さぁ竜の君、ようやく準備ができましたよ。
もう少しで最後の旅物語になってしまいますね。
皆の旅の集大成にして……私の初めての旅の記録。この旅物語が、竜の君にとって満足の行くものだったなら、私にとってはこれほど嬉しいこともありません。
竜の君。この物語を聞かせ終わったら、また、私は新しい旅人と共に旅をしていくことになるのですよね?
でも、1つちょっと考えがあるんです。……それは、全てのお話が終わったら、お伝えしますね。竜の君がお許しいただけるなら、ですけれど……。
第三十八話 第一部「七つの旅-春/遠い昔の”はじめまして”」
「それで……ここが本当に7000年前なんでしょうか? 平原なのでいまいちピンと来ませんが……」
時の扉をくぐった向こうは、旅の始まりの平原でした。東西に畦道が伸びている他は山しか無く、ここでは本当に過去に来ているのかどうか判断ができそうにありません。
トリシア「叡智の書で”今”って調べたら教えてくれるんじゃない!」
「なるほど!」
ノーティ「もう少し何かあるところに飛ばしてくれても……」
トリシア「昔のほうが発達してたりして」
ティエ「ここから世界樹にワープはできるんですかね?」
トリシア「やってみよう。とりあえず中継地点に繋いでみるね」
トリシアが金の鍵を取り出して上空の方に向かって捻ると、現代で使用していた時と同じように竜の道が通じました。ノーティが飛び降りたあの大きな枝の上に移動します。
ノーティ「ぐえっ、たかい!」
ただ、現代で見たその場所とは、明らかに様子が違っていました。まず、その枝には葉が茂っていたのです。さらに大樹の木肌もまだ綺麗で、生命力に溢れていることが見て取れました。
トリシア「生えてるー。下の様子もみてみよう」
トリシアが半ば身を乗り出すようにして枝から下を見ると、世界樹の麓にあった廃墟の文明は、まだ廃墟化していないようでした。チラチラと小さく人の往来も窺えます。
どうやら、パワーがいたという教会もあるようでした。
トリシア「上に人の気配は……ないかな?」
トリシア「どうする?」
ティエ「叡智の書にいってみますかとりあえず」
ノーティ「そ、そうですね」
トリシア「はい、じゃあガチャー」
それでは、改めて叡智の書の台座の前に道が繋がれました。その場所の様子はそれほど変わっていません。ただ、やはり新しいように見えます。
ティエ「えーっと この石を……」
トリシア「さて2つの魔法結晶あるわけですが」
ティエ「白い方使えっていってたし白い方つかってみますかね?」
「それが魔法結晶が死の竜人が渡してきたという?」
トリシア「うん」
ティエ「ええ。 起動してないので中身はわかりませんが」
ノーティ「竜人が現れるとか何とか……」
トリシア「竜人がでてくるらしい」
「ほほう……竜人が……」
トリシア「じぇらしー?」
「いえいえ、みなさんは”私の”旅人ですから、ジェラシーなんてないですよふふふ」
にしても毎回勝手に接触してくるのは止めて欲しいものです!カナセの日記をリーズさんに先に聞かせてしまった時の竜の君の気持ちが少しだけ分かりましたよ。
「……え、どういう魔法なんでしょうそれ?」
クライブ「使ってみりゃわかるだろう」
ティエ「なにか対になるものがあって呼び出すのかなぁ?」
ティエ「まあ、とりあえず使ってみますか。魔力幾ついるんだろう……」
そう言いながら、ティエが白い魔晶に魔力を込めました。それほど多くない魔力で魔力は満タンになったようで、その魔晶から黒い煙のようなものが上がりました。
トリシア「呼ばれて飛び出て?」
が、それだけで、すぐに何か起こるような様子はありません。
ティエ「? 不発?」
トリシア「まあもういっこのほうも起動させとこ」
ティエ「ん、でもなんかこの魔力、どこかで覚えがあるような」
ノーティ「これは……アージェントやレパーリアで感じた魔力に近いように思えますね」
「なんだったんでしょう……?」
ティエ「まあこっちでも使えるように叡智の書を起動しましょう」
トリシア「あとこの時代のこの場所も増幅されてるのかな魔法?」
トリシア「ちょっとティエ君空飛んでみたら?」
ティエ「エミナノンノでいいじゃないですかぁ」
トリシア「魔法とか知らないよぅ」
〈ノーティ:春魔法「エミナ・ノンノ」〉
発動判定:8
ノーティが足元にエミナ・ノンノの魔法を発動すると、周囲が花だらけになりました。見たこともないような花も多く含まれていました。
ノーティ「ほう」
トリシア「ふぁんしー」
ティエ「増幅されているみたいですね」
パワー「草とろ」
〈薬草取り〉
パワー:6(失敗)
パワー「ハルシャギク……どこ……」
パワーはそんなことを言いながら、手当たり次第花を口にしていました。もうさして驚きはしませんけれども……。
「毒とかあってもしりませんよぉ」
クライブ「ああ、そうだ。回復してくれ。全身痛くてたまらん」
ティエ「魔力が残ってるのは……あ、私か。じゃあ回復しますね」
〈ティエ:呪文魔法「キュア・タッチ」→クライブ〉
発動判定:16
回復量11×5
クライブ「無駄に元気いっぱいになったな」
その間に、ノーティが台座に叡智の書の魔法結晶を置きました。
【竜の無限の図書館】
【叡智の書の閲覧を希望するものは、魔力の注入を行って下さい】
表示は以前見たものと変わりません。魔力を注ぐと、やはり同じように認証が行われました。
【閲覧者認証中……】
【認証完了】
【閲覧者、ノーティ・ユーデクス及びその一行。閲覧を許可します】
【閲覧を希望する情報をお伝え下さい】
ノーティ「あ、閲覧制限の表示がありませんでしたね」
トリシア「ほんとだ。じゃあ聞いてみていい?」
ノーティ「どうぞ」
トリシア「ヴィルフランシュ」
【検索:結晶化魔法】
記録者:ヴィルフランシュ・ドーレス
竜人:オルクス
創人歴7256年
春の月 12日
私は確かに死んだはずなのだが……。何やら妙なことになっているようだ。
死の竜とやらの元に送られたと思ったら、別の世界に立っていた。
ここは大きな河のほとりのようだが……文明はまだあまり発展していないようだ。
死の竜とやらのことは意味が分からないが……まあ、生きているなら生きているなりにやるとするか。
【特記事項】
記録者:オルクス
隣の世界で死んだ大魔法使いをこちらの世界に転生させました。
彼の名はヴィルフランシュ・ドーレス、魔法の発展したかの世界でも特に魔法に秀でた人物です。
この世界の魔法技術は他方の世界に比べてまだ発展の途上ですから……より良い技術の発展を望んでいます。
トリシア「過去の人間だったのか……元から」
ノーティ「隣の世界……?」
記録者:ヴィルフランシュ・ドーレス
竜人:オルクス
創人歴9556年 夏の月 30日
竜人とやらが長距離移動に使う竜の道というのは、世界中に存在する竜脈という魔法の流れを使っているらしい。
この仕組さえわかれば、私にこの程度の魔法が再現できないはずもない。遠からずして、竜脈を通る魔法を作り上げてみせよう。
【特記事項】
記録者:オルクス
隣の世界から送る際に見た竜の道の技術が露見したのか?
奴が自由自在に動けるようになれば、後を追うのが難しくなる。対処の方法を考えねばなるまい。
トリシア「なるほどなー」
ティエ「ヴィルフランシュに制限がかかってなければよかったのになぁ」
トリシア「これが制限掛かってたってことはこの魔法結晶って……」
記録者:ヴィルフランシュ・ドーレス
竜人:オルクス
創人歴9558年 秋の月 12日
竜脈移動の魔法を実現する魔法具が完成した。鍵の形を持たせておこう。
そのような必要はないが、持っていても不自然でないものが好ましい。
いずれ、竜の元に辿り着く事ができるはずだ。
【特記事項】
記録者:オルクス
この短期間で竜の道を開く魔法具を完成させるとは……恐るべき魔法技術だ。
私もその作り方を真似し、1つ持っておくことにする。多少の細工を加えさせて貰おう。
いずれ来る日に、これは必要になるだろう。その点については、感謝せねばなるまい。
トリシア「僅か2年のことである」
ティエ「本当に大魔法使いなんですね」
記録者:ヴィルフランシュ・ドーレス
竜人:オルクス
創人歴14671年 春の月 14日
オードレンという地に、共明石と呼ばれて崇められている石があるという。……聞くだに月光石のことだ。
これは、次なる研究に使うことができるだろう。なんとかして、譲ってもらわなければなるまい。
【特記事項】
記録者:オルクス
奴の現在地はわからないが、研究記録を日記に残すおかげで叡智の書から閲覧ができるのは助かる。
叡智の書を隣の世界から複製してきたのは正解だったが……世界樹にとっては負担だったか?長らく機能が復旧していない。”種”の行方も知れず、このままではいずれ使えなくなるだろう。
トリシア「オルクスちゃんも叡智の書閲覧できるんだねえ」
ティエ「種ってパワーさんのことでしたっけ?」
トリシア「なんかそんなことかいてたね」
記録者:ヴィルフランシュ・ドーレス
竜人:オルクス
創人歴13980年 夏の月17日
東の端に良い場所を見つけた。海の竜の加護篤きこの場所ならば、吸魔晶の力を示すのには十分だ。
幸いにして周囲は密林が囲んでいる、いずれは密林の竜の力も扱うことができるだろう。
未だ方法は不明ではあるが、過去に戻る魔法には必ず膨大な魔力が必要となる。
無限の魔力源である竜の力を味方に付けなければ実現は難しい。……この村こそがドーレスの礎となる。
トリシア「こいつが犯人だったかー」
ティエ「犯人ですなー」
記録者:ヴィルフランシュ・ドーレス
竜人:オルクス
創人歴14700年 春の月 11日
……そろそろ良いだろう。恩義を感じるのも終わりだ。盗み見は感心しないな、竜人。
【ヴィルフランシュの検索結果は以上です】
トリシア「あれ元の世界って何年だっけ?」
ジョルティ「14742年だ」
トリシア「14700年からオルクスちゃんが完全に手をつけられなくなったってことかな……40年ほど前?」
ヴィルフランシュに関する情報を見終えたその時、突如として皆の目の前、叡智の書との間に、一人の竜人が現れました。
緑色の髪に白い瞳、少し幼げな顔つきの、白い翼のある見覚えのない竜人でした。
ノーティ「あ……あなたは?」
竜人「初めまして皆さん。私は生と死を司る竜の竜人」
竜人「悪いことは言いません、その魔法を使うのはおやめなさい。その死の魔法を使っても良いことは……って、あれ? おかしいですね……確かに死の魔法が使われたと思ったのですが……」
その竜人はきょとんとした様子で、目を丸くしています。
パワー「おかしいのはおまえじゃい!」
トリシア「オルクスちゃ……ん?」
竜人「あれ? なんで私の名前をご存知で?」
トリシア「当たった!」
竜人「たしかに私はオルクスと申しますが……。 何処かでお会いしましたっけ?」
クライブ「ほお、ウチのヤツのパチモンみたいな…いや、ウチのやつのがパチモン?」
「……え? 彼女がオルクスさんなんですか?」
トリシア「髪の色は違うし、表情も違ってる感じはあるけど、顔付きはそうかなーって」
ティエ「これになにか感じる物あります?」
ティエはそう言うと、先程魔力を込めていた白い魔晶を見せました。
オルクス?「むむ、白い魔晶……どこでこれを? 人が持っているなんて……」
トリシア「あーこの白い魔晶が死の魔法絡んでるのか」
トリシア「14742年の霊体オルクスちゃんからもらってきた」
ティエ「なんだろう 7000年後のあなたから?」
オルクス?「おっと、それに……私の勘違いでなければ、貴方は春の竜の竜人様ですね? ということは、私の後任は貴方でしたか。改めて初めまして、私はオルクス、元春の竜人にして、今は死生の竜人です」
トリシア「!?」
「は、はい? えっ、どういうことでしょうこれ……?」
オルクス「春の竜は気まぐれで、振り回されることも多いでしょう? 慣れると楽しいお方ですから、旅を楽しんでくださいね」
トリシア「アリアちゃん春の竜にオルクスちゃんの事聞いたりしてなかったの?」
「いえ全く……完全に初耳でしたが……竜の君、わざと黙ってたんですかね……?」
ティエ(引き継ぎとかないのか竜人)
トリシア「アリアちゃんが、春の竜に、聞いたりとかは?」
「皆さんが初めて死の竜人に会って鍵を貰ったと言う時に少し聞きましたが……はぐらかされるばかりでして」
トリシア「はぐらかされてる!」
「結局何もわからないままでした」
オルクス「?? なんだか状況が飲み込めませんが……それで、7000年後の私から受け取ったと言っていましたが」
オルクス「つまり皆さんは未来から来たとでも言うのですか? どうやって?」
オルクス「いや、というより、何故?」
トリシア「あなたの旅人の魔法で……」
ティエ「クロックフォールという魔法が……あ、これ叡智の書で見てもらった方が早いですね」
【検索:クロックフォール】
それから、叡智の書が色々と情報を表示しました。これまで皆が見てきた様々な情報をオルクスさん?に見せる形で説明をしていきます。
オルクス「ふむ、確かに時を遡る魔法と言うのはあるようですが……」
トリシア「ヴィルフランシュって人が使ったの」
オルクス「……ヴィルフランシュ? ヴィルフランシュさんがですか? 7000年後に?」
トリシア「この後ドーレスに災害が起こるの、1週間後ぐらいに。それから、ずっとその日に戻るために研究を続けていたらしいよ」
オルクス「……ドーレスに大災害が? それも1週間後にですか……?」
オルクス「いやいや……そんなまさか。あんなに栄えている街がそんなに簡単に滅んだりするわけ……」
トリシア「検索、ドーレス
大災害」
【検索:ドーレスの大災害】
記録者:ヴィルフランシュ・ドーレス
竜人:オルクス
創人歴7266年 夏の月 15日
……何故、このようなことになった?私が何かしただろうか?
私はこの街の繁栄のために、死力を尽くしてきたつもりだ。
ドーレスが滅ばなければならない理由はない……気まぐれな竜め。
【特記事項】
記録者:オルクス
どうやら私は大いなる誤りを犯したようです。
ヴィルフランシュの魔法技術はこの世界にとってプラスに作用するものと思っていましたが……魔力の濫用がこのような災害を引き起こしてしまいました。
大勢の命が生の竜の元に送られ……いや、死の竜という方が正しいでしょうね……。彼がこの後、どのような行動に出るかわかりませんが……災厄で魔力を使いすぎ、直接干渉ができなくなってしまいました。
何か方法を考えなければなりません……他の竜の加護があるものなら干渉できるでしょうか?
オルクス「……」
オルクス「叡智の書に記されているなら……いえ……しかしそんな……」
オルクス「……まだ半信半疑ではありますが……皆さんの言うことは分かりました」
オルクス「ヴィルフランシュさんは、この災害をなかったコトにするために遥々7000年先から来ている、ということです」
オルクス「……それなら、ドーレスに向かっているのでしょうか?」
トリシア「またはフリーグゼル?」
オルクス「フリーグゼル……? どこでしょう……?」
トリシア「おおっと」
ノーティ「東の果てにある都市ですね」
トリシア「まだだっけ」
オルクス「覚えがありませんね……」
「日記によると、フリーグゼルの話はまだかなり先でしたね」
ティエ「ドーレスの技術の劣化版だから多分ドーレス滅んでからの土地じゃない?」
ノーティ「密林の竜の魔力を使おうという話でしたが……」
オルクス「ヴィルフランシュさんが竜の力をですか……?」
トリシア「ちなみに、今この世界のヴィルフランシュは今何してるの?」
オルクス「私の知っているヴィルフランシュさんは、ドーレスの統治者です。というよりは、魔法開発の指導者、という方が正しいでしょうか……?」
オルクス「ドーレスの発展のために、色々と指揮をする立場で活躍しています。……なので、皆さんの言うヴィルフランシュさんとは結びつかないんですよね……」
トリシア「あれ今何年でしたっけ」
オルクス「7266年ですよ」
トリシア「ほうほう」
トリシア「ヴィルフランシュの結果をもう一度聞いてオルクスちゃんに見てもらおう」
【検索:ヴィルフランシュ】
先程読んだのと同じ、ヴィルフランシュに関する記載が表示されました。オルクスさんはそれをゆっくりと読み始めます。
オルクス「……これが未来のヴィルフランシュさんの……」
トリシア「死んで別の世界に行ったヴィルフランシュが、未来で過去に飛んだところに私達がいるのよね?」
トリシア「私達がいた世界とここは似て非なる所? 違う?」
オルクス「いえ、ヴィルフランシュさんは”隣の世界から”、”この世界に”転生した人です」
トリシア「もうこんがらがってきた……はげたら責任取ってよ」
オルクス「今から10年ほど前にヴィルフランシュさんは隣の世界で亡くなりました」
トリシア「そういうことかあ」
オルクス「その魔法技術をそのまま失わせるのは惜しいと思い、こちらの世界につれてきたのです」
トリシア「あー、はげるなーこれははげる」
オルクス「私の思った通りドーレスは大いに発展していたので、成功したと思っていたのですが……」
トリシア「思ってたけど一週間後に破綻する?」
ノーティ「魔力の過剰な使用が平衡を破ってしまったというところでしょうか……?」
オルクス「……と、叡智の書には書いてありますね……。それ以降は、ヴィルフランシュさんも何かに取り憑かれたようになっていますし……」
トリシア「実際私達がいた未来にはドーレス滅んでたしね」
オルクス「……そうなのですね」
トリシア「河の竜何か知ってるのかな? 知らないかな?」
オルクス「ドーレスの大河の竜ですか?」
トリシア「あっはい」
オルクス「彼は『生贄とかいらないって言ってるのにやめてくれなくて困る…ちょっと一人にして…』という感じでして……」
オルクス「まあ、竜の声が聞こえる人がいないようなので、伝わっていないようなのですが……」
トリシア「聞いたことのあるような台詞……」
ノーティ「態度が軽すぎる」
オルクス「ま、まあ意訳ですので本当はもうちょっと深刻そうでした」
ノーティ「ところで、この時間のヴィルフランシュ氏はまだドーレスが滅ぶことを知らないんですよね? それで、未来から来たヴィルフランシュ氏はそれを止められると考えていると」
ノーティ「人の生き死にを変えても普通は別の形で回収されるようですが、死の竜の契約があれば止められるものでしょうか?」
オルクス「そうですね、私もそうですから、この時代のヴィルフランシュさんもそんなことは知らないと思います。」
オルクス「確かにそういうことは可能ではありますが……しかし、あまりに大勢に死の魔法を使うようなことがあれば、死生の均衡が崩壊してしまうので……」
オルクス「皆さんが未来の人だというのであれば、その未来がどうなるかも分かりませんね……」
オルクス「……しかし、未来のヴィルフランシュさんはどうやってその災厄を止めようとしているのでしょうか?」
オルクス「ドーレスの滅びが大洪水によるものなら……人の手でできることがあるとは思えないのですが……」
トリシア「叡智の書なら何かわかるのかな?」
ノーティ「死の魔法を使ってさえも人々を真っ当に救うことはできない。そのことをヴィルフランシュ氏が知らないはずはないと思うのですが」
オルクス「どうなのでしょう……未来のヴィルフランシュさんは、どれほど私達竜について知っているのでしょうか?」
トリシア「全ての竜さようなら的なこと言ってた」
ティエ「竜なんかおらんでも私の魔法のちからで幸せになったる。みたいなラックラックラックつかってたよね」
トリシア「竜なき世界にうんたらだっけ」
オルクス「……全ての竜に?」
オルクス「この時代のヴィルフランシュさんは、竜についてはあまり知らないはずです。転生の時に竜の道を通ったぐらいで、ほとんど接点がないはずですから……」
トリシア「この時代のヴィルフランシュは何もできないから滅んだという感じでは?」
トリシア「何もできないというか知らないというか」
オルクス「……まさか、ヴィルフランシュさんは、その「災厄」の元になる竜を亡き者にしようとしているのでしょうか?」
オルクス「……はい、少なくともこの時代のヴィルフランシュさんは、竜に関してはほとんど知らないはずです。だからこそ大河の竜が嫌がる生贄のようなことも止めようとしていないわけですし……」
ノーティ「また突拍子もないことですね」
トリシア「多分ノーティかティエかクライブが覚えてるはず、もしくはアリアちゃん」
「”願わくは我らに幸運を。竜亡き世界でも依然変わらぬ幸運を” でしたね」
トリシア「私は雰囲気だけで生きてきたんだよ! こんなに考えるタイプじゃないの!」
オルクス「……なんだか物騒な呪文ですね。私達にとっては」
トリシア「未来のヴィルフランシュは色んな竜の事知ってるみたいだった」
トリシア「海の竜利用したりとかしてたし」
オルクス「……7000年もの時が流れているなら、それだけのことを知る時間はあったということでしょうか……?」
トリシア「春の竜の棲家探り当てて利用したりとか」
オルクス「四季の竜の元まで! それは余程の知識がなければ不可能ですね」
パワー「ビームだす木のことは教えてくれないクソジジイだった」
ティエ「竜は魔力タンクにするわ、太陽も魔力タンクにするわ、月も魔力タンクに……あいつ魔力タンクばっかりじゃねえか」
トリシア「そもそもこの色んな色が混ざってる魔法結晶……叡智の書は、オルクスちゃんが持ってきたものなの? それとも誰かの手で作られたもの?」
オルクス「はい、私がヴィルフランシュさんが元々いた世界から持ってきたものです。複製品ですが」
トリシア「とするならば、元々の世界で作られたのは転生前のヴィルフランシュだったりするのでは? だとしたら叡智の書からヴィルフランシュが竜の事だのをしっかり知る事ができるのもおかしな話ではないのではないかと」
オルクス「それぞれの世界は四季の竜は違っていますが、死生の竜と世界樹は同じなんです。だから、こちらでも使えるかと思いまして」
オルクス「……確かに。向こうの世界で、叡智の書のことを知っていた可能性はありますね……」
トリシア「覗き見云々書いてますよ」
オルクス「先ほど読んだ限り、未来の私が見ていることもわかっているような風でしたね」
トリシア「あー、もう分かんない! ちょっと一服!」
トリシアは懐からタバコを取り出しながら、さささっと素早い動きで風下の方へと移動し、紫煙をくゆらせはじめました。
オルクス「なんと洗煉された動き……」
ジョルティ「洗練された無駄のない無駄な動き」
オルクス「……ともかく、ドーレスに向かいますか? 私も、同行します。事の次第を見極めなければ……」
ノーティ「何をするつもりか確認しなければなりませんし、恐らくは阻止しなければ……」
トリシア「ちなみに私らって姿隠したりってできないのかな」
オルクス「うーん……そういう方法はちょっと思い付きませんね……」
トリシア「下手に未来のヴィルフランシュに見られてもいい事起こらないような……」
オルクス「それは確かにそうですね……ただ、ドーレスはとても人が多い場所ですので」
オルクス「ばったり鉢合わせなければ大丈夫な気はしますが……」
トリシア「そういうときは大体鉢合わせる」
トリシア「しってる。なんちゃらの法則って本が未来で流行ったんですよ」
オルクス「ほう……?」
ノーティ「急いだ方がよい気がします。取り返しが付かないことですし」
トリシア「私達ドーレスの場所ちゃんとしらない。オルクスちゃんたのんだ!」
オルクス「分かりました、準備ができたら言って下さい。外れの方に道を繋ぎます。春の竜人さんもそれで良いですか?」
「はい、構いません。私は皆さんの行先に付いていくだけです」
オルクス「人目につかない場所がちらほらとあります。……多分」
オルクス「それでは、準備は良いですか……?」
トリシア「リーダいいですか」
ティエ「とりあえず宿を取らねばなりませんからねえ。行きましょう」
オルクス「分かりました。それでは開きます」
こうして、オルクスさんの力によって、ドーレスへの道が開かれました。オルクスさんもマスコットを持っているのか、はたまた死の竜の別の力なのか、人の姿となってそれに同行しました。
その竜の道の先、ドーレスは大きな石造りの都市でした。街中には水路が通っており、街の人達は水路上を船で移動しているようでした。
船には青い魔晶が装着されており、魔法動力で動いているように見えました。
都市の各所に使われている石材は、ゴレンの近くの石材のように見えました。オルクスさんが道を繋いだ場所は大河の近くで、河の様子が見て取れます。
見たところ氾濫している様子はありませんが、元の時代の大河とは少々流れが違っているようでした。それに、心なしか水が澄んでいるようにも見えます。
ドーレスの街の近くで、大きな川が2つ合流しているようで、その川の1本の上流がゴレン方面へと向かっているようです。
そして、はるか遠くにある街の中心から、白い光の柱のようなものが北の空に向かって伸びているようでした。どうやら、世界樹のある天空の島へと通じているように思えました。
ここが郊外だというのが信じられないほどの規模で発展しています。これまで見てきたアージェントやクローナ・ディア、ラ・ヴィス、レパーリア、フリーグゼルなどの都市を全て足しても、これほどの規模になることはない、と直感的に思えるほどでした。
そんなドーレスに、皆が降り立ったその瞬間のことでした。大きな地響きが聞こえ、地面が揺れました。
地響きはそれほど長く続くわけではありませんでしたが……大きな変化が起こったことがすぐに分かりました。
ドーレスの遥か南方にある高山に、突如として大樹が現れていたのです。
トリシア「アリアちゃん元の世界にこんなのあったっけ?」
「あっちは……ゼペリオンの方では……?ということはあれは……まさか」
トリシア「まさか?」
ノーティ「光線樹……!」
遠目からみても、それは光線樹であることが見て取れました。
しかし、その大きさは元の時代に見たよりも遥かに大きなものであることも、同時に分かりました。
ティエ「うわぁ……!」
そしてその刹那、もう1つ大きな異変が起こります。夜の闇を切り裂くように、突如として空に太陽が浮かんだのです--
トリシア「ヴィルフランシュ何かやったな!」
トリシア「おのれ!」
「ああまた……」
トリシア「また体調悪くなるのか……」
トリシア「しかし、もう夜だけども事件はもう起こってるわけでどうしよう?」
トリシア「……寝るか」
ノーティ「私も含め皆さん割りと疲弊しているところではありますね」
「どうしましょうか……目に見えておかしいのは南の高山のようですけど……」
ジョルティ「俺が言いたいのは時間移動でお腹が空いたという事だけだ」
ティエ「とはいえ魔力使ったりなんだりはしてますからねえ」
ティエ「無理しない程度に移動します?」
ティエ「無理しない程度でどこまで進めるか解りませんけど」
オルクス「な、なんか皆さん割りと冷静ですね?」
クライブ「変なことが起きるのはいつものことだしな」
トリシア「無理しない程度に移動するくらいなら朝移動してもかわんないんじゃないの」
ノーティ「ドーレスで休みたいのが本心ですが」
パワー「無理しない程度に無理しないほうがいいんじゃない」
ジョルティ「無理しない程度に飯食ってもばれへんか」
パワー「無理しない程度に草とってもばれへんな」
パワー「じゃあ無理しない程度に無理しないで草探して飯食べよう」
ティエ「じゃあしっかり休んでから明日向かうということで?」
ノーティ「宿取りましょう」
……「無理しない」という言葉の意味が頭の中でこんがらがりそうです。ともかくそんなこんなで、とりあえずはこのドーレスで休むことにしたようでした。
オルクス「宿なら様々な場所にありますよー」
ティエ「あ、……お金、使えるのかな」
ティエ「このお金つかえる?」
オルクス「あ、大丈夫ですよ、使えます」
ティエ「ヨカター」
オルクス「ドーレスは様々な場所から人が来る街ですから、金属の種類と比重で取引するので、問題ないですよ」
トリシア「この時代のオルクスちゃんは素直な子だなあ」
オルクス「未来の私は違ったんですか?」
トリシア「なんで未来のオルクスちゃんは撚てしまったんだろう」
オルクス「ええ……」
トリシア「8000年くらい先だからね……」
ノーティ「生と死を司る竜でしたっけ?
オルクスさんが仕えているというのは」
オルクス「はい、そうです。より正確には魂の循環を司る竜、ですね」
ノーティ「未来のオルクスさんは……これ言ってもいいんですかね。死の竜に仕えていたと思うのですが」
トリシア「未来のオルクスちゃんも悪い子じゃないよ、撚てるだけだよ」
オルクス「……同じ竜だとは思いますが……恐らく」
ジョルティ「未来のオルクスちゃんは俺をリスペクトして何でも言う事聞いてくれるいい子だったよ」
ジョルティ「これ、覚えといてね」
オルクス「はあ……」
ノーティ「一体どこで変わってしまったのでしょうか。それはさておき……」
ノーティ「ドーレスの南の方で宿をとって今日は寝ましょうか」
パワー「ハルシャギクでいっぱいの宿もありますか?」
オルクス「いやぁそういったものはないんじゃないですかね……」
パワー「コンディションが高まる宿はありますか?」
オルクス「それは貴方方次第なのではー……?」
ティエ「ロイヤルスイート/究極のごちそうとかいう一人2700ゴールドコースにする?」
ティエ「ついでに温泉入る?」
オルクス「温泉はないですよ。お風呂ならありますけど」
ノーティ「適当に見繕って頂けると助かります」
オルクス「分かりました、それでは、ロイヤルスイートの宿にご案内を……お金持ちですね?」
こうして、オルクスさんにロイヤルスイートの宿に案内されました。その宿は極めて大きく……5,6階はあるのではないでしょうか。中に入るとロビーからして華美な装飾で飾られており、とても美しいものでした。
パワー「おおきいー!!」
「大きいですねー……クローナ・ディアの宿にも負けてませんね」
クライブ「まあ、とりあえずさっさと休むか」
ノーティ「やはり相当繁栄しているのですね」
ティエ「すごーい」
宿の人たちも外の状況を見て結構大慌てのような状況でした。ただ、カウンターは動いているのでチェックインは可能なようですね。
ティエ「でもミノーンビバークはします!」
ティエ「なにか珍しい物が売ってるなら買いたいけど……」
「あまり干渉しすぎない方が良いような気もしますが……」
ノーティ「未来に持っていって価値が分かる人がいなければ仕方ありませんしね」
クライブ「ここに来た時点でその懸念は無意味だろうな」
「まあ……寝ましょうか。私とオルクスさんは誰かの部屋の隅っこで静かにしてるので」
トリシア「おやすみ」
ノーティ「肩身狭いですね……おやすみなさい」
こうして皆はドーレスで夜を明かしました。……太陽が出たままで、夜、と言っていいのかは分かりませんけれども。
私は夜の間にこの街について少し調べてみることにしました。空から見下ろすと、この街の広さは想像を遥かに超えたものであることが分かりました。フリーグゼルよりも遥かに大きく……空からでさえ視界に収めきることができません。
幾つか、特徴的な場所もあったので、これは明日皆に伝えることにしましょう。
~過去 夏の月 9日~
目が覚めても、相変わらず月と太陽が同居している空模様でした。ロイヤルスイートというだけあって、カーテンの質も良かったのですが、それでもやはり疲れが残っているようでした。
〈コンディションチェック:ロイヤルスイート(2回振って良い方):異天により-2〉
パワー:15/9
クライブ:19/14
ティエ:15/Critical(19)
ノーティ:17/16
トリシア:17/9
ジョルティ:12/10
旅慣れているだけあり、皆はそれでも体調がとても優れているようでした。
「おはようございます、やっぱり元通りにはなってませんね……」
ノーティ「いい部屋だったのでそれほど気にせず眠れましたが……」
トリシア「おはよう」
オルクス「おはようございます」
ティエ「オハヨウゴザイマース」
オルクス「それで……今日はどうするんでしょうか……?」
パワー「草! 草草草! 草取ってくるぞ!!」
……話を聞くまでもなく、パワーが草を取りに飛び出して行ってしまいました。ノーティも仕方ないな、というような表情でそれに続きます。
〈薬草取り:山:目標10〉
パワー:10(白夜ハルシャ菊1獲得)
ノーティ:14(白夜ハルシャ菊1獲得)
そして、そう時間を掛けずに2人とも戻ってきました。パワーの口元にはどうやらハルシャ菊を食べたであろう葉のかけらが残っていました。
オルクス「えええ……」
オルクスさんと言えば、未来の私はなぜこの人に頼み事を? というような表情をしていました。致し方なし……。
ティエ「この人過去の時代の人らしいんですけど オルクスさんなんか感じる物とかないんですか」
オルクス「いや…さっぱり…」
ティエ「とりあえず南の異変が起きてそうなポイントに移動 で いいですかね?」
「あ、昨日の夜の間に、軽くドーレスを見ておきました。何箇所か特徴的なものもあったので伝えておきますね」
昨夜にチェックをした場所のメモを見返しながら、一つ一つ気になった場所を挙げていきます。
「まず、水竜の祠です。皆さんが元の時代で訪ねた場所ですね。ドーレスの町外れにありました。ここから割りと近くです」
ノーティ「勿論残っていましたか」
「はい。当然ではありますがまだ新しい様子でした。」
「次に、白い大宝玉。あの街の中心から世界樹に向かって伸びている光の柱の根本にありました。どうも極めて強い魔力を感じました」
「そしてもう1つは、ヴィルフランシュの屋敷です。恐らくこの時代のヴィルフランシュに会うことができるかと」
トリシア「領主じゃないの?」
「はい、領主のようです。なので警備は厳重そうでした」
トリシア「ああ屋敷って元の世界の屋敷かと思ったよ。屋敷というか小屋というか……」
「ああ、そうですね。ああいう小規模なものではありませんでした。……というところですね。もちろん、まっすぐ高山に向かうのもありだと思います」
ティエ「この時代のヴィルフランシュを倒したら解決するってわけでもなぁ……説得には応じないだろうし」
ジョルティ「美味しい飯屋の情報は?」
「え、あ、ごめんなさい、見てないです。でも、そこら辺にいっぱいあると思いますよ」
トリシア「ちなみに今月出てるかな?」
トリシアが部屋のカーテンをめくると、そこには相変わらず太陽と満月が顔を覗かせていました。
ティエ「選択肢は3つ。全部見に行く、全部見に行かない、そしてどれかだけ見に行く」
パワー「高山行こうぜ 山はいいぞ」
ノーティ「ヴィルフランシュに直接対峙するのは得策ではないかもしれませんね」
ノーティ「とすると、水竜の祠か高山か……水竜に生贄を捧げているのもヴィルフランシュでしたよね?」
ティエ「竜には会っておきますか。 ずっとここらにいるなら情報持っているだろし」
ノーティ「何か話してくれるでしょうか?」
ティエ「世界とドーレスのピンチだし」
トリシア「生贄ほしくないって言ってたよねって言えば行けるんじゃない」
ノーティ「私は先に水竜の祠へ行ってみるのが近いでしょうね。行きましょう」
トリシア「じゃあがちゃー」
トリシアはとりあえず水竜の祠に向けて鍵を使い、竜の道を開きました。ただ、水竜がいた部屋は魔力が遮断されているようで、直接道を開くことはできず、祠の入り口までしか移動することはできませんでした。
トリシア「……そっか直接はいけないのか。宝石持ってないけどいけるだろうか」
トリシア「確か竜がいたのは正面だったよね」
ノーティ「過去に地図を記録していたはずです、見てみましょう……」
ノーティ「そうですね、正面の道が最深部につながっていますね」
トリシア「よし、行ってみよう」
皆はそのまま真っすぐと最深部の部屋に向けて歩いていきました。
奥の部屋には元の時代の頃と変わらず、神官像と騎士像が置かれていました。ただ、それらには鏡と剣が配置されておらず、杯も掲げられていません。地下への道も開いていませんでした。
ティエ「あれ」
トリシア「あれ」
トリシア「この後にわざわざギミック仕掛けたりしたってことなのか?」
「開いていないようですね……?」
ティエ「剣と鏡とりにいきますか・・・最悪黒い石付けられてる可能性もなきにしも」
トリシア「あるのかなあ」
ノーティ「以前……といっても未来ですが、そうですね、別の部屋に仕掛けを動かす道具が置いてあるはずです」
「道なりに行くと一番近いのは、剣のあった部屋ですね」
ティエ「ちょっともどりますか」
トリシア「生贄捧げるためにわざわざ面倒くさいことしてたんすね……」
ノーティ「勝手に誰かが開けてしまわないようにでしょうか。ともあれ向かいましょう」
こうして皆は、水竜の祠に入るために必要な道具を揃えるために一度引き返しました。まずは近くにあった剣のあった部屋に入ります。
元の時代ではここに多くの壺があり、そこに何本かの武具が刺さっていましたが、この時代では壺はあるものの剣は見当たりませんでした。総じてあの時と違ってまだ綺麗な様子です。
ノーティ「ううむ?」
ノーティ「何のためにあるのでしょう、この部屋」
ノーティ「壺置き場?」
ジョルティ「常識的に考えて、当時は誰かかどこかに纏めて保管されてそうなもんだけどな」
トリシア「あのじーさんがもっていったとか」
ノーティ「仕掛けが分からないように分けて置かれていたからこそ、あの時もそうして残っていたものとばかり」
ノーティ「普段はヴィルフランシュが持っているのかもしれませんね」
「むむ……だとすると川の竜には会えませんかね?」
ティエ「一応他の部屋も見ておきます?」
ノーティ「念のため他の部屋も……戻って壁画のあったところへ」
今度は壁画のあった部屋へと向かいます。そこにはすでに幾つか壁画はありますが、洪水の様子が書かれた壁画はありません。杯も置かれていないようでした。
ジョルティ「アリアちゃんとオルクスちゃんで呼びかけて出てきて貰えないの?」
「いやあ……あの部屋に引きこもっているのだとすると、外からだと聞こえないと思うんですよねぇ……」
オルクス「そうですね……」
ノーティ「念のため鏡の部屋も見てみましょう」
今度は鏡の部屋に移動しました。小奇麗で儀式用の様々な道具などが置かれているようでしたが、鏡は掛けられていませんでした。
ただ、鏡がかけてあったと思われる留め具は壁にありました。
クライブ「ふむ、ここにもないと」
ノーティ「普段はここに掛けてあるのでしょうね」
ティエ「我々が来ることを見越して先に避けたか、あるいはこの時代のヴィルフランシュその他が生け贄を捧げる時にだけ開けるので、彼らが持っている」
ティエ「の どっちか?」
ノーティ「我々が水竜と接触できないようにということはありえますね」
ノーティ「普段からここに鏡を置いていないならこの留め具は必要ないように思えます」
ティエ「いちりある」
ノーティ「ともかく、ここにいても会えなさそうですね……?」
ティエ「ってことはヴィルフランシュによる持ち出し濃厚?」
オルクス「確かに、昔に一度だけ来た時にはここに鏡があったと思います」
オルクス「他のものは覚えていませんでしたが、この鏡は印象にありました」
ティエ「
魔法的な鍵じゃないならパワーさんが開けられたかもしれないのにねえ」
トリシア「この場所自体はヴィルフランシュが作ったんじゃないの?」
オルクス「直接作ったものではなかったはずです。竜信仰の人達に言われて許可した、というような形だったかと」
トリシア「ほほう」
ノーティ「生贄を捧げていたのはヴィルフランシュだったと聞いた気もしますが、さて」
オルクス「ヴィルフランシュさん本人はあまり竜信仰に篤い方ではなかったので……。生贄についても本人が指示しているというよりは、教会と敵対したくないという理由で黙認している、というような感じです」
ノーティ「なるほど……それで、ここでできることはあまりなさそうですが。次に行くとすれば高山でしょうか?」
「確かにここはもうできることは無さそうです」
ティエ「世界樹に繋がってる魔力が切断できるなら白玉の所もアリ?」
ノーティ「この時代のヴィルフランシュに会っても説明が難しいですね……」
トリシア「対策をたててヴィルフランシュ倒しにいったほうが」
ノーティ「対策ですか……」
トリシア「変なバリアとか貼ってたよね、あの時は」
「そうでしたね……しかもかなり硬かったような」
ティエ「あのバリアの元が白玉経由ならほぼ無尽蔵に……?」
トリシア「すべての魔法消してあいつが動く前に攻撃したらどうにかなんないかな……」
ノーティ「前回考えていたことですね」
トリシア「でもあいつも私ら来る事も想定しているだろうし」
ノーティ「先に外堀を埋められれば良いのですが、この場合の外堀とは……?」
ティエ「この時代のヴィルフランシュを説得して仲間に?」
ノーティ「それか魔力源でしょうか」
トリシア「その場合は月と太陽?」
ティエ「白玉をどうにかするか ヴィルフランシュを人質に取るか……」
トリシア「あと魔力網も使ってきそうだよね、街の」
オルクス「いえ、街の魔力はあの山までは届いていないような気がします、恐らくですが……」
トリシア「ほうほう。ともかくどっかいこう」
「どこに行きましょう……?」
ノーティ「この時代のヴィルフランシュに干渉したら、ここにいる未来のヴィルフランシュに何か変化が出たりするものでしょうか?」
ノーティ「まさか時代を翔けるとは思っていなかったので、突拍子もなさすぎて想像もつきませんが」
「どうなんでしょう、時の継続性、というがわからないので分かりませんね……。同一人物であることを考えると何かしら影響があるとは思いますが……」
ティエ「何も起きないとしても、この時代のヴィルフランシュ人質に取ったら我々への全体攻撃は使えなさそうですけどねえ」
トリシア「アリアちゃんオルクスちゃん高山行くとしたらどうすればいいのかな?」
トリシア「多分この鍵ではいけないよね、行ったことないし」
「この時代の竜脈の状況はどうですか?」
オルクス「あの高山までは、竜脈がつながっていませんね……。繋がっていれば直接私が道を開けることはできますが……」
トリシア「ほうほう。ということはヴィルフランシュがいる可能性も低そうだ」
トリシア「あいつも竜脈ワープしてるでしょ」
「どうなんでしょう……? あの銀の鍵の力が同じものなのかはわからないですからね……」
「私達の金の鍵はあれを真似して作ったものだと元の時代のオルクスが言っていたということでしたが、もしかすると、違った機能がある可能性はあります。改良されていないとも限らないですね」
トリシア「なるほど。この鍵や竜人の力」
ノーティ「高山に向かってヴィルフランシュに遭遇したとして、我々に勝ち目はないのでしょうか?」
トリシア「山に登ってから戻るにしても時間かかるんだね……難しいね」
「そうですね、結構時間がかかりますね、歩いて行くとしたら……」
クライブ「一人なら勝てないことはないだろうが、他の要素があると面倒だろうな」
ティエ「レーザーの木とか任意で使われたら……」
「勝ち目がない……とは思いません。クロックフォールの詠唱中だったとは言え、あの時も優勢に運ぶことができていましたから、無理ということはないと思います」
トリシア「ちなみにオルクスちゃん」
オルクス「はい、なんでしょう」
トリシア「この辺にいる竜って川の竜以外にいたりします?」
オルクス「え……どうでしょう? 悪天候のときなどは雷の竜が来たり、雨の竜が来たりはしますが、地形の竜ということなら川の竜ぐらいしか見かけたことはありませんね」
トリシア「なるほど」
ティエ「ってことはこの街の電池は川の竜……?」
オルクス「? どういうことでしょう?」
ノーティ「これだけの魔力を供給している源があるということでしょう」
オルクス「ああ、ドーレスの魔力源のことですか」
オルクス「川の竜ではないはずですよ。彼はそれこそ引きこもっているだけで街にほとんど干渉しませんし」
オルクス「詳しい仕組みまでは知りませんが……世界樹から魔力を引いているはずです」
トリシア「元春の竜のオルクスちゃんは世界樹の事知ってるのに、季節竜はちゃんとしらないのかな!」
オルクス「私も春の竜人だった時は知りませんでした。生と死の竜付きになってからですね、これを知ったのも」
トリシア「なるほど。それなら仕方ない」
トリシア「さてどうしよう」
ノーティ「この時代のヴィルフランシュを我々が説得なりした場合でもドーレスの滅亡は止められないのでしょうが、未来のヴィルフランシュが暴走することも、そもそも生まれることもないかもしれないですよね?」
ノーティ「魔力を使うなといって、フリーグゼルのようにするのは本意ではありませんが……」
オルクス「そこは私には……私はこの時代のヴィルフランシュさんしか知りませんから……その後どうしてそうなったのかまでは……推し量れません」
ノーティ「ともあれ、少しでも勝ち目があるなら、この程度、歩いて高山に行きますよ。もしかしたら弱点を先に見つけられるかもしれないですし」
トリシア「近くまでとべないですか?」
オルクス「高山の麓近くまでならなんとか」
トリシア「おねがいします」
オルクス「分かりました。それでよろしいですか?」
ノーティ「急ぐに越したことはないでしょうね、色々考えましたが……行きましょう」
トリシア「まずここにいる理由はない」
クライブ「結論が出たならそれに従うだけだ、任せた」
トリシア「行こう」
オルクス「……では、開けます。あの山の麓へ」
こうして、オルクスさんが竜の道を開き、高山の麓へと道が繋がりました。
前にクレインからゼペリオンを目指しした時と同様、2日ほどで山頂まで辿りつくことができそうに見えました。
トリシア「山頂のほうの様子は……」
トリシアが山頂の方を見上げてみましたが、雲によって山頂の様子までは見えませんでした。
ただ、山自体の環境はそれほど変化がないようです。登り口こそ違いますが。
ノーティ「道に迷うことはない……でしょうか?」
ジョルティ「最近山ばっかり登ってる気がするのですが!!」
トリシア「登るかこの世界のヴィルフランシュに会うか」
ジョルティ「竜となんとやらは高いところが好きすぎ!」
ノーティ「山頂まで何かないか見回しながら向かいましょう。ここまでくれば他に手はありません」
ティエ「人質に取れるかもしれないけど人質に取るまでが大変そうだからなあ」
ティエ「特に思いつかない」
トリシア「よし登ろう」
〈移動チェック:異天の高山:目標18〉
パワー:11(失敗)
クライブ:12(失敗)
ティエ:14(失敗)
ノーティ:9(失敗)
トリシア:12(失敗)
ジョルティ:7(失敗)
天候の状態もあり、流石に全員が疲弊しているようでした。高山はある程度整備されていることもあり、山頂に登る分には迷うことはありませんでしたが……。
〈狩猟チェック:高山:目標14〉
ジョルティ:16(美味しい食料3獲得)
ジョルティ「動物の形がちょっと野性味溢れてるな」
クライブ「足りない分は保存食を出しておく」
〈野営チェック:異天の高山:目標18〉
ティエ:18(エニウェアコテージ)
クライブ:14(サポート成功)
トリシア:17(失敗)
〈リーダースキルによる判定+1〉
トリシア:18
ティエ「あ、ここ傷んでますね」
トリシア「ほんとだ、直しておいて」
なんとか野営は成功させることができたため、食事を終えたらそのまま眠ることにしました。
~過去 夏の月 10日~
そして翌日。もう雲が近く、山頂も近づいていることがわかります。今日の昼頃には、あの樹の近くまで到着するでしょう。
〈コンディションチェック:異天により-2〉
パワー:11(絶好調)
クライブ:16(絶好調)
ティエ:7
ノーティ:Critical(19:絶好調)
トリシア:7
ジョルティ:9
〈薬草取り:高山:目標14〉
パワー:
9(失敗)
ノーティ:11(失敗)
パワー「くさ、ない」
ノーティ「ありませんね」
パワー「ないぞ」
ノーティ「そうですね。そろそろ山頂ですか」
ノーティ「何かあればいいのですが……」
〈移動チェック:異天の高山:目標18〉
パワー:16(失敗)
クライブ:18
ティエ:9(失敗)
ノーティ:11(失敗)
トリシア:21
ジョルティ:17(失敗)
その日も、かなり歩きにくい環境が続いていました。かなり気合を入れて登山に臨んだトリシアと、そこそこ適応することができていたらしいクライブを除き、皆がかなり疲れを見せています。
それでも、昼を過ぎる頃にはようやく雲を抜け、山頂が見えるようになりました。そして……知っていた通りではありますが、山頂には、巨大な光線樹が待ち受けていました。
第三十八話 第一部「遠い昔の”はじめまして”」
完
こちらは、2017/3/24.31に行ったセッションのリプレイです。
かなり執筆が遅くなってしまいました申し訳ありません……。
最近また別のメンバー6人でりゅうたまをやっていたりします。こちらはボイスなのでリプレイ執筆ができるかは分かりませんが……。
やはり良いシステムですね!
【参考サイト】
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