彼らにとっては恐らく自覚がないかと思いますが、死の運命をくぐりぬけ、新たなる日を迎えることができました。
竜の君には負担をかけてしまって申し訳ありません。ここからの物語で挽回させて頂きますね。
今回のお話は、蔵での戦いから3日ほどゆっくりとしてからの話となります。
彼らは已然、ラ・ヴィス露店商会の宿に滞在しておりました。
第十七話「古き竜の都のドーレス」
~秋の月 10日~
秋も中旬に差し掛かり、段々と肌寒さを感じるようになってきました。
皆も少しずつ厚着になってきているようです。私も風邪を引かないようにしないといけませんね。
〈コンディションチェック〉
パワー:Critical(16:絶好調)
クライブ:13(絶好調)
ティエ:8
ノーティ:8
トリシア:4
ジョルティ:8
ノーティ「そろそろ冬支度も必要になってくるころでしょうかね?
少し寒気が」
ティエ「この街なら大体のものは揃いそうですねー」
彼らが商会宿のロビーで朝食をとっていると、この前の露天商、カルディエが訪れました。
カルディエ「おはようございます、皆さん」
ティエ「おはようございます」
ノーティ「おはようございます、先日はどうも」
カルディエ「いえ、こちらこそ助かりました。ラ・ヴィスはもう見て回られましたか?」
ノーティ「ええ、大体は。なかなか興味深い街ですね。商業街独特の文化を感じます」
ノーティは昨日の夜あたり、皆と「案外何もない街ですね」というような話をしていました。
ティエ「ええ、記念通貨いいですねー」
記念通貨というのは、この街が生産している土産品のようなものです。繊細な装飾がされている、いわゆる特産品ですね。
カルディエ「ははは、それこそ商店しかありませんからね」
カルディエ「マーチャントの方には興味深い場所でしょうが、他の方には退屈かもしれませんね」
ジョルティ「美味い飯があればどこでも都」
カルディエ「それなら、この街はちょっとした都ではあるでしょうか?」
カルディエ「と、実は本日はご紹介したい方がおりまして。皆様、本日はなにか予定がございますか?」
ティエ「どうだっけ?」
ノーティ「いえ、特には。どちら様でしょう?」
トリシア「自室を警備する仕事が…」
クライブ「商会の宿で何言ってる」
ジョルティ「主人、それって酒蔵とか酒絡みかではあるまいな!?」
ジョルティは、クローナ・ディアのお祭りで騒動になった「ローレライの涙」がこのラ・ヴィスから輸出されたものであることを思い出して、警戒しているようでした。
カルディエ「いえ、お酒は関係ない、と思います」
ジョルティ「セーフ!」
カルディエ「私の古い友人で、考古学者をしている者なのですが…」
ノーティ「考古学者! ほう!!」
トリシア「ノーティが食いつきそうな人っすね」
2人の言葉はほぼ同時でした。何だかんだでこのパーティも馴染んできているようで何よりです。
カルディエ「この前の蔵の件を話した所、ぜひお会いしたいとのことで…。もしよろしければですが」
ジョルティ「おいおい,立て続けに厄介ごとじゃないだろうな?」
カルディエ「そこはどうぞ本人から聞いて頂けると…」
クライブ(面倒そうだな…まぁ任せるか)
ノーティ「まあまあ、建設的なお話かもしれませんよ?これからの旅路を決めることにも繋がるかもしれませんし」
カルディエ「お会いして頂けるようでしたら、今日の昼頃にこちらに連れて参りますので、よろしくお願いいたします」
ティエ「わかりましたー」
カルディエ「ありがとうございます。それでは、よろしくお願いいたします」
そう言って、カルディエは商会の宿を去っていきました。
パワー「よく分からんけどとりあえず草取りにいくぞノーティ!」
ノーティ「はいはい、ちょっと待って下さいね」
〈薬草取り:砂漠:目標10〉
パワー:7(失敗)
ノーティ:5(失敗)
ノーティ「ないですねぇ」
パワー「砂しかねぇ!」
彼らが薬草取りから戻るころには、昼になっていました。昼頃に、カルディエが友人という人を連れてきます。
その友人は高身長で、眼鏡をかけた男性でした。
カルディエ「こちらが、朝にお話しした私の友人で考古学者のディアン・オンスと申します」
カルディエ「こちらが、この前話した旅人の方々です」
ティエ「こんにちはー」
ディアン「初めまして。ディアンと申します」
ノーティ「我々は旅のパーティでございます。私はノーティ・ユーデクス」
ディアン「昨日、カルディエから腕利きの方々がいると話しを聞きまして」
ディアン「お話によると遠回りなのがお好きではないようでしたので、単刀直入に申し上げますと……遺跡調査の護衛をして頂けないでしょうか」
ティエ「いつからですかー?」
ディアン「特に急ぐものではありませんので、そちらの都合の良い時で構いません。遺跡も遠くはありませんから、往復で3日ほどで戻れるかと思います」
ノーティ「そんなに危険なところなのですか?」
ティエ「あとは報酬も」
ディアン「報酬については、6000Gほどを考えております」
ディアン「危険度についてはハッキリとはいえませんが…なにせ長らく調査が進んでいない場所ですので、実際に見ないと分からないといったところです」
ノーティ「我々にも事前情報を頂きたいのですが。一体何をお探しで?」
ジョルティ「ふーん、ところで何の遺跡なんだ?」
ディアン「調査を予定しているのは、ラ・ヴィスの対岸にある”水竜の社”と呼ばれる遺跡です。クローナ・ディアの水竜信仰以前からあると考えられている場所で、具体的な調査が出来ればと。」
また、竜の名前が出てきました。水の竜、恐らくは大河の竜のことでしょう。そういえば、河を下っている時には見かけませんでしたね…。
トリシア「一緒に行くのはディアンさんだけなのー?」
ディアン「はい、私だけの予定です」
ノーティ「また竜……護衛させていただきます。皆さんの意見は?」
クライブ「…任せた」
ジョルティ「なんだっけこないだ取った臭い魚?またアイツでないよな?」
ディアン「斬馬ですかね?」
ディアン「数日前に河で出たと騒動があって、航路はかなり調査されているようです。今は大丈夫のようですよ」
どうやら、ディアンは彼らがその騒動の当事者であるとは知らないようですね。
ティエ「わかりました、お受けいたします」
ディアン「ありがとうございます。いつ頃が都合がよろしいですか?」
ティエ「それはちょっと皆で相談を」
ノーティ「私は今からでも準備はできておりますが」
トリシア「イツデモー」
ティエ「保存食その他在庫はどうなってましたっけ?」
ディアン「ああ、調査日程中の食事はこちらで用意致しますよ。」
ノーティ「それは助かります」
ジョルティ「美味い飯が良いなー味に五月蝿いんだよなーコイツらー」
ジョルティのセリフに、私も含めて全員が「それをお前が言うか?」という顔をしていました。
ディアン「リーテで学んだ調理術がありますから、そこそこ美味しい料理がお出しできるかと」
ジョルティ「まじか、期待してますよ!ディアンのダンナァ!!」
ディアン「おまかせ下さい、こちらも旅にはそこそこ慣れていますので」
ノーティ「リーテはそういう街なんですか、いいじゃないですか 行きましょう行きましょう」
ディアン「ええ、リーテは食事が美味しい街でしたね。近いので、次の行き先としても良いかと思いますよ」
ディアン「今日からでも良いということなら、私も早速準備をしてまいりますが」
ジョルティ「準備もあるし、とりあえず明日の明朝出発でいいんじゃないか?」
ディアン「そうですね、その方が余裕を持って移動できるかと」
ジョルティ「ところで、リーテ行けばその調理術学べる?」
ディアン「ええ、恐らくは」
ジョルティ「まじか、しかも飯が美味い?」
ディアン「ええ、美味しいです。なかなかスパイシーなのが魅力でしたね」
ディアン「それでは、明日出発ということで宜しいですか?」
ジョルティ「よし、みんなさっさと依頼済ませてリーテ行くぞ!!」
ノーティ「明日朝ですね?
了承致しました」
トリシア(調理術…聞いたら負けな気がする。飯屋の娘的に。盗めるだろうか)
ディアン「美味しい料理は旅の慰めですからね!」
ディアン「では、明日の朝また迎えに参ります」
ディアン「お話を聞いて頂きありがとうございました」
ノーティ「わざわざご挨拶ありがとうございました。ではまた明日」
ジョルティ「ディアンのダンナァ!!あんた話が分かる男じゃないか!」
カルディエ「ありがとうございました。ぜひ、ディアンのことをよろしくお願いいたします」
こうして、2人は帰っていきました。
ティエ「明日の準備でもします?」
ノーティ「何か準備するべきものありましたっけ?」
クライブ「…特にないな」
ジョルティ「釣りしてくる!」
パワー「寝る!」
トリシア(寝かけている)
彼らも特に準備することもないようで、そのまま一日を過ごしました。その日もノーティから預かって増やしたお金の余りで美味しそうな食事を食べていました。
~秋の月 11日~
そして翌日。見事な秋晴れの日となり、今日は少し肌寒さも引いていました。この時期は厚着するべきかどうか迷う事が多くて困りますね。
ところで、春服と秋服って何が違うんでしょうか?竜の君……は着ていないから分かりませんよね……。
〈コンディションチェック〉
パワー:7
クライブ:16(絶好調)
ティエ:15(絶好調)
ノーティ:7
トリシア:13(絶好調)
ジョルティ:Critical(14:絶好調)
ジョルティ「飯が美味くて調子が良い!」
ノーティ「美味しい食事も安いみたいですし、良いですね」
ティエ(ドキッ)
彼らが朝食を取りながら雑談をしていると、昨日の考古学者が現れました。昨日に比べて重装備になっており、大きなリュックを背負っています。
ディアン「おはようございます、皆さん。準備はよろしいですか?」
ノーティ「構いませんよ。準備万端です」
ディアン「私もこの通り。行き帰りの食事はお任せください」
ディアン「それでは、朝食が終わりましたら出発しましょう。港から対岸へ向かいます」
一行はディアンと共に港へと向かいました。港はまだ定期船の運行がない時間のようで、比較的空いているようです。港には何とな7人乗ることができそうな、小型船が係留されていました。
ディアン「こちらの船です。個人のものなので少々小さいですが…」
トリシア「動物乗れますか?」
ディアン「むむ…動物はそうですね、乗れないですかね…。困りましたね、私はこの一隻しか船がないのですが…」
ノーティ「それなら船舶組合に掛け合ってきましょうか?
動物用輸送船を借りられないか」
ディアン「なんと、そんなコネクションが?」
ノーティ「実はあのとき斬馬を倒したのは我々でして船長に少し貸しが……」
ディアン「なんと、斬馬の騒動を解決したのは貴方方でしたか…!聞いてみる価値はありそうですね!」
ジョルティ「斬馬美味しかったよ」
ディアン「そうなんですか?臭いがきついと聞いていましたが」
トリシア「新鮮な内なら美味しい」
ディアン「ほー…今度試してみたいですね。それで市場には出回らないんですねぇ」
ノーティ「まあ組合へ向かいましょう。えーと、船長の名前はなんでしたっけ?」
クライブ「知らん。聞いてなかった」
ティエ「ロック・ハウゼンさんでしたっけ?」
ノーティ「そうそう、ロック・ハウゼン船長の名前を出せば良かったはずです」
ティエ「ですね。じゃあ、行きましょうか」
トリシア「どこさ船舶組合」
ディアン「港すぐそばの建物ですね。あの大きいのです」
パワー「船なんて要らない!泳いで行くぞ!」
ノーティ「はいはい、行きますよ」
彼らは荷運び動物たちを対岸に連れて行くために、船舶組合で船を借りられないか港近くの組合本部へと向かいました。
ティエ「おはようございますー」
ロック・ハウゼン船長「おや、あの時の皆様…あの節は誠にありがとうございました」
ジョルティ「船長船貸してー」
ロック・ハウゼン船長「船ですか?どのような大きさのものでしょうか?」
ノーティ「ラ・ヴィスの対岸まで11匹ほど、動物たちを運べる輸送船があればと……」
ロック・ハウゼン船長「ふむ、それだけの量となると小型船では厳しいですね」
ロック・ハウゼン船長「中型船ならお貸しできますが、操船できる方はいらっしゃいますか?」
ノーティ「……あ、そうですね……」
ロック・ハウゼン船長「日程はどのくらいですか?」
ティエ「3日前後の予定です」
ロック・ハウゼン船長「それぐらいでしたら、若い船頭を1人お付け致します。対岸までであれば問題無いと思います」
ティエ「ありがたい」
ジョルティ「えー、でもお高いんでしょう?」
ロック・ハウゼン船長「いえいえ、以前大型客船を守っていただきましたから、これぐらいは無料でさせて頂きますよ」
ロック・ハウゼン船長「もし沈んでいたら組合ごと潰れていたかもしれませんから」
ノーティ「それではご厚意に甘えて、往復になりますがお願い致します」
ロック・ハウゼン船長「はい。これからすぐにお出かけですね?」
ジョルティ「船長話分かる!さすが河の漢!!」
パワー「しょぼそう」
ロック・ハウゼン船長「ええ、では船頭に話しをしておきます。お先に港でお待ち下さい」
ティエ「はーい」
ハウゼン船長に約束を貰い、彼らは港へと戻りました。港に戻ると、ディアンは釣りをして待っていました。
ディアン「どうなりましたか?」
ノーティ「解決しました、我々の後をついてきてくれるでしょう」
ディアン「おお…お手数をおかけしました。ありがとうございます」
程なくして、組合の方から1人、青いバンダナを巻いた若い男がやってきました。
船頭「おはようございます。ハウゼンさんに頼まれた船頭のラスっていいます。短い間ですがどうぞよろしく」
ティエ「よろしくおねがいしますー」
トリシア「うっす」
ノーティ「これはご丁寧に。よろしくお願いします」
ジョルティ「よろしくセンドーラス」
発音からして…センドーラスで名前だと勘違いしているのでは…?
船頭ラス「船はあちらに付けてあります。動物を乗せて頂いて」
クライブ「さて…渡たりきるまで落ち着いているといいんだが」
ティエ「ニハ・コビ・ドウ・ブツ こっちだよー」
船頭ラス「凄い名前っすね」
ティエ「まあ、場合によっては売ることもあるんで、愛着が沸かないように」
…そんな考えがあったんですか?単純にネーミングセンスの問題だと思っていました。
船頭ラス「そういうもんなんですねぇ。皆さんは別の船で向かうんでしたね?」
ノーティ「ええ、私たちはこっちの船で。目的地は対岸ということで、大丈夫ですよね?」
ディアン「はい。小型船なら運転できますので、こちらは私が」
船頭ラス「了解しました。じゃ、先に発って下さい。追いますので。中型船が前に出ると波が立っちまいますから」
ノーティ「ではお願いします、ディアンさん」
中型船に動物たちを載せ、自分たちも小型船へと乗り込みました。小型船は一杯のようでしたので…私は中型船の方に乗ることにしました。
さて…彼らはと言うと…小型船舶である上、流れに沿わない航行です。大型船での川下りとは比べ物にならないほど揺れているのが後ろの中型船からでも見て取れました。…違いますよ?これを予測して中型船に乗ったわけじゃないですよ?
〈船酔い判定:体力+精神:目標13〉
パワー:8(失敗)
クライブ:12(失敗)
ティエ:9(失敗)
ノーティ:11(失敗)
トリシア:11(失敗)
ジョルティ:4(失敗)
ディアン:15
操船者であるディアンを除き、全員が酷い船酔いになっていたようです。…前回と同じくかなりマイルドに表現しております。……ちなみに、中型船でも酔う時は酔います。
ディアン「み、皆さん大丈夫ですか?」
クライブ(…まぁ、船に穴を開けられるよりマシか)
ノーティ「ディアンさん、こういうことには、お慣れで?
」
ディアン「いやあ、河に出ることはあまりないんですけどね」
トリシア「運転してる人は酔わないもんなんじゃない?」
ティエ「そういうもんなんですかね?」
……私も船の運転を勉強しようかな?とちょっと思いました。
ディアン「夕方までには着きますので、どうかがんばってください」
トリシア(後ろ乗ったほうが良かったかな…)
パワー「やっぱり泳いだほうが良かったじゃないか!」
私も含めて、操船者以外全員が揺れにやられながらも、夕方頃に対岸に到着しました。広い広いと思っていましたが、本当に河幅が広いですね…。
ディアン「到着しました!本日はここで野営して、明日遺跡に向かいます!」
ノーティ「考古学者というのはこうにも多才なもんですかね……」
ディアン「まあ慣れていることだけですよ」
ジョルティ「ちょっと体動かしてくる」
クライブ「同じく」
〈狩猟:目標8〉
パワー:13(食料5個入手)
クライブ:4(失敗)
ジョルティ:10(食料2個入手)
3人が狩りに向かっていることは、この時はまだ気付いていませんでした。…食料、準備してあるって、出発前に言っていましたよね?
ディアン「それでは、野営と料理の準備をしますね。野営の方だけ、どなたか手伝って頂ければ」
トリシア「はいはい」
〈野営チェック:目標8〉
トリシア:11(サポート成功)
ディアン:8
トリシア「野営、案外慣れてなくない?」
ディアン「恥ずかしながら何故だかテントの設置は苦手なんですよねぇ」
ジョルティ「食料取ってきたぞー」
ディアン「おや、食料を採ってきて頂けたんですね?それでは、せっかくなので新鮮な食材で料理しましょう」
ジョルティ「新鮮な方が良いだろ?」
ディアン「ええ、やっぱり料理は食材も大事ですからね。では、外で料理をしておりますので、テントで待っていてください」
トリシア「見てて良い?」
ディアン「ええ、もちろん」
ディアンは背負袋から調理セットを取り出し、料理を始めました。先程3人が取ってきた新鮮な食材に、1人分の保存食を加えて、小瓶に詰めたスパイスを使って味付けをした、野外での料理とは思えないほどしっかりした料理ができました。
トリシア「その瓶はなんです?」
ディアン「リーテで買ったスパイスですよ」
トリシア「ほー」
ディアン「できました。ラスさんもどうぞ」
ノーティ「これは美味しい 独特かつスパイシィな風味……」
ジョルティ「美味い!香辛料がよく合ってる!」
トリシア(むむ、この味は…)
ディアン「では、明日も早いので、ゆっくり休むことにしましょう。遺跡はそこまで遠くありませんので、明日の昼頃には到着できるかと思います」
こうして、美味しい料理と共にその夜は更けていきました。……皆、残さず食べてしまったのでお溢れを頂けませんでした。残念。
~秋の月 12日~
〈コンディションチェック〉
パワー:13(絶好調)
クライブ:14(絶好調)
ティエ:12(絶好調)
ノーティ:10(絶好調)
トリシア:11(絶好調)
ジョルティ:10(絶好調)
ディアン:14(絶好調)
ディアン「昨日の今日で皆さん顔色が良いですね。さすがです」
ディアン「では、野営を片付けまして…早速出発しましょうか」
ノーティ「そちらこそ、手慣れたものですね。向かいましょう」
ディアン「あ、朝食も軽く作っておきましたので、歩きながらでも」
ジョルティ「お主、さてはモテるな?」
ディアン「いえいえ、さっぱり男やもめでして」
ティエ(この朝食も美味いなあ)
トリシア(もぐもぐ)
ディアン「遺跡はこちらの方角です。あ、どなたか地図を見るのを手伝って頂けますか?」
ノーティ「では、それは私が」
〈方向チェック:丘陵:目標8〉
ノーティ:5(サポート成功)
ディアン:8
ノーティ(ちょっと危なかった。見辛い地図だなあ)
ノーティのサポートもあり、皆迷うことなく進むことができました。遺跡といっても小さいものなので、あまり遠くからでは見えないようですね。
ディアン「おっと、見えてきましたね。あちらが今回調査する遺跡です」
ティエ「ほー。思ったより小さい」
ノーティ「ですね。遺跡、と言えるのでしょうか?」
ディアンの指す先には、石造りの社がありました。社殿には小さいものの、水竜を象った像が置かれています。社の様式はサンドラの火山でみたものに近いようでした。
ティエ「へー これが水竜なのかー」
ジョルティ「何か言い伝えとかあるの?儀式とか歌とか」
ノーティ「歌……聞いておきましたよ」
ティエ「えっ?」
ノーティ「お祭りのときにちょっとですね……ここで相応しい歌かは分かりませんが」
そういえば、ノーティはクローナ・ディアの夏祭りの際に、神官から水竜の祝詞を教わっていましたね。
ディアン「歌や儀式ですか…?どうやら、こちらは古代のもののようで、まだ調査が十分ではないんです。それを調べたいと思いまして」
ディアン「一見すると小さいのですが、こちらの後ろから地下に入れるようになっておりまして、今回はこの中を調査しに来ました」
社殿の裏に回ると、地下に向かう階段がありました。灯りがないため暗く、かつ所々朽ちていることで耐久度に不安が見受けられます。
ティエ「くずれそう」
ディアン「こういうのは案外頑丈ですから大丈夫ですよ」
トリシア「ホントかなー」
皆、社や階段の様子を見ています。石材に手を触れると、ザラザラとした手触りをしていました。
〈知見:知力+知力:目標10〉
クライブ:6(失敗)
ティエ:11
トリシア:Critical
ジョルティ:9(失敗)
ティエ「あれ、この石、あれじゃないです?」
トリシア「っぽいねぇ」
ノーティ「この石がどうしたんです?」
ティエ「あの、あの場所、なんでしたっけ。銀の産地の」
ノーティ「ゴレンですか?」
ティエ「そうそう。この石、その近くの岩場の石質に似てるなって」
トリシア「この辺の石じゃないよね」
ノーティ「え、つまり運んできたんですか、あそこから?ここまで?」
トリシア「どうなんだろうねぇ」
ディアン「確かに…このあたりの石質ではありませんね」
ノーティ「普通そこにあるもので作りますよね?現地の竜を祀るとなれば尚更」
ディアン「ええ、通常遺跡はその近くの材料で作られるものですね。何か、特別な理由があったのか…当時の文化に理由があるのかもしれません」
ジョルティ「水に由縁もなさそうだしな、あの辺」
クライブ「…まぁ、あそこからここまで直通の道でもあったのかもな」
ディアン「俄然来歴が気になってきました。早速中の調査をしましょう。まだまだ、分かることがありそうです」
ディアン「しかし、暗いですね」
ジョルティ「光る短剣の出番だな!」
ディアン「珍しいものをお持ちですね。私もランタンを付けておきます。行きましょう」
パワー「まかせろー!」
ジョルティとディアンが明かりを灯し、パワーが先頭になって社の地下へと降りていきます。階段はそれほど長くはなく、見た目に反して崩れることもなかったのですが……途中で先頭を歩いていたパワーが転び、そのまま階段下まで転がっていきました。少し急ぎつつ階段を降りるとそこそこ広い部屋に出ました。その部屋には出入り口の階段とは別に、北、東、南にそれぞれ道が続いています。
ディアン「だ、大丈夫ですか?」
階段下では、パワーが気絶していました。(後半PL不参加)
クライブ「心配はない、頑丈な奴だ」
ティエ「ですね。ちょっと気絶しているだけのようですし、ここで待っていてもらいましょう」
ディアン「そ、それなら良いのですが…。中はなかなか広いようですね……。道も3つに分かれているようですが……」
ティエ「片っ端から調べます?なんか案内板とかないのでしょうか」
ディアン「この部屋には特に何もなさそうですね…」
ティエ「じゃあ片っ端から調べますかね?」
ノーティ「とりあえずどれか一つの道に入るしかないですね。でも何か投げ込むというのは手かもしれませんね」
トリシア「学者せんせーはどう考えてるんですかー?」
ディアン「そうですね、同時代の構造物から考えると、独立した部屋が多く存在するタイプだと思います。ので、ひとつひとつ見ていくしかなさそうですね」
ジョルティ「とりあえず気配でも探す?」
ティエ「遺跡の定番はやはり罠を調べるのが?」
ディアン「罠……ですか、あまりそういったものが設置されている遺跡は聞いたことがありませんが…。確かに注意するに越したことはないですね」
トリシア「誰も入ったことがない遺跡なんです?」
ディアン「そうですね、そもそも考古学者自体がこの辺ではあまりおりませんので、調査も入りきれていないんです」
クライブ「そういうことなら、こちらで中の様子を探るか」
〈動物探し:目標10〉
クライブ:13
ジョルティ:9(失敗)
クライブは周囲の痕跡に目を凝らし、音に耳を凝らしますが、特に動物のいる気配のようなものは感じられませんでした。…ジョルティはあんまり集中して目を凝らしたりしていませんでした。
クライブ「生き物の気配はないな…」
ジョルティ「ないな」
ノーティ「なら、北から行きましょうか?
仮の地図を書いておきましょう。コンパスを持って迷わないように……」
ディアン「そうですね、後で見返すのにも地図は書いておきましょう。では、北から向かいましょうか」
一行が細い通路を北に向かって歩いて行くと、がらんと広い空間が現れました。通路からでは暗く、中の様子までは分かりませんが、生物の気配は感じられないようです。
クライブ「ここも何もいそうにない」
ティエ「じゃ入っても大丈夫そうですね。
ノーティ「こちらの部屋は広いですね…」
一行が部屋の中に入り周囲を照らすと、壁面には多くの壁画が描かれているのが見えてきました。この壁画の雰囲気……間違いなく古代のものです。
壁画の多くは、大河とその近くで暮らす人々が描かれているものでした。大河には竜の姿も描かれています。……想像で描かれたにしては、かなり本物に近い絵に見えました。
ノーティ「ディアンさん、これは一体?
やっぱり、竜ですよね……」
ディアン「……そうですね、やはり竜に関する社であることは間違いないようです」
ジョルティ「竜ってこんなかー。ジュルリ…」
美味しそうに見えますかねえ…?
ディアン「しかし……おかしいですね、この近くはクローナ・ディア建立以前に人がいたという記録はないのですが…この壁画は遥かに古い」
ノーティ「それは妙ですね…」
ディアンは順番に壁画を眺めていきます。左の方の壁画は大河とともに生活する人々が描かれているものでしたが…最も右の壁画は、他のものとは毛色が違っていました。
その壁画には、大河が氾濫する姿と、傍で生活する人達が飲み込まれる姿が描かれています。
ディアン「……クローナ・ディア以前に、文明があり、滅んでいたのでしょうか…?そのような記録は見たことがありません」
ティエ「この洪水の絵があるって事はソレを知って生き残った人が書いた訳?」
ディアン「そうかもしれません、全くの想像でこういった壁画が描かれる例はないはずです」
ノーティ「生き残った人々がこの洞窟に逃げ込んだんでしょうかね……?」
……竜が、人の文明を滅ぼすなんてことは、考えられません。彼らは自然と同じ、積極的に人々と関わらない者が大半です。……ですよね、竜の君。
ディアン「……む、この壁画の下の方、何か書かれていますね……」
大河の氾濫を描いた壁画の下には、古代語の文章が記されていました。ディアンがそれを原語のままで読み上げます。
荒れ狂う竜よ 偉大なる竜よ
我らが願いは豊穣なり
我らが祈りは平穏なり
泉下に瞑する我らが命に安らぎを与え給え
その広き御心で我らの想いを聞こし召し給え
ノーティ「え?
それって……」
ディアン「……聞き覚えがありますか?」
ノーティ「水竜に捧げる祝詞ですね。クローナ・ディアのお祭りで神官が言上していました。これ、どういう意味なんですか?私は意味までは知らないんです」
ディアン「簡単に言うと、荒れ狂う竜に、平穏を願う祝詞ですね…。水竜の祝詞が実際に古代から伝わるものだったとは…」
ノーティはその話を聞きながら、壁画の下の古代語の文章を見たままノートに書き写していました。
ディアン「……かなり考古学的に価値があるものだと思います」
ノーティ「竜……少なくとも竜への信仰が古代から存在した証拠になりますね。それ以来、誰もここに立ち入っていなければ」
ディアン「はい、地質の調査などはまた改めて行う必要がありそうです」
ジョルティ「でもよー、これだと祝詞のせいで洪水起きてるようにも見えないか?」
ノーティ「洪水を起こすような祝詞を祭りで使いますかね?」
ディアン「……祝詞の内容は、水竜の怒りを鎮めるといったものですから、恐らくその線はないのではないかと…。しかし、この部屋の情報だけではまだわかりませんね」
ジョルティ「ってことは、水竜のせいか?」
ディアン「あるいは、氾濫を水竜に仮託しているのでしょうね」
ディアン「一旦戻りましょう。行き止まりのようです」
ノーティ「そのようですね。壁画はこちらでも記録しておきます」
ノーティが壁画の記録を終えると、一旦出入り口の部屋へと戻りました。移動中、トリシアが煙草に火を付けたそうにしていましたが、ノーティに制止されていました。
ノーティ「さて、残す道は後2本ですが…どちらから行きましょうか。何か手がかりがあれば良いのですが…」
ティエ「ちょっと調べてみますか」
〈知見:知力+知力:目標8〉
ティエ:15
ノーティ:4(失敗)
ノーティ「こう、棒の倒れた方の道が…」
トリシア「ノーティくん何してるんだい」
ティエ「南の道の方が、少し細くないですか?」
ノーティ「ゴホン…道が狭いということは、その先の部屋も狭い可能性が高いですね。南から行くのが良いでしょう」
ディアン「そうですね、こちらの方が狭いようですし、南から向かいましょう」
そんなこんなで一行は先に南の通路へと向かうことにしたようです。南側の通路は入るとすぐに東に折れており、長い通路を渡ると先程よりかなり狭い部屋が見えてきました。
クライブ「気は進まんが…まぁ俺が先頭のほうが対応しやすかろう。少し中の様子を探ってみるか」
〈動物探し〉
クライブ:13
ジョルティ:15
クライブとジョルティが先んじて部屋の中を見ましたが、特に何かの気配を感じることはありませんでした。
クライブ「安全そうだ。入って大丈夫だろう」
小部屋に入って中を照らすと、部屋の中には石造りの机があり、銀燭台が置かれているなど、元々は人によって使われていた形跡がありました。
ノーティ「生活には不便そうですが……銀ですか?」
クライブ(銀…ゴレン思い出すなぁ)
トリシア「銀と言えばゴレンのおっちゃん元気カナー」
ジョルティ「この燭台ってゴレンのと似てね?」
クライブ(あそこの水合わないし進んでまた行きたいとは思わないが)
ディアン「……何故、銀の燭台が…」
ディアン「銀の加工技術は古代には存在していないはず……。やはりこの遺跡は何かおかしいですね」
ノーティ「ゴレン近くの石材といい、どうも違った文明の存在を感じますね。いつ頃のものか大体でも分かりますか?」
ディアン「……いえ、銀製のものは比較的新しいものであるはずです。このような時代のマッチしないものは…」
ディアン「……よく見ると、壁に何か光の反射がありますね……」
他に何か手がかりはないかと、ディアンが燭台に落としていた視線を上げると、確かに壁にうっすらと光が見えるのに気が付きました。
ディアン「これは……鏡でしょうか?」
明かりを壁面に近づけると、曇った丸鏡が飾られていることが分かりました。ディアンが手を触れると、それは簡単に外れました。
ジョルティ「あー!こーわしたー!」
ディアン「……固定はされていないようです、壊していません。曇っていますが……これも銀製ですね」
ノーティ「この遺跡自体が新しいものだとしたら生き物の気配がしないのはおかしいのですが…」
ディアンは鏡を回しながら隅々まで見ています。
ディアン「……なんですかね?この鏡、裏に丸い窪みがありますね…」
ティエ「んん…?この大きさ…ノーティさん、あの宝玉持ってます?」
ノーティ「あ、はい、これですよね?」
ノーティは背負袋の中から、アージェントで薬草探しのお礼に貰った紫の宝玉を取り出しました。この紫の宝玉は、魔法を引き寄せる性質があるものでしたね。
ディアン「……確かに、大きさは一致しますね」
ティエ「嵌めてみます?赤いのもあるんですが」
クライブ「これだな」
クライブも、数日前に受け取ってそのまま持っていた赤い宝玉を取り出します。こちらは、魔法を遠ざける性質があるものでした。
ディアン「赤いものは確かカルディエが渡したものですよね?そちらの紫のものはどちらで?」
ノーティ「紫の方は、アージェントでしたっけ?」
ディアン「アージェント…石材の場所とも近いですね。形が一致しているのも気になります」
ノーティ「嵌めてみても良いですよ」
ディアン「もしかすると何か関連があるのかもしれません。お借りしても宜しいですか?」
ノーティ「もちろん、ご自由に」
ディアン「それでは失礼して……」
ディアンが鏡の裏の窪みにノーティから受け取った紫の宝玉を入れると、不思議とその大きさが一致しており、吸い込まれるように収まりました。かなり力を込めないと取れないほど、かっちりとハマっているようです。
ジョルティ「あっ」
ディアン「……これは、確かにここに嵌っていたものなのかもしれません…。気になりますね、一旦、この鏡は持っていきましょう」
ティエ「赤い方もありますけど、どうします?」
ディアン「赤い方は少し小さいようですね。このサイズだと、紫の方が嵌っているなら、赤い方は外れてしまいそうです」
ディアンは紫の宝玉を嵌めた古く曇った銀の丸鏡を持ち、さらに周囲を調べます。しかし、この部屋にはそれ以外には特に何かがある様子はありませんでした。
ディアン「……この部屋は他には特に何もなさそうですね…。一旦戻って、東の通路を見てみましょうか」
ノーティ「他の部屋に同様のものがあるのかもしれませんね?」
ジョルティ「燭台は持っていっちゃダメ?」
ディアン「燭台は、確かに時代には不明な点がありますが、特別なものではなさそうでした。また、壁画の調査をしに来る際に調査したいと思います」
ジョルティ「えー鏡は持っていくのに燭台はダメなのかよー」
ディアン「鏡も調査が終わり次第戻しますよ」
そんな話をしながら出入り口の部屋まで戻りました。部屋の入口近くでは相変わらずパワーが気絶…もとい寝ていました。
ディアン「……残す道は一本ですね。行きましょうか」
ノーティ「そうですね」
そして、彼らは残された最後の東の道を進んでいきます。最後の部屋から思われましたが、その通路は道半ばで北に分岐していることに気が付きます。
トリシア「道が分かれてる」
ノーティ「今までの地図の見取り図からすると東が最奥部ということになりそうですが」
ディアン「ふむ、確かに。北側は壁画の部屋近くに通じていそうですね」
ここでノーティは、これまで書き込んでいた地図を見せながら考えを話しました。確かにノーティの書いた地図によると、ここから北に行くと壁画のあった部屋のすぐ近くに繋がってしまうように見えます。
トリシア「階段があるかも?」
ディアン「それもあり得ますね。どちらから行きましょうか」
ジョルティ「念のため気配を探っておくか」
クライブ「何もいそうにはないが…」
〈動物探し〉
クライブ:10
ジョルティ:6(失敗)
クライブは耳をそばだてましたが、特に音が聞こえることはありませんでした。動物の気配はありません。
…ジョルティはご飯のことを考えているような顔をしていました。
クライブ「さて…気配も何もないがどうしたものか」
ジョルティ(腹減ってきた)
ノーティ「それならば北から行きましょう。最初に入った部屋に近いはずです」
ディアン「そうですね、その方が良さそうです。北から向かいましょう」
特に問題がなさそうなので、彼らは先に北の道を進むことにしました。北の分岐路を進むと、最初の部屋ほどではないもののある程度の広さがある部屋に突き当たりました。
部屋には壺や土像などが散乱していて、雑然としていますが、どこか空気は澄んでいるように感じられます。
ノーティ「少し細長い部屋ですね……この感じだと、壁画の部屋とぶつかりそうなくらいです」
ディアン「確かに、最初の部屋とかなり近いですね」
ティエ(土像…なぜか威圧感を感じる)
ジョルティ「この土像動かんよな?」
ま、まあそうそう土像は動いたりしないでしょう。しないですよね…しないで下さいね…。
ディアン「置かれている壺や土像などは……既存の研究にも見られるものですね。中世頃のもののように見えます」
ノーティ「でもこの空気おかしくないですか?
こんな奥の部屋で、澄んでいるなんて」
ディアン「ええ、確かにおかしいですね…。地下の、こんな奥の部屋で…」
ディアン「何かがあるかもしれません、もう少し探してみましょう。物が多いので、皆さんも探してみて頂けますか?」
クライブ(壺割りたい)
〈物探し:敏捷+知力:目標8〉
クライブ:Critical
ティエ:10
ノーティ:12
トリシア:8
ジョルティ:14
ディアン:5(失敗)
皆が部屋の中を探すと、奥に置かれている壺の中に、錆びた剣が入っているのを見つけました。柄の部分には、鏡の裏にあったのと同じような窪みがあります。
トリシア「呪われてそう」
クライブ「錆びた剣ねぇ…」
ノーティ「何製でしょうか?
まさかまた銀?」
ディアン「いえ、これは青銅ですね」
ディアン「サビの具合からしてかなり古いようですが……また窪みがありますね」
ジョルティ「赤嵌めようぜー」
ノーティ「鏡と剣の組み合わせというと……?」
ディアン「鏡と剣、いずれも各地の儀式などで見られる道具ですね」
ノーティ「赤い宝石の扱いもディアンさんに一任しますよ よろしいですよね?」
ジョルティ「でも壊したりしたら弁償な?」
ディアン「それでは、お借りします。この赤い宝玉を窪みに……」
ディアンが鏡の時と同じ様に剣のくぼみに赤い宝玉をはめ込むと、こちらも吸い込まれるようにかっちりと入りました。
ノーティ「宝石売らなくて良かったですね」
ディアン「……不思議ですね…。カルディエの祖父はかなり広域で活動していたマーチャントと聞いておりますので、赤い宝玉の由来は分かりませんが…」
ディアン「……しかし、この部屋の空気が澄んでいる理由はわかりませんでしたね。他の部屋と特に違いはないようですし」
ノーティ「この剣が何か関係していたのでしょうか…?」
ディアン「……かもしれませんね。ともあれ、この部屋にはもう他にはないようです。戻りましょう、東の道の方が残っています」
ディアン「この剣も、一度持っていって調査したいと思います」
一行は来た道を戻り、今度は分岐を東に向かいました。少し進むと辿り着いた最後の部屋は、外からでも分かるほど厳かな雰囲気が漂っています。使われている石材も他の部屋のものとは違って白いものでした。
そして、その部屋の中心には水竜を象った像があり、その左右に人を象った像が置かれています。左の像は騎士の姿を、右の像は神官の姿をしています。壁画のものもそうでしたが…この水竜の像も、やはり本物を見たとしか思えないほど精密です。
ディアン「……これは、明らかにこれまでの部屋と雰囲気が違いますね…。」
トリシア「右の像に剣を持たせてみよう」
ノーティ「何か違う気もしますが、まあ、そういったことでしょうね……」
ディアン「この像は……やはりこのあたりの石ではありませんね」
トリシア「持たせるという浅はかな思考はどうなのだろうか。きっと罠に違いない」
ティエ「さっきと言ってることが違いますね」
トリシアは煙草切れが長く続いて一週したのか、テンションがいつもより高くなっているようでした。
ディアン「竜の像の下に、また古代語で何か書かれていますね…どなたか、灯りを近くにお願いします。読み上げます」
ディアン「”魔を切り裂き、静謐を創る剣。魔を操り、混沌を封じる鏡。竜の祝福が盃に満ちる時、祈りの言葉を捧げよ”」
ノーティ「竜の祝福?」
ディアン「前半は……恐らくこの剣と鏡のことを言っているのだと思いますが…」
トリシア「そんなまさか!」
ディアン「……アレ、違いますかね?」
ノーティ「いやあってますよ多分」
トリシアが軽く暴走しているせいか、ディアンが惑わされています。自信を持って下さい…。
ティエ「やるだけやってみよう」
ディアン「……この剣と鏡を……騎士と神官に持たせれば良いんですかね…?」
トリシア「そんなばかな」
ノーティ「いや多分あってますよ」
ディアン「では…持たせてみましょう。物は試しです」
ノーティ「持たせて悪いことが起こるとは思えませんね」
トリシア「大丈夫なのか!?知らないぞ!?」
煙草切れというより、気絶したパワーが乗り移っているとしか思えませんね…。
トリシアの野次を聞き流しつつ、ディアンは、剣を騎士の像に、鏡を神官の像に起きました。すると、錆びていたはずの剣、曇っていたはずの鏡に俄に輝きが戻りました。
部屋全体が、ジョルティの光る短剣がなくとも問題なく見えるほど、明るく照らされます。どこからか鏡に魔力が引き寄せられ、この部屋から出ていこうとする魔力を剣が押し留めているようです。
トリシア「おいジョルティ眩しいぞ!あ、ジョルティじゃなかったのか。すまんな!」
ジョルティ「負けられねえ!もっと引かれ短剣!」
それと同時に、竜の像の前にどこからともなく金色の杯が現れました。金色の杯の中に、竜の像の口から白く光る水が注がれていきます。これは…明らかに竜の加護による光の水です。いつぞや私が、ユニコーンを護った彼らのために泉に作ったのと同じものですね…。
そしてその時、突如として2つの像が動き出しました。騎士が軽く剣を振るうと、一行の後ろの壁に傷が付きました。
ディアン「こ、これは……!?」
トリシア「危なくない!?」
ディアン「ひっ!襲ってくる!?」
クライブ「ちっ、面倒な」
〈戦闘開始〉
古代語を呼んでいたディアンと、横で野次を飛ばしていたトリシアは前におりました。
部屋は十分な広さがありますが、扱えそうな道具はありません。
しかし…竜が人を襲うような機構を作るとは思えません…。何なのでしょうか、この動く像は…。
〈イニシアチブチェック〉
クライブ:Fumble
ティエ:18
ノーティ:12
トリシア:Fumble
ジョルティ:4
ディアン:9
お、おや…?何やら数人かなり動揺しているような…。大丈夫でしょうか…?
〈ラウンド1〉
初めに動いたのはティエでした。ティエはまず神官像の能力を見抜くために目を凝らします。詳しいことまでは分からなかったものの、簡単な情報を読み取ることができました。
ティエ「ディアンさんは後ろに下がってて下さい!ここは任せて!」
考古学者でぃあん「わ、分かりました!」
ティエ「さてと、それでは自分の身を守りましょうか」
そうしてティエは自らにグレイトフル・スケアクロウ(六分儀)を発動し、カカシが呼び出されました。
ジョルティ「魔法、安易に撃たない方が良いんじゃないか?」
トリシア「ジョルティ君今日冴えてる気がする。わたしもそんな気がする」
ノーティ「あー」
彼らの予想に反し、グレイトフル・スケアクロウは特に問題なく発動ができたようでした。しかし、あの2体が魔法に対して何からの干渉をすることは明らかですね…。
続いて、ノーティが騎士像の方の情報を読み取ります。やはり、あの宝剣には魔を退ける力があることが見えてきました。
ノーティ「指向性の魔法は鏡に吸われてしまいそうですね…なら、こっちですかね…」
ノーティはウォー・メタフィールドの魔法を詠唱します。周囲の空間が隔絶され、彼らにとって有利な環境が形成されました。
ノーティ「やはり、広範囲の魔法なら影響はないようですね…」
騎士の像が、魔法を使ったティエとノーティの2人を睥睨し、ティエの方に視線を定めました。剣を虚空に振るうと、同時に白い波動のようなものが射出されます。しかし、ティエはこれを落ち着いて避けました。
ディアンはティエの忠告通り、後列へと下がります。…近くにいても遠くにいても脅威は変わらない気はするのですが。
今度は神官の像が、手に持った鏡を今動いたディアンへと向けました。周囲の魔力が鏡へと集まり、水の塊を形成していきます。水の塊は勢い良く射出され、ディアンに命中しました。
トリシア「さようならディアン」
ディアン「諦めないで下さい!まだまだ死にませんよ!?」
クライブ・トリシア・ジョルティは皆落ち着きを取り戻すべく様子を見ます。…が、トリシア以外はそれほど落ち着くことができませんでした。ジョルティに至ってはお腹が空きすぎていたのか、全く変わっている様子はありませんでした。(Fumble)
ジョルティ「なんだかやる気が出ねえなー」
トリシア「ちょっと褒めたらすぐこれだ!」
〈ラウンド2〉
水竜の像の前の杯には、3分の1程まで光る水が溜まっています。
ティエ「うーん、とりあえず、神官像を攻撃してみますか」
ティエは神官像に攻撃をしましたが、命中させることはできません。
トリシアもティエに続いて神官像へ攻撃し、こちらはそこそこ大きなダメージを与えることができました。しかし、まだ動きに支障があるほどではないようです。
トリシア「久しぶりに前に出て弓引いた気がする」
トリシア「いや…あれ?最近にもやったっけ?」
…カコでなかったことにした時にしていましたね…。パワー以外は、どこか記憶に残っているのでしょうか…?
ノーティ「…うーん、魔法は使わない方が良さそうですね」
トリシア「雪玉投げたら?少しぐらい当たっても別に良いよ?」
ノーティ「いえ、そもそもこの像も壊して良いものかと…」
ノーティは色々なことを考えつつ、様子を見ていました。
騎士の像は今度はノーティに向けて白い波動を飛ばしましたが、ノーティは落ち着いて回避します。
ディアンは後ろで身を守っていました。
神官の像は鏡をクライブに向け、再び魔力を集めていきます。しかし、集まった魔力が多すぎたのか、鏡のすぐそばで暴発しました。結果的に、神官の像が体勢を崩すだけに終わりました。(Fumble)
ジョルティ「なんだ?水芸か?」
ジョルティ「しかしやっぱり気が乗らんな」
クライブ「全くだ」
クライブとジョルティは引き続き様子を見ていました。ジョルティは少し落ち着いていましたが、クライブの様子には変化がありませんでした。
クライブ「ダメだな。何故か乗ってこない」
ジョルティ「倒しても食えそうにないしなあ」
〈ラウンド3〉
水竜の像の前の杯には、3分の2程まで光る水が溜まっています。
ティエ「あの水量からすると、もう少しで溜まりそうですね」
ノーティ「”竜の祝福が盃に満ちる時、祈りの言葉を捧げよ”…ですか」
ティエは引き続き神官の像へと攻撃を行いますが、杯の方に気が行っているのか、また攻撃を命中させることはできませんでした。
トリシアも同じく神官の像へと攻撃します。命中こそしたもののの、それほど大きな損傷を与える事は出来ませんでした。
ノーティ「少し考えがあります。もう少し…10秒ほど様子を見ます」
ノーティは言葉の通り戦場の様子を見ています。というよりは、水竜の像と杯の方をじっと見つめていました。
騎士像は、何かに気付いたかのようにジョルティの方に向き直りました。今度はジョルティに向けて剣の波動を飛ばします。油断をしていたのか、ジョルティは全く避けることなくそれに命中しました。
ジョルティ「痛っ…くないな。なんだ?これ」
あるいはジョルティ本人も気付いていなかったのかもしれませんが、その波動はジョルティが持っている魔力を4分の1ほど打ち払っていました。
ジョルティ「ん…なんだ、しかしさらにやる気がなくなったような…」
クライブ「今回はもう皆に任せておくか。ノーティにも考えがあるようだ」
ジョルティ「そうすっかー」
その後、ディアンは身を守り、ジョルティとクライブはまだ様子を見ていました。神官の像はようやく先程の魔力暴発の衝撃から立ち直ったようでしたが…。
〈ラウンド4〉
水竜の前の杯に、光る水が満ちました。
ノーティ「杯が満ちましたか…!」
トリシア「水竜の歌とかで許してもらえないっすかね?」
ノーティ「ええ、私もそう考えています」
ティエ「火竜の歌なら…」
ジョルティ「水量が減りそうだな」
ノーティ「おそらく、”祈りの言葉”は水竜の祝詞のことだと思います。任せて下さい、覚えていますから」
ティエはノーティの言葉を信じ、後衛へと下がりました。
クライブは特に何か考える様子もなく騎士の像に切りかかっていました。硬い体に弾かれ、あまり大きなダメージにはなっていないようでしたが…。
そして、ノーティがティエの楽器演奏に合わせて水竜の祝詞を言上しはじめました。
ディアン「これは、壁画の部屋の祝詞…?」
ノーティ「”その広き御心で我らの想いを聞こし召し給え”……どうだ…!?」
ノーティが水竜の祝詞を唱え終えると、杯に溜まった水が青く輝きはじめました。そして、その青い光は部屋中に広がっていきます。青い光が照らした2つの像は、ゆっくりと動きを止めました。
同時に、杯の置かれていた水竜の像の土台が、地下へと下がっていきます。それに伴い、地下へと続く階段が現れました。
ノーティ「おお、見よ!とでも言いたくなる光景ですね」
トリシア「やっぱり階段あったね」
ディアン「こんな魔法の仕組みが…」
ジョルティ「像はどうする?一応ぶっ壊しておく?」
ノーティ「わざわざ壊してしまうこともないでしょう」
クライブ(刃こぼれしそうだしもういいや面倒くさい…)
ジョルティ「宝石もう引っこ抜いていい?鏡と剣ごと?」
ディアン「…剣と鏡は外れなくなってしまっているようですね…」
ティエ(あとで実費で請求かなぁ)
トリシア(こっちの出費でけーなー)
ジョルティ「この先に20,000Gの価値があるものがなかったら埋めてやる」
ノーティ「奥に何があるんでしょうね?」
ディアン「……下ってみましょう。ここが、恐らく最深部でしょう」
トリシア「それはどうかな!?」
ディアン「違いますかね!?」
ノーティ「いや多分あってると思いますが」
半ば様式美になったやりとりも済ませ、ディアンを先頭にして新しく現れた階段を下っていきます。階段は緩やかな傾斜の、長い直線でした。
トリシア「戦闘も終わったしそろそろ吸っていい?」
ティエ「出るまで禁煙です」
トリシア「ちぇー」
階段を下りきると、青い石が敷き詰められた部屋へと出ました。部屋はこの遺跡で最も狭いものでした。
その狭い部屋の中心には青い宝玉を咥えた見慣れない金属で作られている水竜の像が置かれていました。
トリシア「この青い石はなんだろう」
ティエ「なんでしょう、貴重なものですかね?」
〈知見:目標10〉
ティエ:16
ノーティ:9(失敗)
トリシア:9(失敗)
ティエ「これは…」
トリシア「何か分かったー?」
ティエ「いえ、これまで見かけたことがない質感の石だな、と。…それに、触ると冷たいですよ、これ」
トリシア「そうなのかー」
ディアン「……部屋の素材も、像の素材も、宝玉も……何もかも見たこともない様式……。このような文明は記録にありません…」
ディアン「古代には、我々の常識や学問では計り知れない謎が隠されているようですね……。それが、何故このような地下に…」
ノーティ「近代のものでないことは確かなんですね?」
ディアン「ええ……それは間違いないでしょう。しかし、皆目検討が……」
皆、それぞれに部屋の中を見て回っていたその時、金属の水竜像の目が青く光りました。どうやら、この光は皆には見えていないようです。…まさか、これは…。
ティエ「??なんか寒い」
ジョルティ「寒っ!」
トリシア「段々と眠く…」
ノーティ「そこまでではありませんが…ひんやりとした空気が…」
直後、その像から厳かな、それでいてどこか優しさを感じさせるような声が聞こえてきました。…やはり、ここには…。
《ここに人が来るのはいつ以来か……》
ノーティ「この声は……水の…」
ジョルティ「水竜さんですか!?そうですね!?お肉ください!少しでいいですから!痛くしないから!」
《……ドーレスの生き残りが滅んで以来、ここに来るものはいなかった。また、生贄でも捧げにきたのか?》
ティエ(ドーレス?)
クライブ「投げやりな言いっぷりだな…」
ジョルティ「生贄文化とかサイテーだと思います」
《奇遇だな。私も人の命など受け取ってもどうしようもない》
ノーティ「ドーレス? 生贄?
何のことでしょう?」
《……生贄ではないのだな。そうか、ドーレスの記録ももう残っていないほど時間がたったか……》
ジョルティ「竜の肉なら受け取ってやってもいいぞ!!」
ノーティ「ちょっと黙ってください!!」
ジョルティ「ノーティやんのか!?こっちも一大事なんだよ!」
《突然現れて喧嘩をするな…肉の1つぐらいならくれてやりたい所だがな、残念ながら私は今体を持たない。他を当たってくれ》
ジョルティ「あ、そっすか…」
《ここに来たのなら、途中で壁画を見ただろう。壁画に描かれていた者達が暮らしていたのが、ドーレスの都だ。大昔に、大河の氾濫で滅んだ》
クライブ「滅んだ割には随分と足跡を残しているみたいだな」
ノーティ「やはりあれは古代の文明でしたか。滅んだのは貴方様のご意思ではございませんね?」
《ああ。私は水の竜などと呼ばれてはいるが、大河を操るような力を持たん。何度断っても生贄を寄こすから、腹は立っていたがな》
《ともかく……それだけ永い時が過ぎたのなら、もう良い頃だろう。その青い宝玉を持っていけ。ここにはもう必要がないものだ》
ノーティ「畳み掛けるようで申し訳ありませんが、ここで今まで何を?」
《何をしていた、か。敢えていうなら隠れていたとでも言うだろうか……。生贄を受け取らないようにする意味と……ここ数十年、あの河は随分汚れてしまった》
ジョルティ「この青い宝玉はなんなんだ?」
ジョルティが聞いている頃、クライブはすでに特に警戒することもなく青い宝玉を手に取っていました。
《その青い宝玉は、魔力を留めておくためのものだ。ドーレスの魔力がここに留まっていたのはそれによるものだ》
クライブ「ほーん、こんなもんがねぇ…」
ジョルティ「貰えるなら貰っとこ」
トリシア「水の竜とか呼ばれてるお方、赤と紫の宝石の因果関係って?」
《赤と紫の宝玉は、ドーレスの者達が作ったものだろう。今は呪文で魔法を使うの主流だが、当時はああいった宝玉を用いて魔法を使うのが普通だった》
トリシア「そうなのかー」
ティエ「へぇー」
クライブ「面倒なこったな」
ジョルティ「こんなもんばっかり出てくるって事は、ドーレスとかいう文明は魔導か、或いは魔導機とかに明るかったんかね?」
《そうだな。今の文明に比べて、かなり魔法に依った文明であった》
ジョルティ「大河の氾濫も魔法の事故だったりしてな」
《魔法を嗜む者なら分かることだろうが、魔法というのは竜の力を借りて使うものだ。……当時はかなり無理がかかっていたのだろうな》
トリシア「ディアンさんは何か聞くことないのー?」
ディアン「さ、先程から誰と話しているんですか?」
…ディアンは、水竜の声が聞こえていないようでした。
ノーティ(ディアンさんには聴こえていないのか?
この声が……)
トリシア「ディアンは選ばれなかったんだね…」
ノーティ「私からはあと一つだけ。あなた方のような竜は何のために存在しているのですか?」
《難しい質問だな……。あえて言うなら、ただそこにあるために存在している。……君たちと本質的には変わらない》
トリシア(何故ディアンには聞こえないのかな…?旅人が好きなのか…?)
《……そろそろ時間だな。青い宝玉のことは好きにせよ。旅を続けるが良い、春の竜の旅人達よ》
ノーティ「春の竜……」
トリシア「春の竜?なんやかんやこんなパーティーにも竜の加護とかついてるんだねー」
その言葉と同時に、彼らを覆っていた冷たい空気は去りました。私から見ても、水竜の気配はかなり弱まっているようです。
クライブ「また言いたいことだけ言いたい放題な奴だったな」
ディアン「春の竜……ですか」
ノーティ「竜に季節が割り当てられていて……?
え、竜の加護ですか? なるほど……」
トリシア「意外と近くにいたりしてね?」
トリシアは、そんなことを言いながら笑っていました。一瞬、その目線が私の方を見ていた気がして、どきりとしてしまいました。…聞こえていないとは分かっていながら、私も小さく笑い返していました。
ディアン「……皆には、何者かの声が聞こえていたのですね?」
ノーティ「ええ…恐らくは、水竜…あるいは魔法によって再現されたものかもしれませんが…」
ティエ「その声が、この宝玉を持っていけと」
ノーティ「ディアンさんには後ほど、詳しくお話します」
ディアン「……分かりました。私もその者の話に興味があります。……各種調査と、その話は戻ってからにしましょう」
クライブ(…春の竜ねぇ…この前の違和感…まさかね。ま、こういうのはノーティがそのうち調べるだろ)
ジョルティ「さーて、貰うもん貰ったし帰ろ帰ろ」
ディアン「……一度帰りましょう。遺跡に危険がないことも分かりました。今後は私だけでも調査ができそうです。ラスさんも待たせていますし」
ジョルティ「あ、宝玉代経費で落としてね?」
ディアン「考古学協会に問い合わせておきます……」
トリシア「せっかく水の竜的な何かがいたし樽一個ぐらい置いていく?水きたねーって言ってたし」
ノーティ「それこそ竜は困るのでは?姿を持たないという話でしたし」
クライブ「んじゃ仕方ないから地酒でも置いていくか…」
トリシア「じゃ自家製酒も一本置いておこう」
ティエ「あ、ローレライの涙も置いていきます?」
クライブ「いや、それはいかんだろ…」
ティエ「ダメかー」
《その酒は要らんぞ》
…と、私にだけ聞こえる声で水竜様が言っていたので、これらは彼らが出た後に私が貰っていくことにしましょう。
トリシア「春の竜にはあげないからなー、飲むんじゃないぞー」
……あれ?やっぱりトリシアには私が見えてますか?いや、そんなはずは絶対ないはず、ないはずです。偶然に違いありません。
ノーティ「私達もそろそろ旅の意義を見出してきましたね……多分……」
彼らが小部屋から出ていった後、私は少しだけその部屋に残っていました。置いて行かれても困るというお酒を持っていくためです。
《……春の竜の眷属よ、随分変わった旅人達を見つけたものだな》
『水竜様、でよろしいんですよね?』
《そう呼ぶ者が多いが、察しの通りただの大河の竜だ、大層なものではない》
『……私はアリア、こちらもお察しの通り、春の竜の眷属です』
《どうやら、君もまだ若い竜人のようだな。ドーレスのことも、恐らく知らなかっただろう。…春の竜によろしく伝えてくれ》
『ええ、もちろん』
《……これから、どこに向かうつもりだ?》
『まだ決まっているわけではありませんが……恐らくは東に進路を取るかと思います』
《東か……。……東の果てには気を付けろ》
『どういうことですか?』
《いや、詳しいことまでは分からん。……が、何か嫌な空気を感じる。用心しておくが良い》
『……分かりました。それでは、私はそろそろ参ります』
《ああ。良い旅を》
こうして私も、彼らを追って小部屋を出ました。遺跡を出口に向かっている彼らに追いつき、そのまま共に船が止めてあった河岸まで向かいました。
なぜだか帰りの河の流れは穏やかで、誰も酔うことなく、ラ・ヴィスまで戻ることができました。……大河の竜の加護があったのだと、勝手に思っておくことにしました。
第十七話「古き竜の都のドーレス」
サンドラの火山の竜に続き、彼らがまた竜に触れることになりました。
……期せずして、彼らが「春の竜」のことも知ることになってしまいましたが。
竜の君は、「ドーレス」のことをご存知ですか?そして、東の脅威のことも……。
……いえ、止めておきましょう。これも、私の旅の楽しみにしておきたいと思います。私自身が楽しみ、驚くことが、良い旅物語のために必要だと思いますから。
それでは、この先の旅物語をお待ち下さい……。
【MVP:ノーティ】
こちらは、2016/10/1.2に行ったオンラインセッションのリプレイです。
旅人達のレベルも10が近付き(と言っても、まだもうしばらくありますが)、旅の終わりを見据えた話を進める回となりました。(ファンブル回)
竜に関する設定などは、多いに独自のものを含んでおりますので、ルールブックの内容からは少々離れている部分がありますがご了承下さい。
それでは、次なる旅までもうしばらくお待ち下さい…。
【参考サイト】
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