さて、前回は少々成長報告という形になりましたが、今回は旅物語の続きをお読みします。
前は……薬草と花束を届ける依頼を終わらせた所でしたね。彼らはその後、とりあえず部屋に戻って行きました。
アージェントでやるべきことも終わり、そろそろ次の旅について考え始めているようですね。
さて、次はどこに行くことになるのでしょうか……?依頼終了翌日の朝から、話の続きを始めましょう--
〈コンディションチェック〉
クライブ:11(絶好調)
ノーティ:12(絶好調)
トリシア:7
ジョルティ:12(絶好調)
パワーは寝ており、ティエも部屋でまだ何かをしているようですね。とりあえず、後で伝えれば良いということで、彼らは次の行き先を決めるためにも情報収集を始めることにしたようです。
クライブ「さて、移動をそろそろ考えなきゃいけないわけだが…リーダーがいないな」
ジョルティ「リーダーまた小銭数えてんの?病気だなそろそろ」
ノーティ(あんなの一番上の桁が合ってればいいんですよ)
ノーティ「後で伝えれば良いでしょう。館のどなたかが詳しいといいんですが、誰に聞きましょう?」
クライブ「年の功に期待するか」
ノーティ「それなら……レイジャさんですかね?」
トリシア「執務室へGO」
彼らの中では、見たところレイジャが一番年上のようでしたから、皆とりあえずレイジャの所に話を聞きに行くことにしたようです。もはや歩き慣れた廊下を渡り、執務室の前まで辿り着きました。トリシアがドンドンとノックをします。
レイジャ「……どうぞ」
トリシア「まいど」
レイジャ:……良く来るな。息抜きになって良いのだが。ディラと遊びに来たか?」
トリシア「そろそろこの街離れようかと思うんだけどいい街知らない?」
トリシア「ディラとも遊ぶよ!」
ジョルティ「ディラー!ウサギ肉いる?」
ディラ「ワン!」
……この街離れたらペットロスになりそうな勢いですね。ディラもディラで、もうすっかり彼らに慣れたようです。レイジャが言い聞かせてくれたのもあるでしょうが。
ノーティ「ディラ君ともお別れになりますね」
トリシア「リンちゃんともな!」
ジョルティ「は?リンちゃんはいつも俺の心の中で逢えるわ」
レイジャ「そうか、離れるか。良い街、といっても大雑把だな。この辺で行けそうな場所はそれほど多くはないぞ」
ノーティ「地図があれば一番有り難いのですが……」
レイジャ「地図か。ああ、地図なら受付に言えば受け取れるんじゃないか。それぐらいならあるはずだ」
トリシア「おすすめなところある?」
ノーティ「レイジャさんが過去に行ったところなど……」
ジョルティ「レイジャ、周辺で美味しい物食える街とかは?」
矢継ぎ早に飛んで来る質問にも、レイジャは冷静に対応していました。一斉に聞きすぎです。
レイジャ「お勧めか……まあ、個人的に来訪してよかったのはサンドラだな。ここから南西にある、温泉の村だ」
ジョルティ「温泉ってディラも入れるの?」
レイジャ「そこらの動物も入ってくるくらいだからな」
レイジャ「食事となると……ブリージアか。あそこは良い小麦が取れると聞く。30年ほど前に流行り病でかなり打撃を受けたらしいが、今は見事に復旧している」
ジョルティ「小麦かぁー、料理には多用するけどなー」
ジョルティ(待てよ?確か師匠が昔温泉には温泉を使った調理法があると言っていたな……?)
2つの行き先の選択肢を聞き、彼らは各々どちらが良いのかを考え始めたようです。決めるのはもう少し情報を集めてからにしたようですが。……私としては、温泉が良いですねぇ。
トリシア「そういやレイジャのおっちゃん」
トリシア「予備騎士の称号とかもらったけどなんかいい事あったりする?」
レイジャ「予備騎士か。あれは……まあ所謂名誉職だな」
トリシア「ソッカー」
レイジャ「周辺の町ぐらいなら、ある程度融通が利くようになるとは思うが、離れれば効力はないな」
トリシア「ソッカーアリガトー」
これまでに聞いたことがないような綺麗な棒読みでした。
レイジャ「……まあ、こんなことを言っても聞く連中ではないと思うが……一応はアージェントの騎士位だ、品位は落とすなよ」
トリシア「お前が言うな?」
トリシア「アージェントの騎士が隣の街で窃盗団組んでたらしいっすよ?」
トリシア「挙句牢から逃げたとか」
レイジャ「お前達以外にはバレていないからな」
トリシア「あの街の鍛冶屋のおっちゃんには知られてるけどな」
レイジャ「……話したのかお前達」
クライブ「ナイフを見せた」
ジョルティ「そもそも俺達に品位求めるのも間違ってるよな?」
自称ノーブルがなんかおかしなことを言っていますね?
レイジャ「……薮蛇だったな」
レイジャの狼狽えたような対応を見たのは、これが初めてかも知れません。
クライブ「ふむ、まあ行き先については参考になった。ありがたい」
レイジャ「……ああ。まあ俺が行ったのはどちらも昔だ。ロイ辺りにも聞いてみると良い」
トリシア「まあ教えてくれてありがとー」
ノーティ「それでは失礼します」
何だかんだ最後は礼をして、彼らは執務室を去って行きました。これで、レイジャには暫く会うことはないでしょう。……部屋から出る際、トリシアはディラの方をちらりと見ていたように思います。
トリシア「ロイかー」
トリシア「起きてるかなー」
ジョルティ「起こせばいいじゃん」
ジョルティ「トリシア、イケメンにバイバイしたいならしてこいよ」
ジョルティ「恋も一期一会だぞ!!」
ジョルティの最高のキメ顔が、その、なんというか、竜人として旅人に対してこのような表現を使うのは極めて不適切だと思うのですが……腹が立ちました。
トリシア「自分とタイマン張って勝てない男の人はちょっと…」
トリシアはトリシアで論点が大幅にずれているような気がしますが……マジックユーザーに酷なことを言いますね。
ノーティ「とりあえず地図を受け取りましょうか。受付に行きましょう」
ロイの部屋に向かうにせよ、まずは地図を受け取るために受付に向かいました。今日は館もあまり人がおらず、受付の方も暇そうにしています。
ノーティ「レイジャさんからこちらで地図を受け取れると聞いたのですが……」
受付「地図ですか?この街の周辺のものでよろしいですか?」
ノーティ「それをお願いします」
受付「はい。えーっと、こちらですかね。どうぞ」
受付の方はささっと事務机から地図を取り出し、彼らに手渡しました。アージェントを中心に、周囲の情報が書かれています。
ノーティ「ありがとうございます、そろそろ我々はこの都市を離れようかと思っているもので」
受付:あら、そうなのですか。ご健闘を祈ります」
クライブが受け取った地図を見もせず即座に木箱に投げ入れました。
トリシア(あのおっさん今から使う地図何しまってんだ)
ジョルティ「こいつ…」
ノーティ「これから使う地図しまってどうするんですか」
ジョルティ「メイドさん、水持ってきて。ああ、バケツでいいよ」
クライブ「おっと退散」
ノーティ「さてさて……」
ノーティは呆れた様子で、木箱から再び地図を取り出して、その内容を確認し始めました。それにより、先ほどレイジャから聞いた2つの行き先までの簡単な情報が分かりました。
【ブリージア】
森の向こうの丘を超えた先にある。日数にして3日ほどの距離。
大風車が有名で、大きな小麦畑で取られた小麦をきめ細やかな小麦粉に加工している。
【サンドラ】
森の向こうの山を超えた先にある。日数にして3日ほどの距離。
「火竜の湯」と呼ばれる温泉が有名。また、一年中咲く花が名産品になっている。
クライブ「山を越えるよりかは丘のほうがマシなんじゃないか?」
ジョルティ「でもそろそろゆっくり療養もしたいよな。旅も長くなってきたし」
ノーティ「それはその通りです。これからも長いですよ」
クライブ「なら、サンドラでいいんじゃないか」
ノーティ「では、それでいきましょう。何か忘れていることなど無いですね?」
ロイに話を聞きに行くを忘れていますよ!!
クライブ「ロイを叩き起こすか……」
一行はとりあえずロイのことを思い出し、部屋の前へと向かいました。部屋の扉は閉まっており、扉の前にはラナが立っています。
ラナ「あら、皆さん御そろい……ではないですね、少し足りませんが」
ラナが微笑みがちに挨拶すると、トリシアは何事も無く胸を揉み始めました。……どうしてこんなことに。ラナはラナで、もはや全くリアクションも取っていません。アージェントの方々は不意の事態に強すぎませんか?
ラナ「ロイはまだ寝ておりますので、何かあるのでしたら変わりに」
ノーティ「別れの挨拶くらいと思ったのですが……」
ノーティ「この近くにあるブリージアとサンドラという街について何かご存知なことは?
行かれたことなどおありでしょうか?」
ラナ「ブリージアとサンドラですか。そうですね、どちらも訪れたのは10年ほど前ですが」
クライブはもう全く話も聞かず、ロイの部屋の扉の鍵をなんとか開けられないか試し始めていました。酔っぱらいすぎです。
トリシア「ほうほう」
トリシアはトリシアで話を聞きつつ、胸を揉み続けています。ジョルティはその様子をじっと見ています。……この2人がノーブルを名乗っているのがどうかしていますね?
ラナ「サンドラは良い場所ですね。温泉はこの辺りでは珍しいですから。ゆっくりしたいならとても良い場所です」
クライブ「まあ、休養がてらサンドラへ向かおうとは思っている」
ラナ「ブリージアは、なんというか変わった町ですね。中央に大きな風車があるんですが、この風車にはなにやら不思議な仕掛けがあるようで。風向きにあわせて向きが変わるのが面白かったです」
ラナ「パンも美味しいですよ」
美味しいという単語にジョルティがビクっと反応しました。また、不思議な風車の技術にトリシアとノーティも反応しているようです。
ラナ「サンドラはサンドラで、なにやら伝承があるとか。旅人の皆さんならそちらも良いかもしれませんね」
ノーティ「それはなかなか。 貴重な話をどうもありがとうございます」
ラナ「いえいえ」
トリシア「この胸も揉み収めなんだなって」
ラナ「はあ……楽しいですか?」
トリシア「楽しいよ?」
トリシア「自分にはないものだからな!」
なるほどそういう理由で……いや、そう言われると確かに気にならないでもないような……。いえでも、やっぱり突然揉みはしませんよ!?
ノーティ「彼女……のことは大目に見てください」
クライブはトリシアに指をさして笑っていました。……いや、まとまりがなさすぎます!
ラナ「ま、まあそれなら良いのですけど」
トリシア「ちくしょう」
ラナ「生身なだけで私より上等ですよ」
ノーティ「では、これで。ロイさんにもよろしくお伝え下さい」
ラナ「ええ。起きましたら伝えておきます。皆様もご壮健で」
ノーティ「カレン嬢たちのことは時間が解決してくれるでしょう、きっと」
ノーティ「そろそろ出発しましょうか、準備は良いですか?」
クライブ「さて……情報は揃った事だ。道中を考えて準備をするか」
ノーティ「多少の支度がありますね。武器防具、消耗品、天気予報と占い程度ですかね」
トリシア「そっすね」
こうして彼らは、街で旅に必要な諸々を調達しに行くことにしました。まずは天気予報を聞きに行くことにしたようです。天気予報は、アージェントでの初日にノーティが来た占いの館でやっていました。
クライブ「とりあえず天気予報と占いを依頼しにいくか」
ノーティ「そうですね 行きましょう」
占い師「よく来るもんじゃな青年」
ノーティ「旅人は天気が気になってしまうものですから……」
占い師「ああ、天気予報の方かね。行き先は?」
トリシア「サンドゥラー」
占い師「サンドゥラー……ああ、サンドラじゃね」
行き先を受けて、占い師は水晶を見始めます。そして、暫くしてそこから見えてた天気を告げ始めました。
占い師「アージェント近辺は明日から暑い日が続きそうじゃ」
占い師「サンドラの方は……山らしく、変わりやすい天候じゃな。少々雨の気配がありそうじゃ」
占い師「と、まあこんな感じかの。あたるも八卦、あたらぬも八卦じゃがね」
ジョルティ「おっちゃん、サンドラの情報何か知らない?周辺の情勢とかモンスターの生息情報とか。占いでも良いけど」
占い師「こう見えても婆じゃよ」
ジョルティ「ババアだったかごめんなババア」
占い師「よいよい、もうどっちでも変わらんようなもんじゃ」
ジョルティ「お詫びに乳揉もうか?」
占い師「高く付くぞ」
ジョルティ「有料なら遠慮しときます」
占い師「占いは値段次第で見えるものが変わるが……どうするかね?」
ジョルティ「んっ」
ジョルティは何を思ったか、クライブに向かって手を突き出しました。クライブもクライブで、何故かその意図を察知してジョルティの手に50Gを乗せます。……謎の阿吽の呼吸ですね。
受け取ったジョルティはその50Gを占い師の方に向けて弾きました。占い師はそれを受け取り、占いを始めます。
占い師「よかろう。それでは見てみよう……。」
占い師「サンドラへの旅路では……望まざる再会がありそうじゃな。さらに……サンドラの近くでは2つ……いや3つの翼のある影が見えるな」
占い師「……あとは、なにやらぼやけて上手く見えないのじゃが……新しい出会いもありそうじゃな……これは、いや、すまんな、わしにも詳しいことが見えん。こんなことはこれまではなかったのじゃが」
占い師「……こんな所かのう?」
クライブ「…二つはなんとなく予想がつきそうな、そうでないような…」
最後の部分は……私には思い当たる節がありますが、ここではとりあえず伏せておきます。この占い師の方は、どうやら本当に先見の力を持っているようですね。
ジョルティ「ババア、商売が上手いな」
占い師「フフフ、これだけで食っとるんじゃ」
ジョルティ「んっ」
ジョルティはもう一度クライブに向けて手を突き出しました。しかし、クライブは今度はお金を出しません。
クライブ「…これ以上何かでるのか?」
ジョルティ「え?出ないの?」
占い師「恋占いでもするかいね?」
ジョルティ「おいおい、この面子で恋占いするような女子力高そうな奴おりゅとおもう?」
占い師「ハッハッハ、鏡でも買ってやろうかね?」
トリシア「こいつらアホなだけで悪気はないんだ。勘弁な」
トリシア「殴りたければいくらでもなぐっていいから」
占い師「わかっとるわかっとる。おぬしもラナ様の乳を揉むのも大概にな」
トリシア「ロマンじゃん?」
占い師「まあ、多少は分からんでもない」
トリシア「せやろ」
……なんだか私が間違っているような気がしてきました。
占い師「ま、こんなもんかの。よい旅路になるとよいな」
占い師「ここ数日、久しぶりに仕事をした気がするわい」
ジョルティ「おう、また戻ってくる事もあるかもしれないから、ババア長生きしろよ。じゃあな」
占い師「いいよるわ若造、お主より長生きするぞよ」
クライブ(俺らは道中で死にそうな分、確かに俺らより長生きしそうだな…)
クライブ「さて…各人、買い物といくか」
ノーティ「終わり次第館に戻る形で良いですね」
ジョルティ「飯だ!!」
そして彼らは分かれて、各々必要なものを購入しにいきました。クライブはレイジャに返してしまったものの代わりに、同じようなベルトポーチと短剣を購入していました。
トリシアは雑貨屋に行って、ディラに似ている、犬の小さなぬいぐるみを2つ買っていました。……すでにペットロスってませんか?
そんなこんなで買い物を終えた彼らは部屋に戻り、その日の夜は暮れて行きました--
私は、明日に向けて少々準備をすることがあったので、彼らの部屋には泊まりませんでした。夜の鐘がなる前にこっそり抜けだして、ロビーの物陰で懐からあるものを取り出します。
取り出したるは、蒼の竜人リーズさんから頂いた「マスコット」です。このマスコット、ただのマスコットではありません。……竜の君はご存知かと思いますが、このマスコットは蒼の竜人の持つアーティファクトの1つです。その効果は……「実体化して旅人に同行することができる」というものです!
ふふ、今回はこれがしたかったのです。マスコットを使い実体化し、見た目が問題ないことを手鏡で確認しました。角も尻尾も見えなくなっており、どこからどうみても普通の人間です。
緑色の長い髪に、羽根をあしらった髪飾りをした、ただの美女がそこには……いえ、何でもないです、そんな顔で見ないで下さい竜の君。
それから私は、受付に向かってある「お願い」をしました--
--そして翌日。もはや聞き慣れた朝の鐘で彼らは目を覚まします。
〈コンディションチェック:2日目〉
クライブ:14(絶好調)
ノーティ:12(絶好調)
トリシア:9
ジョルティ:13(絶好調)
起きてきた彼らは、とりあえずロビーで朝食を採ることにしました。相変わらず質の良い朝食が並びます。
ノーティ「これでこの街とも本当にお別れですね」
ジョルティ「普通のパンもなかなか」
クライブ(…メイドの監視が厳しそうだし酒は諦めるか)
トリシア「暫くたったらカレンちゃんに会いに来てもいいかもね」
受付「あら、皆さんもう発たれるのですね」
彼らがそんな話をしていると、受付の方が話しかけてきました。
受付「短い間でしたが、依頼もこなして頂き、ありがとうございました」
ノーティ「ええ、お世話になりました」
クライブ「色々と世話になった。ありがとう」
ジョルティ「こちらこそお世話になりました」
ジョルティは相変わらず腹立たし--キメた顔を作っていましたが、口元がパンくずまみれです。ノーブル……。
受付「次はどちらに行かれるのですか?」
ノーティ「温泉村のサンドラへと」
ノーティが次の行き先であるサンドラの名前を口にすると、受付の方の声色が変わりました。
受付「サンドラ、サンドラですか!」
受付「やっぱりあなた方は何か持っているのかもしれませんね。実はですね、昨日の夜にまた依頼がありまして」
ノーティ「それはもしや」
受付「サンドラまで護衛を頼みたいとのことでして」
受付「もしよろしければお受けいただけませんか?温泉に行きたいのに道が整備されていなくて厳しいとかで」
クライブ「護衛ね…どのような規模で?」
受付「お一人だけです。若い女性の方ですね、近くに泊まっていらっしゃいますので、お受けいただけるなら連絡をしてお呼びいたしますが……。」
クライブ「さて…どうする?」
ノーティ「何か事情があってのことでしょうか?
単に旅行に?」
受付「事情……までは詳しく聞いておりませんが、単純に旅行という感じでしたよ」
トリシア「報酬は?」
受付「金銭はあまりないということでしたので、貴重なアクセサリーでお支払いしたいとのことでした」
クライブ(換金しづらいものは困るんだよなあ…)
ノーティ「それならついでですから、一緒に向かうことにしましょうか。パーティの皆さん、いいですよね?」
ジョルティ「報酬貰えるなら、ええで」
受付「よろしいですか?他に旅人の方もいらっしゃらないので困っていまして」
クライブ「任せる」
トリシア「対価払おうとするくらいの誠意はあるんだしいいんじゃないの」
ノーティ「それでは、お受けしましょう」
受付「ありがとうございます。それでは、少々お待ちください、連絡して参りますので」
ちょうどこの時、ティエが部屋から起きてきました。パーティ資産が合わないとのことで、やはり小銭を数えていたようです。……多分ですけど、昨日の占いの時にクライブが払ったお金のせいだと思います。
おっと、そんな話をしている場合ではありませんでした。私は受付の方に伝えていた「泊まっている宿」の前へと向います。そして、そこで再びマスコットの力で人に姿を変え、受付の方が来るのを待ちました。暫くすると受付の方が笑顔で近寄ってきます。
受付「アリアさん、運が良いですよ!ちょうどサンドラの方へ向かう旅人の方がおりました。護衛を受けてくれるということなので、一緒に来ていただけますか?」
私はまるで初めて聞いたように新鮮に喜んで見せて、もちろんです、と答え受付の方と一緒に館へと戻りました。
受付「お待たせしました。依頼人の方を連れてまいりました。こちらの方のサンドラまでの護衛をよろしくお願いします」
ノーティ「おはようございます。お名前をお伺いしてもよろしいですか?
『初めまして、皆様が護衛を受けて頂けるということで、ありがとうございます。私はアリアと申します。短い旅路ではありますが、よろしくお願いいたしますね』
改めて、初めまして、旅人の皆さん。皆さんの旅を見ていて、一度一緒に歩いてみたいと思ったのです。……もちろん、こちらは口には出しませんが。
するとトリシアが、名乗りながら手を差し出してきました。私もそれに応え、トリシアと握手をします。本当の意味で、彼らと触れ合ったのはこれが初めてでした。
ティエ「はじめましてー」
ジョルティ「はじめまして?」
『ええ、初めまして』
『急な依頼なのにお受けいただいてありがとうございます。よろしくお願いします』
ノーティ「今回はサンドラへの護衛ということですが、準備は何かされていますか?」
『とりあえず簡単な道具ぐらいは用意しています。食事も自分の分はあります』
ノーティ「天気もよろしくなさそうなので傘の用意もあった方が良いかもしれませんね。でもそれならひとまず安心です」
『はい、傘も用意してますので大丈夫です!』
まあ、これはアージェントに到着する前、倒木を登る時に落としたティエのものなのですが。ティエにだけはバレないように気を付けなければなりませんね。
クライブ「問題はなさそうか…そう言えばティエ、体調はどうだ?」
〈コンディションチェック:遅刻〉
ティエ:9
クライブは遅れてきたティエにコンディションチェックを促していました。やはり、周囲にも気が遣えるようになっているようですね。精神的に、当初に比べて随分と和やかになったようです。
『もう出発されるのですか?』
トリシア「ですか?」
クライブ「どうする、リーダー?」
ティエ「あっ ゴーグルが袋に入ったままだった…あ、準備できましたー」
こうして、私は彼らと共にアージェントを出発し、サンドラへ向かうことになりました。アージェントの南出口から外へ出て、南西にあるサンドラを目指します。天気予報の通り、今日はなかなかの暑さですね。
まずは歩き始める前に、ノーティが周囲にハーブがないか探し始めました。
〈薬草取り〉
ノーティ:7(失敗)
久々のハーブ取りということもあり、ノーティはうまく見つけることができなかったようです。
さて、改めて歩き始めるということで、私はとりあえず懐から傘を取り出し、日差しを遮るようにしました。彼らも、各々道具を準備しています。
〈移動チェック:暑い森:目標11〉
クライブ:8(失敗)
ティエ:10(失敗)
ノーティ:7(失敗)
トリシア:12
ジョルティ:12
アリア:11
暑いこともあり、半数ほどが歩き疲れてしまっているようでした。私は傘もあったため何とか疲れずに歩けました。案外大丈夫なものですね!
ノーティは地図を見ながら、道に迷わぬように「アローコンパス」の魔法を使いました。
〈魔法発動:アローコンパス〉
ノーティ:11
〈方向チェック:暑い森:目標11〉
ティエ:5(サポート成功)
ノーティ:22
ノーティは間違うことなく地図を読み取り、道に迷う事無く進むことができました。歩くこと半日程、夕方に差し掛かった頃に、森の出口が視界の果てに見えてきました。……そして、同時に、できれば見たくなかったものが目に飛び込んできました。
遠くに、白い動物のようなものが倒れている姿が見えました。……私にはこの時点でこの動物が何か、見えてしまっていました。
クライブも目を凝らしたことで、その存在に気が付きます。
クライブ「何か倒れているな……あれは、数日前に会ったユニコーンか……?」
クライブ「……角が折られている。全員警戒、少し急ぐぞ」
ノーティ「これは……ユニコーンハンターにやられたんでしょうか?」
ティエ(誰か儲けた奴がいる……)
私も含め、皆周囲に警戒を払いながらゆっくりと倒れているユニコーンに向かって歩いていくつもりだったのですが--
気付いた時には、トリシアが先陣切ってユニコーンへと駆け寄っていました。……トリシアに懐いていましたしね。
〈???:敏捷+知力:目標10〉
トリシア:9(失敗)
トリシアがユニコーンに近付くと、急に足元から網が表れ、ユニコーンとトリシアを宙に釣り上げてしまいました。
トリシア「なんだこれ!」
『トリシアさん!』
クライブ「!?今助ける!」
トリシアが釣り上げられたことに動揺していると、遠くから男の声が聞こえてきました。
男「ハハハハ!聞いていたよりも間抜けじゃないか!」
クライブやトリシアと共にその声の方を向くと、大きな陸上鳥に乗った男がこちらを見ているのが見えました。そして……その後ろには、アージェントに来る際に彼らが退けたユニコーンハンター達が控えています。
男「フフフ……こいつらが世話になったな」
ジョルティ「なに?俺ら待ってたの?暇なの?くっそ暑い中罠張って!捕まえたのはメスゴリラ一匹!ご苦労様でーす!!」
ジョルティが実にノーブルらしく煽っていました。……男だけではなくトリシアにも恨まれていそうなのですが。
男「こいつらがユニコーン狩りで失敗するなんて珍しいこともあるもんだと思ってな!どれ、少しばかりお礼をしようじゃねえか!」
『皆さん、どうするんですか!?』
……まあ、本当はどう答えるのか、何となく分かってはいたのですが。
クライブ「ハッ!返り討ちでそっ首叩き落してやるわ!」
ジョルティ「アリアさん下がっててー、ちょっと懲らしめてくるんで」
トリシア「ころぬ!」
トリシアはものすごい形相をしていました。……怒っている原因の3割ぐらいはジョルティなのでは?
《戦闘開始》
周囲を木々に囲まれているものの、戦うのには十分なスペースが確保されています。中央にはユニコーンとトリシアの釣り上がった罠があります。ただ、そこまで頑丈な罠というわけではなく、近くにさえいれば簡単に外す事ができそうです。
戦うのは陸上鳥に跨った剣を持った男だけで、他のハンター達は参加しないようですね。
私も後ろに下がり、彼らに迷惑をかけないように遠くから見守ることにしました。
男「お前らはそこで見てな!戦い方ってのを見せてやるぜ!」
〈イニシアチブチェック〉
トリシアは釣られながらも、驚異的な集中力と形相で男の姿を観察します。驚くべき冷静さでもって、男のおおよその能力を見極めました。
トリシア「命を粗末にしていい事ないぞ」
頭領「そのままお返しするぜ女ァ!」
ノーティはジョルティに「エンハンスド・レッドハンド」の魔法を使い援護を行いました。
ジョルティ「俺のこの手が真っ赤に燃える!!」
ジョルティ「トリシアー、余裕が出来たら助けるぞー」
ジョルティはそう言いつつも、全くトリシアのかかった罠の方を見ていませんでした。
トリシア「おういくらでも時間あるからいいぞ」
男「余裕ありすぎだろお前!」
ノーティ(この人達どうかしている……)
ジョルティは曲射気味に男に向かって矢を放ちます。しかし、男の……というよりは陸上鳥の素早い動きによって当たりませんでした。
男「当たらないな!」
トリシア「余裕ないっすねー」
ジョルティ「ないわーめっちゃ余裕ないわー」
……もしかしてトリシアを長時間釣っておくために手を抜いているのでは……?
そんなジョルティの思惑を知ってか知らずか、罠の直ぐ側にいたクライブが網を切りました。トリシアは罠から外れ、その場に解放されます。
クライブ「気を付けろ」
ジョルティ(余計なことを!)
ティエはここで、最近になって学び始めた魔法を使うことにしたようです。「ガーリッシュ・ティアーズ」の魔法を男に放ちました。男は魔法によって乙女のような涙を浮かべ……いや、そんな綺麗なものではありませんでしたが……視界が滲んで命中が悪化してしまいました。
男「くっ…目がっ…!?」
ジョルティ「きったねぇ涙!」
男「くっそう手前ら……!ええい、くらえ!」
男は目をこすりながらジョルティに攻撃を行いますが、全く命中する気配もありませんでした。
男「チッ 前が見えねえ…!」
ジョルティ「喰らえじゃなくて、ユニコーン食えるのかって聞いてるんだよぉ!!」
男「知らねえよ!オカしいんじゃないのか!?」
〈ラウンド2〉
網から解き放たれたトリシアは、一層恐ろしい形相で男を見るや、目にも留まらぬ早さで矢を放ちました。放たれた矢自体の速さもとんでもないもので、男の体を捉えます。
将を射んと欲すれば……なんてことも全く関係ないようですね。……動物に配慮しているだけなのやもしれませんが。
男「くっそ、罠の意味ねえな!!」
ジョルティ「やだ、あの子怖い。本気でヤる気だ…」
クライブ(怒らせただけなんだよなあ・・・)
トリシア「十二分にあるぞ」
ノーティもトリシアに続き、シューティング・スターの魔法で攻撃を行います。熱く燃え盛る礫が男を鎧越しに焼きました。
男「熱ィ!!!」
ジョルティも後に続くように、またも曲射で男を狙います。今度は相手の動きを先読みするように、攻撃が命中しました。それも、かなり良い当たりです。
ジョルティ「前衛弓の威力よこれ」
男「クッソ……お前!あの女はともかく、お前は何で前にいるんだよ!!」
返す言葉もありませんが、まあ、もう見慣れました。
そして、クライブがさらに思い切り剣を叩きつけ……男は戦闘用動物から落下し、動かなくなりました。……動物は逃げていこうとしますが、あえなくトリシアやティエ達に捕獲されます。
……男も、なんとか生きてはいるようです。見たところ、かなりギリギリの感がありますが……。他のハンター達は、気付くと皆消えていました。……あまり人望もなかったようですね。
《戦闘終了》
とりあえずトリシアは意識を失っている男の身に着けている者を鎧から何から全て引き剥がし、その上でロープで縛り上げました。
その際、破損したミディアムアーマーをジョルティが手に入れていました。
ノーティ「……まあ、話でも聞かせてもらいましょうか」
そしてノーティが「キュアタッチ」と「キュア・プラス・プラス」を使い、男を回復させます。
〈キュアタッチ・プラス・プラス〉
ノーティ:15(発動成功)
回復量:12(意識回復)
ノーティの回復魔法により、男はハッと目を覚ましました。目の前には、矢尻を向けているトリシアと、切先を向けているクライブが待っています。
トリシア「何か言いたい事は?」
クライブ「おっと、余計な事するなよ。首はねるからな」
人が変わり過ぎです!
男「くっ……あいつらは逃げやがったのか!」
男「完膚なきまでにやられたな、捕まえた奴が悪かったのか?」
クライブ(まあ、怒らせた奴が悪かったのは正しい)
トリシア「死んどく?」
……このままでは本当にトドメをさしてしまいそうなので、とりあえず制止しておきましょう……。何だかんだ、人殺しをさせるのは本意ではありませんし……。
『何も、殺す必要はないのでは……?』
ノーティ「……ユニコーンを殺したのは貴方ですか?」
ああっ、味方してくれそうだと思っていたノーティも怒っています!?
男「ああ、角を折ったら死んじまうからな」
ノーティ(単に日銭を稼ぐつもりでいたんでしょうが……許せませんね)
トリシア「お前の首でも折る?生かしておいても胸糞わるいんだけど」
男「くそ……これじゃ割りにあわねえな……」
男「角は隠してある、こんなこと言いたかねえが、それで見逃してくれねえかな」
トリシア「どこだよ」
ジョルティ「で、ユニコーンは食えんの?俺もそろそろキレそう」
……推定一名全く違う方向を向いている気がしますが、他の方々はどうにも助けたユニコーンを殺されたことに怒っているようです。彼らの怒りを収めるためにも、ここは一肌脱ぐと致しましょう。
『……角があるなら……まだ彼を助けられるかもしれません』
ノーティ「それマジ?」
ティエ(ノーティ!?)
ジョルティ(ノーティがびっくりしすぎてキャラ崩壊してる…)
クライブ「なるほど・・・おら、さっさと隠し場所吐け。俺の手元がそろそろ狂いそうだ」
トリシア「それはいいことだ」
トリシア「だけどこいつは助からねえなぁ!?」
ジョルティ「メスゴリラちょっと落ち着け」
ジョルティ「どーどー」
ノーティ「急いであれしましょう、回収」
……あれ?宥められると思ったんですけど若干2名程全く効果が見えないような……?こうなったら、正面切って説得するしか……。
『か、彼は悪い人ですけど……命を奪うほどではないのでは……角を取り返して、ユニコーンを助けませんか?』
トリシア「その助かったユニコーンと助かったこいつはまた何をするんだろうか」
……彼女の言うことにも一理あります。正直な所、私はあくまで彼女たちに人殺しになって欲しくないというだけでこうしているわけですから……。
『そ、それは……そうですけど……』
クライブ「ま、依頼人の意向だ。ここは汲んでおくのがよかろう」
ジョルティ「護衛の依頼とは関係なくね?」
トリシア「おうお前何黙ってんだよ角どこだよ」
男「身の保障がされないなら教えられねえよ!貴重な取引材料なんだよ!」
男「あいつらも見捨てて行っちまうし!」
トリシア「じゃあ死ね」
〈トリシア:手加減攻撃→男〉
ダメージ:1
トリシアは何の躊躇もすることなく、男の剥き出しになった膝に矢を突き立てました。……まあ命を奪う気のある攻撃ではありませんでしたが……。
男「いってえ……!正気かお前……!?」
トリシア「至って冷静だが?」
トリシア「お前生かして私に何の得があんだよ」
ノーティ「ユニコーンは助けましょう!!!」
ノーティ「早くしないと間に合わないかも……!」
ティエ「そうだね!」
ノーティに同意するティエの顔が少々引きつっていました。トリシアの威圧が怖すぎるので仕方ありません。正直私も怖いです。
ノーティ「この悪人の処分はそれから考えましょう」
トリシア「まず角だして言うならわかるけどよ」
男「逃がしてもらえるまでは吐かないぞ!角だしたら殺されておしまいだろうが!」
トリシア「無いものを信じれる信用がお前の何処にあんだよ」
ノーティ「私達が制止しますので。信用していただかないことには両方損ですよ?」
男「角の場所はこの鳥が覚えてる!俺を逃がした後にそいつに付いて行け!」
クライブ「は?逃がす?」
クライブ「何を言ってるんだゴミクズ。逃がすわけがないだろうが」
トリシア「ノーティ鳥に付いて行ってやって、今」
ノーティ「では、私がこの鳥についていって角を確認しますので」
ノーティ「クライブさん達、くれぐれも彼を殺さないように注意してくださいね」
『私も付いていきます!』
クライブ「ちっ…ノーティが言うなら仕方ないな」
男「畜生……!お前らも同じぐらい信用できねえな!」
トリシア「信用される必要が微塵もないわけだが」
とりあえず私は、ノーティが男の陸上鳥を追うのに付いていきました。陸上鳥はそう遠くない場所で止まり、地面を嘴で突きます。そこを少し掘り返すと、確かにユニコーンの折られた角が隠されていました。
ノーティ「急いで戻りましょう」
『はい!』
ノーティはその角を拾い上げ、急いで今来た道を戻りました。そして、勢いそのままに倒れたユニコーンの元へと駆け寄ります。
ノーティ「アリアさん、これをどうすれば!?」
『角を貸してください!私が何とかします!』
ノーティ「何とかしてください!」
……本当は、これをやるのは少々反則なところがあるのですが……彼らも皆(一部目的が変わっていたようにも思いますが)、ユニコーンのために奔走をしてくれました。……これぐらいの恩返しなら、許してくれるでしょう。
私はノーティから受け取った角を、折断面に合わせます。そして、そこに手を合わせるようにしました。……これは、彼らから見えないようにするためです。
〈再会のブレス〉
死んだはずのNPC1体を復活させる
ブレスの力により、一度は失われたユニコーンの命が引き戻されました。彼は足を震わせながら立ち上がると、私と旅人達に向けて頭を垂れています。
ノーティ「なんと……」
ティエ(ひかった!)
『……多分、これで大丈夫だと思います』
ノーティ(すさまじい魔法の力だ……!)
ティエ(なんだこの魔法)
……魔法を使う2人には、少々怪しまれてしまったかも知れませんが……背に腹は代えられません。……大丈夫、ですよね?
〈伝承知識:目標16〉
ノーティ:11
ティエ:9
ティエ「気のせいか」
ノーティ「起きたことは気のせいでも何でもありませんよこれは……」
『……古い魔法の一種です。これだけは得意でして……』
我ながら苦しい言い訳ではありますが、彼らの疑問はとりあえず逸らす事ができたでしょう。多分。
これで、彼らも怒りを収めてくれれば良いのですが……。
クライブ「さて、これでこの生ゴミは用済みなわけだが…」
トリシア「用が無くなったらしいが」
男「くそ……!もうダメか……!」
思った通りにいきませんね!?
ジョルティ「まあ、後はユニコーンに任せるってことでどうだ」
……ジョルティが制止に回っています。……あ、食べられなくなったから興味を失ったのでしょうか?
かくいうユニコーンはというと、静かな目で縛られている男の方を見つめると、今度はトリシアの方に目をやり、再び頭を垂れて去って行きました。……私には意味が分かりますが、多分これでは通じないのではないかと……。
トリシア「生かしてもまーた狙われるんだよなぁ」
……まあ、そうなりますよね。
ノーティ「今後同じような悪事を働くようなら容赦はしませんよ……という程度でいかがでしょうか」
クライブ「ま、四肢の間接外してその辺ほうっておくでいいんじゃないか。今回は」
トリシア「え?肢体を体から外してその辺に放置するって?」
トリシア「いいよそれでも」
クライブ「まあ、俺としてはそっちでも構わんが」
ティエ「次の街まで二日かかるしなぁ」
ノーティ(血の気が多いなあ)
ティエ(こわいなあ)
男「こんな怖い目にあって同じようなことしやしねえよ……お前の眼、夢に見るわ」
ノーティ「では、彼は解放しましょうか?」
ノーティ「旅人の目的は殺戮ではありません。いいですね?」
トリシア「世界の平和?」
トリシア「ならやっぱり殺したほうが」
ジョルティ「食べ歩き?」
クライブ「ちっ…ほれ」
クライブは至極残念そうではありましたが、ポーチから短剣を取り出してノーティに渡しました。
ノーティ「アリアさんも我々が人殺しをするところなんて見たくないでしょう」
ノーティ「反省しているようですし、善行を成したと考えて解放してあげましょうよ」
『そうですね……できれば、温泉の前にそういった光景は見たくありませんけれども……』
クライブ(じゃあアリアに先に行ってもらって俺らで処分するとか言ったら駄目なんだろうなあ)
クライブは今絶対邪なことを考えています。そんな顔をしている。
トリシア「さて、お前はあと何ができるよ」
トリシア「マイナスを0に戻した所で善行とは言わないんだよなぁ」
トリシア「しかも戻したのはこいつじゃなくてアリアちゃんだろう」
男「身包み剥がれて仲間も無くして角も持ってかれてこれ以上何をしろっていうんだ……」
トリシア「だから何ができるんだよっていう」
男「くそ……何を求めてるのか全然わかんねえよ……」
男「そうだ、金儲けの情報!それぐらいなら……!」
金儲けの言葉に、トリシアが僅かに反応しました。……あれ?それで良いんですか?
トリシア「面白い事言うじゃねーか」
ノーティ「悪事じゃないんですね?」
男「あ、ああ、ユニコーンみたいな無害な動物を狩るもんじゃねえ」
トリシア「ほーん?」
男「この先にある温泉村のさらに向こうに、賭け闘技場のある町がある!お前達なら稼げるはずだ!」
ノーティ(血気盛んな彼女らならこの情報はありがたい)
トリシア「賭場かー」
トリシア「地元にもあったなぁなつかしいなあ」
トリシア「ま、えやろ」
ノーティ「さてさて、もう良いでしょう」
ジョルティ「そろそろ先を急ごうぜ。ユニコーン食べられそうにないし」
『聞いた話によると、雑味が強くて美味しくないらしいですよ』
……まあ口から出任せですけど。
ノーティ「さっさと失せてください」
ノーティはクライブから受け取った短剣でロープを切り、男を解放しました。男は一目散に逃げていきます。……まあ、真っ裸ですが。森の虫に刺されて酷い有様になることでしょう。……良い罰でしょうかね?
男は陸上鳥をその場に残して行きました。あまり逃げる様子もなかったので、クライブが今後は使うことにしたようです。片手が空いている人でないと使いこなせなさそうですから、クライブぐらいしか乗る人がいないようですね。
一悶着はありましたが……とりあえず良い所に着地できたでしょうか。
ノーティ「では、もう少し進んで休憩しましょうか、アリアさんも疲れたでしょう」
ティエ「せやねー」
トリシア「せやな」
『そうですね、疲れました』
〈狩猟チェック:森:目標10〉
クライブ:7
ジョルティ:14(食料4入手)
ジョルティは森の中で4人分程、食料を見つけてきました。今度は森の中でもしっかり動けているようですね。
その頃、トリシア達は野営の準備を始めていました。ここでティエが、より確実に野営ができるようにと、歌を歌うことにしたのですが……。
〈音楽:森の歌〉
ティエ:Fumble
……なかなか個性的なお歌でした。ま、まあ、まだまだ慣れていないことですから、仕方がありませんね。軽くクラクラしましたが。
〈野営チェック:暑い森:目標11〉
ティエ:13(サポート成功)
トリシア:9(失敗)
トリシアは先程までの勢いの反動が出たのでしょうか?キャンプの設営は少し失敗してしまったようです。
ともあれ……彼らと共に食事を取り、眠りに就きました。堂々とこうして行動できるのは、新鮮ですね。
さて、ちょっと傾いたテントで眠ること数時間、朝を迎えて目を覚ますと、外はシトシトと雨模様になっていました。それほど強いわけではなさそうですが、今日もまた厳しい旅路が待っていそうです。
〈コンディションチェック-2日目〉
クライブ:14(絶好調)
ティエ:10(絶好調)
ノーティ:11(絶好調)
トリシア:8
ジョルティ:7
アリア:19
『おはようございます。雨ですねぇ……』
ジョルティ「おはっす!」
ノーティ「暑いのも嫌ですが雨も旅人の敵ですね」
『山歩きは慣れていないので、頑張ります!』
昨日とは地形も天候も違っているので、適した装備を持っている人は付け替え、移動に備えていました。特にティエなどは様々な移動装備を持っているので、その時々に合わせて最適なものを用意できるのが良いですね。
その間に、ノーティは薬草を取りに行きましたが--
〈薬草取り:山:目標10〉
ノーティ:6(失敗)
なかなか上手くはいかないようですね。
〈移動チェック:雨の山:目標11〉
クライブ:6(失敗)
ティエ:10(失敗)
ノーティ:11
トリシア:15
ジョルティ:9(失敗)
やはり足元が悪いこと、道が険しいこともあり、かなり疲れる旅路になってしまったようです。トリシアは相変わらずの健脚ですね。……かなり装備を整えていても大分疲れているあたり、ティエの体力不足は深刻な感じがしますが。
〈方向チェック:雨の山:目標11〉
ティエ:8(サポート成功)
ノーティ:18
ノーティは地図のチェックも調子が良く、迷うことなく山の頂上近くまで登ってしまうことができました。
『さすがになかなか疲れますねぇ』
ノーティ「ええ。……こちらの方々も疲れているようなので、一応大事を取って回復させておくことにします。アリアさんは大丈夫ですか?」
『はい、これでもそこそこ頑丈な方でして……』
ノーティはハーブボトルからハーブを取り出すと、ジョルティ、ティエ、クライブの3人へ治療を始めました。
〈治療〉
ジョルティ:回復量12
ティエ:回復量:15
クライブ:回復量:3
クライブ(……回復量がおかしいような)
ジョルティ「クライブさん、呪いでもかかってんの?治り悪くない?」
クライブ「さてな…なにか調子がおかしいような気もするが」
『薬草も野生のものですから、効果にムラがあるのかも知れませんね』
……まあ、一応ノーティがやる気がなかっただけではない、ということをフォローしておきましょう。
ティエ「そうだ、折角回復魔法覚えたのでつかってみたい!」
そういえば、ティエは最近魔法を習得していましたね。今回を良い機会と、ティエもクライブに回復を行うことにしたようです。
ノーティ「拝見させて頂きましょう」
私もノーティと並び、ティエの初めての回復魔法を間近で見ることにしました。
〈ティエ:キュアタッチ→クライブ〉
ティエ:9(成功)
回復量:1
……ティエの回復魔法は、クライブをほとんど癒やすことかできませんでした。ノーティも気付いたかどうか分かりませんが、やはりまだ初心者ということもあり、細かい所でミスがあったように思います。……単純にクライブの今日の運勢による部分もありそうですが。
ティエ(回復阻害するなにかがとりついているのではないか?)
ティエ(草も魔法も効かないぞ)
クライブ(…決めた。サンドラ着くまで何もしない)
クライブがあからさまにやる気を失ったような顔になりました。……まあ、これは仕方ないというか。狩猟に行くのは止め、野営設営の手伝いをすることにしたようですね。
ジョルティはいつも通り狩りへ、ティエも近くの川へ釣りへとでかけました。
〈狩猟:山:目標10〉
ジョルティ:5(失敗)
〈釣り:山:目標10〉
ティエ:19(成功)
ジョルティは動物を見つける事ができなかったようですが、ティエは見事に魚を釣り上げてきました。カナセの時もそうでしたが、案外釣りが得意なのかも知れませんね。
〈野営チェック:雨の山:目標11〉
クライブ:9(サポート成功)
トリシア:14
今日はしっかりとした野営を設営することができたようです。私も皆も、ゆっくり休むことができるでしょう。
野営がしっかり設営された頃、ティエはもう一度クライブに回復魔法をかけることにしました。果たして今度は……?
〈ティエ:キュアタッチ→クライブ〉
発動判定:11(成功)
回復量:12
ジョルティ「狩猟が上手くいかなかったということは……今日は保存食……」
ジョルティ「今こそこの魔法を使う時!」
ジョルティ「オイシクナール!」
ティエ「テイストグッド・テイストですよ」
そういえば、ジョルティも魔法を習得していたのでした。……なるほど、この魔法のために取得したのでは……?ジョルティだけではなく、ティエも一緒に魔法陣を書き(雨で流れないように、棒で刻んでいました)、テイストグッド・テイストの魔法を唱え始めました。
人数分に足りないと悪いので、私は自分の食料はそこに入れませんでしたが……。
〈ジョルティ:テイストグッド・テイスト〉
魔法発動:7(成功)
効果量:1
〈ティエ:テイストグッド・テイスト〉
魔法発動:6(成功)
効果量:5
魔法の状態を見るに、どうやら6つ分の保存食を美味しくすることができたようです。が、人数分ということで5つしか美味しくしませんでした。……あれ?私のも入れておけばピッタリだったのでは?
ジョルティ「保存食だけおいしくなったゾー」
ジョルティ「魔法で調理とか凄いな魔法」
ティエ「まあ、悪くなるのが早くなってしまいますけどね」
そうして、皆で食事を始めました。外の天気は良くありませんが、食事が美味しいこともあり(私のもの以外)、皆比較的気分は良さそうでした。
『明日には着きそうですね!』
クライブ「まあ、何も無ければ明日には到着するだろうな。何もなければな」
ジョルティ「寝よ寝よ」
『ええ、おやすみなさい』
そうして、私と皆は眠りに就きました。……夜中から、どうも雨脚が強まっていき、朝方近くには雷も鳴り始めました。雷の竜はお祭り好きというか、騒ぐのが好きなので……竜人の私が山に来たことではしゃいでいるのかもしれませんね。
……あ、いや、これじゃ半分私のせいになってしまいますね、偶々ということにしておきましょう。
〈コンディションチェック-3日目〉
クライブ:15(絶好調)
ティエ:11(絶好調)
ノーティ:9
トリシア:7
ジョルティ:4
ジョルティ以外は、普段通りといった所でしょうか。ジョルティはどうも体調が悪そうでした。
ジョルティ「やっぱあの料理やばいんじゃ…きもちわるっ」
……多分思い込みだと思いますが、魔法調理を疑っているようです。自分で使ったんですよ……?
『なかなか酷い天気になってしまいましたね……』
クライブ「予想通り何かが起きたな…これ以上は勘弁願いたいところだが」
ノーティ「とりあえず、何かあった時のためにも薬草を取ってきます」
〈薬草取り:山:目標10〉
ノーティ:15(白夜ハルシャ菊入手)
ティエ「嫌な予感しかしないですけど、出発しますかー」
〈移動チェック:雷雨の山:目標13〉
クライブ:11(失敗)
ティエ:Fumble
ノーティ:5(失敗)
トリシア:11(失敗)
ジョルティ:16
天候が昨日より悪化しているということもあり、皆満身創痍の様子です。ティエ当たりは今にも倒れそうな様子でした。……ジョルティはケロっとしていましたが……体調不良はどうしたんでしょうか?
私も私でなかなか疲れましたが、そこは竜人の体力、皆のようにはバテません。……が、ちょっとは疲れたフリをしておきましょう。
『流石に、厳しい、ですね!』
ジョルティ「早く…早く町でちゃんとした美味しいごはんを…」
あれ?私の迫真の疲れた演技、誰も聞いていませんね!?
ノーティ「こんな天気で迷うのは御免ですね……」
〈ノーティ:アロー・コンパス〉
発動判定:10(成功)
〈方向チェック:雷雨の山:目標13〉
ティエ:8(サポート成功)
ノーティ:15
とりあえず、道に迷うことはなさそうですね。何とか、今日中にサンドラに到着することができそうです!
ノーティ「ついでに、ティエさんも治療しておきます」
〈ノーティ:治療→ティエ〉
ティエ:回復量:11
ティエ「ありがとうございます」
このまま行けばまっすぐサンドラに到着するだろうと思っていたのですが……夕方が近付いて来た頃、目の前に「大きな鳥の巣」がある木を見つけました。巣の中にはその大きさに見合った、巨大な卵が鎮座している様が見えます。親鳥の姿はないようですが……。
鳥の巣はちょうど道の真上を通っており、この道を進もうとすると必ずその下を通ることになりそうです。
ティエ「なんだあれ でっかいなあ」
ノーティ「卵がこの大きさですから、成長した親鳥はさぞ大きいことでしょうね……」
ジョルティ「とりあえず、親鳥がいないか見てみよう」
クライブ「そうだな」
〈動物探し〉
クライブ:14
ジョルティ:5
クライブは周囲を警戒したことで、その巣が遠くから鋭い眼光によって見張られていることに気が付きました。……ジョルティは全くそのことに気が付かず、大きな卵を入手すべく突如駆け出します!
ノーティ「ちょっと!襲われたら回復が間に合いませんよ!」
クライブ「待てジョルティ!嫌な感じがする!」
クライブはジョルティを止めるべく、ロープを輪状に括って投擲します。それに対して、ジョルティは姿を隠そうとしています!
〈隠密〉
ジョルティ:5(失敗)
ジョルティは森の模様の描かれた迷彩マントを被りながら移動しています!山ですから丸見えです!
〈捕獲:敏捷+知力:対抗判定〉
ジョルティ:10
クライブ:9
クライブの投げた縄は惜しくもジョルティに当たらない軌道でしたが……。
〈荷運び係による振り直し〉
クライブ:18
縄の軌道は突如修正され、ジョルティに掛かりました。巣に向けて吶喊を始めているジョルティに掛かった縄は、一瞬にしてピンと張り詰め、その反動でジョルティが大きく引き戻されました。……首にかかってましたけど大丈夫でしょうか?
クライブ「戻れバカ!」
ジョルティ「グエーッ」
ジョルティ「首が締まっただろ!!何すんだ畜生!!」
ティエ(一瞬縄が外れたと思ったら追尾した!なんだあれ)
クライブは何すんだ畜生はこっちの台詞だ、とでも言いたげな表情をしていました。
ノーティ「クライブさん、気配を感じたんですね?」
クライブ「ああ、何か嫌なものを感じる…」
ジョルティ「新鮮な卵、新鮮な卵、新鮮な卵、新鮮な卵、新鮮な卵、新鮮な卵、新鮮な卵、新鮮な卵、新鮮な卵」
ジョルティは新手の呪詛のように呟き続けており、縄が掛かっているにも関わらず今にも飛び出そうです。
『……どうしましょう?』
ティエ「迂回できないかどうか見てみましょう」
ティエはとりあえず周囲を見渡し、枝の渡っている道以外に通れる道がないかどうかを確認しました。
ティエ「迂回できそうな道はありましたけど、大分遠回りになってしまいそうですね。今日中には到着できそうにないです。……断崖を降りる事もできそうですが……こっちは危ないですね」
ノーティ「回復をして万全の体制を整えてから突っ切ることも一つの手段ですが」
ティエ「アリアさーん。 なんか、巣がかくかくしかじかで回り道もかくかくしかじかなんですけど、どうしましょ」
『断崖はちょっと、怖いですね……。できれば他の方法が良いですが……』
ノーティ「アリアさんは戦闘……できませんよね」
アリア「た、体力にはそこそこ自信がありますけど……戦うのは厳しいですね」
竜の姿を晒す訳にもいきませんしね。……まあ、存外強くはないのですが、竜人の竜形態は。
トリシア「全力で突っ込んで逃げよう」
クライブ「体力と魔力の兼ね合い、依頼人を護衛しきれるかどうかだな」
『皆さんの判断に任せます!』
ジョルティ「走って行って卵取って逃げよう」
ノーティ「回復をして襲われないことを祈りながらまっすぐ進みますか 私はそれでいいと思っていますが」
クライブ「任せる。リーダー、どうする」
トリシア「走って逃げる作戦に1票入れとくぞ」
ノーティ「と、その前に……とりあえずあの卵がどんなものか見ておきましょうか……」
〈知見判定〉
ノーティ:15
ノーティ「……どうやら、大型の猛禽類の卵のようですね。……おや、よく見るとヒビが入っています。孵化が近いのでしょうか……?」
ノーティ「食べるにはちょっと向いてない感じですね」
ジョルティ「どっかの国で孵る直前の雛食べるっていう料理があるんだゾ」
『想像したくない料理ですねえ……』
ジョルティ「よし、変更して親を食おう」
クライブ「それを食いたいのはお前だけだろう…」
……ゴレンの手前で食べていたグリフォンはそこそこ美味しそうでしたけどもね。
ノーティ「戦闘も覚悟なら回復魔法を掛けておきますが……」
ティエ「そういえばタイプワイルドとかいうの覚えた」
ティエ「回復してタイプワイルド掛けて突っ切ろう?」
タイプワイルドというのは、野生に近い姿になることで、野生動物の目を逃れるという魔法です。……まあきぐるみなんですけれども。動きにくくなるので、良いことばかりではありませんが、確かに有効な手段かも知れません。
ノーティ「では、私とクライブさんを回復します」
クライブ「すまんな」
〈ノーティ:キュアタッチ+キュアプラスプラス→ノーティ〉
発動判定:12(成功)
回復量:10
〈ノーティ:キュアタッチ+キュアプラスプラス→クライブ〉
発動判定:8(成功)
回復量:12
ティエ「それじゃ、タイプワイルドの魔法陣を書きますね」
ティエは歩き杖を使い、地面に魔法陣を刻んでいきます。私も含めて、6人が入れるように大きめの魔法陣が描かれ、時間を掛けてタイプワイルドの魔法が唱えられました。
〈ティエ:タイプワイルド→全員〉
発動判定:8(成功)
タイプワイルドの魔法は成功し、皆、動物のきぐるみ姿に変化しました。
クライブ:ラッコ
ティエ:スナドリネコ
ノーティ:青い鳥
トリシア:犬
ジョルティ:ピンクのチーター
アリア:竜
……あれ、私、竜になってません?本来の姿に大分近いんですけど……。いえ、まあ、バレはしないでしょうけど、竜の君、魔法に変な手を加えてませんか?
『さて、それでは鳥の巣の下を参りますか?』
ノーティ「ジョルティさん、間違って竜になったアリアさん襲わないでくださいね?
ゆっくり進みましょう」
ティエ「そうしましょ」
クライブ「ラーッコラッコ!」
クライブが全然隠密する気がなさそうなのですが、大丈夫なのでしょうか?
〈物音回避判定:敏捷+精神:目標8:全員成功で隠密成功〉
クライブ:13
ティエ:10
ノーティ:10
トリシア:11
ジョルティ:8
アリア:7(失敗)
皆がソロリソロリと忍び足で歩いている最後尾を付いて行ったのですが……あろうことか慣れないきぐるみで足を取られ、その場で転んでしまいました。
大きな音が立ち、遠くから鋭い眼光の主である巨大な猛禽類の番が猛追してきます。
……ちょっと待って下さい、これはいけません。邪魔にしかなってません!せっかくの彼らの頑張りを私が無にするわけにはいきません!
〈ブレス発動:カコ〉
指定地点まで時を巻き戻す
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ノーティ「ジョルティさん、間違って竜になったアリアさん襲わないでくださいね?
ゆっくり進みましょう」
ティエ「そうしましょ」
クライブ「ラーッコラッコ!」
今度は絶対に失敗しないようにしておかなければ……。
〈ブレス:フォーチュン〉
次のダイスがクリティカルになる
〈物音回避判定:敏捷+精神:目標8:全員成功で隠密成功〉
クライブ:13
ティエ:10
ノーティ:10
トリシア:11
ジョルティ:8
アリア:Critical
……最後尾だったのでバレてない!バレてないはずです!セーフです!そんな目で見るのはやめて下さい竜の君!
ノーティ(アリアさんちょっと動きが不自然だったような)
ノーティ「何とか切り抜けましたね」
凄く怪訝な目を向けられているような気がしないでもないですが、きっと私の自意識過剰です。
結局、私も彼らも猛禽類の鋭い眼光に捉えられることなく、巣の下を通過することができました。大きな卵を尻目に、山を下りきることができました。途中できぐるみを脱いで、サンドラの村に無事到着です!
クライブ「ラーッコラッコ!」
ティエ「まだ着てる!?」
いえ着てる着てないの問題ではないのでは!?
私としたことが取り乱してしまう所でした。危ない危ない。サンドラはというと、中心に大きな温泉宿があり、独特の匂いが漂う村でした。規模こそ小さいものの、のどかでゆっくりと過ごすにはこれ以上ない場所でしょう。
『皆さん、ありがとうございます!無事に到着することができました!』
『なかなかできない経験もできて、楽しかったです!』
これは、偽りのない本心です。これまですぐ近くで見てきた彼らと、ようやく本当の意味で対面をすることができたのですから。
『この村は宿が一つしかありませんので、一緒に宿まで行きましょう。そこで報酬をお渡しします』
皆と共に、村の中央の温泉宿へと向かいました。宿泊費は1日15G、入湯料は1回5Gと書かれています。
ノーティ「旅籠屋といった雰囲気ですね」
『とりあえず、今日の分は私がお支払いしておきますね』
ティエ「ありがとうございますー」
ノーティ「これはありがたい」
クライブ「ラーッコラッコ!すまんな」
手持ちがギリギリ足りたので、少しばかり格好を付けておくことにしました。次会うことがあれば、印象が良くなるのでは?
ジョルティ「俺、美味しいメシ追加で!!ご馳走様です!!」
……そこまでお金はないので、誠に遺憾ながら聞こえないフリをしました。
ジョルティ「スルーされた…自分で払っとこ…」
『改めて、連れて来ていただいてありがとうございました。見合うものではないかもしれませんが……こちらを受け取って下さい』
そう言って私は、私が今髪につけているものと同じ、羽根飾りのアクセサリーを差し出しました。竜人との縁を作るという謹製のもので、1度だけ、致命的な失敗を通常の失敗にすることができるという優れものです。……その致命的失敗は私が請け負うという優れものです。
ノーティ「有り難く頂戴いたします お疲れ様でした」
ノーティ「幸運を呼びそうなので私が着けさせて頂こうかな……」
ティエ「どうぞどうぞ」
差し出した羽根のアクセサリーは、ノーティが受け取って服に着けていました。
『それでは!私は!早速温泉に入ってまいります!』
あまり長居しても別れにくくなりそうなので、私は大急ぎでお風呂に向かうことにしました。この時間、女性は露天風呂のようです。良い景色と良いお湯が楽しめることでしょう。
トリシア「また出会う機会があればそのときはまた」
『はい!いつかまた!』
第九話「改めて、初めまして」 了
如何でしたか?今回はかなり、趣向を変えてみました!私にとっては大変楽しい旅でした。……まあ、足を引っ張っていたことは理解しているので、あまり責めないで下さい。
このまま付いて行くのも楽しいかも、と思ったのですが、やはり過干渉になってしまいそうなので、次回からはまた傍観者の立場へ戻ります。いずれ、来るべき日が来た時に、この日のことを思い出して驚いてくれるでしょうか?
……ふふ、遠い日のことを話しても仕方がありませんね。来年のことを話すと竜が笑うと申します、程々にしておきましょう。
それでは、また次なる旅物語をお待ち下さい--
【MVP:ノーティ・ティエ】
こちらは、2016/8/6,7に行ったオンラインセッションのリプレイです。
「今回の護衛対象はアリアです」、と言った時に、PLが何人かピンときていませんでした。諸兄ぐらいはリプレイ読んで下さいよ!!
……ま、まあ分量もあるので仕方がありませんが。ここいらで一度アリアを登場させておきたかったので、目論見としてはなかなか悪くありませんでした。
最後の猛禽類の下りは、シナリオでは強制戦闘の予定でしたが、タイプワイルドの提案などがあったため、回避できるように変更しました。戦闘がなくても、満足が行くのが良いですね。
それでは、また次回をお待ち下さい。
【参考サイト】
これはなかなか面白い試みですな。蒼竜シナリオだと、マスコットが最初から着いて来るパターンが多いですが、アーティファクトの贈り物によってこういう展開にも出来るんですね。
返信削除PCも竜人も、レベルアップで出来る事が色々見られるのはとても良いですね。
それにしても、今回は随分ブレスを使って経験点を上乗せした事で……。
さてさて次回は温泉街で何が起こるか。楽しみに待たせて頂きます。
コメントありがとうございます!リプレイ上で蒼竜人を出した時から考えていたシナリオでした。
削除ブレスに関してはそこまで使うつもりではなかったのですが、せっかくタイプワイルドで戦闘回避の提案してもらったのを無にしたくない、ということでこのような形になりました。(アリアの判定は全て1d20で行っているのに、まさか失敗するとは……)
今の所、次回分までしかプレイが終わっていないので、そろそろ追いつきます!