2016/09/22

りゅうたまリプレイ 第十四話「波と波との間に」 【キャンペーン】

おはようございます。すっかり秋の風情となりましたが、風邪など召しておりませんか?
流石は春の竜様ともあり、季節関係なく春眠が暁を覚えていないようですが……。
というのはまあ冗談として、今日は秋の初めの旅物語を持ってまいりました。
私にとっても、彼らにとっても初めての体験となった、そんな物語をお聞かせします。




第十四話「との間に」



の月 1日~



さて、何だかんだとあったものの夏のお祭りも終わり、季節は秋へと突入しました。
まだまだ暑さは残っているものの、それもあと数日でなくなっていくことでしょう。


〈コンディションチェック〉
クライブ:13(絶好調)
ティエ:13(絶好調)
ノーティ:3
トリシア:8
ジョルティ:7


トリシア「おはよう」
ティエ「おはようございます。結局、お祭りは行かなかったんですか?」
トリシア「うん。図書館で調べ物してた。なんか良さそうなテントの作り方があったので作ろうと思うんだけど」
トリシア「ついでに防寒テントにアップグレードしようかと」
ノーティ「そろそろ季節も変わりましたからねえ」
ティエ「ほー おいくら万Gあればできるんですかー?」
トリシア「なんとテント2つの組み合わせでよさそうなテントができるみたいなんだ」
ティエ「ほほう」
トリシア「てなわけで今使ってるテント2つ売っぱらって防寒テント4つ買ったら幸せになれるかなって」
クライブ「暑い場所は平気なのか?」
トリシア「暑い時は外で寝たらいいんじゃない。一人で」
ティエ「じゃあ商業街へ行ってみましょうか。この街なら大抵のものは揃うでしょうし」


そんな話をしながら、クライブは懐からお酒の瓶を取り出し、ちょっと考えた後にしまい直しました。


ジョルティ「クライブどうしたの?体調悪いの?みりん飲む?」
クライブ「いや、今日は平気だ。体調が良いからやめておく」
ジョルティ「平気の定義がどこなのかわからんけど、まぁいいなら」


こうして一行は身支度を整えて、商業街の方へと向かいました。街は祭りの後ではあるものの、すっかり日常を取り戻しているようでした。しっかりとメリハリがあるのは良いことです。キャンプ用品店を見つけて入ると、防寒用のテントは簡単に見つかりました。


トリシア「ティエ君まとめて買っちゃってよ」
ティエ「はいはい。店員さん、この防寒テントが4つ欲しいんですがー。古いテント下取りにだしたら安くなりません?」
店員「構いませんよー。ではこんな感じで……」


〈春夏冬〉
ティエ:7(1割引)


クライブ「ああ、そういえば・・・荷物が随分かさばっているな。どうするんだ?」
ジョルティ「いらない奴もまとめて売っちゃえよ」
トリシア「大きなトカゲの生き目も売っとこう」
店員「それはちょっとウチじゃ扱えませんねえ」
トリシア「それもそうだ」


ティエ「トカゲの目とこの前の宝石売っちゃう?」


ティエの言う宝石は、アージェントでディクソン家の依頼をこなして受け取った紫の宝玉のことですね。魔法を引き寄せる効果がある、不思議な宝玉です。


ノーティ「資金に困ってます?」
トリシア「別に?」


トリシアは賭けで負けたりもしていましたが、基本的にはなかなかのお大尽です。


ノーティ「売ってしまっても、まあ構いませんが……」
ティエ「いや 困ってないけど このクラスの宝石を取り扱えるのが大都市なんで……」
クライブ「…まあ、何が役に立つか分からんから持っておくのも手じゃないか?」
トリシア「なんかややこしそうな宝石だけど持っておいていいのかなぁ」
クライブ「かさばるなら俺が持っておくしな」
ノーティ「それなら持っておきましょうか、いつか使い道が出てくるかもしれませんし」
ジョルティ「宝石売って美味しいもの食いたい」
ノーティ「さすがにそれは我慢していただくしか」


クライブ「…そういや、トリシア。すまんがジャンク屋にゴーグルがあったら修理してもらえないか?」
トリシア「修理費くれるんならかまわんよ」
クライブ「ああ、それはきちんとな」


その後彼らはジャンク屋に向かい、壊れたゴーグルを買って修理を行っていました。


〈修理〉
トリシア:12


トリシア「さてこの街にもそこそこいたけどもこれからどうするー?」
ノーティ「そろそろ移動したいところですが、誰かに聞き込みましょうか」
ジョルティ「そういや昨日、何か怪しい地図とか買ってなかったっけ?その情報収集もしておきたい」
ティエ「ああ、射的で落とした地図ですね。あの地図、さっと見てみましたけど、どうやらここからかなり北東の方のようです。まだしばらく宝探しには行けなさそうですね」
トリシア「聞き込みというと行政施設区とか?旅船港って結局何処につながってんの?」
ノーティ「ラ・ヴィスを経由してブリージアと取引があるとは云ってましたね」
トリシア「ラ・ヴィスってのは街ー?」
ノーティ「お酒を輸入していた街の名前だったと記憶していますが……」


トリシア「お酒かー・・・なんかあんまり酒にいい思いしてる気がしないのだけれども」
トリシア「行政施設区に言って聞けば、旅船港の事とかも教えてもらえるかな」
ジョルティ「おう、とりあえず行こう行こう」
ノーティ「それでは向かいましょうか」
トリシア「ついてくー」
ティエ「商業街に残って旅に必要なものの準備をしておきますね」


次の目的地を探すため、ノーティ・トリシア・ジョルティの3人は行政区の方へと馬車で向かっていきました。確かに、クローナディアには10日以上と、かなり長い間滞在しています。そろそろ、移動の時でしょうね。……この時、流れから、船に乗れそうということもあってちょっと楽しみになっていました。


役所職員「おはようございます。何か御用ですか?」
ノーティ「私としては当面の目的として東にあるフリーグゼルというところへ向かいたいので……そちらの方面に行きたいのですが……この辺りの街についてお教えいただける職員の方はいらっしゃいますか?」
ジョルティ「フリーグゼルってすげー遠い所じゃないの?」
ノーティ「ま、まあ……そうですね、ちょっと遠いかな……?」


役所職員「東の方ですと、やはり隣のラ・ヴィスに行くのが良いかと思います。我が都市とも親交の深い都市ですし、比較的旅客の方も多くいらっしゃいますよ」
役所職員「ラ・ヴィスに行くのであれば、今は大河を通る定期船に乗る方が多いですね。定期船の就航前は陸路での交通が中心でしたが、砂漠ですので……、今はあまり使われていません。旅慣れた方なら問題無いとは思いますが」
ノーティ「船旅ですか、初めてですがそれもまた良いでしょう。他に旅人が行く街といえば?」
トリシア「定期船って他に何処に渡ってるんです?」
役所職員「定期船はラ・ヴィスのほか、更に東のリーテまでの便もございます。ただ、経路は同じですから、一度ラ・ヴィスで降りる方が多いですね」
役所職員「長く船に乗り続けるのは慣れていない人にとってはなかなか辛いものですので、皆さんも慣れていないようであればラ・ヴィスで一度降りる便をお勧めします」
トリシア「ちなみにここから西側にも便ってあるんです?」
役所職員「西ですか、西となりますと炭鉱ぐらいしかありませんので……定期便はありませんね」
トリシア「ナルホドー。乗船料っておいくらですか!」
役所職員「ラ・ヴィスまでの定期便は、お一人様基本運賃が200G、客室のグレードによりお値段が上がります。大きな動物は1頭につき20Gとなっております」


ノーティ「私は砂漠をまた歩きたくはないですね…」
ジョルティ(ノーティ君、割引券とかないの?って聞いて!!)
ノーティ(私だってそんな卑しいこと聞きたくないですよ!)


ノーティ「旅人はラ・ヴィスに何を求めて行くのでしょう? 何かめぼしい物が?」
役所職員「ラ・ヴィスは航路・陸路共に流通の要衝となっている場所ですので、各地のものが集まるのが特徴ですね。珍しい物なども探しやい場所なので、商人の方にも人気があります」
ノーティ「いいところじゃないですか、行こうじゃないですか」
ジョルティ「商業が盛んってのはいいもんだ。自然と旨いもんも集まる」


トリシア「とりあえず聞くことってそんなもんかなー?」
役所職員「次の街に行かれるのですね。そのー……もしよろしかったらサインを頂けませんか……?闘技大会で見ていまして!」


〈礼儀作法〉
ジョルティ:14
役所職員:10

ジョルティ「構いませんよ」


ジョルティは突如としてやたらいい声を作って話始めました。私を含めて普段の彼を知っている者からすると笑いそうになりますが、役所の方はどうにも感銘を受けているようでした。……ノーブルとはいったい。


役所職員「ありがとうございます!あんな戦い方は初めて見ました!」
ジョルティ「なに、旅をしていれば自然と強くなるもんです」
ジョルティ「また機会があれば出場させて頂きますよ」


そんなことを言いながらサラサラーっとサインを書いていました。……まあ、役所の方が喜んでいるようなのでそれはそれで良いのですが。


ノーティ「それではありがとうございました、港の方に向かわせていただきます」
ジョルティ「そうだ、占い師ってこの街にも居る?あと天気予報士も」
役所職員「ええ、おりますよ。商業街の方に何件かあるかと思います」
トリシア「とりあえず商業街に向かってあっちと合流かねー」
ノーティ「そ、そうですね。できれば砂漠は嫌ですね……」
ジョルティ「パワー辺りは砂漠でも良いって言いそうだけど、俺は勘弁かなぁ…」


彼らが行政区から商業街に戻ると、ティエが買い付けた木箱を買い付けた動物に積み込んでいる所でした。


トリシア「ただいまー」
ジョルティ「準備はどうだー」
ティエ「おかえりー 木箱がこんなに安く買えたんだ!」
ティエ「動物をこの割引率で飼いたかったよね!」
ティエ「よね…」
ジョルティ「お、おう」
ノーティ「まあ、そんなに上手く行かないものですよ」
ティエ「と いうことで 新しいおともだちです」


ティエは新しく購入した荷運び動物を戻ってきた彼らに紹介していました。ニハ・コビ・ドウ・ブツという名前のようです。……いや、その、何も思ってませんよ?酷いネーミングセンスだとか、そんな酷いこと思っていませんからね?


トリシア「行き先の情報は--って感じだった。行き先は同じだけど、航路か陸路かだね」
ノーティ「砂漠を渡っても大した日数にはならないでしょう 暑さも和らいでいるかも知れませんし」


……航路で行きたいはずのノーティがしっかり陸路側のフォローを入れていました。何というか、実にフェアでノーブル然としていると思います。……ノーブルではないんですけども。


トリシア「動物のえさ蓄えてても仕方ないし陸路希望かなー」
クライブ「任せた」


クライブは荷運び動物の方を向いたまま適当に返答していました。この差!


ティエ「動物の餌は腐らないし船で行ってエサ要らなかったら売ってしまえば良いのでは?」
ティエ「砂漠は得意地形なんで野営は出来ますけど行軍としては足を引っ張る自信があります!」
ノーティ「ティエさんのことも考えて船旅でも良いのでは! なあ!」


ノーティはそう言いながらバシバシとティエの背中を叩いていました。……あれ?ちょっとおかしい?


ジョルティ「最近肉が多かったしな……魚が食いたいから船に一票」
ティエ「どちらでも構いません」
クライブ「同上」
ノーティ「私は船旅が良いので……船旅で良いですか?トリシアさん」
トリシア「イイヨー」
ティエ「最悪エサはペットでも飼いましょう」


ノーティ「それでは普通のグレードの客室で向かいましょうか 特にお金をかけるところでもないでしょう?」
トリシア「200Gだと雑魚寝だぞ」
ノーティ「あー……個室で」
ティエ「6人部屋があるみたいですよ」
ノーティ「ならそれが無難ですね。そうしましょう」
ティエ「なら、基本運賃が5人で1000G、部屋代が20G、大型動物10頭で200Gなので、1220Gですね」
クライブ「待て、アフロを1人忘れている」
ティエ「……荷運び動物の箱に入れて運びましょう」
ノーティ「ええ……」


ティエ「まあ、なんにせよ明日ですかね。石炭の買い付けがまだなので、明日朝に済ませて、そのまま出発という形で」
ノーティ「分かりました」


そうして彼らは宿へと戻っていきました。
……その日の夜、夕飯でジョルティが出店で買った臭い美味しい食品を開封し、阿鼻叫喚を引き起こしていたのはまた別のお話。……詳しく書けと言われてもすぐに外に出たので書けませんよ?


の月 2日~



そして翌日、クローナ・ディアで過ごすのも今日が最後だと思うと、少々名残惜しくもあります。
これほどの規模の都市はもうしばらくはないでしょう。とはいえ、新しい旅先にも期待が膨らむ、そんな朝でした。
……この時はまだ、そんな気分でした。


〈コンディションチェック〉
クライブ:8
ティエ:16(絶好調)
ノーティ:6
トリシア:10(絶好調)
ジョルティ:14(Critical)


クライブはどこか体調が悪そうにしていました。……好調じゃないだけでそこまで体調が悪いわけではないはずなのですが……。


ティエ「さてと、それでは商業街に寄ってから港ですかね」
ノーティ「ですね。あ、そうだ、なら1つ試してみたい魔法が」
ティエ「ほほう」
ノーティ「儀式魔法なので少し時間がかかりますけど良いですか?」
ジョルティ「いいよ。俺も幸運の魔法使っておくわ」


承諾を得ると、ジョルティとノーティは宿を出た近くで魔法陣を書きはじめました。そして、長い詠唱を始めます。


【ジョルティ:呪文魔法「ラック・ラック・ラック」】
魔法発動:9
対象:ティエ・ノーティ・ジョルティ


【ノーティ:冬魔法「セブンフォーチュン・フリゲート」】
魔法発動:15
効果:1(マーチャント)


魔法の詠唱が終わると、空中に大きな船が現れました。その船には釣竿を携えひょうたんを持った、縁起の良さそうなご老人が乗っています。ホッホッホと笑いながら、ティエに小槌を振って帰っていきました。
……この魔法は、フクノカミと呼ばれる幸福の精霊のようなものを呼び出し、職業1つに対して祝福を与えるというものです。


ティエ「あ、マーチャントの神様!実家にあった!」
ジョルティ「その魚寄越せ!!」


ジョルティはその船に飛びかかりましたが、触れることはできず地面に叩きつけられました。……何をしているのやら。


ティエ「では、神様のご加護もあるということで、早速商業街で準備をしていきま……おっと」
ノーティ「?」
ティエ「あれ ここ最近の祭りの散財や、動物代、船代でファンドに回せない 転じてパーティ資産がちと心許ないでござるな」
ノーティ「優勝賞金結構使いましたよね? ……お金足りてます?」
ティエ「足りないかも……?」


彼は嘘をついています!資金は潤沢です!というか口調が怪しすぎますよ!


ノーティ「仕方がないですね……優勝賞金分補填しましょう 私は大会に出ていなかったわけですし」
ティエ「わぁ!ありがとうございます」


……ノーティも少しは人を疑った方が良いかと思います。まあ、悪いことに使われるということはないでしょうけれども……。


商業街に移動する道すがら、ティエはそれぞれからお金を集めて、石炭の購入の準備をしていました。


ティエ「おじさんー石炭くださーい」
ティエ「とりあえずこれで買えるだけー」


集まった膨大な額の財布をちらりと材料店の店主へと見せています。


材料店店主「ふーむ、これなら45個ぐらいですかね」


ティエ「大量買いですしこのくらいでどうです?」


〈春夏冬:口八丁〉
ティエ:10
〈ラック・ラック・ラック振り直し〉
ティエ:14(6割引き)


材料店店主「では勉強させていただいてこのぐらいで」


ティエ「ではこれで。 じゃぁ折角勉強していただいた分でさらに27個程」


〈春夏冬:口八丁〉
ティエ:18(8割引き)


材料店店主「ふむふむ、ではこのくらいですかね」
ティエ「それではさらに20個程」


〈春夏冬:口八丁〉
ティエ:14(6割引き)


材料店店主「随分お買いになりますねぇ。ありがとうございます」


ノーティ(何か旅に必要な物を買い込んでいるようですね……)


騙されています、騙されていますよノーティ…。


ティエ「あ、木箱に若干の余裕が……あと8個で終わりかな」


〈春夏冬:口八丁〉
ティエ:14(6割引き)
 
材料店店主「お若いのに良い商いの腕をお持ちですね。ラ・ヴィスに行ってみてはいかがですか?あそこは商人の都ですよ」
ティエ「ええ その予定なのです」
クライブ(さながら見た目は行商人と護衛の一派か)
材料店店主「それは良いですね。同じ商人としてご健闘をお祈りしております」
ティエ「ありがとうございますー」


結局、ティエは都合100個もの石炭を買い込んでいました。比喩でもなんでもなく行商人ですね?……ちなみに、彼らが離れた後、材料店店主が先程の商売の帳簿を付けていましたが、黒字でした。恐るべしマーチャントの化かし合い。


こうして、準備を終えた彼らは港の方へと向かっていきました。港には相変わらず大きな船が停泊しています。帆と煙突が付いた、変わった形の船でした。


窓口「いらっしゃいませー」
ノーティ「どのくらいの時間でラ・ヴィスにつきますかね?」
窓口「ラ・ヴィス定期便は通常4日の行程です。天候によって遅れがある場合もあります」
ノーティ「それでは5名と動物10頭、部屋は6人共同で今日出港の便をお願いします」
窓口「ありがとうございます。こちらがチケットになります。1時間後に出港の便がございます」
窓口「動物はこちらに。船倉で輸送致します」


ノーティ「これはどうも。それではお世話になります」
ジョルティ「あれ?アフロどこいった?」
クライブ「さて・・・姿が見えないが。まあ、どうせいつのまにかいるんだ。気にする必要あるまい」


パワーなら動物の餌箱に入ってましたよ……。
まあ、それは良いとして、30分ほどすると、汽笛の音が聞こえてきました。乗り込みが始まったようです。


ノーティ「乗り込みましょう。砂漠を彷徨することにならなくてよかった!」
ティエ「のりこめー」


こうして、彼らはクローナ・ディア↔ラ・ヴィスの定期船へと乗り込みました。彼らにとっても、私にとっても、初めての船です!文明の息吹を感じますね!見たところ河幅も深さも十分なようなので、安全に進むことができるでしょう!なんて楽しみなのでしょう!……と、この時は思っていました。
ちなみに、一行が取った部屋は一般の6人部屋でしたが、陸上の宿と遜色がないもので、随分とゆったり過ごすことができそうでした。


ティエ「ゆれるー」
ノーティ「なかなか良いところじゃあないですか」
ジョルティ「こんだけデカい船だと壮観だなー」


大型の船は小型のものに比べると揺れを軽減することが出来るため、初めて乗る人でもある程度は気にならず乗っていることができます。……ある程度は。


まあ、竜の君も先程から何かを察しているような表情をしておりますので、はっきりと言ってしまいましょう……。


〈船酔い判定:体力+精神:目標10〉
クライブ:3(失敗)
ティエ:8(失敗)
ノーティ:7(失敗)
トリシア:9(失敗)
ジョルティ:6(失敗)
アリア:Fumble


〈荷運び係・ラック・ラック・ラックによる振り直し〉
クライブ:7(失敗)
ノーティ:Critical
ジョルティ:6(失敗)


まあ……今になって思えば、当然といえば当然ではあるのですが……慣れない船旅、慣れない揺れに体がそう簡単に慣れてくれるわけもなく……。私も含めてノーティ以外の全員がその揺れにかなり参っていました。……かなりマイルドに表現しております。具体的にはコンディションが2つほど下がっていました。……私は4つほど。
ノーティは始めこそ少し辛そうにしていましたが、少しするとケロっと揺れに馴染んだのか、全く気にしていないようでした。……羨ましい限りです。


クライブ(気持ち悪い…酒…いやしかし、道中は禁酒…)
ティエ(まずいですよ)
ジョルティ「気持ち悪いけど飯はうまい!!」
ノーティ「穏やかな波ですね……って、あれ?」
ティエ「きもちわるい」
ティエ「吐くぞー すぐ吐くぞ−」


ロビーなどをうろつきながらグロッキーになっている彼らを見かねて、船員の方が話しかけてくれました。


船員「酔った時は甲板で風にあたると良いですよ」
ティエ「じゃあ外で吐くね…」


そんなこんなで、船上での初日は過ぎて行きました。ちなみに、夜にはノーティから預かったお金の端数で皆が美味しい食事を食べていました。
……私はこの時、次の日から化身となって付いて行くことを決めました。


の月 3日~



夜を超えた頃、次第に天気が悪化しているようでした。河波は高くなり、自然と船の揺れも大きくなっています。……飛ぶにも滞在するのにも辛いという最悪の流れに私は戦々恐々としつつ、雨の竜にささやかな恨みの念波を飛ばしていました。


〈コンディションチェック〉
クライブ:9
ティエ:10(絶好調)
ノーティ:11(絶好調)
トリシア:11(絶好調)
ジョルティ:Fumble(羽根飾りで通常失敗)


どういうことなのか、それでも彼らは体調が悪くなさそうでした。若干一名を除いて。


船の揺れが増したことで、昨日以上に厳しい環境が私達に襲いかかります。……私は飛ぶに辛いということで、何とか竜人として我慢することにしましたが……。


〈船酔い判定:目標12〉
クライブ:7(失敗)
ティエ:4(失敗)
トリシア:13
ジョルティ:9(失敗)
ノーティ:12
アリア:3(失敗)


昨日の船旅で慣れたノーティと、揺れが強くなったことで返って波長があったらしいトリシアは今日は体調が良さそうでした。私も昨日よりは多少マシとはいえ、やはりかなり体調が悪く、終始窓から外を眺めていました。


ティエ「そういえば、体調が悪いときに、もっと体調を悪くしてから、魔法で直すという荒療治があるらしい」
ジョルティ「失敗すると死にそうだ……」


クライブはストレス発散のためか、手持ち無沙汰なのか、寝具を壁に向かって投げていました。……私も何かしら発散できるものが欲しいものです。


船員「今日は少し天気が悪いので甲板には上がらないようにして下さい。危ないですからー」


という言葉がもはや死の宣告のようにも聞こえました。……いや、私は上がっても大丈夫だとは思うんですけれどね……。


船員「まあ、沈んだりすることはないのでご安心下さい。この程度の雨風はなんてことはありませんよ」
ノーティ「いつものことなんでしょうね」
クライブ「返って沈みそうだ……」
船員「可能な限り揺れを抑えるように航行致しますので、収まるまではご辛抱下さい」
トリシア「河ってそんなに揺れるもんなの…?」


私もそこは気になっていた所なのですが、どうやら河幅が非常に大きいことも関連して、半ば海と変わらないような波が生まれているようです。本当に勘弁して欲しい所ではあるのですが……。


結局、その日も極めて体調が悪いまま過ぎていきました。彼らは体調が悪くともしっかり食事を取らなければならないということを旅から学んでいたためか、食事だけは良いものを十分に食べていました。……ノーティのお金で。


ノーティ「大きい船だと料理も上等なものですね……」
トリシア「ゴハンオイシイナー」


の月 4日~



朝を迎えると、まだ天気は良くないようでした。しかし、さすがに1日酷い天候の中で船に乗っていただけあり、彼らも少しずつ波の揺れに順応してきているようでした。私は全く慣れていないのですが、何故でしょうか?山の生まれだからですか?


〈コンディションチェック〉
クライブ:16(絶好調)
ティエ:15(絶好調)
ノーティ:9
トリシア:5
ジョルティ:Critical


こんな中でもすこぶる体調の良さそうな3人が羨ましい限りです。朝起きて暫くは大丈夫そうでしたが、やはり半日ほど経つと少しずつ揺れが体調を蝕んできました。これは、彼らも同じのようでした。


〈船酔い判定:目標11〉
クライブ:3(失敗)
ティエ:7(失敗)
ノーティ:10(失敗)
トリシア:5(失敗)
ジョルティ:11
アリア:4(失敗)


今日は昨日は大丈夫だったノーティやトリシアも揺れにやられているようでした。唯一ジョルティだけが無事のようでしたが……。


クライブは相変わらず寝具を壁に向かって投げつける遊びをしており、ティエもそれに反応して打ち落とす遊びをしています。……退行しているのでは……?


船員「今日も天気は悪いですが、縄柵を張りましたので、甲板に上がって頂いても良いですよー」


私も含めて部屋でぐだぐだしていると、船員が訪れて甲板へ上がれることを教えてくれました。


ティエ「ほう じゃぁ吐きに行くか」
船員「釣りでもなさると気が紛れるのではないでしょうか」
ジョルティ「元気になったし、釣りでもするかー」
ティエ「釣りって両手使うんだけどちょっと身を預けられるところあるんですかね?
船員「そこはまあ、気合で」
ティエ「気合いかぁー」
トリシア「煙草吸いに行こ」


結局、皆で甲板に上がることにしました。私としても室内に篭っているとさらに参ってしまいそうなので、外に出られるのはありがたいところです。
甲板に出た彼らは、釣りをしたり、ロープで漁をしたり、その場で捌いて食べたりと2日振りに楽しそうにしていました。クライブは短剣をロープに括り付けて投擲していました。なんだか最近は物を投げるのにハマっているのでしょうか?


さて、そんな風に彼らが釣りを楽しんだり、風に当たりながら煙草を吸ったりしていると、甲板の別の場所から声が上がりました。
ティエが声の上がった方に視線を向けると、船員が2人河の遠くを見ながら話をしていました。


船員A「向こうに何かいますね」
ティエ「くじらかな?」
船員B「うーむ、幾つか大きなヒレが見えるようだが……まあ、船には影響はないだろう」
クライブ「ぁん・・・? 河川なんだからそこまで騒ぐものがいるなぞ…」
船員A「大丈夫ですかねぇ。あのヒレ、随分鋭そうですけど、魔物じゃないですか?」
船員B「いやいや、ただの魚だろ、そんなに不安がることはないさハハハ」


ジョルティ「どれどれ、俺が見てやるよ」
クライブ「……まあ、見ておくか」


〈動物探し〉
クライブ:10
ジョルティ:14


ジョルティとクライブが船員の見ている方向へと目を凝らします。遠いものの、確かにそこには大きなヒレが見えました。そのヒレは刃のように鋭くなっています。


ノーティ「何かいるんですか?」
ジョルティ「んー、まずいかもな、確かにアレ魔物だぞ」


〈知見〉
クライブ:8
ティエ:8
ジョルティ:10


目を凝らした2人と目を向けたティエには、その刃のようなヒレが「斬馬」のものであることが分かりました。鋭い背びれを持つ、鮫のような魔物です。その鋭い背びれは金属製の鎧をも貫く程のものです。
また、ジョルティはその中の1匹が、通常の斬馬に比べて大きい事がわかりました。この斬馬を古代に伝わる軍船、ドレッドノートになぞらえ弩級斬馬と呼称します。今決めました!


ジョルティ「あー、あれこないだドラゴニカ眺めてたら載ってたわ。こっち来たらちょっとまずいかもな」
クライブ「縄だけは駄目そうだな…槍でも買っておくべきだったか」
ジョルティ「しかも結構デカいの居るなー」
ノーティ「襲ってくるとしたら船に上がってくるんですかね? まな板の鯉ではなかろうか……」


4人は多少斬馬の方に気を掛けているようでしたが、トリシアは変わらず風下で煙草を吸っていました。


ティエ「釣る?」
ジョルティ「あれ、8メートルぐらいあるぞ」
ティエ「駄目そう」
ノーティ「船内に退避しておこう」
トリシア「一緒に退避しとこうかなー」


ノーティとトリシアの2人が船内に戻ろうとしたその時、特に大きな斬馬のヒレが船の方へと向きました。濁っていて見えにくいものの、水中には鋭い歯が光っています。……明らかに狙っているような雰囲気がします。


船員A「あれ、やっぱりマズくないですか?」
船員B「いやいや、大きいとはいってもこの船から比べれば大したことないだろ、気にすることはない気にすることはない」
ジョルティ「ノーティ、ちょっと待って。ドラゴニカ開いてくんねぇ?」
ノーティ「まあ、良いですけども」


【ノーティ:呪文魔法「オープン・ドラコニカ」】
発動判定:7


ノーティが魔法を唱えると、どこからともなく魔物事典が現れ、斬馬のページを捲ります。


【斬馬】
流線型の刀のような形をした巨大魚。
背中に鋭利なヒレを持ち、これで獲物を仕留める。
この刃は鉄も貫く鋭さである。


トリシア(ジョルティ食べたらいいんじゃないフカヒレ)
ノーティ「何匹くらい見えますか?」
ジョルティ「5匹いるな。内1匹がデカい」
ティエ「水に落ちたヤツを攻撃するらしいけど 遠距離攻撃出来たら良いってことなんかね」


ノーティ「ああいった魔物のような存在と遭遇したことは過去に例がありますか?」
船員B「いや?この辺は穏やかだからな。あれも大きいが魚だろ?」


ノーティ「ふむ……斬馬、船……聞き覚えがあるような……」
ティエ「確かに」


〈伝承知識〉
ティエ:18
ノーティ:10


ティエ「そうだ、斬馬、確か船を襲ったって例があったような」
ノーティ「ええ、確かに聞いたことがあります。ということは……」


船員A「やっぱりまずいですって!」
船員B「ううむ、とは言え武装はモリぐらいしかないぞ?ああ遠かったら当たらないしなあ……」
船員A「こっち来てる!!モリ持ってきます!!」
クライブ「おうもってこい。投げてやる」
船員B「お、おい待て!皆さんも気を付けて下さい!」
ジョルティ「よーし、釣り上げるかー!」


船員の2人は階段を下って船室へと入っていきました。斬馬は次第に船の方へと近付いて来ています。


〈戦闘開始〉
船から川面までは距離が遠く、縁まで寄っても近接攻撃をできそうにはありません。敵からの攻撃も同様で、甲板の彼らには届きそうにない状況です。
斬馬達はまだ船より遠くを泳いでいますが、明らかにこちらに向かってきています。


〈ラウンド1〉


真っ先に動いたのはトリシアでした。まだ遠い斬馬の一匹に向かって矢を射かけます。しかし、動く地面で上手く力を込めることができなかったのか、その肌に届く頃には勢いが落ち、ほぼ損傷を与えることができません。


続いてジョルティが動きます。ジョルティは今後の展開を見据え、まずスプラウトを自分に使いました。これにより、非常に機敏な動きを手に入れています。


クライブ(……短剣を投げてもいいが……捨てることになるか……。いや、良い手があるな、さっきの要領で……)
クライブ「ノーティ、確か冬魔法で武器を作れたな。槍を作ってくれないか」
ノーティ「構いませんが、何故ですか?」
クライブ「銛として使う」
ノーティ「成程」


こうして、クライブは様子を見て、ノーティは冬魔法「デザイアー・アイスソード」によって槍をクライブの手元に作り出しました。その時、同時に斬馬達が船の間近まで接近してきました。


ティエ「なんだか面白そう。私も手を貸しましょう!」


さらに、ティエがクライブに呪文魔法「ハヤブサ」を詠唱しました。クライブの動きが目に見えて高速になっています。


〈ラウンド2〉


引き続き、最初に動くのはトリシアです。今度はしっかり力を込めて射撃をし、先程と同じ斬馬に矢が突き立ちました。河面がうっすらと赤く染まっていきます。


クライブはノーティが作った氷の槍に先程まで漁で使っていたロープを括り付け、即席の氷の銛を作り出しました。その形は魚鱗を貫くのに適しているように見えます。


ジョルティは高まった敏捷を活かし、弩級斬馬へと射撃を行いました。威力が強まった矢は、確かに弩級斬馬に損傷を与えます。


弩級斬馬はジョルティの攻撃を受けながらも、鋭いヒレで持って船底へと攻撃を始めました。金属で補強されていることもあり、一発で壊れるということこそありませんでしたが、船には大きな衝撃が走ります。


そして、それに続くように、4匹の内2匹の斬馬が船底へと攻撃を行いました。船底を覆う金属板は寸断され、船倉に続く大きな穴が口を開きました。船倉に水が入り込み、その流れに乗るように残った2匹の斬馬が船倉の中へと入り込みます。すぐに沈むというわけではなさそうですが……。


その斬馬の行動と同時に、ノーティは冬魔法「フユノネムリ」を放ち、斬馬達を全員眠らせることに成功しました。斬馬は眠りながらも泳ぐ術を持っているようで、船から離れることはありません。船倉直通の梯子から中の様子を見てみましたが、すでに船倉に入り込んだ2匹も眠っていました。
ちなみに、船倉の中は膝ほどまで水に浸かってしまっており、なかなか動きにくそうな状態です。船倉は狭く、遠くから攻撃するということもできそうにありません。


ジョルティ「いまの衝撃、穴あいたか!?」
クライブ「まずいな…」
ティエ「むむ、やばそう。短期決戦!」


ティエはクライブに続き、今度はジョルティへとハヤブサの魔法を掛けます。ジョルティはさらに加速し、一周回って普通に動いているように見えました。


〈ラウンド3〉


引き続き、最初に動くのはトリシアです。トリシアは先程まで攻撃をしていた斬馬に向けて攻撃を継続しました。泳いでこそいるものの眠っているため単調な動きで、攻撃を当てることは容易だったようです。この攻撃で斬馬は目を覚ましましたが--


クライブの銛が突き刺さり動かなくなりました。クライブはそのままロープを引き、息絶えた斬馬を甲板へと釣り上げます。ティエの小さな歓声が上がります。そして、銛を抜き去って河に残っているもう1匹の斬馬へ向けて再び投擲しました。こちらはとどめを刺すには至りませんでしたが、大きな痛手を与えたことは間違いありません。


ジョルティ「伝説の漁師か何かかよ!デカイのは任せとけー!」


クライブの大捕物に奮起したのか、ジョルティは弩級斬馬に向けて思い切り力を込めて射撃を行いました。第一射がその目を捉え、第二射が苦しみにもがき開かれた大口の中へと吸い込まれていきました。弩級斬馬は河面を大きく跳ね、動かなくなりました。そのまま赤い河の流れに身を任せるように流れていきます。


ジョルティ「誰かー!男の人釣り上げてー!!あんなでっかいフカヒレがもったいない!!」
ティエ「い、いけるかなあ」


そうしている間に、クライブに銛を刺され、何とか生き延びていた斬馬が船倉へと入りました。侵攻というよりは、もはや逃避にこそ近い行為だったのかも知れません。


ノーティ「そういえば、使ったことがない冬魔法がありましたね。この際ですし使ってみますか……」


ノーティはそう呟くと、冬魔法「ピリカ・パッチポケット」の魔法を詠唱しました。これは自らを帯電させることで、触れるものに自動で反撃をするという魔法です。デメリットとして--


ノーティ「痛ッ!!思ったより痛い!」
ティエ「大ダメージ受けてる!?」


自らにも一度そのダメージが入ります。……強い電気を帯びさせたためか、ノーティ自身にもかなりの痛みが走ったようでした。


一方その頃船倉では、斬馬の1匹が目を覚まし、もう1匹が眠り続けていました。


ティエ「ダメ元で試してみます!どっかに引っかかれ!」


ティエはジョルティに頼まれてか、流れ行く弩級斬馬に向けて釣竿を振るいました。釣り針は上手く弩級斬馬の口に引っかかりましたが……悠に8メートルはある巨大魚を華奢なティエだけで支えられるわけがありません。釣竿は極めて頑丈なオリハルコンでできているため折れませんが、ティエの体が弩級斬馬の質量と船の速度によって船尾の方へと引き摺られていきます。


ティエ「おもい!たすけて!!」


誰がどう見てもサポートしないと河の藻屑です!


ジョルティ「ティエ踏ん張ってー!!伝説の漁師そっち行くからー!!」
クライブ「すこし待ってろー」
トリシア(船に引っ掛けたら良いのでは?)


〈ラウンド4〉


まず、トリシアが梯子を下り船倉へと移動しました。船倉の水は已然膝ほどまであり動きが制限されています。……違いといえば水が赤いことぐらいです。


そして、クライブがティエの方へと駆け寄り、銛を流れ行く弩級斬馬に投げ刺しました。


ティエ「軽くなった…!」
クライブ「上げるぞ!ふんぬらば!!」


【釣り上げ判定:体力+体力:合計目標20】
ティエ:6
クライブ:14
合計:20


ティエもクライブも、大きな雄叫びを上げながら思い切り力を掛けました。1種の火事場の馬鹿力でしょうか、思いもかけず弩級斬馬は宙を舞い、甲板上へと大きな音を立てて着地しました。明らかに船に悪影響がありそうな大質量ですが、流石は大型船、特に影響はないようです。……ないですよね?沈みませんね?


クライブ「ぬぅうううん!!!」
ティエ「おおー!」
ジョルティ「お、さすが伝説の漁師……!」
ジョルティ「ティエも良く腕折れなかったね」
クライブ「よし、引きずり上げたぞ。先に船倉へ向かえ」
ジョルティ「よし、ここは任せた!先に下に行ってるぞ!」
ティエ「……噛まれたら死にそうなんだよなあ」


ジョルティ、ノーティがトリシアに続いて船倉へと降りていきます。


すると、早速斬馬の1匹がジョルティ、もう1匹がトリシアへと近寄り、攻撃をしかけてきました。トリシアは攻撃を回避しましたが、ジョルティには攻撃が命中します。鋭い刃は防具を物ともせずダメージを与えますが、そもそものダメージがそれほど強くはありませんでした。
眠っていた斬馬もようやく目を覚ましたようでした。


その頃、ティエは甲板に残り、釣り上がって甲板を赤く染めている弩級斬馬を観察していました。……もう息絶えているはずですが、その目はどこか恨めしそうに睨んでいるように見えました。……まあ、いわゆる心理効果という奴でしょう。


ティエ「でけぇ! これ1発で倒すとかなんなん やばない!?」


ティエは今更になってちょっとした錯乱をしていました。……気持ちは分かりますが。


〈ラウンド5〉


船倉に下ったトリシアは改めて弓を構えて斬馬に向けて放ちますが、全く見当外れの方向へと飛んでいきました。見ると、どこかイライラしているような雰囲気です。どうかしたのでしょうか……?


クライブも弩級斬馬に刺さった銛を引き抜き、船倉へと下りました。


ジョルティは先程自分に攻撃をした斬馬に向けて、全力で弓を引き絞ります。弩級斬馬を沈め去ったのと同等の二射が通常の大きさの斬魔へと襲いかかります。勿論耐えきることは出来ません。(Critical)


ティエ「なんかスゴイ音した!?」


その衝撃的な音は甲板のティエにまで聞こえていたようです。ちなみにこの時ティエは何か使えそうなものがないかと甲板上を探していました。


残された斬馬はクライブとトリシアを攻撃しましたが、先程の一撃に恐れをなしたのか全く当たりそうにもありませんでした。


ノーティは近接戦ということもあり、様子を見て備えています。


〈ラウンド6〉


トリシアはもう一度同じく弓を放ちましたが、再び矢は全く違う方向へと飛んでいきました。先程よりさらにイライラとした様子をしています。


ジョルティ「トリシア、新しい顔いる?」
クライブ(目に見えてやる気失せてるな……船酔いか?)
トリシア「湿気ててタバコに火付かないんだけど」


……そういえば、トリシアは一本吸い終われば次の一本に手を出す人でしたね……。クライブのお酒といい、トリシアのタバコといい……。


そんな頃、手持ち無沙汰になったらしいティエも甲板から船倉へと降りてきました。


ティエ「さっきデカい音したけどなんかあったん?」
ジョルティ「俺が船沈めそうだった」
ティエ「ええ……」


ノーティ「……さっきの電気の痛みが残ってるので回復します」


ノーティは1人で自分に「キュアタッチ」と「キュア・プラス・プラス」を使って回復していました。この時、ノーティは唐突に、何か魔法の極意のようなものを見つけたような面持ちをしていました。


【六分儀スキル習得】
〈高速詠唱〉
習得条件:1戦闘で4種類以上の魔法を使用する
効果:MPを追加で4消費することで、1ラウンドに異なる魔法を2つ使用できる


ノーティ(いずれ使える時も来るでしょう。魔力は余分に消費しそうなので注意しなければなりませんね……)


そこからは……特筆すべきこともあまりありませんでした。クライブとジョルティがともかく攻撃を続けました。1匹は倒れ、何とか生き延びたもう1匹も逃げようとしていますが……クライブが刺さった銛をロープで引っ張っているために逃げることもできません。


〈ラウンド7〉


イライラをなんとか押し留めながらトリシアは射撃を行いますが、やはり攻撃は当たりませんでした。……これほど影響がでるものでしょうか。


ノーティはやることがなくなったのか、「雨の歌」を歌い始めました。……が、あまり上手ではありませんでした。そういえば、ノーティがミンストレルとなって単独で歌ったのは初めてですね。


今度はティエの方が「火竜の歌」を歌い始めました。ティエはといえばミンストレルになりたての頃は余り上手ではありませんでしたが……今はすっかり上手になっています。


ジョルティ「ティエはホント上手くなったな。でも、なんでお前ら急に歌い出したん?」


クライブ「しゃおらー!」


そして、雄叫びと共にクライブが残った1匹から銛を引き抜き、もう一度投げ刺しました。……これにて、斬馬は全滅しました。


【戦闘終了】


ジョルティ(クライブのおっちゃん、完全に漁師だ)
ティエ「さて、これももって上にあがりますか」
クライブ「うおりゃー!」


クライブは船倉に横たわった3匹の斬馬を甲板に引き上げました。


ジョルティ「さてと、捌くか!」
トリシア「待って、一服してから」


トリシアの一服を待ってから、斬馬の解体が始まりました。


【材料加工】
トリシア:14,14,9,6,15
「美味しい食料11個」「きもくて臭う剣4本」「きもくて臭う斧1本」を獲得


……タバコを供給したためでしょうか。それとも元々料理屋の娘だからでしょうか、ジョルティが手を出す間もなく、トリシアが弩級を含めて5匹の斬馬を捌きました。1匹だけは解体の途中で失敗してしまったようですが、他はすぐにでも食事にできそうな状態になっています。


ジョルティ「一杯トレタネー。出番ねぇー」
トリシア「暇だから加工しとくよ」
ジョルティ「やったぜ!」


トリシアが捌きたての斬馬を干す用意を始めた時、ちょうど銛を持った船員が甲板に戻ってきました。


船員B「皆さん、大丈夫で……!?」


船員は甲板に入った瞬間にヒッと声を上げましたが、すぐに気を取り直しました。


ジョルティ「おう、大丈夫ー」
クライブ「大丈夫だ、問題ない」
船員B「こ、これは……皆さんが倒してくださったんですか。銛を持ってきたんですが遅かったようですね」
船員A「すごい…」
ノーティ「まあ、出来る限りのことはさせてもらいました。これも旅人の役目です」
船員B「先ほど凄い音がしたのですが、特に被害はなかったようですね」


ティエ「あ、船倉がですね。鮫3体によって穴空いてますんで、塞いで貰えると…」
船員B「!?船倉にですか!?分かりました、急ぎます! おい、修理要員を連れて来い!」
船員A「はい!」


船員の1人が急いで船倉に降りていきます。が、中の様子を見てすぐに戻ってきました。


船員B「恐縮ですが、もしお客様の中に修理ができる方がいれば手伝って頂ければ……。思った以上に穴が大きく、修理要員を待っていると危なそうでして……」
トリシア「いませんかー」
ジョルティ「お前だお前」
トリシア「えっ」
ティエ「えっ?」
ノーティ「えっ」


トリシア「真似事くらいなら…」


息の合ったプチコントをしていましたが、トリシアが観念して名乗り出ました。


船員B「修理ができる方ですか!? お願いします、手伝って下さい!」


船員に続き、トリシアが船倉に入りました。船員の説明によると、船倉の穴は即座に船を沈める程のものではありませんが、修理次第では航続が難しくなる可能性があるとのことでした。


トリシア「やれるだけやるかー」


【修理】
トリシア:17(成功)


トリシアは初めてとは思えない大型船舶の修理とは思えない手腕で船倉の穴を塞ぎました。船倉には水が残っていますが、新たに入る水は止まりました。


船員B「ありがとうございました!助かりました!」
船員一同「ありがとうございました!」
ジョルティ「構いませんよ、ところで、スイート客室空いてたりとか…?」
船員B「い、いえ満室でございまして……」
トリシア「甲板で余った肉干していいですか?」
船員B「それぐらいなら勿論構いません!」


【物づくり】
トリシア:21


トリシア「良い出来」
ノーティ「ものづくりとなると目が違いますね、目が」
トリシア「出来た食料は持っておくから、ヒレは誰か持っておいて」
クライブ「まあ、俺が妥当だろうな……案外重たい」
ジョルティ「くさい」
ティエ「えんがちょ」
トリシア「くさい」
クライブ「お前ら……!」


クライブは預かった剣を彼らに投げつけ始めました。……ティエと、一言も言っていないノーティに当たっていました。


ノーティ「関係ないのに!」


はてさて、一波乱が過ぎ去ったためか、河波も次第に収まってきました。その後は、揺れも少ないゆったりとした船旅を楽しむことが出来ました。船足が少しゆっくりになったためかも知れませんが。


の月 5日~



そして翌日の昼、彼らの乗った蒸気船は、定刻より少し遅れたものの、無事ラ・ヴィスの港へと到着しました。
船倉から荷運び動物が降ろされ、彼らもまた船から降ります。すると、船から1人の男が降りてきました。白い髭を蓄えた初老の男性です。


ティエ「? おはようございます」
ノーティ「どうも」
白髭の男性「突然失礼致します。私は船長のロック・ハウゼンと申します。この度は誠にありがとうございました。皆様のお陰で無事航行を終える事ができました」
ハウゼン船長「誠にささやかではありますが、お礼をさせて頂ければと思います。こちらは、次回乗船時にお使いになれる乗船無料のチケットです。最も良い客室を優先的にご用意致します」


!?余計なことをしないで下さい!!もう船は嫌です!!


ハウゼン船長「もし、ラ・ヴィスで何かお困りのことがございましたら、船舶組合の方までお越し下さい。私の名前を出して頂ければ、便宜を図るように申し伝えておきます」


ティエ「ありがとうございますー」
ジョルティ「さんきゅー」
ノーティ「これはご丁寧に。素敵な旅をどうも」


ノーティの言葉にはどこか含みがあるように感じました。まあ、言いたくなる気持ちも分かりますが。


ハウゼン船長「それでは、改めましてありがとうございました。良き旅を。大河の竜の加護のあらんことを」


こうして、流通都市ラ・ヴィスの地に降り立ちました。
ラ・ヴィスはクローナ・ディアに比べると小規模ではあるものの、港の規模だけは劣っている様子はありません。特に商業港は栄えており、多くの人の往来があるようでした。


第十四話「波と波とのに」 完






……と、今回はこのようなお話となりました。
体が弱いわけじゃないんですよ、本当に船の揺れは独特で辛いんですよ!竜の君も乗ってみれば分かります……!
まあ、乗ったら沈むと思いますけれども……。
私はこの時、次なる船旅に戦々恐々としていました。……本当に恐れるべきことがすぐ近くに迫っているにも関わらず。
ともあれ、今回は無事に旅を終えることができました。


【MVP:ジョルティ】




こちらは、2016/9/9・10に行ったオンラインセッションのリプレイです。
今回は大河を下る船旅となりました。突然船がサメに襲われたのはシャークネードの影響です。皆も見よう!!!
……閑話休題。今回はセッションとしてはちゃんと流れがあり、上手く構成できたかなーと個人的には思っています。
次回セッションで台無しにするので、それまでどうぞお待ち下さい……。





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