第二十七話中編「古く寂れた井戸の底で」
皆で連れ立って、村の東の診療所へと向かいました。
診療所に近づくと、クライブが首に掛けていた「死竜の金色の鍵」に嵌め込まれていた、白い宝石が一瞬だけ薄く光を発しました。
ノーティ「それってあの時の鍵ですよね……何かに反応しているんでしょうか?」
クライブ「さてな……」
トリシア「レパーリアで会った女の子に貰ったんだっけそれ」
ルー「そうなんですか?」
トリシア「あれ? どうだっけ。そうだったと思ったけど……」
あの日記に書かれていたことは夢の出来事のように、薄ぼんやりとしているようでした。
ジョルティ「ま、鍵のことは後にしよう。診療所に入っちまおうぜ」
ティエ「そうですね。こんにちはー、診療、やってますか?」
ティエが診療所の扉を開けました。中には、昨日と同じく黒いローブに嘴の付いた仮面をした男がいます。机に向かって、何かをしているようでしたが、皆の方に向き直ります。
コルネリア「…おや…ご病気ですか?」
トリシア「なんかこの街に来てから調子悪いっす」
ティエ「おそらくは…」
ノーティ「体調があまりよろしくないメンバーがご覧の有様で……」
トリシア(来る前が良かったのかと言われればそうでもないけど…)
コルネリア「ふむ……」
コルネリア「診察致しましょう。体調の悪い方はこちらへ」
コルネリア「他の皆さんは外でお待ち頂いた方が良いかと思います。伝染する病気ですので」
ジョルティ「いや、悪いがここに残らせて貰う」
パワー「俺は病気なんてかからないからな」
コルネリア「……皆さんがそう言うならば構いませんが」
ノーティ「病気はもう何か特定できているんですね? 彼らにどのような治療を?」
コルネリア「診察して見なければ病気は特定できませんが……流行の状況を見るに、ある程度の目星は付いています。治療は、普通の病気と変わりませんよ、病態を見て薬を出します」
ノーティ「では、終わったら声を掛けてください、外で待っていますので」
コルネリア「では、診察を行います。順番に診察室へお入り下さい」
ノーティは診療所の外へ、パワー、クライブ、ジョルティは診療所の待合室で待つことになりました。
まずはティエが診察室に招かれて入っていきます。
コルネリア「では、まずは喉をお見せ下さい」
ティエ「ァー」
コルネリア「……少し腫れていますね。咳が出ているでしょう」
ティエ「はい。そうですね…」
コルネリア「次は腕を捲くって見せてください」
ティエは言われたとおりに袖を捲くって腕を見せました。すると、肌に小さく黒い斑点のようなものが浮かんでいました。
ティエ「わ、ナンダコレ」
コルネリア「……やはりそうですか……」
コルネリア「……この斑点は流行病の典型的な症状です。どうやら罹患しているようですね……」
ティエ「
あちゃー……」
コルネリア「……こちらの薬を処方しておきます。朝晩、忘れずに飲むようにして下さい。また、できれば3日ほど後に診察を受けてくださればと思います。一回目の薬はすぐに飲んでしまってください」
コルネリア医師は、ティエに小さな瓶に入った液薬を渡しました。薬液は透明で、サラサラとしているようです。
ティエ(あとでヒーラーに中身見て貰おう)
ティエ「ありがとうございましたー」
コルネリア「…それではお大事に。出来るだけ外に出ず、人と会わないようにして下さい」
コルネリア「次の方、お入り下さい」
その後、トリシアとルーも呼び出され、診察が行われました。診察の内容はほぼ同じで、同じ様に小瓶の薬が処方されました。
それから少しして、ノーティとクライブも診療所の待合室へと入りました。
ティエ「どうしますかね…隔離室として一部屋取るか、コテージでも建てるか。はたまたこの町を抜けるか」
ノーティ「その薬は?
まだ治療法は確立していないのでしょう?」
クライブ「あと一歩だ、と言っていたな」
ティエ「液状だなぁ…なんか朝晩飲めって」
トリシア「ゴクー」
ティエ「飲むの早っ」
トリシア「すごくにがい」
コルネリア「良薬口に苦しと言うだろう」
ティエ「とりあえず1瓶は飲んで…ノーティ、この中身とか分かる?」
ノーティ「うーん……流石に細かいことまでは。ハーブは使っているようですが…」
ジョルティ「先生、これは症状を抑える薬かい?」
コルネリア「はい。そうです」
コルネリア「しっかり飲んで寝ていれば、治る病気ですから」
コルネリアはそう話してから、少しだけクライブの方に目をやりました。
ジョルティ「ふむ、少しおかしいな」
コルネリア「おかしい、ですか?」
ジョルティ「あなたは昨晩、クライブさんとの会話で流行病の治療法の確立は”まだ八割”と仰っていた、そうですね?」
コルネリアはジョルティの話を聞いて、少しだけ思案してから答えます。
コルネリア「……そうですか、お話を聞いておられたんですね」
コルネリア「……では、隠し立てをするのは止しましょう。そちらの方の仰る通り、流行病--肌に浮かぶ斑点から黒死病と我々は呼んでいます--の治療法はまだ完全に確立しているわけではありません」
コルネリア「…8割、いえ、9割という段階です。今の段階で、病気を確実に処置する方法はありません」
コルネリア「……とは言えその薬も全く効果がないわけではありません。一時的に免疫力を高めることができます。進行を押しとどめる事は可能です」
ルー「……根本的には治らない、ということですか?」
コルネリア「……残念ながら。過去に根治した者は極めて稀です」
やはり、仮面の向こうの表情は窺い知れませんが、コルネリア医師は非常に言い難そうにそう告げました。
ティエ(えっ、治んないの? 死ぬってこと?)
トリシア(治らないのは困るなぁ)
ルー(死んじゃうんでしょうか…? 全然実感がないですけど……)
ジョルティ「では、今もこの村では被害者は出続けているという事ですね?」
コルネリア「……それについては、少々お待ち下さい。一旦、診療所を閉じてまいりますので。」
コルネリア医師は表に出て診療所に掛かっている「OPEN」の札を裏返し、施錠をして戻ってきました。
そして、声を潜めて話し始めます。
コルネリア「……この事は、他言無用で願います」
コルネリア「……その通りです。5年前の流行が去って以来、暫くは死者もなかったのですが……まさに昨晩、新たに一人犠牲者が出ました」
ノーティ「その薬は進行を止めるのでしょう? それが何故?」
コルネリア「…いえ、進行を完全に止めることは出来ません。あくまでも遅らせるだけです」
コルネリア「抵抗力がある方なら長い間症状を抑えることができますが…そうでない方は進行の方が勝ってしまいます」
ティエ「村を離れても治りそうにはないですねぇ」
ノーティ「治るまで我々もこの村から出られないということですね……困ったな」
コルネリア「……ええ、残念ながら、村から出ても治ることはないでしょう。困ったことに、原因は分かっておらず……」
コルネリア「何とかして病気を治す方法を見つけなければなりません。……もう、時間がありません。このままでは、再び村が病に包まれてしまいます」
トリシア「私達死ぬらしい」
ティエ「なー
…」
ルー「やっぱりそうなんでしょうか…」
ノーティ「ここまでコミットしてしまったからには治療へ協力させていただきますよ、ええ、隠し事は全てなしです」
コルネリア「……ご協力頂けるなら助かります」
クライブ「ま、いいんじゃないか」
コルネリア「……完成までのあと一歩、残り10%を埋めるためには…感染源を探る必要があります」
パワー「乾布摩擦でもしとけば大体治るだろ」
ルー「頑丈すぎますよ…」
パワー「俺はしなくても掛からんがなガハハハ」
コルネリア「実際、不思議なことに罹らない人は全く罹らないのです」
クライブ「…抗体かもしくは単純に運がいいのか」
パワー「つまりどういうことだ? とっととこいつら治してくれよ、旅ができんじゃないか」
パワーがちょっとまともなことを言っているような気がしますが気の所為ですね?
コルネリア「……何がこの病気の原因となっているのか、その部分を探ってもらえれば」
ジョルティ「ああ、それは引き受けるさ。ただし、全て話して貰えない事にはこちらもあんたを信用できない」
コルネリア「……ふむ?」
ジョルティ「例えば、”あんたが昨晩墓場で何をしていたのか”とかな」
コルネリア「……そう、でしたか。そこまで見られていたんですね……分かりました。全てお話します」
コルネリア医師は、静かに昨日の夜のことを話し始めました。掠れた声は少しだけ、聞き取りにくいものでしたが……。
コルネリア「……先程、昨日の犠牲者があったと話しましたね」
コルネリア「私の作る魔法人形……コッペリアは特殊な方法で作っています」
コルネリア「……そのためには、”同じ死因で死んだ者の遺骨”が必要です」
ティエ(ってことは今動いてるのは…皆この病気で死んだ人の遺骨が使われているのでしょうか)
コルネリア「……必要なら、人形作りをしている地下室にご案内しますが」
ジョルティ「いえ、想像出来るんで結構です……」
コルネリア「……その方が良いでしょう」
コルネリア「本当はこのようなこと、続けるべきではないのは分かっているのですが……」
コルネリア「この病気で再び死者が出たことが知れれば、村は必ずパニックになります。そうなっては、治療薬の研究を完遂することができない」
コルネリア「……娘もこの村で暮らせなくなるでしょう」
ジョルティ「娘さん…娘さんはご健在なんですか?」
コルネリア「……ええ、娘は健康です。村で生活しています。彼女も、恐らく病気に罹らない者の1人だ」
コルネリア「娘の夫……私の義理の息子でもある、ジン・レグルスは第一号のコッペリアですが、彼女は気付いていないことでしょう」
コルネリア「……これ以上、隠し立てしていることはありません」
ジョルティ「娘さんを訪ねる事はできますか?」
コルネリア「ええ、娘を訪ねることは可能ですが……」
コルネリア「どうぞ、詳しいことはご内密にしていただけると助かります。今はまだ……」
ノーティ「ふむ……あとは原因ですか……」
コルネリア「はい。……10年前から流行を繰り返しているにも関わらず、その原因が全く分かっていません」
クライブ「…何か共通点はないのか」
コルネリア「共通点……ですか。同じ病気であること以外は特に思い当たることは……」
〈教養知識〉
ジョルティ:15
トリシア:10
ジョルティ「病が流行った村や町といえば、大抵は衛生環境が悪いとか、そういうことがあると聞くな」
トリシア「そうだね、そういう話は聞くことが多いと思う」
〈想起:知力+精神:目標6〉
パワー:6
クライブ:5(失敗)
ティエ:14
ノーティ:Critical
トリシア:11
ジョルティ:5(失敗)
ルー:5(失敗)
ティエ「……この村、別に汚くないですよね?」
パワー「全然気にならん」
ノーティ「悪くない衛生環境……いえ、待ってください、この村に来てから、もう何匹もネズミを見かけました。考えてみると衛生環境が良い村でこれはおかしい」
クライブ「ネズミなんて気が付かなかったな…」
コルネリア「……ネズミ、ですか?」
コルネリア「……確かに、よく見かけますね」
ノーティ「ネズミって普通、不衛生な時に増えますよね」
ティエ「ですねえ」
トリシア「ネズミきちゃない。台所の敵」
コルネリア「ええ、そうですね……。普通は」
ジョルティ「ネズミ? …ネズミか…」
パワー「食えるのか?」
クライブ「何でも食おうとするな」
ジョルティ「どれ……診療所にもいたりしないかな」
〈動物探し:目標6〉
クライブ:3(失敗)
ジョルティ:7
クライブとジョルティが診療所の中を見渡します。クライブは見つけることができなかったようですが、ジョルティは診療所の隅にいる小さなネズミの存在を見つけました。
ジョルティ「おったで、おい」
ノーティ「……つまり、ネズミが病気を媒介している可能性は? ほら、あんなのが……」
コルネリア「……ネズミが病気を……?」
コルネリア「……なるほど、動物を介して病気が広がる可能性も考えられますか。人からの感染ばかり疑っていましたが……」
ノーティ「試しに捕まえて調べてみては?」
コルネリア「ええ、そうしてみましょう。ちょうどここに一匹いるようですし」
〈捕獲:敏捷+敏捷:目標9〉
コルネリア:5(失敗)
ノーティ「……」
コルネリア「……すみません、どうにも動きが鈍く」
〈捕獲:敏捷+敏捷:目標9〉
クライブ:21
クライブは素早い動きでジョルティの見つけたネズミを捕獲しました。噛まれないように胴を抑えてコルネリア医師に手渡します。
ティエ「なんと無駄のない動き」
コルネリア「ありがとうございます」
クライブ「特に変わったところは無いな…普通のネズミだ。ほれ」
コルネリア医師はクライブからネズミを受け取り、尻尾を掴んで診察室の隣にある研究室まで持っていきました。
そこで包帯でぐるぐる巻きにして動きを封じ、机に置きました。
ノーティ「しかし、どうしてネズミが……?」
コルネリア「分かりませんね……このネズミはどこから来たのでしょうか……。確かに村は衛生的なはずですし……、どこから湧いているのか」
コルネリア「ともかく、私はこのネズミを研究してみたいと思います」
コルネリア「……より多くの検体が必要になるかもしれません。もし、村の中でネズミを見つけたら、捕まえてきて頂けると助かります」
ノーティ「そうですね、我々は実験体となるネズミをいくらか捕まえてきましょう」
ティエ「とりあえず倉庫かな? そこら中におるんかな」
トリシア「生死は問う?」
コルネリア「……できれば生きている方が望ましいですが、死体でも構いません。数が欲しいです」
ジョルティ「片っ端から取ればいいんじゃね?」
ルー「頑張ります……死なないためにも」
ティエ「そうだね……」
クライブ「なら、手分けして探すとしよう。村中なら危険もないだろう」
こうして、皆別れてそれぞれ思い思いの場所でネズミ探しを始めました。
トリシア、ノーティ、ルーの3人は宿に戻り、宿の中でネズミを探しています。
〈捕獲:敏捷+敏捷:目標9〉
トリシア:6(失敗)
ノーティ:10
ルー:11
トリシア「だめだ、みつかんない」
ルー「あっちで1匹捕まえましたー」
ノーティ「噛まれたりしないように気をつけて……おっと……廊下にも1匹」
トリシア「なんで皆見つけれるの…」
その頃、ティエは村の食料庫でネズミ探しをしていました。
〈捕獲:敏捷+敏捷:目標9〉
ティエ:5(失敗)
ティエ「だめだー見つかんなーい」
ジョルティは飲食店の近くに向かい、同じようにネズミを探しています。
〈捕獲:敏捷+敏捷:目標9〉
ジョルティ:9
ジョルティ「やっぱりネズミといえば飲食店だな。動くな動くな」
クライブは村の中でネズミが見当たらないか探しています。
〈動物探し:目標8〉
クライブ:7(失敗)
しかし、見つからなかったようで村の中心にある井戸に向かい、そこでネズミ捕獲を試みました。
〈捕獲:敏捷+敏捷:目標9〉
クライブ:23
井戸の周辺で、クライブもネズミを捕まえました。
クライブ「やはり動物は水辺に近寄る……」
その頃パワーは、診療所から村の中央付近に向かい、近くにある民家のドアを叩いていました。
パワー「すいませぇーん」
パワー「開けやがれください~」
パワー「ネズミいますかー? ネズミを駆除しますがー」
すると、中から25歳ほどの女性が顔を出しました。ドアを完全に開けず、隙間から見るようにして対応しています。
女性「はい? なんでしょうか?」
パワー「よろしいですね?」
女性「ちょっと言っている意味が…」
パワー「なんも言うな! わかってるぜ! おじゃましまーす!」
女性「ちょ、困ります! 困りますって!」
女性「あなた! なんか変な人が!」
女性の声に反応して、奥から男性が出てきました。……よく見なければ分かりませんが、この男性もコッペリアのようです。
パワーは全く気付いていないようでしたが……。
男性「ど、どなたですか?」
パワー「すいませーん、ネズミさがしてまーす」
男性「ネズミ駆除の方ですか……?」
〈捕獲:敏捷+敏捷:目標9〉
パワー:15
パワー「ほら、ネズミ。いたでしょネズミ」
男性「いえ、たしかにネズミが多いな、とは思っていたんです」
パワー「じゃ、これは貰っていくから」
男性「は、はあ……ありがとうございます?」
パワーも民家で捕まえたネズミを持ち、診療所の前に戻ってきました。結局、皆の手によって5匹のネズミが集まりました。
〈気付き:知力+精神:目標8〉
パワー:3(失敗)
クライブ:5(失敗)
ティエ:12
ノーティ:5(失敗)
トリシア:7(失敗)
ジョルティ:5(失敗)
ルー:Critical
ルー「そういえば、生きているネズミしか見ませんでしたね?」
ティエ「たしかに、そういえば。なんでだろ?」
クライブ「共食いか?」
ティエ「死ぬと溶けるとか?」
ノーティ「鳥とかに食べられている可能性もありますが、それでも一匹も見ないというのは妙ではありませんか」
ティエ「あ、見てください。なんかついてますよほらここ」
ティエは捕獲してきたネズミの1匹の口元に、黄色い花びらのようなものが付いていることに気が付き、それを皆に見せました。
ノーティ「……これは、あの花と同じですね」
クライブ「花を主食にでもしてるのか?」
ジョルティ「黄色いのって珍しいんだよな? 確か」
ティエ「ええ、他では見たことがありませんね」
ジョルティ「とりあえずネズミ持って診療所戻ろうか。何か分かるもしれない」
花の話をしながら、診療所の戸を叩きました。診療所はまだ”CLOSED”のままになっていましたが、鍵は開いているようです。
ティエ「鼠のお届け物ですー」
コルネリア「どうぞ、お入り下さい」
コルネリア医師は研究机のネズミを解剖している所のようでした。
コルネリア「おっと、こちらはご覧にならない方が。ネズミを捕まえてきて頂いたのですか?」
ノーティ「うっ……」
コルネリア医師は手袋の血を拭って近付いてきました。
コルネリア「……こちらにはカーテンを掛けておきますね」
コルネリア「5匹も捕まえてきてくださるとは……しかも全部生きているようですね」
ティエ「はい。というか、何故か死んでいるネズミはいませんでした」
ノーティ「これだけいて死骸の一つも見つからないというのも妙でした。解剖したネズミは消えていたりしませんよね?」
コルネリア「え、ええ、もうすでに死んでいるはずですが……消えたりはしていませんよ」
コルネリア「しかし、死体がない……ですか」
コルネリア「……病気の媒介をしているものの、このネズミ達には抗体があるのかもしれません。俄然、治療薬に活かせる可能性が見えてきました」
コルネリア「他に何か、気になったことはありませんでしたか?」
ジョルティ「昨晩の黄色い花って随分珍しいハルシャ菊でしたけどいったいどこから採ってきたんですか?」
コルネリア「あの花は裏の山で採取したものですが……それが何か?」
ジョルティ「ネズミがこんなん咥えてましてね…」
コルネリア「……これは、確かにその花の花びらですね」
コルネリア「実は、私も先程ネズミの胃の内容物を見たのですが……ほとんど植物で驚いていた所です」
ティエ(裏の山は鼠だらけ…?)
クライブ「ねずみは雑食のはずだが……植物だけを主食というのは珍しいな」
コルネリア「ええ、普通はそうですね……。それも村中にいるネズミであれば、もっと色々物を食べていると思っていたのですが」
ジョルティ「普通のネズミじゃない可能性も出てくるな」
コルネリア「……もう少し、研究を続けます」
ティエ「本能的に黄色い花を食べていたパターンは?」
コルネリア「ありえますね……しかし、この花は治療薬研究で最初に調べたものでもあります。……ネズミの方に、何かある可能性が高いかと思いますが……」
ノーティ「我々はその裏山に向かいましょうか?
ネズミがたくさん手に入るかもしれませんし、他の光景も見られるかも」
ティエ「そうですね、行ってみましょう」
コルネリア「お気を付けて。雪が積もっていますから」
皆、診療所を出て裏手の山へと向かうことにしたようです。コルネリア医師の言うとおり雪が積もっており、距離はありませんがそこそこ歩くのに苦労しそうでした。
〈移動チェック:山:目標10〉
パワー:7(失敗)
クライブ:14
ティエ:10
ノーティ:13
トリシア:11
ジョルティ:10
ルー:7(失敗)
パワーは重い鎧の、ルーは病の、それぞれ影響があって歩くのにかなり疲れているようでしたが、遠からずして裏山に到着しました。裏山は植林地になっており、人の手が入っています。
〈動物探し:目標10〉
クライブ:8(失敗)
ジョルティ:7(失敗)
〈薬草取り:目標10〉
パワー:12
ノーティ:12
クライブ「…特にネズミは見当たらないな」
ジョルティ「だなぁ」
ノーティ「あっちの方に、黄色いハルシャ菊が生えていました」
パワー「うまい」
ノーティ「……」
ルー(ネズミがかじってるかもしれないのに……)
パワーとノーティが見つけた黄色い白夜ハルシャ菊の群生地は、植林地帯からは見えにくい、少し離れた場所にありました。
何輪もの黄色い白夜ハルシャ菊が、冬にも関わらず雪の景色の中で咲き誇っています。
ティエ「おー黄色いの一杯ある」
ノーティ「珍しいものがこんなにも……」
ティエ「あ、ネズミがハルシャ菊の側に……」
確かに、ハルシャ菊の園の中には、ちらほらとネズミの姿が見られました。
パワー「きょうのごはん」
ジョルティ「俺は捌かないぞ」
ティエ「網とか袋とか買ってくるべきだったかな?」
ノーティ「ここまで食べに来ているんですかね……原因と結果が分からない……」
ネズミは皆さんの気配に気づいたのか、甲高い鳴き声を上げて去っていきます。
パワー「まてー!めしー!」
ルー(流石のパワーさんでも食べたら罹るんじゃ…?)
〈追跡:体力+敏捷 目標8〉
パワー:14
クライブ:12
ティエ:6(失敗)
ノーティ:7(失敗)
トリシア:6(失敗)
ジョルティ:15
ルー:4(失敗)
パワー・クライブ・ジョルティの3人は去っていくネズミの行先を追跡しました。
ネズミたちは、植林帯からさらに少し離れた場所にあった、小さな古い井戸へと逃げていっているようです。
古井戸の周りには黄色い白夜ハルシャ菊が特に多く群生しています。
クライブ「…井戸ね。村中のものにはネズミがいなかったが」
ルー「随分古いようですけど……」
ノーティ「あれがいわゆる巣窟って奴ですか?」
クライブ「ここでこうしていても仕方あるまい」
クライブは剣を抜き、井戸の中の気配を探ります。
〈察知:目標6〉
クライブ:10
クライブ「……何匹か井戸の中にいるな」
ノーティ「ネズミを根絶やしにしてしまうつもりですか?」
クライブが気配を探りながら井戸に近づくと、また「死竜の金色の鍵」の白い宝石が光りました。先程よりも強い光りです。
クライブ「…やはり井戸の中か。ってなんか光ってるな」
白い宝石の光はすぐに消え元通りになりました。
クライブ「消えたか…何かの気配を感じたのか?」
ノーティ「抗体を得るのに必要になるかもしれないので根絶やしにするのはやめてくださいね、念のため」
ティエ「今日二回目です?なんか最近光ってますね」
クライブ「まぁよく光ってはいるな」
ジョルティ「マジックアイテムだったの?」
クライブ「そこまでは分からん…俺はマジックユーザーではないしな」
ティエ「魔力は感じないですけどねえ」
井戸の中からは、ネズミが歩き回っているような音が聞こえてきます。
クライブ「…ふぅ。パワーこい。念のためだ。二人でかかるぞ」
パワー「のぞきこんだら何か出るんじゃ。髪の長い女性とか」
クライブ「なんだそれは。ほら」
パワー「わーい」
こうして、パワーとクライブは井戸を覗き込みました。
井戸の中には水がなく、その底には数匹のネズミと……1つの人の死体があります。
死体は女性のようです。保存状態はよく、腐乱はしていません。
その時、2人の背後に何か黒い霧のようなものが集まり始めました。
〈スカウト:敏捷値力:目標8〉
ジョルティ:18
ジョルティ「危ない!」
ジョルティは2人の背後に突然現れた影に気が付き、素早く2人を引き寄せました。
ジョルティ「間一髪…かな?」
そこには、黒い霧を纏ったような、髑髏の顔が浮かんでいます。その両手には大きな鎌が握られており、顎骨をカタカタと鳴らして笑っています。
クライブ「何だ、こいつ」
パワー「ぶっ飛ばそう」
黒い霧が、皆を包み込むように広がりました。この霧を吸い込んだことで、ノーティも病に冒されました。
ノーティ「ゴホッ……この霧……!これが病の原因!?」
〈戦闘開始〉
〈ラウンド1〉
【クライブ】
クライブはその場で、突如顕れた黒い霧の髑髏の情報を読み取ろうと目を細めます。
〈知見:目標12〉
判定:5(失敗)
しかし、特にその形状以上の情報を得ることはできませんでした。
クライブ「とりあえず殴る! それから考える!」
〈攻撃→黒い霧の髑髏〉
命中判定:9(失敗)
クライブ「はずしたか…」
クライブの剣もまた、黒い霧の髑髏に命中しませんでした。髑髏はカタカタカタカタと嗤うように歯を打ち合わせています。
【ジョルティ】
ジョルティもまず、その黒い霧の髑髏の正体を探るために焦点を合わせました。
〈知見:目標12〉
判定:15
ジョルティ「……それほど強い魔物ではない?」
ティエ「詳しくは後でドラコニカで見てみますよ」
ジョルティ「頼んだ」
〈春魔法「スプラウト」→ジョルティの敏捷〉
発動判定:4
ジョルティ「とはいえ、何か怖い。短期決戦で行くぞ」
【トリシア】
〈攻撃→黒い霧の髑髏〉
命中判定:10(失敗)
トリシアは黒い霧の髑髏に対して弓を引き、矢を放ちました。しかし、病気のためか弦を引く手に力が篭っておらず、矢は思い通りに飛びませんでした。
トリシア「むー。調子でないなー」
【黒い霧の髑髏】
黒い霧の髑髏は前衛の3人を睥睨し、その中からジョルティに狙いを定めたようです。手に持った大きな鎌をジョルティに向かって縦に振り下ろしました。
〈攻撃→ジョルティ〉
命中判定:15
ダメージ:9(防護1)
ジョルティも避けようとしましたが、その大鎌は避けた先へと振り下ろされており、ジョルティの肩に突き刺さりました。
ジョルティ「くっそ! こいつどっかの城の悪魔とは違う! 鎌使いがダンチだ!!」
……事ある毎に引き合いに出されると思うと、バーフォメットには悪魔ながら同情を禁じえません。
【ティエ】
〈呪文魔法「オープン・ドラコニカ」→黒い霧の髑髏〉
発動判定:10
ティエの魔法により呼び出された、ドラコニカがページを捲っていきます。
そのページは、「黒死髑髏」という魔物を示していました。
”黒死髑髏”
現在知られている妖魔の中でも最も強い力を持つ。
黒い霧を纏った空中に浮かぶ巨大な髑髏の姿をしており、死神を連想する者も多い。
ネズミを操り、そのネズミによって黒死病と呼ばれる病気を振りまく。
黒死病は黒死髑髏を倒すことでのみ治すことができる。現在のところ、他の治療法はない。
ティエ「やっぱり、こいつが黒死病の原因です! 倒せば治るとも書いてあります!」
ノーティ「なるほどやはり……早く倒して戻らなければなりませんね」
【ルー】
ルー「私は……身を守ります!」
〈防御〉
次ターンまで防護点+1
【パワー】
パワー「叩き割ってやるよぉ!」
〈攻撃→黒死髑髏〉
命中判定:10(失敗)
パワーの斧も大振りで外れ、命中しませんでした。
【ノーティ】
ノーティ「ひとまず、逃がさないようにしないといけませんね」
〈呪文魔法「ウォー・メタフィールド」〉
発動判定:13
皆と黒死髑髏が、周囲の世界と隔絶されました。もはや見慣れたフィールドの中で、黒死髑髏との輪舞が続きます。
〈ラウンド2〉
【クライブ】
クライブ「ひたすら斬る!」
〈攻撃→黒死髑髏〉
命中判定:
9(失敗)
クライブの剣はまたもや黒死髑髏には命中しませんでした。空振った後、クライブは何やら剣の方を見て「もっと良いのが欲しい」と呟いていました。
【ジョルティ】
ジョルティ「終わらせてやる」
〈攻撃→黒死髑髏〉
命中判定:13
ダメージ:20
ジョルティ「ヘッドショット……!」
クライブ「……一撃か」
ティエ「おおおー」
ジョルティの放った全力の矢が髑髏の額を捉えました。髑髏は粉々に吹き飛び、周囲に纏っていた黒い霧も風に散っていきます。
〈戦闘終了〉
ウォー・メタフィールドが消えると、周囲のネズミたちも姿を消していました。
ノーティ「これで黒死病は根絶できた……?」
ティエ「ということになるんですかねえ…?ドラコニカによればですけど」
ルー「……確かに急に体調が良くなったような…?」
トリシア「ホントー?」
ティエ「腕を見てみれば分かりますね。……お、確かに斑点が消えてる」
クライブ「…先程の奴が原因だったか」
ノーティ「少なくとも、我々は治癒したようですね」
パワー「熟れたバナナみたいで美味そうだったのに治ったか」
ジョルティ「治ってなによりだ。……井戸の中の女の人、引き上げてやろうぜ。ずっと井戸の中なんてあんまりだ」
ルー「そうですね……」
ジョルティが古井戸に残っていた釣瓶を使い、井戸の底で眠る女性を引き上げました。井戸の横に女性を横たえると、再びクライブの首にかかった金の鍵の白い宝石がまたも光り始めます。
クライブ「また光りだしたな…こいつがさっきの奴を呼び出したのか?」
今度は光はすぐには消えません。周囲を包むように光が広がっていき、私を含むこの場の全員を包み込みました。
白い光は霧霞のように私達の意識に、何者かの記憶を投影し始めます。
その記憶は、まさにこの場所で、何人もの村人達に囲まれ、殴り倒される所から始まりました。
記憶の主を殴った村人達は、皆口々に「お前が治せないから」「本当はお前達のせいなんだろう」というようなことを言っています。
それから、記憶の主はこの古井戸--記憶の中ではまだ今程古くはないようですが--に投げ込まれました。
幾度目かの夜、黒い霧が現れ、記憶の主へと吸い込まれていきました。
……それから、記憶の主の近くに多くのネズミが現れ、古井戸の周囲に黄色い花が咲き始めます。
……それから、記憶の主の近くに多くのネズミが現れ、古井戸の周囲に黄色い花が咲き始めます。
斯くして、長い時を経てネズミ達が村へと入り込み、再び黒死病が流行を始めました。偶然か必然か、最初に犠牲になったのは、記憶の主を井戸に落とした村人達でした。
霧霞のような記憶の投影はここで途切れ、光は収まりました。
トリシア「なんだこれ」
ルー「なんだか……変な映像が……」
ティエ「なんですか、この嫌な事件は」
ノーティ「これは痛ましい……」
ジョルティ「胸糞悪い記憶だな」
クライブ「こんなものを見せて何をしたいんだかね……」
なんとなく、あの鍵の正体が分かってきましたよ、竜の君。……死の竜人が、何故あれを彼らに渡したのかは分かりませんが。
しかし、あの黒い霧、黒死髑髏はどこから現れたのでしょうか。彼女の怨みから生まれたのではなく、外部から顕れたように見えました。だとすると……酷なことをするものです。古井戸に近付いた時、あの鍵が光ったということは、それまでずっと彼女の魂は古井戸の底にあったのでしょうから。
ノーティ「とりあえず、戻りますか……」
クライブ「まぁ、待て。原因はこいつではなさそうだしとりあえずここに埋葬するぞ」
ノーティ「コルネリアさんに見せてからでも良いかとも思うのですが……10年前のことですし、何か知っておられるかも……」
クライブ「しかし、野ざらしにしておくのもな……あの医者も暫くは研究で動けないだろう」
ノーティ「……それもそうですね」
クライブが、近くの土を掘り返し、女性の遺体の埋葬を始めました。その途中、クライブは女性の左手の指に、木彫りの指輪が嵌っていることに気が付きました。
その木彫りの指輪には”テオフラスト”と”マーガレット”という2つの名前が掘られていました。
クライブ「…マーガレット、ね。まぁいい。埋めるぞ」
ノーティ「指輪だけは持っていきましょうか?」
クライブ「祟られるぞ」
ノーティ「乗り移られていただけですって、彼女は。それに我々を祟る理由もない……はず」
ティエ「指輪だけもってきますか。旦那さんが知り合いが生きてたらわたしましょう」
ジョルティ「遺品だしな」
クライブ「まあ……任せる」
ティエ「コッペリアってたら…どうしよう。まあ、その時はここに埋めに来ますか…」
ティエが女性の指から木彫りの指輪を抜き取り、クライブが彼女の遺体を埋め、山を下りました。そのまま真っ直ぐと、コルネリアの診療所へと向かいます。
パワー「この指輪はいくらになるんだ?」
ティエ「売りませーん」
ノーティ「冗談でもそんなこと云わないほうがいいですよ」
トリシア「本当に祟られるよ」
診療所は未だに”CLOSED”の札が掛かっていました。皆が診療所に近づくと、また鍵が白く光りました。今度は一瞬だけで光は消えました。
クライブ「……またか」
ティエ「なんか倒してきましたー」
ティエがドアに診療所のドアに手を掛けると、鍵は掛かっておらず、そのまま開きました。ドアを開け、中に入ると……そこには、研究室に倒れているコルネリア医師の姿がありました。その手には、黄色い白夜ハルシャ菊が握られています。
ノーティ「!?」
ティエ「わ!?」
ノーティ「え、これって……」
ティエ「ま、まずは状態を確認しないと」
〈知見〉
ティエ:9
ノーティ:15
トリシア「死んでる…?」
ノーティ「……残念ながら」
ティエ「ええ……どうなってるの……」
ノーティ「でもまだ温かいです、亡くなってからそれほど時間は経っていないかと……」
クライブ「…なるほど、死の気配を読み取ったか。この鍵は」
パワー「心臓マッサージしてやろうか」
〈心臓マッサージ:体力+敏捷〉
パワー:16
パワーはコルネリア医師に心臓マッサージを施しましたが、息を吹き返すことはありませんでした。
ノーティ「恐らくは間に合いませんね、私の魔法をもってしても……」
ティエ「……」
コルネリア医師の倒れている研究室には一つの瓶に入った液薬が置かれており、その側に2通の手紙が置かれていました。
薬瓶の側の2通の手紙には、それぞれ宛名が書かれています。”親愛なる娘、エリナへ” ”旅人達へ”と。
ノーティ「手紙を読んで下さい!」
ティエ「私達宛の方を読んでみましょう……」
ティエが”旅人達へ”と書かれた封筒を開きます。封筒の中には2枚の便箋が入っていました。
1枚目には、薬瓶の薬がどのようにして作られているのか、その作り方が書かれていました。
ティエは1枚目をそのままノーティに渡し、2枚目の手紙を読み始めます。
旅人達へ
このようなことに巻き込んでしまい、誠に申し訳ない。
君達のおかげで、黒死病の薬は完成したが、私は間に合わなかったようだ。これも、命を弄び続けてきた報いだろう。
できれば、死者の我儘をもう1つだけ聞いて欲しい。4日ほどで、リリアスから医者が来る手筈になっている。
それまでの間だけで構わない、どうか私の代わりに薬を作り、村民達を治療してあげてはくれないだろうか。
医者が来たら、作り方を手渡してくれ。……重ね重ね、迷惑を掛けて済まなかった。最期に君達に出会えたことは、私の人生で数少ない幸運だった。
テオフラスト・コルネリア
ノーティ「テオフラスト……さん、この人が」
クライブ「…ある意味、間に合わなかったか」
ティエ「手紙を渡さないと。娘さん家へいきますか。誰か知ってる人います?」
パワー「知らんな」
ティエ「村長さんに聞きますか」
コルネリア医師の遺体の手を組ませ、皆で診療所を後にし、村長の邸宅へと向かいます。その途中、各所で倒れている人々や、それを揺すっている人々を見かけました。
動かなくなっているのはいずれもコッペリアのようです。
ノーティ「あ、ああ……」
ジョルティ「……」
ティエ「コッペリアですもんね、魔力が切れれば……」
ノーティ(村民は知らなかったんですよね……ということは娘さんも……)
村長も家にはおらず、村の中を慌ただしく駆け回っていました。
ノーティ「村長さん!」
村長「た、旅人の方々でしたね!? 申し訳ない、見ての通り取り込んでおりまして!」
ノーティ「説明は後でします! コルネリア医師の娘さんの家を知りませんか!?」
村長「先生の娘さんですか!? え、ええ、分かります、あちらの家です!」
ティエ「ありがとうございます!」
ノーティ「失礼します!」
村長に教わったコルネリア医師の娘の家は、パワーが一度ネズミを捕まえに来ていた家でした。
パワー「ういーっすおじゃましまーす。ネズミいますかー?」
ティエ「(え? 何いってんの?)
ドアには鍵が掛かっておらず、パワーがそのままドアを開けて中に入っていきました。皆もそれに続いて家の中へと入ります。
家のリビングには男性が倒れており、その側で女性が倒れた男性の頬に手を当てていました。
ノーティ「エリナさん! ええと……なんと言ってよいか……」
ティエ(あー…これが最初のコッペリアの…)
ノーティ(どうしましょう、黒死病の影響で倒れたというべきか……)
エリナ「……どなたですか? ……ああ、そちらの方はネズミ駆除の。もう、ネズミはいませんよ」
ノーティ「旅のものです、この村の黒死病に罹……黒死病を調査しまして」
コルネリア医師の娘はパワーのことを認めると、一言そう言って倒れた男性の方へと視線を戻しました。ノーティはノーティで、どう伝えるべきか言い澱んでいる様子です。それを見かねたティエが、コルネリア医師の手紙を娘に手渡しました。
ティエ「コルネリア医師から手紙を預かっております」
エリナ「……父から? ……ありがとうございます」
娘はその場で封を切り、中の手紙を読み始めました。
親愛なる娘、エリナへ
ジン君のこと、ずっと嘘を吐いていて済まなかった。
私が妻を喪った日のことを思うと、まだ若いお前にそんな思いをさせたくなかった。
一日、また一日と時間が経つ度、お前の笑顔が私を苛むようだった。大きな過ちを、自らの口で告げることができなかった弱い私を許して欲しい。
きっと、これを読んでいる時、お前は家族を同時に2人喪った悲しみに暮れていることだろうと思う。だが、どうか気を強く持って生きてくれ。お前は母に似て、強い人間だ。
心が落ち着いたら…その時は旅に出ると良いだろう。きっと、旅はお前の心を癒やしてくれるはずだ。私もマーガレットと共に見守っている。
テオフラスト・コルネリア
手紙を読んだエリナは手紙を握りしめながら泣き始め、話ができる状態ではないようでした。
ノーティ「……心中お察しします、ただ貴方の父君は黒死病への治療薬を完成させました。これでこの村は二度と病に悩まされることはないでしょう」
娘はそのまま、さめざめと泣いていました。
皆は娘の家を後にし、元の宿へと戻りました。宿の主人もエントランスにはおらず、宿は管理されている様子はありません。
追い出されこそしないものの、食事なども用意されることはありませんでした。
ティエ「そういえば医者が来るんでしたっけ? さすがにここで医者放置してったら大量死事件の死因とか調べて医者可愛そうだからそれの引き継ぎぐらいはしようか」
ノーティ「それまで街の騒動を何とかしなければなりませんかね」
クライブ「まあ、そうだな……とりあえず今日の所は寝よう」
トリシア「黒死病が治って普通の風邪引いたんじゃ意味ないしね。疲れた疲れた」
ルー「はい……」
ノーティ「私は黒死病の薬の作り方を書き写しておきます。……どうやら、作り方さえ分かってしまえばそれほど難しいものではないようですから」
こうして、長い長い一日が終わりました。
こちらは、2016/11/25に行ったオンラインセッションのリプレイです。
本当は今回で事後処理まで含めて全て終わらせる予定でしたが、思ったより時間がかかってしまったためここで一端区切ることにしました。
今回のシナリオは……我ながら救いがないものだったと思います。彼らがどう行動しても、テオフラストが助かることはありませんでしたし、エリナが失意に暮れないこともありませんでした。恐らく、私の想定する限りでは。
しかし、そんな中でも皆、最適解に近い行動を取ってくれたと思っています。それでは、次回までお待ち下さい。
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