第三十六話 第三部「七つの旅-世界樹/大災厄の兆し」
トリシア「沈まない太陽について」
沈まない太陽に関する情報は、先程のルーの日記のみしか表示されませんでした。
トリシア「日記書いてる人間がいないって事かな?」
ティエ「人類滅亡的な……?」
ノーティ「季節の仕組みは、どうやら竜の力によるものだということですが、昼夜を司っているのは何者でしょう?」
ジョルティ「太陽の竜とかいるんか?」
ノーティ「どうして夜が来るのか、考えたこともありませんでしたが……」
ノーティ「その仕組みについては誰か記述していないでしょうか?」
【検索:昼夜の制御】
記録者:■■■■
竜人:■■■■
創人歴11477年 春の月 3日
秋の魔法に、月を呼び出す魔法がある。
他の魔法に比べて、規模が大きい魔法のように思えるが、研究をすすめるとそうでもないということがわかった。
そもそも、昼夜というのは魔力による制御が行われているもののようだ。
みだりに乱せば大きな問題になるだろうが、その方法を開発することはそれほど難しくはないだろう。
ノーティ「魔力によるものなんですね。これがみだりに乱された結果が先のルーさんの日誌の通りと……」
ノーティ「魔力のことなら、秋の竜かヴィルフランシュ氏に聞くのが手かと」
トリシア「ルーちゃんの日記的に私らの名前が出てこないってことはどうがんばっても会えない状況なのか会ったら日記が変わったりするのだろうか」
ノーティ「どうでしょう?」
ティエ「そうですねえ」
ノーティ「過去と未来については論争が尽きないものですが、こればかりはやってみないと。未来を変えられるかどうか、賭けませんか?」
ティエ「移動先としてこの場所も保存もされたわけですし、何か調べ忘れに気付いたら戻ってくれば良いし、今は気になる所に片っ端から行ってみましょう」
ティエ「ケガするまであと15日で破滅まで20日ぐらいしかないみたいですし」
トリシア「個人的には春の竜の所に行ってアリアちゃんの話とか聞いてみたいなって」
ノーティ「とりあえずアリアさんが実体化できる春の竜の棲家へ行きますか」
トリシア「ここに置いてる結晶どうする? 置いていっても取られはしないだろうけども」
ノーティ「どうせ他の場所では使い物になりませんから。置いていきましょう」
トリシア「とりあえず5日は朝からおかしくなってるって書いてるから今晩からもう何かが起こってるのか」
トリシア「もしくはもう既に起こっているのか」
クライブ「俺たちがここで何かするからとかだったりしてな」
ノーティ「ともかく、急がないとなりませんね。ルーさんたちは今頃どこにいるのでしょう?」
トリシア「それは冬の竜に聞きにいったほうがいいかな?」
ジョルティ「今日って何日?」
トリシア「4日」
ジョルティ「やばいじゃん! とりあえず4日のルーちゃんの日記見られないかな」
【情報:ルー・フィオーネの日記 夏の月4日】
記録者:ルー・フィオーネ
竜人:ネーヴェ
創人歴14742年 夏の月 4日
晴れ☀
リリアスを目指す旅路もそろそろ半ばほどでしょうか? 密林ばかりで嫌になってしまいそうですが、ネーヴェもキルトさんも一緒なので楽しい旅です。
皆さんが密林の竜を鎮めたこともあって、密林は落ち着いていて、歩きやすかったので助かりました。明日も良い日でありますように。
トリシア「まだ大丈夫そう。じゃあ冬の竜のほうに会いに行く?」
トリシア「そっちに行ってもアリアちゃん見えるようになるだろうし」
ノーティ「それが一番早いと思います」
トリシア「よし、じゃあ行こう」
トリシアが奪うようにしてティエが預かっていた金の鍵を受け取ると、すぐさま冬の竜の棲家へと竜の道を繋ぎました。
いつも通り、私の姿も見えるようになります。
トリシア「アリアちゃん、調子はどう?」
「叡智の書にはびっくりしましたけど……そんなに動揺はしてないですよ」
「皆さんの日記が勝手に入っていたのはびっくりしましたけど……というかどういう仕組なんでしょうかね?」
トリシア「なんか世界がやばそうですけど?」
トリシア「冬の竜様旅人やばくなるみたいですよ?」
「実際にはまだ何が起こっているのか全くわからないのですが……何でしょうね、太陽と月が云々というのは……」
冬の竜「……どういうことだ? 順を追って聞かせてくれないか」
ノーティ「我々は魔法結晶を持って世界樹の頂きまでたどり着き、叡智の書を開くことに成功しました」
ノーティ「どうも叡智の書というものは、竜が関連した思われる日誌を全て記録しているものと思われるのですが……」
ノーティ「その中に、今から見て未来の日記が……ルーさんの日記があったのです」
ノーティ「そして、その内容というのが、「太陽が沈まない」ことからくる世界の危機だというのです」
冬の竜「太陽が沈まないか……それは確かに、聞くだに問題があるな……」
冬の竜「それで、私の旅人達に問題があるということか……ふむ」
冬の竜「しかし、太陽が沈まないという事態には聞き覚えがないな……」
「同じく私も。聞き覚えがないことで、どうしたものか……とりあえず、四季の竜人を集めましょうか?」
「ネーヴェさんはすぐ戻ってこれるか怪しそうではありますが……。今は森の中のようですし」
ノーティ「急ぎましょう、その出来事が記された日というのが……明日からですから」
パワー「そうだーいそぐぞー 急いで草食べるぞー」
「では、私は夏と秋の竜の元に知らせに行ってきます」
ノーティ「お願いします」
トリシア「冬の竜人やルーちゃんのほうは竜脈通ってないのかなあ」
「あの森の辺りはなさそうですね……」
ノーティ「森の中は厳しそうですねえ……」
「ともかく、まずは夏と秋の元に。冬の竜様は一応、ネーヴェさんに声をかけておいてください」
私はそう言い残し、すぐさま夏の竜の棲家へと向かいました。此処から暫くの旅日記は、後で冬の竜などから聞いたものをまとめたものです。私が直接見たわけではありませんが……良いですよね?
トリシア「でもまあ10日までには冬の竜と話したみたいなことは日記にかいているんだよね」
トリシア「15日までにはリリアスには着いているみたいだけども」
冬の竜「……ネーヴェに声を掛けてみたが……竜脈の通っているところまではまだかなり時間がありそうだ。すぐに合流させるのは難しい」
冬の竜「明日から異常が起こるとして……15日まで掛かるようではかなり遅い。大きな影響が起こっていそうだな……」
トリシア「竜脈なくても通信できてたのかー!」
冬の竜「会話ぐらいならできる」
冬の竜「とはいえ、自分の眷属の竜だけだ。他の季節の竜人とは通じない」
ノーティ「ある説によれば、太陽の出ている時間と気温には密接な関係があるそうなので、この時期に日が沈まないとなればとんでもない気温になると思うのですが」
冬の竜「そうだろうな……気温もそうだが、魔力的な影響も大きかろうと思う」
ノーティ「魔力ですか」
冬の竜「昼と夜とでは魔力の巡りが違う。それが変わるとなると、精神的な影響が出ることも考えられる」
冬の竜「私は秋の竜程魔法には詳しくないが……」
トリシア「竜人が集まれば結果的に竜同士の会話も成立するようになるのかあ」
冬の竜「ああ、そういうことになる」
冬の竜「いずれにせよ、春の竜人が戻るまではまだ暫く掛かるだろう」
冬の竜「私のことは気にせず自由に過ごしてくれて良い」
トリシア「じゃあ遠慮なく一服」
冬の竜「……すまん、できれば風下で頼む」
トリシア「はーい」
ノーティ「なるほど。では、各季節の竜人に集まって頂いてから、本格的にことをはじめましょうか」
〈薬草取り:高山:目標14〉
パワー:9(失敗)
ノーティ:14(結界樹枝1つ獲得)
〈狩猟:高山:目標14〉
ジョルティ:16(包丁捌き:美味しい食料3獲得)
ジョルティ「冬の竜、お肉とか食べる? そこで獲れたんだけどトカゲ」
ジョルティ「これ竜じゃないよね?」
冬の竜「竜ではないが……いや、遠慮しておく」
ジョルティ「ソッカー」
冬の竜「どことなく親戚のようで気後れするな」
ジョルティ「照り焼きで頂こう」
冬の竜「親戚のようで気後れすると言った私の目の前でよくやるな」
ジョルティ「無宗教なんで?」
冬の竜「そういうものか……?」
ノーティ「世界に異変が起こる前にハーブボトルを買い込んでおかなければ……」
ノーティ「ハーブボトルはパワーさんに持って頂くことになりますが、4つほど追加で持てますか?」
パワー「もっと持てる」
ノーティ「じゃあ、持って下さい」
ティエ「じゃあ世界危機がおこるまえにちょっとこの大荷物を清算しますか……」
クライブ「……ん、どうするんだ?」
ノーティ「アリアさんが皆を連れてくる前に準備をしようかと」
クライブ「じゃあ箱の中身清算するか」
ティエ「まずは……エンチャント屋がある程度の都市で竜脈が繋がっている場所に……」
クライブ「竜脈ある都市あったっけか」
ティエ「とりあえず試してみましょう」
ティエ「まずはレパーリアから」
ティエはレパーリアを思い浮かべながら鍵を回しましたが、竜の道は繋がりませんでした。
ティエ「じゃあアージェントなら……」
今度はアージェントを思い浮かべ鍵を回すと、竜の道が繋がりました。その竜の道は街中央の慰霊の塔の前に繋がっています。
ジョルティ「ついてこ」
クライブ「また久しい光景だな」
クライブ「ま、用事だけさっさと済ませるか」
ティエ「二つ目で繋がってよかったですねえ」
ティエ「とりあえず物売ろう」
ノーティ「ハーブボトルを4つばかりお願いしますねー」
クライブ「……そういや、外に出るには館通る必要あったな」
ティエ「この勲章があってよかったですねえ」
クライブ、ティエ、ジョルティの3人は舘の中庭から領主の館に入り、さも当たり前という表情で受付の前を通過しようとします。
舘の受付「あら、みなさん……お久しぶりですね!」
ティエ「おひさしぶりでーす」
ジョルティ「お久しぶりですどーも」
クライブ「久しいな。まあ、少々用事があってな、また後でな」
舘の受付「……あれ? 何故内側から?」
ジョルティ「気のせいさ」
舘の受付「気のせいでしたかー」
舘の受付「はーい、いつでも寄って下さいねー」
ジョルティ「あ、そうだ、リンちゃんはご在宅ですか?」
舘の受付「レイシア様は現在この街にはおりませんよー。諸用でゴレンの方に行っているようです」
ジョルティ「ソッカー」
舘の受付「言付けを承りましょうか?」
ジョルティ「世界救ったらアージェント帰ってくるので、またご飯食べましょう。と」
舘の受付「世界……? は、はい、よく分からないですが分かりました、お見えになったら伝えておきます」
ジョルティ「宜しく! じゃあ用事があるんでこの辺でー」
それからティエはまず商店街で特産品を6割増しで売却し、4本のハーブボトルを8割引きで仕入れました。
さらに、各々装備へのエンチャントを行い、来るべき異変に備えたようです。
そうして、暫くして3人は冬の竜の元へと戻ってきました。それまで、トリシアとノーティはどこかそわそわしていたようでした。……パワーは草を食べあさっていたようでしたが。
ちょうどその頃、竜の道が開き、私が話を通したラグナさんが冬の竜の棲家に到着しました。私は次に秋の竜の棲家へと向かっています。
ティエ「あれ」
ラグナ「色々とあって遅くなった……む、春の竜人はまだおらんのか」
トリシア「お久しぶりです」
ジョルティ「うちのポンコツだから、許して」
ラグナ「それほどでもないような気がするが……」
ラグナ「こちらにも少々問題があった遅くなったのだが……まあ良い、皆集まってから話す」
それからまた暫くして、再び竜の道が開きます。今度は私とリーズさんが一緒に現れます。
私が連れてきたリーズさんは全身に傷を負っていました。
トリシア「アリアちゃんリーズさんお久しぶりですって!?」
トリシア「なにがあったんだ!」
ティエ「え!?」
リーズ「見た目程、問題はないので大丈夫です。……しかし、少し問題が……」
リーズ「私ではなく、ニーナとクレールの方にですね……」
ジョルティ「とうとう二人が!?」
トリシア「とうとう二人が!?」
リーズ「な、なにをそんなに反応しているのかは分かりませんが……」
トリシア「はい」
リーズ「あの後、皆さんと別れた後に、魔物に襲われまして……怪我はあるものの命に別状はないのですが」
リーズ「あの、ゼペリオンで手に入れた共明石を奪われてしまって……」
トリシア「あー……」
ノーティ「共明石を!?」
クライブ「俺の光線受け損か。腹立たしいな」
リーズ「2人は安静にさせているので大丈夫だと思いますが……」
ティエ「耐火マント盗まれ損ともいう」
ラグナ「……こちらの問題も報告させてもらう。フリーグゼルのことだ」
トリシア「ふええ」
ラグナ「皆が手に入れた陽光石のおかげで、多少なりとも街の状態が回復していたのだが……」
ラグナ「その陽光石が、つい先程奪われていることが停力が起こったことで発覚した」
トリシア「あああああああああ! そんな気がしたよ!」
ラグナ「彼らも市内で探している所のようだが……まだ目処は立っていない」
トリシア「共鳴石も陽光石もどちらも結構な魔力関係してるよね!」
ノーティ「何者かが太陽の昇り沈みを司っているのでしょうか、と皆さんに尋ねようとしたのですが……どうも見えてきましたね?」
「ノーティ、どういうことですか?」
ノーティ「ええと、憶測と言うか……太陽の不安定さは共明石と陽光石、それらの所在に関係しているのではないかと思いまして……ほら、名前がそれっぽいと思って……」
「ふむ……確かにどちらも関係がありそうな名前ではありますね」
ジョルティ「この世界って割りと安易よな」
クライブ「誰を斬り伏せればいいのか分かったら起こしてくれ」
ノーティ「共明石って、月に反応しているんでしたっけ?」
トリシア「月明かりに反応するって昔ニーナとクレールが言ってたね」
ノーティ「一方の陽光石は……太陽の光に反応していましたね」
ラグナ「ああ。太陽の光を魔力に変えるものだ」
トリシア「そしてどっちも結構な大きさだよね」
「そうですね、どちらも抱えるほどの大きさだったと思います」
ノーティ「その双方がほぼ同時に奪われるとなると、何かの目論見によるものかと思いまして」
ノーティ「それが沈まない太陽を生み出す為に行われたものなのか、副作用として起こったものなのかは不明ですが……」
トリシア「とりあえずリーズちゃんは襲われた魔物についてもうちょっと詳しく教えてもらえるかな」
リーズ「魔物について、ですか。そうですね……大きさとしては巨大というわけではありませんでした。大体そこの鎧の人ぐらいの大きさです」
トリシア「本当に魔物なのだろうかという疑問があったりなかったり」
リーズ「獣がそのまま人になったような……そんな姿をしていましたが……」
リーズ「ええ、普通の獣のように唸り声をあげていました」
リーズ「いつものようにニーナが先に倒れてクレールが治療をしようとしていたのですが……その間に共明石だけを奪って、そのまま逃げていきました。その後は私達には興味がないようでしたね……」
ノーティ「ラグナさんの方は姿は見ていないんですよね?」
ラグナ「ああ、こちらは失われてから気が付いた。奪ったものの姿は見ていない」
ノーティ「恐らくは同じ者による仕業であると思われますが、何か思い当たる節がないようでしたら……また叡智の書に頼ることにしましょうか?」
「そうですね……叡智の書なら分かる事があるでしょうか?」
トリシア「何について調べるのかまとめとこう」
ノーティ「誰かがそれらの石について記録していれば」
トリシア「共鳴石と陽光石とあと何だ」
ノーティ「そうですね……太陽が動いていることについて誰か研究などしていないでしょうか?」
ティエ「とりあえず世界樹に戻りますか」
トリシア「ついでに後学のために竜人たちもくるといいんじゃないかな?」
「どうしますか? お二人とも」
リーズ「……私はニーナ達の元に戻ります。怪我を負っているのは心配ですから。変わりに、私のマスコットをアリアさんに預けておきますね」
「……では、今度こそ大事に使います」
ラグナ「私は一緒に行かせてもらおう。姿は見えなくなるだろうが、見させてもらう」
トリシア「そうね。言いたい事があるなら、またお絵かきするといいよ」
「……マスコットを借りたので、私を通して話せば良いのでは? まあ時々捏造しますけど」
トリシア「しそうだよね」
ラグナ「まあ、その時はそうさせてもらおう」
ラグナ「では、道を開いてくれるか、世界樹とやらに」
トリシア「ああ、そうだ、鍵奪ったまんまだった」
トリシア「開けるね」
トリシアが金の鍵で竜の道を繋ぎ、再び世界樹の部屋に戻りました。私はマスコットの力で人の姿を保っていますが、ラグナさんは皆からは見えなくなりました。
世界樹の小部屋で、叡智の書は起動しているままのようでした。うっすらと虹色の光を放っています。
ノーティ「どうせここに来られる人などめったにいませんし……」
トリシア「竜人や竜ですら知らない場所だもんね」
「ラグナさんもこんな場所があるとは知らなかった、と言っています」
「それが叡智の書か? 何ができるものなのだ? とも」
ジョルティ「他の竜が読んでた旅日記を盗み見れます」
トリシア「まずは共明石の事を」
【検索:共明石】
記録者:アーネスト・アメレール
竜人:アイル
創人歴14671年 夏の月 12日
村の守り神でもあった、共明石が賊によって奪われてしまった……。
今となっては灯りもあり、なんとか暮らしていく事はできるが……このままにしておいて良いのだろうか。
いずれ、取り戻さなければならないだろうと思う。旅の準備を始めよう……。
記録者:アーネスト・アメレール
竜人:アイル
創人歴14674年 夏の月 24日
結局、共明石を取り戻すことはできなかった。が、得られたものはあった。旅を通して、様々なことを学ぶ事ができたと思う。
この村も、もう少し豊かなものにしていくことができるだろう。共明石については、未来の旅人に託すことにしよう。
トリシア「アメレールって……ニーナちゃんの家だっけ」
トリシア「そして14674年って68年前か」
ノーティ「シンボルとしての意味合いが強かったようですが、それだけではない気もします……」
トリシア「そうだねえ」
トリシア「ニーナちゃんって村から共明石奪われたって言ってたのいつの話だっけ…?」
記録者:クレール・フレゴノール
竜人:リーズ
創人歴14742年 夏の月 1日
ニーナが探し求めていた、共明石をついに手に入れました。……これで、私達の旅は本当に終わるんですね。
そう考えると、かなり寂しい気がします。
でも、きっと旅が終わっても、村で一緒に楽しく暮らすことができるでしょう。いつか、また一緒にどこかに行きたいですね。
記録者:■■■■
竜人:■■■■
創人歴14671年 春の月 14日
オードレンという地に、共明石と呼ばれて崇められている石があるという。
……聞くだに月光石のことだ。これは、次なる研究に使うことができるだろう。なんとかして、譲ってもらわなければなるまい。
トリシア「記録者不明だけども竜人が絡んでるから不明でこの日記が出ているってことだよね?」
「黒塗りで記されているのはどういうことなのか分かりませんね……。記録者も竜人も黒塗りになっていますし……」
ノーティ「季節の竜かどうかは判りかねますが、どうもそのような気がしますね」
トリシア「アリアちゃんとラグナさんはオードレンって地名に心当たりあったりする?」
「……確か、リーズさんが言っていたニーナさんとクレールさんの故郷がオードレンだったかと思います」
トリシア「なるほど」
ノーティ「研究の内容が気になりますが、これ以上は追えなさそうですね。しかし、何か力を持っているのだろうとは推察できます」
トリシア「旅に関係なくてもオルクスちゃんみたいな竜人が余計な事してたりするってのは十分にありそうだしなあ」
ノーティ「それで、次は陽光石ですか」
【検索:陽光石】
記録者:アルバ・グラナダ
竜人:ラグナ
創人歴14742年 春の月 24日
故郷、フリーグゼルの魔力が停止し、大きな混乱に陥っているという話を聞いた。
村のものに尋ねると、陽光石と呼ばれる魔力を生み出す石が火山にあるという。
……どうも故郷の魔力不足は自業自得の感はあるが、そのままにしておくわけにもいかない。多少は恩返しをするとしよう。
トリシア「これでラグナさんも実感できたのでは」
「どこから見られているのか、良い気はしないな、と言っています」
トリシア「どうして不明になるのか時間があれば検証してみたいけどもそんな時間はなさそうだしなあ」
記録者:■■■■
竜人:■■■■
創人歴14679年 秋の月 24日
もう1つ、大きな魔力を生み出す可能性がある鉱石を見つけた。
月光石とは違い、太陽の光を魔力に変換する、陽光石というものらしい。
こちらも、上手く使えば研究を進展させることができそうだ。……だが、あるという場所が悪い。一人で取りにいくのには苦労しそうだ。
……何者かを遣わしてみるとするか。使い物にならない魔法結晶辺りを餌にすれば、仕事をしてくれる者はいるだろう。
記録者:■■■■
竜人:■■■■
創人歴14679年 冬の月 11
日魔法結晶を渡して仕事を頼んだはいいものの、一向に戻らない。
……失敗したか?困ったものだ、いずれまた別の方法で手に入れることを考えなければならないか……。
一旦置いておき、別の研究を進めるとしよう。
ノーティ「恐らくこの共明石、陽光石を求めている者は同じ存在でしょうが、大きな魔力を探し求めているようですね?」
トリシア「そういえばこの場にある魔法水晶だっけ結晶だっけか」
ノーティ「結晶ですね」
トリシア「これもってた奴も陽光石をラグナさんところの旅人に掘らせようとしてたよね。素手で」
「ああ、指が血塗れだったな……と言っています」
トリシア「そこから何か繋がってたりしないかなーと思ったり」
ノーティ「あのアンデッドはこの存在の遣いだったと見るべきでしょうか?」
ノーティ「彼はあの後どうしたのでしょうか……は、ともかくとして」
トリシア「この魔法結晶について調べるのは難しいかな……」
【情報:叡智の書】
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トリシア「察してくれたわ」
トリシア「でも世界樹について調べたときには魔法結晶の話はでてこなかったんだよね」
トリシア「陽光石とったぞーとか共明石とったぞーって日記がでてこないってことは」
トリシア「確実に今旅人ではない何かなのは確定したと思ってよさそうだけども」
ノーティ「記録していないだけかもしれませんよ?」
ノーティ「しかし結局、二つの石は元あったところに戻ってしまったわけですよね?
それを回収されてしまったと」
トリシア「どっちも元あったところにはもどってはいないでしょ」
ノーティ「あれ、そうでしたか……」
トリシア「2つとも新しく採掘したものだと思うのだけども」
ノーティ「それで、約70年前から追い求める対象としての石が今になって盗まれて……」
トリシア「昔から誰かからは狙われていたと考えたほうが。過去に奪われて今回新しい共明石も奪われたと」
トリシア「私らが旅を始めた最初の頃の共明石の行方はわかんないけども」
トリシア「でも大きい分だけ大きな魔力が関係してくるでしょう」
「でも結局……具体的な所までは分かりませんでしたね。2つの石が今どこにあるのかも、何のために集められたのかも……」
ノーティ「今回盗られた石によってはじめてその研究とやらが進んだということでしょうか?」
トリシア「と、考えるのが妥当だよね」
「でしょうかね……?」
ジョルティ「考えても何も、俺らが知ってる膨大な魔力の使い道なんて叡智の書動かすのと、フリーグゼル動かすのと、過去に戻る魔法ぐらいだし」
ティエ「一応結晶化魔法もですね」
ノーティ「過去に戻る魔法ですか……」
トリシア「魔法といえば」
トリシア「秋の竜に直接話しを聞いてもいいんじゃないかな!」
「確かに、秋の竜が一番魔法には詳しそうですね」
トリシア「じゃあ開けるよ」
ノーティ「秋の竜人さんは帰ってしまわれましたからね、聞きそびれていました」
トリシアはすぐさま秋の竜の棲家へと竜の道を繋ぎました。今日のトリシアはなんだかとても判断が早く、頼りになりますね。
「おじゃましまーす秋の竜ー起きてますかー?」
トリシア「度々すまない!」
秋の竜「あらあら、またいらっしゃったのね」
ジョルティ「がぶーはむはむ」
秋の竜「こらこら挨拶代わりに噛み付くのはよしなさい」
ジョルティ「かじっていいですか!!」
秋の竜「もう噛み付いてる! 美味しくないでしょうにー」
ジョルティ「承認が大事だなって学んだんで。まだ枯れ葉」
秋の竜「挙句その感想なんだから酷いですね」
ノーティ「すみません、彼のことは置いておいて。叡智の書まで辿り着きまして、それで大魔法について伺いたく」
秋の竜「ふむふむ、なるほど。大魔法について、ですか」
トリシア「大魔法とか、陽光石とか共明石とか。もしかすると月光石が正しいのかもしれないけど」
ノーティ「何かご存知であれば」
秋の竜「過去の大魔法としては、確かに結晶化の魔法がかなり大きなものでしたね」
秋の竜「その顛末についてはご存知のようなので割愛しますが……時を遡る魔法というのは聞いたことがありません。おそらく、実際に行使されたことはないかと思います」
ジョルティ「陽光石と月光石使った魔法とか何か思い当たらないの?」
秋の竜「月光石と陽光石については、詳しいところまでは知りませんが……フリーグゼルの魔力を一時的にでもまかなう事ができていたとすると、かなりの魔力が生成できるようですね」
秋の竜「魔法については……分かりません。それ自体を触媒にするような魔法ではないのではないでしょうか……? 恐らく魔力だけが目的なのではないかと」
トリシア「日が落ちないということは月光石については考えないほうがいい?」
ティエ「いや、あの日記によると、『太陽も月も沈まない』ようでしたよ」
トリシア「両方かー」
ノーティ「太陽と月を途切れない魔力源として何かのために利用しているという線が濃厚なわけですね。どうやって沈まない月と太陽を実現しているかは分かりませんが……」
ノーティ「ところで、すごく初歩的なことで申し訳ないのですが、死の竜について私はよく知らないなと思いまして。どういう存在なのでしょう?」
トリシア「ほんとだ叡智の書でも調べれなかったんだった」
秋の竜「死の竜……ですか。私も直接お会いしたことはありませんが……」
秋の竜「私達の世界で生を全うしたものは、一度死の竜の元に送られ、そこで生まれ変わると言われています」
秋の竜「死の竜は死を司るだけでなく、生も司る竜であると」
秋の竜「……まあ、このあたりのことは私も詳しくはわかりませんが……魂を浄化させ、循環させるのが役割だとは言われていますね」
ノーティ「オルクスという死の竜人が、度々我々に人智を超えるようなことを伝えてきたのです。一体何が目的なのやらと」
秋の竜「死の竜人……ですか。それも、私は直接お会いしたことはないですね……。何か、季節の竜である私達とは別の目的があるのでしょうか?」
トリシア「それ言ったっきり出で来ないんだよね。かわいい顔して性格悪いんだこれが」
秋の竜「……竜人は気まぐれな所がありますが、それは不思議ですね。何かやらせたいことがあるなら、はっきり言いそうなものですが……」
ノーティ「死の竜も、季節の竜である貴方がたと同じように強大な魔力を持っているのでしょうか? 話を聞く限りでは、その程度は訳ないと思われますが」
秋の竜「竜なのであれば、それぐらいの力はあると思います。特に死と生を司るというのが本当なのであれば、大きな魔力を持っていることでしょう」
クライブ「さてな。直接言わないということは直接言わないなりの理由があるんだろ。その理由は知らんが」
トリシア「叡智の書と死の竜絡みについては大体調べれないようになってた、叡智の書」
秋の竜「ふむ……」
トリシア「多分季節竜については簡単に調べられる、試してはいないけど」
秋の竜「なるほど。それなら……その叡智の書自体に、死の竜が関係していると考えるのが良いでしょうかね?」
秋の竜「自分たちのことについて、知られるのは困る事があるのかもしれませんね……」
トリシア「遠からずみたいな事言ってたよ」
秋の竜「なるほど……オルクスという竜人と直接話せれば一番早いのですが、呼べば来る人でもないようですし……」
トリシア「死について本気で呼べば来るとは言ってたけども」
トリシア「お話したいなーってぐらいじゃ来てくれなかった」
秋の竜「ふーむ……ということは、どこからか見てはいるんですかね?」
秋の竜「盗み見は趣味が悪いですよー。竜が言うことじゃないですけどー」
秋の竜「……ダメみたいですねぇ」
トリシア「あと実際直接は会ってない、多分。今まで夢の中みたいな場所で話してた」
秋の竜「なるほど、夢、ですか。だとすると、この近くに直接いるわけではないのかもしれませんね……?違う場所から見ている、とか……」
トリシア「竜様に言うのは悪いけど、季節竜とは次元が違う的な?」
秋の竜「恐らくそういうことかと。他の季節の竜とは話をしようと思えばできますが、死の竜とはお会いしたことがありませんし」
トリシア「格差社会!」
秋の竜「生と死を司るというなら、私達よりも上位の竜なのかもしれません」
秋の竜「しかし……そろそろ夕方ですね」
秋の竜「叡智の書に記されていた情報が確かなのであれば……もしかするとこのまま太陽が沈まないのではないかと……」
ジョルティ「秋の竜は世界樹みたいな魔力増幅出来る場所他に知らんのん?」
秋の竜「そういう場所は聞いたことがありませんね……あえていうなら私達のいるような竜の棲家が多少の適性はあると思いますが……」
そんなことを話している時、突然私を立ちくらみが襲いました。くらっとして、その場に膝をついてしまいます。こんな感覚は初めてのことでした。
トリシア「アリアちゃんどったの」
「あれ……? いや、ちょっと立ちくらみが……おかしいですね、こんなことはなかったんですが」
「ちょっと体調が……暫く座らせてもらいますね」
クライブ「環境が違うから影響でやすいんじゃないのか」
「確かに秋の竜の棲家ですし……それもあるかもしれません」
ジョルティ「貧血か? トカゲ食べる? 肉食え肉」
「あ、後で頂きます。今はちょっと……」
ティエ(春竜パワーが大量に使用されているとか?)
そんな話をしていた時、異変が起こりました。
ネームドムーンが作り出すような大きく明るい月が西の空に浮かび上がり、まさに沈まんとして西に傾いていた太陽が東の空にまで戻ってきたのです。
トリシア「これか!」
ティエ「書いてあった奴だー!?」
ジョルティ「スプリングがデイされてブレイクした感じ!?」
クライブ「おー、実際見ると面白いもんだな」
秋の竜「……これが、叡智の書の言う……」
トリシア「こっからずっとこうなるって書いてたっけか」
「ええ……ルーの日記によると……そうでしたね」
トリシア「皆が凶暴になったりだとか…」
ティエ「しかも対策無いと睡眠不足になるとか」
秋の竜「……このままでは、大きな災いになってしまうのでしょうか?」
ノーティ「だんだん時間の感覚がなくなりそうで怖いですね」
秋の竜「ええ…太陽が沈まなければ、夜が来るのも朝が来るのも分かりませんね……」
……これから起こるであろう大きな出来事に思いを馳せながら、私達は秋の竜の棲家で立ち尽くすのでした。
第三十六話 第三部「七つの旅-世界樹/大災厄の兆し」 完
【MVP:ノーティ・トリシア】
こちらは、2017/3/11に行ったオンラインセッションのリプレイです。
今回は完全に世界観を明らかにする回となりました。叡智の書の情報については準備していたものと、その場で即席に記入したものとがありました。
叡智の書はどこか近未来的な機能をイメージして作ってあります。それでいてミステリアスな、それこそ古代文明のオーパーツなような雰囲気になれば良いな、と。上手く表現できていたら良かったのですが。
それでは、本格的に旅の終わりが近づいてきました。……実はこのリプレイを書いた前日に、このキャンペーンのプレイ自体は完結しています。残す所後数話、最後までお付き合いくださると幸いです。
【参考サイト】
目に見える破滅が現れて、一気に終末へと加速していく緊迫の展開となって来ましたね。
返信削除それにしても、叡智の書の記述を準備してたにしても即興で作ったにしても、あれだけの情報量を日記形式で著すのは相当な労力ではなかったでしょうか。
いつもながら、密度の濃いセッションに頭の下がる思いです。
ここから、これまでの謎を解き明かす展開になって行くのだろうと思いますが、一体何が手掛かりとなって行くのか……。引き続き注視されて頂きます。
コメントありがとうございます!いつも励みにしております!
削除このあたりの展開は、実は七つの旅が始まる頃には考えていたものだったため、実は日記の用意などはそれほど大変ではありませんでした。年表の整合性だけがちょっと大変……というよりは不安でしたが。
ちょっと情報の密度を高めすぎたせいで、PLも少々着いてこれていない部分があったので、GMとして反省をした回でもありました。小出しにするのは難しいですね……。
次回もまた少し遅くなるかもしれませんが、お待ちいただけますと幸いです!