがまた驚いたような表情を見せました。月の光により強力になったカグヤ・レイランスの魔法により、万骨の周囲から光の筍が飛び出しました。……が、隙間をすり抜けて命中しませんでした。

結局、パワーが先ほどと同じように斧で攻撃をして、万骨は完全に崩れ去りました。

ジョルティ「よし。この骨でダシをとろう」

ジョルティの思惑とは裏腹に、倒れた万骨の破片は闇に溶けるように消えてしまいました。……いや、どっちにしろあまり美味しいものにはならなかったと思いますが。

〈戦闘終了〉

ロイ「これほどとは……」
ジョルティ「楽勝でしたね。どんな気持ち?」
ロイ「……皆さんの実力は分かりました。皆さん、塔から離れて下さい」

ロイがそう言うと、再び塔の周囲が揺れ始めました。そして、大量の小型アンデッド達が顕れます。ざっと見るだけで、両手で足りない数が湧き出しています。
ロイに言われる通り、皆は塔から離れます。

クライブ「……お手並み拝見、というわけか」
ロイ「……僕の実力も、見せておかなければなりません」

ロイはそう言って一歩前に進み出ると、右手に持った杖に力を込め始めました。左手に持った本がひとりでにページをめくり始めました。

ロイ「洗い流せ、〈ブレイド・ブラッド・ウォッシュ〉」

突如、無数の刃が小型アンデッド達の間に顕れ、思い思いに飛び回りアンデッド達を切り刻みました。一瞬にして、すべてのアンデッドが闇に溶けて消えていきます。刃の動きが止まった頃には、周囲に穢れの気配は感じられなくなっていました。

ジョルティ「や、やるやんけ……」
ロイ「……お手数を掛けて、申し訳ありませんでした。皆さんの実力は間違いありません。……疑って申し訳ない。……どうか、よろしくお願い致します。カランド様を、共に平和な眠りに就ける手助けをして下さい」
ラナ「私からも非礼を詫びます。……どうぞよろしくお願い致します」

そう、2人は改めて頭を下げました。

ティエ「ところで、さっきデカいのが出て驚いてましたけど、あれはいったい?」
ロイ「これまで、あれほど強大な穢れが現れたことはありませんでした。普段は、先ほど僕が斬り飛ばしたような、あの程度のものがほとんどだったのですが……」
ジョルティ「歓迎されていないのかね、俺ら」
ロイ「何か、状況が悪化しているのかもしれません」
ノーティ「ある意味、タイミングが良かったとみるべきでしょう」
ロイ「……そうですね、助かりました」

こうして、ロイとラナから実力への信用を得て、彼らは再び迎賓館へと戻ることにしました。

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こちらは、2016/7/1に行ったオンラインセッションのリプレイです。
少々私用などが重なり、執筆が遅れてしまいました。次回の執筆も少々遅れるかも知れません。長いシナリオがぶつ切りになってしまい申し訳ありません。
それでは、また次回をお待ちくださると幸いです。


【参考サイト】

2 件のコメント:

  1. ファ流シ音2016年7月29日 22:18

    既に中級魔法が使える様になっていたんですね。序盤から戦果の面では目覚ましいパーティでしたが、ますます戦いぶりに磨きがかかっている様で、見ていて爽快ですね。
    単純な話なら次で終わりそうなものですが、まだやっと半分、ここからどういう話になるのか、楽しみにさせていただきます。

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    1. コメントありがとうございます!もう少ししましたら、現在の成長段階の紹介などもしたいと思います。今は大体皆4~5レベルと言う感じです。
      アージェントイベントは私からしても予想外に発展してしまい、思った以上に長くなりました。次回はもう少し早くに出せるように頑張ります!

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