第二十七話後編「真実の永遠に祈りを」
~冬の月23日~
夜が明けると、皆すっかり体調が回復していました。相変わらず宿で食事が供されることはないため、皆備蓄の食事を取っています。
クライブ「で、どうするんだ…うちの一行にはヒーラーが一応二人いるわけだが」
ちゃんとパワーがヒーラーに数えられている……。
ティエ「医者が来るのは26日ですか」
ノーティ「その医師には本当のことを伝えるべきでしょうか?」
クライブ「まぁ、任せた…そもそもコルネリア医師の埋葬もせんといかんからな」
ノーティ「とりあえず診療所を機能させたり説明をするためにもヒーラーはそこで待機しているのが望ましいかと思います」
クライブ「…まぁ、ともかく。診療所へ行くぞ」
皆は朝食を終えると、真っ直ぐ診療所の方へと向かいました。
診療所に行くと、村人たちが集まっているようでした。亡くなったコルネリア医師の遺体が発見され、埋葬の準備などが進められているような様子です。村長もその中にいるようでした。
村長「あ……旅人の方々。診療は受けられませんよ……先生も亡くなっておりました……」
クライブ「あぁ、俺達はそのコルネリア医師の埋葬をしにきた」
村長「……先生が亡くなっているのをご存知だったのですか?」
クライブ「故あってな。頼まれごともされていた」
クライブ「詳しくはコルネリア医師の娘に聞いてくれ」
村長「そうだったのですね……。先生の埋葬については、お任せ下さい。我々村民で、責任を持って埋葬致します」
ノーティ「存じ上げております、それと彼は疫病の薬を完成させていますので……その負担もあったのでしょう」
村長「……疫病の薬、ですか? 5年前の疫病の際には完成していたのでは……? さっぱり状況が掴めず、困っているのです……」
村長「何か、ご存知のことはありませんか……?」
クライブ「…どうする。ここで伝えるのか?」
クライブが皆にだけ聞こえるような声でそう聞きました。
ノーティ「……村長にだけ伝えましょう。他の皆さんに伝えるとパニックになってしまうかもしれません」
クライブ「……そうだな。コルネリア医師も、あの場所に埋葬してやった方が良いだろう……山で話をするか」
クライブ「…村長。時間はあるか?」
村長「……皆、ここは少し任せました。少し彼らとお話をして参ります」
クライブ「…少々ついてきてくれ。そこまで遠くはない」
村長「……分かりました。どちらへ?」
ノーティ「ええ、ちょっと東の山の方に……ここではなんですので」
村長「山、ですか? いえ、分かりました」
ノーティ「では向かいましょう」
皆、村長を連れ立って診療所の裏山の、古井戸の近くにまで向かいました。相変わらず、黄色い花が咲き乱れています。違っているのは、マーガレットの墓があることくらいです。
村長「それで、お話というのは……?」
クライブ「すまんな…少々人の耳には入れずらい話でな」
トリシア「ノーティ、詳しくお願い」
ノーティ「こういった手紙を受け取っていまして……」
ノーティが村長に、コルネリア医師の手紙を手渡しました。その上で、事の顛末について説明を始めます。
黒死病は5年前には完治していなかったこと、コッペリアに入れ替えられていたこと、ここに埋葬されたマーガレットを依代にした黒死髑髏が5年前と今回の犠牲者の原因であることなどについて。
村長「……待って下さい、全く理解が……。す、少し持ち帰らせて頂いて宜しいですか」
村長「大筋は分かりました、今、村で倒れている村民たちは、本当は5年前には亡くなっていた、ということですか……?」
ノーティ「その通りです」
トリシア「大体そうゆうことになります」
村長「な、なんと……」
クライブ「…分かっておいてもらいたいのが、コルネリア医師は悪意でそういうことをしたわけではない、ということだ」
ノーティ「彼らはコッペリアに置き換えられていました、村の混乱を抑える為に……」
村長「……なるほど……」
トリシア「多分今回亡くなった人達は5年前に患った人だよ。何人かは心当たりあるんじゃない」
村長「……この事、他の者には話していないのですね?」
トリシア「だから村長呼び出して話してるの」
ノーティ「ええ、上手く村民には説明して頂きたいのですが……もし何か良い説明がなければシナリオを考える手助けも致しますが」
村長「……分かりました」
村長「コルネリア先生に悪意がないのは……義理の息子さんも今回倒れられいてることから、分かっています」
トリシア「褒められた事ではないけれど……」
村長「この事は……こちらでなんとか致します。今、すぐにその話をするべきではないでしょうから」
村長「……それにしても、10年前、突然行方不明になったマーガレット先生が、こんな所で亡くなっていたとは……。そんなことがあったのに、先生はこの村に居続けてくれたのですね」
村長「……お話頂き、ありがとうございました」
村長「26日に来るというお医者様にも、我々で対応できますが……その方がよろしいでしょうか?」
クライブ「…どうする。それまで俺らも滞在するのか?」
ノーティ「それまで私のようなヒーラーが診療所を担当しているのがこの村にとって望ましいのではないでしょうか」
村長「そうですね……先生以外に医者がおりませんでしたので……お願いしても宜しいですか?」
クライブ「なら…混乱の村で手伝えることもあるだろう。じゃあ代わりが来るまでいるか」
ノーティ「勿論構いません。村民にどう説明するかは口裏を合わせるというか……何か考えておきましょう」
村長「ありがとうございます」
村長「その件については、村の内情はこちらの方が詳しいですので……なんとか致します」
村長「それでは……よろしくお願いいたします。私も、そろそろ村に戻らなければ……」
村長「マーガレットさんのご遺体を村に移すのは難しいと思いますので……、先生をここに埋葬させたいと思います」
村長「この花が好きだった、とでも言えば、きっと納得してくれることでしょう」
クライブ「それがよかろう…俺も遺体の方を動かすのは気乗りしない」
こうして、村長が村へと戻り、村内の混乱は少しずつではありますが落ち着きを見せてきました。
~冬の月 24日~
昨日はやりきれない思いを医師の娘、エリナに向けようとする者もいたものの、医師が本当に黒死病の治療薬を作り上げたことと、エリナの夫もまた犠牲になっていたことから、その向きはすぐに収まりました。
主を失った診療所には代理としてノーティが入りましたが、体調を崩して診療所を訪れるものはありませんでした。
~冬の月 25日~
テオフラスト・コルネリアの遺体が東の山に運ばれ、マーガレット・コルネリアの隣に埋葬されたという話が耳に入りました。
見に行ってみると、墓碑は質素ではあるものの、冬にも関わらず咲き誇る黄色い花が彩る……綺麗なお墓でした。
皆で新しくできたお墓に手を合わせます。クライブはその帰り道、ラ・ヴィスの倉庫で貰った2つの埴輪を診療所の片隅においていきました。
そんな日の昼下がり、皆の元へと1つの小包が届きました。差出人にはライナ・エル・レパーリアと書かれています。
トリシア「なんか届いた」
ティエ「みんなー、ライナさんからお届け物ですよー」
小包にはライナの手紙と、試作した綺麗で可愛い高品質の扇子の第一弾量産品(サイズ3)が25個入っていました。
旅人の皆様へ
皆さんに試作していただいた扇子の第一弾量産品ができました。
残っている職人の方々も腕はよく、おそらく発注通りに作って頂けたと思います。
こちらは皆さんにお送り致しますので、どこかでお売り頂けると幸いです。その分の料金については、お収め下さい。
それでは、皆様の旅の無事を祈っております。
ライナ・エル・レパーリア
クライブ「ほう、案外と見事なものだな」
トリシア「確かに、ちゃんと出来てるね」
ノーティ「これが世界中に広まればレパーリアの復興も知らしめられるでしょう」
ルー「おおー…あの時の扇子がこんなにたくさん」
ルー(1つ欲しいですけど……お金が足りませんね……)
ノーティ「見事なものですね。いやまったく」
ティエ「これはなかなかの資産になりそうですねぇ」
トリシア「とりあえず自分の分1個とルーちゃんの分貰ってくぞ」
ルー「そ、そんな、こんな高価なもの貰ってしまうわけには……」
トリシア「タダだよ。元々私が居なかったら作れなかったしへーきへーき」
クライブ「ま、いいんじゃないか。素直にもらっておけ」
ルー「は、はい。ではお言葉に甘えて……ありがとうございます! 大事にします!」
ノーティ「やはり女性に似合いますねえ。良いものを持つことは良い目を養いますよ」
その様子を、ティエは「身内にしてもロハとかマジかよ!?」とでも言いたげな目で見ていました。トリシアもその視線に気付きます。
トリシア「売るのも良いけど、皆に少なくとも1つずつわたしてからの話だと思うけどね!?」
トリシア「ねー?ティエくんよ」
ティエ「あ”?」
ティエが柄にもなく威嚇的な声を出したので、トリシアもまた威嚇的な目をしながら弓に手をかけました。え、何で突然戦いが始まろうとしているのですか?
ノーティ「まあ、とりあえず持っていても良いでしょう。これから考えれば良いことです」
ティエ「パワーさん!」
トリシア「えぇ…」
ルー「えっ、あれっ? そんな流れでした!?」
全くもってそんな流れではなかったと思います。いや、私もだんだん突拍子もないことには慣れてきてしまっているのですが。
ノーティ「売るなら売るとして適切なときが来るでしょう」
クライブ「まぁ、各々世話になった奴に送ってもよし。売ってもよし」
トリシア「下手したらパーティの物という扱いだと1人2個ずつ割り当てられるわけなのですが」
トリシア「全部売ったところでティエの金じゃないんだからな!」
ルー「や、やめてくださいよぉ。何でそんな感じになってるんですか」
ノーティがその様子を呆れた様子で見ていました。
パワー「誰の金でもないなら全部闘技場にぶちこもうぜ!!」
クライブ「馬鹿やめろ。お前全額Aチームにぶち込むだろ」
パワー「何でわかった!?」
トリシア「もうそれでいいんじゃね?」
ノーティ「まったくもう……」
それからも、暫くの間ティエとトリシアがあーだこーだ言い合っていました。
~冬の月 26日~
ティエ「今日は医者が来る日ですね」
ノーティ「ですね」
その日の朝方、リリアスからコルネリア医師が呼んだという医師が診療所を訪ねてきました。
白い目深なローブを被っている、占い師のような風貌の男性です。
クライブ「ん…来たか」
ノーティ「大してカルテも書いていませんが、引き継ぎが必要ですね。彼にも真実を伝えなければ……」
医師「おはようございます、テオ……ではないですね?」
ノーティ「ええ、コルネリア先生は……亡くなりました。引き継ぎをしている旅人のノーティ・ユーデクスです」
ノーティがここで、今回の事の顛末を医師へと説明しました。コッペリアを作っていた部分については省いていましたが。
その後、コルネリア医師が完成させた黒死病の薬とレシピを手渡しました。
医師「……そうですか、テオは間に合いませんでしたか」
クライブ「…墓は東の山にある。詳しい場所は村長に聞くといい」
医師「……後で尋ねることに致しましょう」
医師「引き継ぎの旅人がいたのは彼にとって幸いでしたね。……引き継ぎ、確かに受けました」
医師「これからは、私がこの村の医師となりましょう」
クライブ「いいのか? 持ち場があったんじゃないのか?」
医師「いえ、問題はありません。リリアスはこういった要請に応じて、医師や占い師を派遣している村なのです」
ここで、ジョルティが診療所のドアをバンと開けて現れました。(PL遅刻)
ジョルティ「ここにコルネリアさんが残した秘薬のレシピがあるんですが、いくらで買い取りますか? って間に合わなかった!!」
医師「この村では無用かもしれませんが、これで、他の場所に同じような病が流行った時、きっと多くの命を救ってくれることでしょう」
ノーティ「お金を巻き上げるおつもりだったんですか……」
医師「では、皆さん、ありがとうございました。……地下室の方も、私の方で対処しておきます」
クライブ「そうか、ならこの村を見てやってくれ。混乱は収まったが…まぁきちんと定住してくれる医師がいるのといないのとでは違うだろう」
医師「……ええ、今度こそ、末永い平穏が訪れるように」
医師「皆様の旅路にも、星の巡りの加護がありますように」
そして、この村とその行く末に、竜の加護のあらんことを。
--第二十七話後編「真実の永遠に祈りを」 完
こうして、ローリスと黒死病を巡る長い事件が終息しました。彼らが黒死病に罹った時にはどうしようかと思いましたが、流石は私達の旅人です。こんなことさえ、しっかり解決してしまいましたね。
……それにしても、死の病というのは恐ろしいものです。私達竜人や竜の君には罹らない病気だとは思いますが……私達もやはり、気をつけなければなりませんね。
私達に何かあれば、この世界もどうなるか分かったものではないのですから。
それでは、次は明るい話になるように、祈っておいてください。また、旅物語ができたら来ますね、竜の君。
【MVP:ジョルティ】
【ルー・フィオーネの日記】
(続き)
村の中を歩いていると、ティエさんが村人の中に人ではない人が混じっている、と言い始めました。
私は冗談を言っているのかと思いましたが……他の皆さんはそのような様子ではありません。どうも、前にそういった人と会ったことがあるらしいです。
その後、クライブさんが村のお医者さんの所に話を聞きに行き、その人達(コッペリアというらしいです)はお医者さんが作ったものだといいます。
夜になると、黒い人影がお墓の方に歩いているのを見かけました。……少し怖かったですが、そのまま眠ることにします。
明日は良い日でありますように。
〈冬の月 22日〉
曇り☁
朝起きると熱っぽく、咳も出ていました。久しぶりに風邪でも引いてしまったのかと思っていると、私だけではなく、ティエさんとトリシアさんも同じようになっていました。
流行病の可能性もあるということで、まっすぐ診療所に向かうことになりました。お医者さんは何だか奇妙な格好をしていて少し怖かったです……。
診察を受けると、本当にその病気みたいでした。……治らない病気らしいと聞いて、少し立ちくらみがしましたが、今、まさにその薬の研究が進んでいるそうです。
そのあと、診療所の隅にネズミがいるのをノーティさんが見つけました。お医者さんとノーティさんが、ネズミから感染しているかもしれない、研究が進むかもしれない、と言っていて……不安でしたけど、少しだけ安心しました。
それから、村の中でネズミを探して、ネズミがいるらしい山の中へと向かうことになりました。山の中には古い井戸があって……その中には女性の遺体がありました。この病気は、この女性の遺体に取り付いた魔物が引き起こしていたものらしいです。
……井戸から女性の遺体を引き上げると、突然不思議な景色が見えました。霧がかかったような景色は、とても悲しいものでした。……何より、その病気が娘さんの旦那さんの命を奪ってしまったというのが……。
……詳しいことは、余り書く気になれません。私やこの村の病気は解決しましたが……なんだかモヤモヤとした気持ちが残りました。
明日は、この村にとって良い日になりますように……。
マーガレットさんとテオフラストさん、向こうで再会しているといいな……。
〈冬の月 23日〉
晴れ☀
村の中はまだ慌ただしく、私達の宿泊まっていた宿もほとんど機能していませんでした。
今日はまず村長さんのところに行って、今回の顛末を説明することになりました。……色々と辛い話ではありましたが、村長さんは理解を示してくれて、テオフラストさんのこともちゃんと埋葬してくれると約束してくれました。
明日から26日まで、ノーティさんが診療所で医師の代理をすることになりました。なんとも似合いそうです。
明日は良い日になりますように。
〈冬の月 24日〉
雪❆
今日からノーティさんが診療所に入りました。
ただ、皆さんもう病気にかかっている方はいらっしゃらなかったようで、お客さんが来ることはありませんでした。
健康なのは良いことですが、医師として活躍する姿も見てみたかった気もします。
ちょっと不謹慎ではありますけど……。明日も健康で良い日でありますように。
〈冬の月 25日〉
雪❆
朝に村長さんが訪れて、テオフラストさんをマーガレットさんの隣に埋葬したことを教えてくれました。
どうか向こうでは平穏な暮らしができているように祈るばかりです。
それから、昼頃になってレパーリアから荷物が届きました。トリシアさんが試作した扇子の初めての量産品でした。
まだまだお金が足りないので買い取れないなぁ、と思っていると、トリシアさんが1人1つは取り分があって良いだろうと言って私にも1つくれました。かなり高価なものなので私には勿体無いですが……ずっと大事にしたいです。
……と思っていると、トリシアさんとティエさんが何やらお金のことで揉め始めました。それぞれ、ポリシーが違う皆さんなので、こういうこともあるんですね……。でも結局は収まったようなので良かったです。
明日も良い日になりますように。
〈冬の月 26日〉
晴れ☀
朝、診療所でノーティさんと一緒に準備をしていると、リリアスからのお医者さんが挨拶にきました。
これからはローリスの村医者を務めてくれるとのことで、ノーティさんも安心して引き継ぎをしていました。
こちらは、2016/11/26に行ったオンラインセッションのリプレイです。
本来は次の村への出発セッションだったのですが、事後処理だけで結構な時間が掛かってしまったのでここまでで収めることにしました。
長かったローリス編もこれにて終結、次回は次なる町へ向かいます。それでは、次の旅をお待ちくださると幸いです。
【参考サイト】
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