おはようごうざいます、竜の君。……その、体調はもう大丈夫ですか?
いやはや……私も初めての料理ではありましたが、あんなことになるとは思わなかったもので……申し訳ありませんでした。
さて、彼らはもう少し、リーテで過ごすことにしたようです。美味しい料理がそうさせるのでしょうか?お口直しになるか分かりませんが、次の旅をお話致しましょう。
第二十話「もうひとつの方程式」
~秋の月 26日~
気づけば、収穫祭からもう丸4日が経過していました。毎日のように泊まる場所を変えてこそいるものの、どこの料理も美味しくて堪りません。なかなか次の旅に出ようという気がしないのも納得です。
リーテでの日々はずっと天気がよく、ゆっくりと過ごすにはこれ以上ない環境でした。
〈コンディションチェック〉
パワー:6
クライブ:7
ティエ:7
ノーティ:6
トリシア:9
ジョルティ:10(絶好調)
〈荷運びスキルによる振り直し〉
クライブ:13(絶好調)
クライブとジョルティは美味しい料理のためか、体調が良さそうでした。他の皆は……慣れてきてしまったのでしょうか?
そんなこんなで、相変わらず美味しい朝食をその日の宿の子羊亭でとっていると、町の案内をしてくれた少女、ルーが訪れました。小狐亭で働いている時にしているエプロンはしておらず、どうやら今日はお休みのようですね。
クライブ「眠い」
パワー「眠い」
ルー「おはようございます!朝早くからすみません」
ノーティ「これはこれはおはようございます」
トリシア「ます」
ルー「こちらにお泊りだと聞きましたので、ちょっとお話がありまして」
ノーティ「よく聞きつけましたね。何でしょう?」
ジョルティ「ルーちゃんなでなで。お小遣いをあげよう」
パワー「警察はどこですか」
ジョルティはこの時、「自分で出すんだぞ偉いだろ」という顔でクライブを見ていました。……いやいや。結局ルーには断られていたのですが。
ルー「その、姉にですね、この前の収穫祭のことを話したんですが」
ルー「『それだけできるということなら、腕も立つだろう。頼みたいことがあるから呼んできてくれ』とのことでして……お手数なのですが、一緒に来て頂けませんか?」
トリシア「ルーちゃん結構騙されやすいタイプっぽいよね」
ルー「え、そ、そうですか?お会計はちゃんとできますよ?」
ノーティ「せっかくですから行きましょうか。いい加減暇を持て余しているところでしたし」
ルー「ありがとうございます!レストラン街の少し離れた所にありますので、食事が終わりましたらご案内しますね」
ジョルティ「もぐもぐ、いいよ案内してどうぞ」
パワー「食いながらしゃべんな」
ジョルティ「飲んでから喋ってるだろ!育ちが違うんだよ!」
パワー(何言ってんだこいつ)
食事を終え、ルーの案内で街を歩いていきます。ルーの言っていたとおり、その場所はレストラン街からは少し離れたところにありました。料理店のようではありますが、看板が小さく目立たないため、知らない人には民家にしか見えない感じでした。
ルー「こちらです」
ノーティ「一緒に働いてないんですねえ……独立したのかなあ」
ルー「お入り下さい。姉さーん、連れてきましたよー」
ノーティ「失礼します」
玄関に入ってルーが呼びかけると、左の方から「こっちだ、入ってもらってくれー」と女性の声が帰ってきました。皆、ルーに続いてそちらの部屋へと向かいます。
そこは居間になっているようで、中央に置かれたテーブルの前の椅子に、ルーより10歳ほど年上と思われる長髪の女性が座っていました。
ジョルティ「中々不躾な姉ちゃんだな、本当に姉妹なの?」
女性「ははは、よく言われる。いやはや、足労を掛けてすまないね」
ノーティ(不躾というより凛々しいお方ですね)
ルー姉「私はクー・ディルナール。ルーの姉で、見ての通り?料理人だ。ルーから諸君の話を聞いて、呼ばせてもらった」
ノーティ「なにかお困りで?」
パワー「いえ特には」
ノーティ「あ、はい…?」
パワー「何だよ聞いておいて」
ノーティ(何を言っているんでしょう…)
クー「聞いていたよりも面白い者達だな。いやまあ、困っているというわけではないのだが…どうも南の山の向こうの森にね、少し珍しい奴が出たらしくてね。なかなか見られない食材だから、これがどんな味になるのか気になっているんだ」
ジョルティ「!?詳しく!詳しく!」
クライブ(余計なのが食いついた…)
クー「”パラサイト・ナス”というのだが、他の生物に寄生するという変わった植物でな。生命力を拝借する代わりにその生物の力を増すという」
ジョルティ「はい解散!寄生系は却下だ!」
クライブ「そいつごと焼けばナスと肉の炒め物になりそうだな」
クー「何に寄生しているかは分からんが、動物に付いているようならそれも良さそうだ」
ジョルティ「昔当たってから大嫌いなんだよぉ!!あの激痛は地獄の苦しみだぞ!!」
クー「そこで、もしよかったらだが、君たちにその魔物を討伐してきてもらいたい。どんな生物に寄生しているのかが分からんが、まあ、森にいるような奴だ、君たちのような手練ならさしたるものではないだろう」
ジョルティ「俺も美食ハンターの端くれだが、管轄外だ!他所を当たってくれ!」
クー「ふむ、そうか?それは残念だな……」
ノーティ「いやいや。美食ハンターがここで引いたら名折れですよ」
パワー「いいから行こうよ。とっとと倒そうぜ!どうせ口に入れたら同じだから!」
ノーティ「宿主との戦闘は避けられないでしょうが、もはや我々の懸念するところではないでしょう」
クー「まあ私としては受けてもらえると助かるのだが……それほど高額な報酬が出せるわけでもなくてなあ」
ジョルティ「お前らはあの地獄を知らないからそんなことが言えるんだ!」
クー「一名を除いては前向きなようだが……?」
クー「食中毒などについては気にする必要はない、現地調理要員として私の夫を派遣しよう」
ノーティ「色々と妹さんに案内してもらった御恩もあることですし、ここは引き受けましょうよ」
ジョルティ「まぁ、皆が乗り気なら依頼は受けてもいいちゃいいけどさ…現物支給じゃないだろうな?」
トリシア「美味いもの作ってくれるんじゃないの」
ノーティ「ナス抜きでお願いすればいいじゃないですか」
クー「ライルもそこそこ以上には美味しい料理が作れると思うのだがなあ」
トリシア「あー、報酬にルーちゃんも貰っていいですか」
ノーティ「え?」
クー「報酬に妹は出せんなあ」
トリシア「だめかー」
クライブ(もらえると一瞬でも思ったのか…)
トリシア「連れ去らなきゃ…」
パワー「警察はどこですか」
クー「まあ、そういった感じなのだが、如何かな。報酬は現地での料理、及び余剰の物品。それと……そうだな、私の特製スパイスを1瓶付けよう」
ノーティ「報酬に関しては特に気にしていませんが、私は引き受けても構わないと考えています。後は皆さん次第ですが」
クライブ「任せた」
クー「もし、受けてもらえるようなら、夫を呼ぼう」
ジョルティ「他の料理も用意してくれるならな!!」
クー「他の者達はどうかね?彼はこう言っているが、これ以上は出ないぞ」
ノーティ「ジョルティさんは勝手に自分のお金で食べてくださいよお」
クー「私としては、頭数が少なくとも目的を達成してもらえるのならば別に構わないのだが……」
ジョルティ「本良く読む癖にこの有名な言葉を知らんのかノーティは…『タダ飯より美味いものはない』!」
クライブ(誰が言ったんだ)
クー「ははは、その言葉には同意しないでもないがね。しかしこういう言葉もある、二兎を追う者は一兎をも得ず。常に思い通りの結果を求めるのが良いとは限らない」
ジョルティ「親父からは二兎居たら三兎は居るから頑張れと教わったぞ」
クー「大抵そうして見つける3羽目は猛獣と一緒にいるものだよ」
トリシア「1匹見つけたら100匹いるぞって店で…」
ジョルティ「それは違う奴だな。港にいたやつだな」
ノーティ「ところで、旦那さんも料理人でいらっしゃるんですか?」
クー「ああ、私ほどではないが腕は良い。そこは信頼してもらって良いぞ」
ノーティ(凄い自信ですね…)
クー「どうかね、君たちの総意としては。まあ一応補足ではあるが、私のスパイスは他では手に入らんぞ。遠くから求めてくる者もいるぐらいだ」
クライブ(面倒になってきたな…)
クライブ「受けて良いんじゃないか。ここ最近大したことしてないから腕がなまりそうだ」
クライブ「俺は狼は一匹逃すと面倒だから全部殺せと習った」
ノーティ「それなら旦那さんをお呼びしてもらって、さっそく向かうことにしましょう」
クライブは話をするのに飽きたのか、手の中で青い宝玉を遊ばせていました。ここ最近、ずっと町で美味しいものを食べているだけでしたし、ようやく旅物語にできそうなことができて良かった、と内心思っていた所です。
クー「ふむ、良いようだな。良かった良かった。では、ルー、夫を呼んできてくれ」
ルー「はいはーい。ライルさーん、お姉ちゃんがお呼びですよー」
ルーはそう呼びながら、庭で畑仕事をしているクーの夫を呼びにいきました。ここで、いつのまにやらはぐれていたティエがやってきました。ここに来る間、露店に引き寄せられて遅れていたようです。
ティエ「えーっと? 動物とナスの融合生物?を退治?しに行くのですか」
ノーティ「ナスが宿主に寄生しているらしいです」
クライブ「とりあえず全部ぶっ殺せってさ」
パワー「まかせよ」
ティエ「はー 植物系なら燃やしますかねぇ」
ノーティ「燃やしては料理に使えないのでは」
ジョルティ「良いよ焼いちゃって」
クー「程良く焼いてくれよ、程良くな」
合流したティエに話をしている間に、ルーと共に大柄の男が居間に入ってきました。身長も体格も人並み以上で、秋にも関わらず薄っすらと日焼けしています。
ライル「初めまして!クーの夫のライルと申します。この度はナス狩りにご同行頂けるとのことで!」
トリシア「なんか名前に覚えがあるような…ないような…」
ライル「ふむ?ああ、もしかして本を読まれましたか?旅料理に関する本をちまちまと出版しておりまして」
トリシア「あー読んだ読んだ。あーあーそんな名前だった気がする」
ライル「旅の途中でこの町でクーの料理を食べましてね、旅が終わった後にここに居着いてしまったのです」
ジョルティ「まじか」
ジョルティ「一部下さい。サイン付きで」
ライル「ええ、それぐらいなら構いませんが……サインなんかしたことがありませんから上手く書けますかね」
ジョルティ「やったぜ」
ライルは部屋から一冊の本を持ってきてサラサラとサインをしました。どう見ても練習をしたとしか思えない、上手なサインでした。
ジョルティ(めっちゃ手慣れとるやんこのおっさん!)
ライル「料理は面白いですよ!私の本が役立てば幸いです」
ちなみに、ジョルティはおっさんと思っているようですが、年の頃ではジョルティと変わりません。クーは少し年上のようでしたが……。
ライル「しかし、受けてもらえて良かったですよ。危なく1人で行かされる所でした」
トリシア「私の旦那なんだから行ってこいよ的な事を言われたんだろうなぁ」
クー「いやいや、そんなことは言わんぞ。帰ってきたら飯作ってやるからな、としか言っていない」
ノーティ(それはそれで怖いなあ)
ジョルティ「んで、今回の珍味捕獲についての方法とか注意点とかってあるんですかね?」
ジョルティ「寄生ナスの捌き方なんて知らないですよ俺たち」
ライル「料理に関しては任せて下さい、クー程ではありませんが、そこそこ腕には覚えがありますから」
ジョルティ「じゃあ俺達は宿主気絶させる程度でいいんかね」
ティエ「魔法攻撃するとコゲるんだけど大丈夫ですかね?」
クー「まあ、そうだな。目的はナスだけだからな、宿主の生死は問わんよ。たいていの場合は野生動物に寄生しているからな、一緒に料理にしてしまうのだが」
クライブ「だろうな。面倒だろうし」
クー「まあ……そうだな。できればナス自体は生きている状態で捌いてほしい所だが、そこは任せる。宿主によっては身の危険もあるかも知れんからな」
ノーティ「普段から敵対生物を激しく損傷させるような戦闘はしていませんからその点は気にする必要はないでしょう、多分」
そ、そうでしょうか?船上で戦った斬馬などはボロボロになっていたような気がしないでもないですが……。
クー「ふむ、それなら安心だ。では、改めて頼んだぞ。ライルの分の野営設備や食料などは気にする必要はない。元旅人だけあって、その辺のものは持っているからな」
クライブ「面倒だし全部ぶっ殺せばいい話だろ」
クー「ふふふ、頼もしいな。まぁ、後は頼んだ」
ノーティ「えーと、ライルさんでしたっけ、さっそく目的地の森まで案内していただけますか」
ライル「ええ、参りましょう。準備などはありますか?」
ノーティ「いえ、特に私は準備しなければならないことはありませんが。皆さんも大丈夫ですよね?」
ライル「山を超えるとすぐ森です。すぐ見つかるとは限りませんが、冬が来る前には戻れますよ、多分」
ノーティ「そんなに掛かるんですか」
パワー「帰るわ」
ライル「片道2日ですよ?」
ノーティ「まさかライルさんが山や森で道に迷ったりしませんよね?」
ライル「まあ、ある程度なれた場所ですから、大丈夫だとは思いますよ。迷ったらその時です!大抵のことは何とかなると旅で学びました!」
ノーティ「それなら一安心です、さすがにそんなところに夫を送り出す妻は……え?」
ライル「山と森程度ですから、何とかなります何とかなります」
ノーティ「え、まあ、そうですね……では我々も保存食を用意してから向かうことにしましょう」
ティエ「さっき売っている店は見つけたので、道なりにすぐ買えますよ」
パワー「さっさといこうぜ」
ライル「では、参りましょう!」
こうして彼らは、町を出て寄生ナス狩りへと向かうのでした。……ジョルティではありませんが、確かに食べて良いものなのかちょっと迷う食材ではありますね……。
そういえば、長く歩くのは久しぶりです。クローナ・ディアからはほとんど船旅でしたからね。
町から出ると、冷たい風が吹いていました。やはり、もう冬が目前に迫っているということもあり、冬の竜が段々と元気になってきているのでしょう。そういえば、冬の竜の語り部である黒竜人にはまだ出会っていませんね。
クライブ「征くぞトロンベ。…お前移動中は役に立たないが」
クライブは旅に出るときに、ユニコーンハンターから鹵獲したハイロードランナーを呼んでいました。……いつの間に名前を?
パワー「非常食か?」
クライブ「違う」
パワー「今のうちに塩振っておくか」
クライブ「やめろ」
〈移動チェック:山:寒い:目標11〉
パワー:6(失敗)
クライブ:10(失敗)
ティエ:11
ノーティ:5(失敗)
トリシア:10(失敗)
ジョルティ:11
やはり、皆久しぶりの陸路ということもあり、疲れている人が多いようでした。……私も含めて。ライルは全く疲れている様子がありませんでした。体力ありそうでしたからね、彼。
ライル「皆さんなかなかお疲れのようですね」
パワー(帰りてぇー)
クライブ「久しぶりに陸路を行くからな」
〈方向チェック:山:寒い:目標11〉
ティエ:9(サポート成功)
ノーティ:25
久しぶりの陸路ではあったものの、ティエとノーティは間違うことなく地図を見ることができていました。夕方頃には山の頂き近くが近付いています。……そもそもライルが案内すれば良かったのでは?
ライル「おっと、大分登ってきましたね。今日はこの辺で休むことにしましょうか。明日には森に着きますね」
ジョルティ「そろそろ飯にするか」
クライブ「この辺りでの狩りは収穫祭で慣れたものだろう」
ジョルティ「しかし最善を尽くさせてもらう!」
〈ジョルティ:春魔法「スプラウト」→ジョルティ〉
発動判定:6
〈狩猟チェック:山:目標10〉
パワー:7(失敗)
クライブ:4(失敗)
ジョルティ:6(失敗)
パワー「山に動物がいるわけがないだろ!」
ジョルティ「山だからなあ」
クライブ「お前らな…人のことは言えんが」
〈野営チェック:寒い山:目標11〉
ティエ:10(サポート成功)
トリシア:20
3人が狩猟から戻ってくると、すでに野営の準備は整っていました。ライルは自前の料理道具を出し、彼らの帰りを待っていたようです。
ライル「おや、動物は見つからなかったみたいですね……」
ライル「あ、保存食でも料理すれば美味しくできますよ。一緒に料理します?」
ジョルティ「まじかよ天才かよついでにその方法教えて下さい」
ライル「旅料理は慣れですねぇ。保存食はクセが強いですから、ソレに合わせてスパイスを使えば良いんです」
ジョルティ「スパイス万能すぎぃ!!」
~秋の月 27日~
山頂が近いということもあり、相変わらず寒いものの、天気自体は悪くなく、青空が見えています。
〈コンディションチェック〉
パワー:14(絶好調)
クライブ:16(絶好調)
ティエ:16(絶好調)
ノーティ:14(絶好調)
トリシア:10(絶好調)
ジョルティ:8
ライル:10(絶好調)
ライル「おはようございます!良い天気ですね!」
ジョルティ「先を急ごう」
ライル「ええ、急ぎましょう。あ、これ、朝食です。」
ジョルティ「わあああああい!!ガツムシャァ」
パワー「やっぱり食い方汚いぞ!」
ライル「では行きましょう!もうすぐ森です!」
〈移動チェック:寒い森:目標11〉
パワー:3(失敗)
クライブ:17
ティエ:10(失敗)
ノーティ:8(失敗)
トリシア:16
ジョルティ:16
ライル:12
山の下りというのは、案外疲れるもので……パワーは足を取られたのか転がるように落ちていき、森の入口の木に体をぶつけていました。
ジョルティ「ずっと転がってるな、やべーな」
クライブ「ようやく陸路の勘、取り戻したな」
ライル「そろそろ森に入れるはずですが、さて、地図は……」
パワー「この棒が倒れた方に進もう!」
ノーティ「やめて下さい」
〈方向チェック:寒い森:目標11〉
ティエ:14(サポート成功)
ノーティ:23
ティエ「このままで良さそうですね」
ノーティ「ええ、道には迷わずに済みそうです」
その日も地図を見る目は冴え渡り、迷う気配もなく目的の森の中頃まで到着することができました。
ライル「ふう、何とか来られましたね。さてと……この辺りだと聞いているのですが…」
ライル「……森だけあって動物の気配は多いですねぇ。ちょっと探ってみますか」
〈動物探し:森:目標10〉
ライル:7(失敗)
ライル「うーん、気配が多くて何が何やら分かりませんね…」
クライブ「やれやれ…手伝うか」
ジョルティ「どれどれ」
〈動物探し:森:目標10〉
クライブ:11
ジョルティ:4(失敗)
ジョルティ「んーそれらしいものは見当たらんな」
クライブ「む…この足跡は…」
クライブがその場にしゃがんで2つ並んだ足跡を覗き込みます。どうやら、その足跡は他のものに比べて深く踏み込まれているようでした。
クライブ「…単純に重いのか、あるいは…」
ライル「言われてみると確かにこれだけ深いですね…。寄生された動物は力が増すと言っていましたし…もしかすると」
クライブ「…洞窟へ続いているな」
ライル「どうしましょう、もう暗くなってきていますが…」
時間としてはそれほど深いわけではありませんが、鬱蒼と茂る森の葉が傾き始めた日差しを遮っており、周囲はすでにかなり暗くなってきていました。
ティエ「寄生された生物に夜目が効くとか、闇に溶け込むとか、そういう能力がありそうなら明日にした方が良いですね…?」
と、そんな話をしている間に、話を聞いたジョルティとパワーがすでに洞窟の方へと向かっていました。ジョルティが光る短剣を掲げて洞窟内を照らしていますが、洞窟は思いの外深いため、奥の様子までは伺う事ができていません。
パワー「ナスがどこにもナス」
クライブ「実にらしい発言ありがとう。追うか…」
クライブの他、皆も2人に続いて洞窟の方へと近寄っていきます。すると、こちらの気配を察したのか、洞窟の奥からグルルルルというような唸り声が聞こえてきました。
クライブ「ふむ…」
クライブは何かを考えたと思った刹那、ポーチから短剣を取り出して洞窟の奥の方へと向かって投げました。投擲された短剣は目標に命中することはなく、洞窟の壁面にぶつかり甲高い金属音を反響させます。
その音に反応してか、洞窟の奥から聞こえる唸り声は一層大きくなり、そして近寄ってきました。
トリシア「人だったらどうするの」
クライブ「いや、足跡にしろ、鳴き声にしろ、人ではないだろ」
トリシア「足が大きくて危ない人なのかもしれない」
クライブ「ならやることは同じだな。準備した方が良さそうだ」
ライル「……来ますかね。戦闘の準備をしましょう!」
〈戦闘開始〉
森の洞窟の奥から飛び出してきたのは、大きな二頭の動物でした。黒い体毛と鋭い爪牙を持ち、太い腕脚で地を捉えて突進をしていました。頭と背中の付近には、それぞれ2匹ずつ、何か植物のようなものが寄生しているように見えます。
クライブ「2匹か…面倒だな」
ジョルティ「静まれ!森の主ともあろう者が!」
ジョルティ「返事はないな…よし、やるか!」
ティエ「あれがナス…!」
パワー「ナス程度一撃で葬ってやるよ!まとめて料理してやるからなぁ」
ジョルティ「うへぇ、寄生されたくねぇなぁ。前衛は任せた!」
〈ラウンド1〉
【ティエ】
ティエ「まずはちょっと見て調べてみますか」
〈知見→大きな動物♂〉
判定:13
ティエ「あの動物は…バッファローベアーですね」
ライル「熊なんですか…牛なんですか?」
ティエ「牛のような突進力を持つ熊ですね」
ライル「紛らわしい名付けですねぇ…」
ティエ「ともあれ、ある程度の能力はわかりましたが…よし、ちょっと変わり種を」
〈秋魔法「ネームド・ムーン」〉
発動判定:8
ティエの魔法によって、森の葉を超えた向こうに大きな月が輝きはじめました。その光は森の中からでも十分見ることができました。
ライル「きれいな月ですね…」
ノーティ「なるほど、分かりましたよ、ティエさん」
【ノーティ】
〈知見→大きな動物♀〉
判定:14
ノーティ「こちらは、バッファローベアーのメスですね。オスに比べて体大きく、頑丈なようです。…なら、オスから狙うべきですね」
〈春魔法「カグヤ・レイランス」→バッファローベア♂〉
発動判定:13
ダメージ:13
月の光の力によって、カグヤ・レイランスの力が増していました。光る筍は通常よりも多く太くなっており、バッファローベアのオスへと突き刺さります。
【トリシア】
トリシア「ナスの方も見ておこう」
〈知見→パラサイト・ナス〉
判定:15
トリシア「ナスの方は余り危険はなさそう。熊倒すので大丈夫っぽい」
〈攻撃→バッファローベア♂〉
命中判定:18
ダメージ:7(防護点3)
トリシアの矢が命中し、バッファローベアのオスは激しく咆哮しました。確かに痛手を負わせていることは間違いありません。しかし、手負いの獣が恐ろしいのも、また間違いのないことです。
【バッファローベア♂】
〈攻撃→クライブ〉
命中判定:13
ダメージ:2(防護点1)
クライブ「ちっ…こっちか。だがかすり傷だな」
【バッファローベア♀】
バッファローベアの♀は、クライブの肌に滲む微かな血液の臭いに敏感に反応しました。他の者には目もくれず、クライブに向けて突進をします。
〈攻撃→クライブ〉
命中判定:8(失敗)
しかし、クライブも冷静にその突進を見極め、手綱を操ってハイロードランナー……トロンベを動かし、回避しました。
【クライブ】
クライブ「流血している限り狙われそうだな…」
〈様子見〉
イニシアチブチェック:10
【ライル】
ライル「オスから狙えばいいですね?」
ノーティ「はい、集中して落としてしまいましょう」
ライル「分かりました!」
〈攻撃→バッファローベア♂〉
命中判定:7(失敗)
ライル「むっ、思ったより速い!」
ライルの短剣は勢いこそあったものの空を切り、ダメージを与えることはできませんでした。
【ジョルティ】
ジョルティ「アレから生命力を絞ってるなら、ナスも速いかも…倒しても逃げられたらたまらん!」
〈呪文魔法「ウォー・メタフィールド」〉
発動判定:4
ジョルティは魔法、ウォー・メタフィールドによって、今の戦場を特殊な空間の中へと閉じ込めました。周囲から戦闘に使用できそうな道具が失われましたが…そういえばそもそも最近使っていませんでしたね。
【パワー】
パワー「熊を殴れば良いんだな!?」
ノーティ「!?理解しているのですか!?」
パワー「うおおおおお」
〈攻撃→バッファローベア♂〉
命中判定:13
ダメージ:10(防護点3)
パワーの一撃が命中したことで、バッファローベアのオスはかなり大きなダメージを受けたようでした。黒く長い体毛に阻まれて見えないものの、その傷は深いようです。
【パラサイト・ナス】
バッファローベアに寄生しているパラサイト・ナスは、特に動く気配はありません。ただ、風に吹かれるようにゆらゆらと揺れていました。
〈ラウンド2〉
【ティエ】
ティエ「オスの方はもう倒れそうですね。倒してしまいますか…」
〈呪文魔法「シューティング・スター」→バッファローベア♂〉
発動判定:14
ダメージ:10
ティエの放ったシューティング・スターはバッファローベアのオスにクリーンヒットしました。これによってオスはその場に倒れ込み、動かなくなりました。寄生していた二匹のパラサイト・ナスが頭と背中から外れます。
同時に、動かなくなったオスの姿を見て、残されたメスのバッファローベアが一際大きく吼えました。見るからに凶暴化しています。
【ノーティ】
〈春魔法【カグヤ・レイランス】→バッファローベア♀〉
発動判定:18
ダメージ:6
【トリシア】
〈攻撃→バッファローベア♀〉
命中判定:6(失敗)
トリシア「あれ、当たってない」
クライブ「やる気出してくれ」
【バッファローベア♀】
バッファローベアの♀は凶暴化しながらも、変わらずクライブの血の臭いを追いかけているようでした。先程よりも加速した突進が襲いかかります。
〈攻撃→クライブ〉
命中判定:24
ダメージ:7(防護点1)
激しくなった突進を受けて、クライブは大きなダメージを受けました。出血はさらに激しくなっています。
クライブ「つぅっ…」
ライル「手負いの獣の勢いたるや!」
ジョルティ「大丈夫っすよ、クライブさん慣れてるから」
【クライブ】
命中判定:14
ダメージ:8(防護点3)
クライブ「硬いな…」
【ライル】
〈攻撃→バッファローベア♀〉
命中判定:Critical
ダメージ:13(防護点3)
ライルもまた、クライブの流血を見て興奮しているのでしょうか。格段に速度を増し、懐に入り込んだかと思うと目にも留まらぬ速さで2度、バッファローベアのメスの急所に短剣を突き立てました。
ジョルティ「なんだその動き!!」
ライル「昔取った杵柄、という奴です」
【ジョルティ】
ジョルティ「ところでライル氏、秋ナスは美食家に食わせるなってことわざ知ってる?」
ライル「美味しくて食べすぎてしまうからですか?」
ジョルティ「体が冷えるからだってさ」
ライル「ほー。パラサイト・ナスも同じなんですかねぇ?」
ジョルティ「それは分からんけども」
クライブ「良いから早くしろ。こっちは出血してんだ」
ジョルティ「慣れてるでしょ?仕方ないなあ」
〈攻撃→バッファローベア♀〉
命中判定:13
ダメージ:6(防護点3)
【パワー】
ジョルティ「大分弱ってきたな、やっちまえパワーさん!」
パワー「うおおおお」
〈攻撃→バッファローベア♀〉
命中判定:22
ダメージ:1(防護点3)
パワー「なでなで」
ジョルティ「一撃とは一体…」
【パラサイト・ナス1.2】
〈寄生→バッファローベア♀〉
バッファローベア♀のイニシアチブ・HP・MP・コンディション・防護点・攻撃力が上昇
オスの体から外れた2匹のパラサイト・ナスは、蔦で移動してメスの体へと乗り移りました。合計、4体ものパラサイト・ナスがメスの体に生えています。
ジョルティ「動きキメェ!!」
クライブ「ぬ…面倒なことを」
ジョルティ「良かったー、ウォーメタ張っといて」
ライル「明らかに寄生のし過ぎです…!」
力強さを増した咆哮は、ともすれば森中に響き渡りそうなものになっていました。
〈ラウンド3〉
【ティエ】
ティエ「かなり強くなっているようですし…念には念を」
〈六分儀秋魔法「グレイトフル・スケアクロウ」→クライブ〉
発動判定:17
【バッファローベア♀】
バッファローベアのメスは、過剰な寄生によって暴走しているようにも見えました。再びこちらの陣容を睥睨した後、クライブに向けて突進を行います。
〈攻撃→クライブ〉
命中判定:12
カカシ回避:3(成功)
ダメージ:8(防護点1)
クライブ「カカシを抜いてきたか…!」
ティエ「カカシが抜かれた!?」
ジョルティ「狂気が勝ったか」
ライル「大丈夫ですか!?」
クライブ「まだ問題はない…どうせ相手も際だろう」
ジョルティ「大丈夫です!クライブさんだから!」
クライブ「終わったら覚えてろよお前」
……まあ、実際まだ元気そうというか、どちらかというと生き生きしている感じがしないでもないのですが。
【ノーティ】
〈春魔法「カグヤ・レイランス」→バッファローベア♀〉
発動判定:15
ダメージ:15
ノーティのカグヤ・レインランスが、バッファローベアのメスの体を刺し貫きました。もやは、動くことはありません。寄生していたパラサイト・ナスは新たな宿主を求めて蔦を這わせ、かろうじて辿り着いたグレイトフル・スケアクロウに寄生していました。
〈戦闘終了〉
クライブ「よし、終わったな。おい、ジョルティ」
〈ジョルティ:隠密〉
判定:5(失敗)
〈クライブ:投擲〉
判定:7(失敗)
ティエ「あのカカシ、もうすぐ消えるので捕まえるなら今のうちに」
ライル「はい!捕まえました!」
ライル「では、私はこちらのナスの方を捌いてしまいます。熊の方の加工はおまかせしても良いですか?」
ジョルティ「おけー」
〈材料加工:レベル8:目標16〉
パワー:12(失敗)
トリシア:17(♀を解体)
ジョルティ:9(失敗)
トリシアはバッファローベアのメスを解体し、新鮮な食材を4つと薬品になるという熊の胆を入手しました。オスの方はバラバラになってしまい、使えそうにありません。
ライル「ナスの加工が終わりましたー。そちらはどうですか?」
トリシア「メス解体したー」
ライル「おっと…これは…なかなか凄惨な」
ジョルティ「正直触りたくなかった」
パワー「熊を倒せば良いんじゃないのか?」
ライル「オスの方はダメみたいですねぇ。でも、メスの方が美味しいと言いますし」
ライルはそう言いながら、オスのなかなか見るに耐えなくなった遺体を埋葬していました。
ライル「それでは、今日はこれらで料理をして泊まりましょうか。これ以上の危険な生物もいないでしょう」
ジョルティ「飯だー!!」
ライル「少し分量が足りないようですね。足りない分、取りに行きましょうか。せっかくなので皆さんで良い料理を食べたいですし」
ジョルティ「いえー!」
〈狩猟:森:目標10〉
ライル:11(食材2獲得)
ジョルティ:15(食材6獲得)
ジョルティ「取ったどー」
ライル「これで足りますね!では、戻って料理にしましょう。野営の準備もできていると思いますし」
〈野営チェック:寒い森:目標11〉
クライブ:4(サポート失敗)
トリシア:18
トリシア「テントのポール傾いてるよ」
クライブ「ふむ…ダメージで体幹がズレているか…」
トリシア「まあこれぐらいならすぐ直せるけどね」
野営の準備が終わった頃、食材を抱えたジョルティとライルが戻ってきました。先程のバッファローベアの肉と合わせるとかなり量が多いように見えます。
ライル「よし、それでは腕を揮わせてもらいますよ!」
ライル「今回はこの熊の肉と、新鮮なパラサイト・ナスを4つ、それに先程狩猟で捕まえてきたノウサギで料理をします」
ジョルティ「俺ナス抜きがイイナー…」
ライル「おや、お嫌いなら仕方ないですね…。分かりました、それでは1人分はナス抜きで。代わりに先程一緒に収穫したキノコを使いますね」
クライブ「どのくらい掛かる」
ライル「そこまでは掛からないと思いますが…あ、これ、今淹れたコーヒーです。飲んでお待ち下さい」
ティエ「あつい にがい 砂糖だばー」
ライルは自前の調理道具でテキパキと調理を進めていきます。
〈メイン食材3+サブ食材4+スパイス8+料理6〉
完成度:21
新鮮な肉に新鮮な野菜(で良いんでしょうか?)、それにクーが作ったという特製のスパイスを使った料理は、臭いだけでもかなり美味しそうでした。…誰か残してくれないでしょうか…。
ライル「よし、こんなものでしょう!できました、皆さんどうぞー」
クライブ「ん…頂こう」
ティエ「イタダキマー」
ジョルティ「うおおおおおおおおお!!うーまーいーぞーーーーーーーーーーーー!!」
トリシア「ぱくぱくもぐもぐ」
ライル「確かにこれは、思っていたよりかなり美味しくできましたね……!」
〈味覚:敏捷+知力:目標12〉
トリシア:14
トリシア「うーん、アカツキ紅花を使ってるのは分かるんだけど…後はなんだろう」
ライル「おや、ハーブの研究ですか?確かにそれは使われていますね」
ライル「もう一つは滅多に見ることがありませんからねえ、多分味では分かりませんよ」
ノーティ「ハーブですか」
ジョルティ「どれどれ…」
〈職業知識(ヒーラー)〉
パワー:5(失敗)
ノーティ:17
トリシア「滅多に見ることがない、それはヒントだな!」
〈味覚〉
トリシア:12
ジョルティ「よわからんけどしゅごいおいちい」
パワー「口に入れれば何でも同じだな」
クライブ(肉しか分からん)
トリシア「これは…結界樹皮!」
ノーティ「結界樹皮、ですかね?」
トリシア「ノーティくんもわかったのかー。さすがヒーラー」
ノーティ「一体どこからこんなハーブを……?」
ライル「私の実家がですね、少しばかり山奥にあるもので」
ライル「妻に頼まれて時々送ってもらっているんです。それでも貴重品ですけどね」
なるほど…この味はそんな貴重なハーブから作られていたのですね。…あ、味覚談義中にボーっとしていたクライブの皿から少し拝借させて頂きました。
ノーティ(つまり二人が出会わなければこのハーブの組み合わせは生まれなかったかもしれないんですね……)
トリシア(入手するために結婚したのでは…?)
ジョルティ(夢ねーなこいつ)
口にこそ出ていないものの、何やら邪推の念を感じます。
ライル「しかし、凄いですね、食べたこともないですよね…。もしかしたら、皆さんも素晴らしい料理人になれるかもしれませんね」
ライル「さてと、お腹もいっぱいになりましたし、一泊して帰りましょう!皆さん一杯食べてくれたので、余った食材の処理も必要ないですね」
トリシア「食べた量以上に減ってる気が…気のせいかなー」
ライル「ナスも食べきりました!いやはや、これで貴重じゃなければ良いんですがねぇ」
ジョルティ「クーさんの分は?」
ノーティ「いいんですか?
全部食べてしまって」
ライル「え、ああ、なるほど、クーは言っていなかったんですね」
ライルは何かに気付いたように、少しだけ苦笑いを浮かべます。
ライル「クー、ナス嫌いですから。使えるかだけチェックしてこい、って話だったんですよ」
トリシア「偏食家の凄腕料理人ってなんなんだ」
クライブ(ナス嫌い二人目…)
ノーティ「ああ、それで……さすがは料理人の鑑……ですかねえ?」
ライル「料理人とは思えないほど偏食なんですよ、ホントに。」
ジョルティ「通常種のナスは好きだぞ俺は。寄生種が駄目なだけだ」
ライル「作る料理は美味しいんですけどねぇ。まあ、そんなわけで問題はないんです」
ジョルティ「味見無しでか、天才肌だな奥さん」
ライル「私やルーが味見係って所ですからね」
妹が素直な分、姉が変わっているのでしょうか…?いえ、順序からすると、姉が変わっている分、妹が素直なのでしょうね…。
ライル「というわけで、寝ましょう!」
こうして、美味しい料理に満たされながら一泊することになりました。その後、リーテに戻る道すがらには特に何か起こることはありませんでした。
〈ブレス発動:ミライ〉
~秋の月 29日~
夜頃になって、皆リーテへと到着しました。真っ直ぐとクーの家へと向かいます。料理店の方も、もう終わっているようでした。
ライル「ただいまー」
ジョルティ「ただいまー」
ノーティ「只今戻りました、上手くいきましたよ」
クライブ「やれやれ…久しぶりに歩いたな」
クー「おお、戻ったか。思ったより早かったな」
クー「どうだった?コイツの料理も悪くなかっただろう?」
クーは戻ってきた彼らを迎えて、静かに笑っていました。
トリシア「約束のルーちゃんを頂こうか」
ノーティ「……」
クー「ははは、ルーに言い給えよ」
トリシア「そやなー」
ジョルティ「スパイスしゅごかったわ…」
クー「お、気に入ってもらえたかな。これが今回の報酬だ。有効に使ってくれ」
クーは片手サイズの瓶に入ったスパイスを手渡してきました。見たところ、料理10回分ほどの量のようです。
トリシア「これが例の結界樹枝とアカツキ紅花ちゃんですか。使ったらうちの店が繁盛してしまうかもしれない。継ぐ気ないけど」
クー「ん?なんだ、私のスパイスが食べただけで分かったのか。思った以上にやるようだな」
トリシア「結界樹枝のために結婚したんじゃないかって誰かが言ってたぞ!」
トリシア「誰かは忘れたぞ!」
ジョルティ「お前だお前」
トリシア「誰だよ!」
クー「はっはっは、面白い事を考えるな!」
クー「評判が良いのは結界樹のハーブだがな、私自身はライルが来る前から使っている自分のハーブの方が好きでな。戦略的結婚をするなら、もうちょっと金のある奴にするよ」
トリシア「ライルくんお金ないのかー」
クー「コイツはコイツで代わりに料理をしてくれるから店に出る回数が減って助かるがね」
クーがそんなことを言っているとき、彼らの後ろにいたライルが照れくさそうに笑っていました。…彼らには、彼らなりの形があるのかもしれません。愛の形も、1つではないのでしょう。
クライブ「ま、そりゃ旅人捕まえて結婚するなんてよほどの物好きだろうな」
ジョルティ「で、どっちからプロポーズしたんです?口説き文句は?」
ノーティ(下世話だなあ)
クー「無粋なことを聞くものではないぞハッハッハ」
トリシア「ライルくんにしてもルーちゃんにしても周りの人間よく動いてくれて便利っすな!うらやましい」
クー「全くだ、私が偏食の引き篭もりの分、手足と舌になってくれる2人には助かっているよ」
トリシア「理想だわなー」
クライブ(なんだか遠回しに役立たずと言われているような?)
クー「私一人では腕は抜群だが食材も客もいない料理人だからな」
クー「これで今回の依頼は終わりだ。皆、助かった!料理として使うことはできそうだと分かった」
ノーティ「あのナスを取るときは誰かしら護衛を付けてあげて下さいね、一人では到底太刀打ち出来ませんから」
クライブ「ありゃ寄生していたのと数が悪かったくらいのものだろう。もう少しマシなのに寄生してりゃ楽じゃないか?」
クー「うむ、その辺りのこともこの後ライルから聞くとするよ。思った以上に手間をかけたようで済まなかったな」
ジョルティ「カカシにも寄生するみたいっすよ」
ティエ「1分で4MP掛かるとして……24時間で5760MP、MP30の人間が192人、休みを考えると倍の400人位いれば養殖できる!いや、雪割草を使えば1分で3MPになるから…」
ティエが何やら空中でそろばんを弾きながら算段を始めていました。……そんな目的であまり魔法を使わないで欲しいものです。
ティエが何やら空中でそろばんを弾きながら算段を始めていました。……そんな目的であまり魔法を使わないで欲しいものです。
ライル「人件費だけでとんでもない足が出そうですね…?」
クー「栽培できれば良いのだがねぇ、その辺りは魔物料理の課題だな」
クー「ああ、そういえば、この前もどこかで斬馬の養殖を試そうとして網を切られた奴がいるらしいぞ。まったく、困ったものだな!」
ジョルティ「ん?」
トリシア「斬馬…?」
クライブ(…あれか)
クーの話を聞いて、皆一様に顔を見合わせていました。……その斬馬なら今頃荷運び動物の箱の中で保存食になっていますよ…?
クー「では、用事があったらまた来てくれ。料理ぐらいなら振る舞おうじゃないか」
ジョルティ「ゲテモノ以外な!!」
クー「ははは、考えておこう」
こうして、「パラサイト・ナス」を巡る小旅行が終わりました。きっとこの後、仕事が終わったルーも交えて、3人で今回のことを話すのでしょう。
ノーティ「せっかくですし、次の行き先の情報収集もしておけば良かったですね」
クライブ「もう夜だし、明日でよかろう」
ノーティ「では明日、ルーさんにでも聞いてみるとしましょうか?各地について知っていそうでしたし」
クライブ「面倒だし任せた」
パワー「眠い」
トリシア「捕まえて箱に詰めなきゃ」
ティエ(こわい)
そんな話をしながら、今日もまた別の宿を取り、休むことにしたのでした…。
第二十話「もうひとつの方程式」 完
クライブ「もう夜だし、明日でよかろう」
ノーティ「では明日、ルーさんにでも聞いてみるとしましょうか?各地について知っていそうでしたし」
クライブ「面倒だし任せた」
パワー「眠い」
トリシア「捕まえて箱に詰めなきゃ」
ティエ(こわい)
そんな話をしながら、今日もまた別の宿を取り、休むことにしたのでした…。
第二十話「もうひとつの方程式」 完
と、このようなお話となりました。ここ最近はずっと美味しい料理尽くめで、舌が肥えてしまいそうです。
……舌以外は肥えていませんよ?本当ですって、竜人は代謝が良いんです。それに運動もしているので大丈夫です!
というわけで、今回もあの料理の再現を……というのは冗談です。そんなに身構えないで下さいよ。
それでは、次回のお話までお待ち下さい。リーテでは、きっと竜の君も驚くことが起こったのですから。
【MVP:ノーティ・トリシア】
こちらは、2016/10/14に行ったオンラインセッションのリプレイです。
リーテはもう美味しい料理に関わるイベントしかないと思っていた方、その通りです!
今回はクー、ライル、ルーとNPCが多めになってしまいましたが、それぞれちゃんと特徴を付けることも出来て、良かったかなと思います。ジョルティがナス食いたくないと言い出したときはどうしようかと思いましたが、その辺もちゃんとまとめてくれたのでよかったですね…。
というわけで、次回も暫くお待ち下さい。新しい展開が待っています!
【参考サイト】
やっぱり「食」にスポットを当てたセッションにすると、PCやその他の人々の生活や好みなんかが出て来て、物語にリアルさが付加されますね。
返信削除次回は一体何事が……。楽しみにして待っています。
コメントありがとうございます!
削除元々、トリシア・ジョルティが食事関連のキャラクターということで、自然と食事関係のシナリオ作りが多くなっていますね。食べられれば良い派のパワー・クライブなどもいて、食事1つとってもかなりバラエティ豊かな気がします。
次回も投稿しましたので、是非よろしくお願いいたします。