2016/06/15

りゅうたまリプレイ 第五話幕間「蒼き竜人の憂鬱」 【キャンペーン】

初めまして、緑の季節竜様。
私はリーズ、ご覧のとおり蒼の竜人です。
ああ、アリア様の旅物語にも名前がありましたか?それなら、話は早いですね。
此度ここに参りましたのは、私から特別に、緑の季節竜様にお聞かせしたい「物語」があった為です。
このお話はアリア様は存じないはずですから、私からお話をさせて頂きます。
……これは、蒼い竜人リーズから、緑の季節竜様に送る、私の「憂鬱日記」です。


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話は、ニーナとクレールがアリア様の旅人達との試合に敗れた所から始まります。
ニーナもクレールも、力不足を実感しているような様子で、家路――と言っても宿ですが――に就きました。
私から言わせれば、彼らの方が1人多かったのですから、そこまで気にするものではないと思います。……いえ、止めておきましょう、これは2人にも、彼らにも失礼でしたね。

宿に戻ると、まず2人は汚れた体を風呂で洗い流し、服の修復と洗濯をしました。
普段から割合傷だらけの旅をしている2人ですから、この手のことには慣れており、手際も随分良くなっています。
一通りのことが終わる頃には、窓から見える空が茜色に染まっていました。良い夕焼けです、明日も晴れそうですね。
2人と一緒に空を眺めてゆっくりとした時間を過ごしていると、入り口のドアから「もしもーし」というような声が聞こえました。


ニーナ「はーい、どなたですか?」
町の男「ディストさんの使いの者です。夕食のお届けに参りました。両手が塞がっているので、開けて頂けますか?」
ニーナ「あら、私達にもですか?これは有り難いですね、どうぞ、あがって下さい」

ニーナはそう言って、ドアを開けました。ドアの向こうには、小型の七輪と鍋を持ったエプロン姿の町の男性が立っておりました。

町の男「失礼します。向こうさんに用意したのと同じ、猪の肉の鍋です。煙が篭もるといけませんので、窓を開けて召し上がって下さい」
ニーナ「これは、美味しそうですね。後は火を入れるだけで食べられるんでしょうか?」
町の男「ええ。後はお好みでこの香辛料を足して頂ければ、より美味しく頂けますよ」

町の男は、七輪と鍋を置くと、エプロンのポケットから香辛料の入った小瓶を取り出して鍋の隣に置きました。
近付いて見ると、香辛料は赤い色をしており、見るからに辛そうな雰囲気が漂っています。ニーナは辛いのが好きですが、クレールはあまり好きではないので、2人の表情から喜憂が見て取れました。

ニーナ「ご丁寧にありがとうございます。あなたもご一緒にどうですか?」

ニーナがそう問いかけた時、クレールが一瞬苦虫を噛み潰したような顔をしました。ニーナにも町の男にも見えていませんでしたが、私にははっきり見えていました。
こういう所が、私がクレールを好きな理由の1つでもあります。

町の男「いえ、まだちょいとやることがありますんで。一緒に食べたいのは山々なんですが、遠慮しておきます。食べ終わったら、七輪と鍋と香辛料は外に出しておいて下さい。朝までには回収しておきますので」
ニーナ「そうですか、残念ですね。分かりました、それでは、美味しく頂きますね」
クレール「お食事、ありがとうございます」

そうして、町の男は礼をして出て行きました。
私としては一緒に食べることになって、物凄い我慢しているクレールの顔も見たかった所ですが、まあ、円満に解決したのは良いことでしょう。

そして2人は、早速その鍋を食べ始めることにしました。
言われた通り窓を開けて、できるだけ煙が篭もらないように七輪も窓の傍へと持って行き、火を入れます。じきに鍋は沸き上がり、良い匂いを部屋に充満させました。

ニーナ「クレール、香辛料は使う?」
クレール「うーん……辛そうだからなあ。先にちょっと食べてみて?」
ニーナ「……辛いけど、これは確かに深みが増すというか、猪の肉の臭みを消してくれて、かえって食べやすくなるというか。うん、私は使った方が美味しいと思う」
クレール「ニーナがそういうなら、試してみようかな」

クレールはそう言って香辛料を自分の取り皿に振りました。
その時、勢い余って、具が真っ赤になるぐらい掛かってしまいました。その時の、半分泣きそうになりながらニーナの方を見るクレールの顔といったらありません。
その後、ニーナは笑顔でクレールと皿を取り替えていました。今日は素晴らしい日です。昼は2人が傷つき倒れているのを見て私の方が苦しくて仕方が有りませんでしたが、これで清算ですね。

……と思っていたのですが。
2人が食事を終えて食器を片付けている時、ドアを叩く音が聞こえました。すっかり日も沈んだ夜のことです、こんな時間に訪れる人は、絶対良い人間であるはずがありません。開けない方が良い、開けない方が良い、と念を送っていましたが、人のよい2人のことです、そうはなりませんでした。

クレール「誰か来たみたいだけど……」
ニーナ「ごめん、ちょっと片付けで手が塞がってるからクレール出て?」
クレール「……うん、分かった。どなたですか?」

クレールは、無防備にもドアを開けてしまいました。ドアの向こうにいたのは、アリア様の旅人の1人、ジョルティ……様でした。
向こうも食事を終えて、手が空いたのでしょうか。こちらに訪ねてきたようです。

ジョルティ「クレールさん、この後ご飯食べに行きませんか?」

……何を仰っているんでしょうか?昼の試合で、逸れたもののクレールに向かって矢を放っておきながら、何を言っているのでしょうか?竜の姿でも見せましょうか?と思いましたが、2人にも迷惑が掛かりそうなので止めておくことにしました。
そもそも、今しがた食事を終えたばかりではないのでしょうか?

クレール「いえ、ニーナと食べ終わりましたから、遠慮しておきます」
ジョルティ「じゃあ、スイーツでも」
クレール「甘いものなんて、この町で出していましたっけ?」
ジョルティ「岩塩を使った牛乳の氷菓子があるみたいですよ?」
クレール「……美味しく無さそうですけど……」

クレールは、どちらかというとあまりはっきり断れないタイプですから、こういった手合は苦手です。そして、もう1つ困ってしまうのが……ニーナはどちらかと言うとこういうのに乗り気になることです。
簡単に片付けを終えたニーナが、玄関の方へと顔を出しました。

ニーナ「あ、それ美味しそうですね」
クレール「!! そうね、ニーナ、食べてみないと分からないわよね」

この素早い心の変わり様。今は春ではありますが、秋の空とはまさにこの事。……ちょっと違う気もしますが、目を瞑っておきます。

ニーナ「どこで出してるんですか?私達もこの辺りは詳しくないので、教えてほしいです」
ジョルティ(来る気かゾンビ……!)

ニーナがそう言うと、ジョルティ……様は、明らかに訝しげな顔をしました。なるほど、彼はクレールだけを誘いたかったようですね。残念ですが、ニーナとクレールはそうそう別行動をしたりはしません。
この前の共明石探しの時も、随分押し問答をしたものです。結局クレールが折れて先にゴレンに来ましたが、その後の不安定な様子は形容しがたいものでした。

クレール「それで、どこにあるんでしょう?」
ジョルティ「ちょっと市場まで歩くんですけど、大丈夫ですかね?」
クレール「まあ、それぐらいなら。大丈夫よね、ニーナ」
ニーナ「もちろん、それぐらいなら」
ジョルティ(カーエーレー カーエーレー)
ニーナ「ま、行きましょうか。遅くなってしまいますし」

乗り気になったニーナが2人分の上着を取りに部屋に戻ったその瞬間、ジョルティ……は突然思いもがけない行動に出ました。

〈隠密(略取)判定:目標8〉
ジョルティ:13

ジョルティはバッとクレールの手を掴み、ニーナの目を盗んで急に外へと走り出しました。
まだ靴も履いていないクレールを、無理矢理連れ出したのです。これはもう、いい加減竜の姿になろうかとも思いましたが、まだもう暫く我慢することにしました。
2人に見られていない所で始末しなければ、問題が残ってしまいますから……。

クレール「!!やめて下さい!触らないで!!!」

程なくしてクレールは激しく拒否反応を示し、ジョルティの手を振りほどきました。ジョルティはその場で立ち止まり、クレールの方に向き直りました。

〈交渉(告白)判定:目標30〉
ジョルティ:6(失敗)

ジョルティ「クレールさん、あなたに一目惚れだ!好きです!!」
クレール「嫌です!!私は嫌いです!!」
クレール「何なんですか急に……!!ニーナの恩人だと思って我慢していたのに……!」

クレールも、言う時は言える子です。私がアウェイクンするまでもなくなり、まあ、ひとまず安心しました。そこに、気付いたらいなくなっていた2人を追いかけて、宿からニーナが小走りで向かってきました。手には上着と、クレールの靴を持っています。

ニーナ「急にどうしたのクレール。私が足遅いの知ってるでしょー。靴も履かずに」
クレール「……なんでもない。でも甘いモノはやっぱりナシにしましょ。……帰りましょうニーナ」
ニーナ「う、うん……それはいいけど……。じゃあ、すみませんが、そういうことで……」

ニーナはクレールに靴を渡し、そう一礼をしました。クレールは、靴を履きながら、ニーナには聞こえないような声でジョルティに声をかけます。

クレール「……共明石のことで感謝はしてますけど……ニーナにも私にも、余り関わらないで下さい」
クレール「……おやすみなさい、旅のお方。他の方にも宜しく」
ジョルティ「あ、ハイ……」

クレールは靴を履き終えると、ニーナの後に続いて宿へと戻って行きました。私も、見えないながらにジョルティに舌を出して、2人と一緒に宿に戻ることにしました。

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……と、こういう物語です。
いえ、別に謝って頂かなくても結構です。私としては、知っておいて頂きたかっただけですから。
……アリア様は、私にとっても数少ない竜人の友人です。また会った時には、一緒に歩ければと思っています。これは私の本心です。

……そういう訳ですから、どうぞよしなに。緑の季節竜様。
緑の風と、蒼い空に、変わらぬ竜の祝福の有らんことを。

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こちらは、2016/6/11に行ったオンラインセッションのリプレイです。
ジョルティが前編の戦闘中からクレールのことが気に入ったらしく「恋の狩猟チェック(原文ママ)をしたい」と言い出したので、このような運びとなりました。
今回は、番外編ということで、緑の竜人アリアではなく、蒼の竜人リーズの視点で執筆しています。
それでは、改めまして後編に続きます。


【参考サイト】
りゅうたま公式(ルールブックや各種シート類はこちらで無料でダウンロードできます)

りゅうたまポータル(セッションに役立つ様々な情報が紹介されています)

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