皆の戦闘力により、なんとか機械の大蛇を仕留めました。
極めて硬い装甲を剥がす事はできませんでしたが……これで落ち着いてこの辺りを調べることができそうです。
第三十五話 第三部「七つの旅-秋/虹結晶の序文」
ニーナ「ご迷惑をおかけしました……なんだったんでしょう……」
ニーナ「あ、素敵なアフロのお方も助かりました。すごい動きでした」
クライブ「さてな。どうせロクでもないものだ、考えても仕方あるまい」
ノーティ「前にもありましたが、複雑な仕組みが生物のような動きをしていましたね」
〈魔力察知:敏捷+精神:目標10〉
ティエ:14
ノーティ:11
ジョルティ:8(失敗)
その時、ティエとノーティの2人が、何かに気が付いたようでした。
ティエ「なんだか強い魔力を感じますね」
ノーティ「……下からでしょうか? さっきの機械が出てきた穴の中のようですね……」
2人が先程の機械蛇が現れた穴を覗き込むと、その下もまた空洞になっているようでした。そして、そこからは肌で分かるほどの魔力が集まっていることが感じ取れました。
ティエ「オジイチャンのいってた魔力溜まりってここかぁ」
ニーナ「凄い魔力ですね……」
ノーティ「ここで儀式をすれば良いのでしょうか?」
ノーティ「降りたらかなりの魔力の中で儀式ができますが、どうやって降りるか、どうやって戻るかだけは決めておきましょう」
クレール「そこまで深くはないようですよ。問題なく昇り降りできそうです」
ノーティ「おや、そうでしたか」
ティエ「改めて儀式方法のメモを確認しておきましょうか……」
ジョルティ「みんな、儀式で俺は倒れるけど、後は任せたぞ!!」
ティエ「いや、オジイチャンが言うには魔力は消費しないらしいですよ」
ジョルティ「あれそうなの」
ティエ「はい、メモにもこの通り」
ジョルティ「じゃあ春担当するわ」
ニーナ「どのようにお手伝いすれば良いですか?」
ニーナ「私は秋と冬、クレールは春と夏の魔法が使えますが」
ノーティ「複製の魔法と伝達の魔法ですか。魔法陣を描く必要があるのはドラゴンサインとレプリカが相当しそうですが」
クライブ「終わったら呼んでくれ。寝てるわ」
トリシア「外で一服してくるねー」
ティエ「あ、結晶は渡して頂けますか?」
トリシア「はーい」
トリシアがすでに下に降りていたティエに魔法結晶を投げ渡しました。
ティエ「さてと、それで……複製がレプリカ、伝達がドラゴンサイン……あとは四季の美しさの魔法ですが……」
ノーティ「スプリング・デイブレイク、サマー・ミッドナイト、オータム・ダスク、ウィンター・アーリーモーニングですかね?」
ニーナ「あれ、でもウィンター・アーリーモーニングって儀式魔法じゃないですよね? 魔法陣って……」
ノーティ「ああそういえば……」
ティエ「結界樹枝を使うのでは? これがあれば儀式魔法じゃない魔法も儀式にできますよ」
ニーナ「なるほど! 確かにそうですね!」
ノーティ「クレールさんが夏の魔法陣を、ニーナさんは秋の魔法陣を描いてもらえれば」
クレール「サマー:ミッドナイトの魔法陣を書けば良いんですね?」
ノーティ「そうですね。季節を象徴するような……」
ニーナ「じゃあオータム:ダスクですかね、私は」
ニーナ「どっちに書けば良いんでしょう?」
ノーティ「対応する方角……」
ノーティ「竜のいた方向でしょうか?」
クライブ「それなら、東は冬だな」
ニーナ「だとすると、秋は南ですか?」
クライブ「北は消去法になるか」
ティエ「西が夏ですね、それなら北が春ですか」
ノーティ「まあ、実際に魔力を消耗するわけではないので、やってみましょう」
ノーティ「真ん中には水晶を持ってティエさんが」
ティエ「はーい」
ノーティ「複製の魔法は使えますか?」
ティエ「あっ!」
ノーティ「その反応は……」
ティエ「使えないですね……」
ティエ「あ、でも、魔法ノートに実は空きがあるんですが……」
ノーティ「そうですね……今からお教えしましょうか? 覚えられれば良いですが」
ティエ「ええ ノートに空きはありますから多分大丈夫です」
ノーティがその場でティエに「レプリカ」の魔法の使い方を教え、ティエの魔法ノートに書き込みました。
ノーティ「これで大丈夫ですね。それでは、順番に書いていきますか」
ティエ「まずは中央にレプリカ、その回りにドラゴンサイン……」
ティエが2つの魔法陣を書いていきます。ヴィルフランシュの言っていたとおり、一部が重なるような形になっており、最初から1つの大きな魔法陣であったかのように書き上がりました。
ティエ「おー」
ノーティ「描くのは初めてなので今知りましたが」
ティエ「では次に北には……」
ジョルティ「スプリング・デイブレイクを書けば良いんだな」
ティエ「西にはクレールさんに夏の魔法を」
クレール「サマー・ミッドナイトを西に……と」
ティエ「南にはニーナさんに秋の魔法を」
ニーナ「オータム・ダスクですね! そういえば書くの初めてですねぇ、この魔方陣」
ノーティ「それで、最後に東には、結界樹枝を使ってウィンター・アーリーモーニングの魔法陣を書いて……と」
ティエ「これで、儀式場は完成ですね。私が結晶を持って中央を担当すれば良いですね?」
ノーティ「はい、お願いします。皆、自分が書いた魔法陣の上に立って、詠唱を担当して下さい」
ニーナ「なんだかドキドキしますね、こんなに魔法陣書いてあるのを見たの、初めてですよ」
クレール「では、中央の方が合図をお願いします。同時に詠唱しましょう」
ティエ「じゃぁ……せーの!」
ティエの合図で、皆がそれぞれの魔法を詠唱し始めました。
不思議なことに、四季の魔法はそれぞれ共通している部分があるようで、こちらも1つの歌のように紡がれていきます。
それぞれの魔法陣は魔法の効果を発揮することはありませんでしたが、それぞれの方角に夜明け、月夜、夕方、早朝の景色が投影され、地中が幻想的な光景に包まれます。
そして、それと同時にレプリカの魔法陣が強く輝き、周囲にかかれていたドラゴンサインの魔法陣も強く輝きました。
詠唱をしながら皆は、ティエが掲げている魔法結晶が強く輝き、色を取り戻していることに気が付きました。
ノーティ(おおっ)
そして全ての詠唱が終わった時、その色は完全に取り戻され、強い輝きを取り戻したのでした。
しかし……その直後のことです。詠唱に参加していた者が、ニーナさんを除いて全員、突然気を失いその場に倒れ込みました。どうやら、詠唱によって膨大な魔力が消費されてしまったようでした。
ニーナ「うっ……って皆さん!?」
ノーティ「ああ……魔力が……」
ティエ「おじいちゃんの嘘つき……!」
ニーナ「あ、あれ!? 魔力は使わないのでは……!? 確かに物凄く魔力を持っていかれているような気がします!」
ニーナ「クレールまで倒れてる!?」
ニーナ「ど、どうしましょう……リン・リラックスオーケストラ使うだけの魔力は残っていませんし……」
トリシア「まあ寝かせておこう」
ニーナ「魔力切れで倒れたなら、回復させても意味ないですよね……?」
クライブ「ほうっておきゃそのうち起きるだろ」
トリシア「あ、ティエとジョルティが寝てるならもう中で吸っても良いよね!」
ニーナ「じゃ、じゃあ魔法結晶、見せてもらっても良いですか?」
トリシア「いいんじゃなーい」
ニーナ「じゃ、じゃあ僭越ながら……魔法結晶を……」
ニーナさんが倒れたティエが持っていた再生された魔法結晶を手に取りました。綺麗な輝きを取り戻したその結晶は、見るからに強い力を秘めていました。
ニーナ「ではちょっとだけ魔力を……」
ニーナさんがその魔法結晶にごくわずか魔力を注ぎましたが、これといって変化はありません。
トリシア「どうだい」
ニーナ「うーん…わかりませんね……」
ニーナ「もうちょっと入れてみます」
トリシア「いいのかい」
ニーナ「まあ、倒れない程度に……」
ニーナさんがさらに、残っていた魔力を気絶ギリギリまで注ぎ込みました。
トリシア「ニーナちゃんあんまり頭使う方じゃないよね、頭よさそうなのに」
ニーナ「頭良さそうだなんて照れますよ」
するとどうでしょう、魔法結晶がその魔力を受け取ったことで、その場に文字を映し出しました。
何も起こらないと踏んでいたトリシアが驚いてタバコを落としかけていました。
その文字は「書は世界樹の頂きに開く」とだけ書かれていました。すぐにその文字も消え、再び魔法結晶は沈黙します。
トリシア「なんだこれ」
ニーナ「何でしょう……?」
ニーナ「残念ながら……皆さんを起こすのに効果はなさそうですね……。ここで一晩明かすしかないでしょうか……?」
ニーナ「これは書き留めておいて、後で皆さんに伝えましょう」
トリシア「おいてかえる? 書き置きして?」
ニーナ「い、いやーそれはさすがにー」
ニーナ「私も疲れましたし……丁度良いかな、と」
トリシア「リーズちゃん何処」
リーズ「ずっとここにいますよ」
トリシア「何か言いたい事とかないかな!?」
リーズ「言いたいこと……ふむ、この魔法結晶についてですかね?」
トリシア「そうだね。ここでクレールとニーナの仲について話されても困るね」
リーズ「そちらの方が話しやすいんですけど駄目でしたか」
トリシア「だめだよ!」
リーズ「……世界樹という言葉が気にかかります」
リーズ「世界樹というのは……古い時代に、季節の竜の力の配分を行っていた巨大な樹木です」
パワー「うーん、おいしそう!」
リーズ「今はもうその働きが停まってしまって久しいのですが……もしこの魔法結晶が世界樹が機能していた時代のものであるとすると、相当昔のものということになります」
トリシア「うちんところの竜人と違って普通にしゃべれるっていいよね」
リーズ「そういえば、マスコット、どうしたんでしょうか? お渡ししたような……」
「あ……今、冬の竜人に貸し出しているんです。そういえば報告を忘れていました……」
トリシア「なんか誰かに渡してたよ。というか、冬の竜人に渡してた」
リーズ「……なるほど、冬の。ああ、そうだったんですね。道理で」
リーズ「私もしばらくは使っていなかったんですけどね。直接話せるのは、便利で良いですね」
トリシア「人にもらったもの勝手に渡しといて何もいわないとかひどいよね!」
今回は私の落ち度ですけどトリシアもルーに香り袋渡してましたよね!?
リーズ「まあ、事情があったのは分かったので、構いませんよ。その方が良かったということなのであれば」
リーズ「しかし……恐らくこの樹は世界樹ではないと思います。世界樹の場所までは、私も存じ上げないのですが……」
トリシア「とりあえず皆おきたら世界樹云々伝えてみんなで考えますか」
トリシア「それでいいかなニーナちゃん」
ニーナ「はい、それでいいと思います」
トリシア「じゃあ腰下ろしておきるまで過ごそう」
ニーナ「そうですね、疲れました……」
トリシア「寝ると良いよ」
こうして、気絶をしている者たちをとりあえず簡単に整えてから、眠ることになりました。
リーズ「……皆眠りましたよ、アリアさん」
「そうですね。この度はリーズさんにも随分ご迷惑をお掛けしました」
リーズ「いえ、こちらの旅人の目的にも協力して頂けましたから、お互い様ですよ」
「そういうことなら。しかし……なんだか不思議な感じがしますね、あの魔法結晶は」
リーズ「そうですね……何やら、感じたことがないような気を感じるというか……この世のものではないような」
「アンデッドが持っていたためでしょうかね……? 悪い魔法が入っているのでなければ良いですが」
リーズ「その時は、私達でなんとか対処しなければなりませんね」
「そうですね。お互い、もう少しで旅も終わりでしょうから……滞りなく終わるように、頑張りましょう」
リーズ「はい」
~夏の月 2日~
朝になると、昨日魔力切れで倒れていた皆も目を覚ましました。
〈コンディションチェック〉
パワー:Critical(絶好調)
クライブ:13(絶好調)
ティエ:12(絶好調)
ノーティ:12(絶好調)
トリシア:5
ジョルティ:7
ジョルティ「よし、話が違う。あの爺やりにいこう」
パワー「ここは地下が近い!」
ニーナ「おはようございます。割りとお元気そうですね」
クライブ「さて、とるもんとったしさっさと帰るか」
ノーティ「ええと、どうなったんですか? 結晶は? 我々は?」
ニーナ「あの後、私が少し残っていた魔力を注いでみたのですが……」
トリシア「世界樹が世界樹で世界樹らしい」
ニーナ「魔法結晶には「書は世界樹の頂きに開く」と言う文字が浮かんだだけでした」
ノーティ「はあ……?」
ジョルティ「つまりここじゃ開かねーよって事か?」
ニーナ「それ以上は魔力が足りず……結晶はトリシアさんにお返ししています」
トリシア「ノーティも見てみな」
トリシアが魔法結晶をノーティに投げ渡しました。
ノーティ「あ、はい」
トリシア「気になるなら魔力注いでみたら?」
ノーティ「やってみましょうか。……えい」
ノーティが魔法結晶に魔力を注ぐと、昨日ニーナさんがやったのと同じように「書は世界樹の頂きに開く」という言葉が空中に投影されました。
昨日よりも多くの魔力を注いだようでしたが、特に結果に違いはありませんでした。
トリシア「これが昨日でた」
ノーティ「普通の魔法を基準にすればこのくらいが大きめの魔力なのですが」
ノーティ「これ以上つぎ込んでも変わらないでしょうね」
ノーティ「一体何のためにこんなことを……」
リーズ「世界樹については昨日私からも少しだけお話しましたが……。今となっては機能も止まっていて、どこにあるのかも分かりません」
ジョルティ「どんなとこにあったとか、何でも良いので情報ないすかね?」
リーズ「遙か遥か昔のことで……私が生まれるより前のことですから……もしかすると、秋の竜なら何か知っているかもしれませんけれど……」
トリシア「春側も何もしらないかなあ……あと冬の竜も」
ノーティ「物知りですね、秋の竜」
ジョルティ「じゃあ秋の竜の所戻ろっか」
リーズ「とのことですが、どうですか、アリアさん?」
私にもさっぱり……皆目検討もつきません。とリーズさんに答えます。
リーズ「アリアさん曰く、右に同じとのことです」
ジョルティ「うん知ってた」
トリシア「左にいるんだ」
リーズ「いえそういう意味ではなく」
リーズ「秋の竜は特に魔法に造詣が深い竜ですので、もしかすると多少は知っていることトリシア「なんでだろう脳筋のイメージなんだ秋」
リーズ「それは夏ですよ!」
リーズ「……おっと、つい声が大きく」
トリシア「ヘー」
ジョルティ(竜人界隈でも夏は脳筋で共通なのか…)
トリシア「とりあえず何処行くにしても竜脈通ってる所まで出ないとねえ」
トリシア「とりあえず外でて下の町まで降りないとだっけか…」
リーズ「皆消耗しているようですし……もしよかったらお乗せしますが……。乗り心地、保証できませんよ」
トリシア「乗れるんだ」
リーズ「まあ、一応竜ですから……ちょっと疲れますけどね」
ジョルティ「お願いします!!」
リーズ「分かりました、それではとりあえず外に出ましょうか。それから、私が麓までお送りしますよ」
リーズ「クレインまでで良いですか?」
トリシア「竜とはいえ女の子に当たり前のように乗るとか卑猥」
リーズ「男女の前に竜ですから、そんなことはないですよそんなことは」
ノーティ「とある文献によると……なんでもないです」
「荷運び動物などは私の方が運びますね」
リーズ「あ、動物の方はアリアさんが運んでくれるとか。ではそういう形で」
トリシア「オネガイシマース」
麓まで私達が乗せていくことに決まったので、とりあえず光線樹の樹洞から外に出ました。すでに日光は出ていましたが、光線樹は光の反射を起こしておらず、光線の照射機能は停止しているようでした。
ニーナ「やっぱりこの共明石が動かしてたんですかねー」
トリシア「ねー」
リーズ「では、少し離れて下さいね」
〈アウェイクン:竜の先導(特殊)〉
〈アウェイクン:竜の先導(特殊)〉
蒼く美しい優雅な竜と、緑で可憐な竜が皆の前に姿を表しました。……いや、言ったもの勝ちかと思いまして。
皆はリーズさんに、皆の動物は私に乗って、ちょっとした空の旅を楽しみました。高山の上から出発したということもあり、眼下の美しい景色を楽しむことができました。
そして、クレインの村まで到着したのは夕方頃のことでした。
皆を降ろし、再び竜人の姿に戻ります。私はまた見えなくなってしまいましたが。
トリシア「ありがとー」
リーズ「……まあ、本当はここまで直接旅人に関わるべきではないと思うのですけどね。まあ、良いでしょう、私の旅人の旅はあとは帰り道だけですし」
リーズ「皆さんも付き合わせてしまった部分がありますからね」
リーズ「……それで、どうしますか? すぐにでも秋の竜の元に行くなら、道を繋ぎますが」
ジョルティ「美味しいご飯食べよう。とりあえず祝杯といこう!!」
ニーナ「それもいいですね!」
ジョルティ「二人の旅の終わりを祝して!!」
ニーナ「折角ですからお祝いしましょう!」
パワー「待って、草食べる!」
〈薬草取り:山:目標10〉
パワー:11(白夜ハルシャ菊1獲得)
ノーティ:11(白夜ハルシャ菊1獲得)
パワー「うまい!」
ニーナ「クレール、やっぱり一回食べて……」
クレール「やめようニーナ……やめて……」
ニーナ「ぐぬぬ」
パワー「ハルシャギクは生で食うと最高だぞ!」
リーズ「……変わってますねぇ、アリアさんのところの旅人は」
ジョルティ「え?」
ティエ「いっしょにしないで?」
リーズ「なんでもありませんなんでもありません。空耳ですよ空耳」
ジョルティ「あんまちょうしのってるとしばくぞ」
リーズ「はははやってみろ」
ジョルティ「ウッス」
リーズ「コホン……おっと、つい」
リーズ「それで、とりあえず祝杯を上げるのですか? まだ夕方ですけども」
ノーティ「飲んだら昨日とは違う感じに倒れるだろうな……」
ニーナ「酒場なら初日に見つけたんですよー。この時間からやってるか分かりませんけどもー」
トリシア「スパー」
ノーティ(一定面積以上の居酒屋は禁煙になります——)
ニーナ「では行きましょー」
クレール「程々にね、ニーナ、程々にね……」
こうして、皆はクレイン唯一の酒場に向かい、まだ日の出ている内から酒盛りをはじめました。
ノーティ「前に勝負で倒れているのでそんなに飲みません」
リーズ「……久し振りにのみましたけど、やっぱり美味しいですね、お酒は。あ、アリアさんも一口どうぞ」
ジョルティ「どうせそいつ勝手に飲んでるからお構いなく」
い、いやいやそんなことは。ちょっとだけですよ。
ニーナ「これで、私達は後はもう故郷に戻るだけですねぇ」
ノーティ「色々な人の旅の終わりをこうやって見られるのも、感慨深いものがありますね」
ニーナ「皆さんももう結構長い旅ですよね」
ニーナ「そろそろ、終わりも見据えているところですか?」
ジョルティ「いえ、ところが全然」
ノーティ「だといいのですが……どうも彼女はそろそろ終わりを迎えるとか言っていた気が」
ニーナ「ふむ……そうなんですね」
ニーナ「私達は明確な目的がありましたけど、皆さんはそういったものはないのですか?」
ノーティ「目的……」
ティエ(最悪いざとなれば適当に店を始められそうなぐらいのお金はあるけれどなぁ……)
トリシア「いろいろ見て学びたいだけ」
クライブ「そんなものがあればもう少しまじめに旅をしているだろうさ」
トリシア「いつやめてもいいし続けても問題ない」
ノーティ「あるといえばあります、達成できるものかどうか分かりませんが」
ニーナ「なるほどー、そういう旅も、良いですね。やっぱり、人それぞれ違った旅があるのが、楽しいのでしょうね」
ジョルティ「俺の目標達成出来るかまだわかってないからなぁ!!」
ニーナ「また歳を重ねてから、歩いてみたいものですね。今度は目的もなく」
ノーティ「春の竜の君が我々の話に飽きる前に終われれば幸いです」
リーズ「まあ、その心配はないでしょう。割りとお気に入りのようですよ、皆さんは」
ジョルティ「変わってんなぁ、春の竜」
リーズ「奇想天外な方がお話は楽しいものです。書く側も聞く側も」
リーズ「さてと、もうそろそろ夜も近いですが……そろそろお会計をして秋の竜の元に向かいましょうか」
ノーティ「いやはや、お別れは名残惜しいですが」
リーズ「そうですね、皆さんとも何度かお会いしましたが、それはそれで楽しそうでしたから、2人も」
ジョルティ「ここは俺らが奢るぜ!」
ジョルティ(ティエ立て替えといて!)
リーズ「まあ、色々とありましたが、終わってみれば良い旅だったと思います。こういうのが、竜人の楽しみですね」
ノーティ「これからはお二人とも普通の生活に戻られるんですか?」
ニーナ「そうですね、故郷に戻ったら後は普通通りの生活に戻ることでしょう」
ニーナ「私もクレールの農場で働くことになりますかねぇ。ふふ、それも楽しみです」
ニーナ「旅は終わった後のことを考えるのも楽しみの1つかもしれませんね。といっても、まだまだ帰り道がありますけど」
ノーティ「そうですか……体にお気をつけて」
クレール「はい、皆さんも。色々と助けていただいてありがとうございました」
ジョルティ「まぁ、迷惑もかけたけどなんだかんだで楽しかったぜ!」
リーズ「…では、お会計はお任せしまして。外に出たら村の外で道を繋ぎましょう」
リーズ「もう、他にやることはありませんか?」
ノーティ「そうですね、そろそろ出ましょうか……おっと、足取りが」
リーズ「なんだかんだで結構お飲みだったみたいですねぇ」
ノーティ「すっかり弱くなりましてね、へへへ」
クライブ「ま、縁がありゃどうせどこかで遭遇することもあるだろうしなければそれまでだ。旅人なんてそんなもんだろ」
ティエ「あ、そうだ、秋の竜の所に行く前に……オジイチャンの所に行きましょう」
ジョルティ「文句言ってやらんとな!」
ティエ「まあ……多少はそうですね」
リーズ「まだ用事があるようなら、お待ちしています。準備が整ったら言ってくださいね」
皆は酒場を後にし、とりあえずヴィルフランシュに話をしに行くようでした。郊外のヴィルフランシュの小屋へと向かいます。
そして、ジョルティが怒り心頭という様子でドアを蹴り開きました。……思い切り開くのてはなく、魔法でゆっくりと開きましたが。
ジョルティ「おい爺ぃ!話が違ったぞ!責任取って何か魔法教えろやゴルァ!!」
ヴィルフランシュ「何かね騒がしい…」
ヴィルフランシュ「話が違った……? 何かあったのか?」
ティエ「これは出来たんですけどね?」
ヴィルフランシュ「ほう、素晴らしい輝きではないか」
ティエ「詠唱者が全員ものすごい魔力を吸われまして。5人中4人が気絶する事態に」
ヴィルフランシュ「む……魔力が吸われたとな」
ヴィルフランシュ「おかしいな……文献によると魔法は形式的なもので、魔力は吸われないと記録されていたのだが……」
〈ジョルティ:呪文魔法「シューティング・スター」→ヴィルフランシュ〉
発動判定:9
〈ヴィルフランシュ:魔法相殺:目標9〉
抵抗判定:14
不意を打つようにしてジョルティがシューティング・スターの魔法を放ちましたが、ヴィルフランシュはそれを軽々しく無効化していました。
ヴィルフランシュ「木造の家で火を使うのはやめないか」
ジョルティ「ちっ」
ノーティ「魔力を吸われて皆が倒れた、そこまではまだ良いんですよ」
ノーティ「ところが、この魔法水晶に魔力を注ぎ込んだところ、ただ『書は世界樹の頂きに開く』と文字が浮かぶだけで……」
ヴィルフランシュ「記録に間違いがあったのは悪かった。そのことは申し訳ない」
ヴィルフランシュ「……ふむ。書は世界樹の頂きに開く……か」
ノーティ「特に強い魔法が記録されているわけでもなく、ただそう浮かぶだけで……何のことやら」
ヴィルフランシュ「その魔法結晶を見るに、その程度の文章を浮かび上がらせるだけの魔法のはずはない。もっと大きな魔法であることは間違いないはずだ……」
ヴィルフランシュ「魔法の発動に条件があるのだろうか…? 世界樹というのはよく分からないが……」
ノーティ「つまり、この魔法水晶には鍵のようなものが掛かっている、といった具合でしょうか」
ヴィルフランシュ「恐らくはそういうことだろう……文面からすると世界樹が鍵になっているように思えるが……世界樹とはなんのことだ……?」
ノーティ「貴方ほどの魔法使いでもご存知ありませんか。これから手がかりを探しに行くところですが……解決したら、ご報告させていただくことがあるかもしれません」
ヴィルフランシュ「……それはありがたい。私にもまだ魔法で分からないことがあるとはな……」
ヴィルフランシュ「こちらでも調べてみることにしよう。何かあったら伝達の魔法で連絡をしようじゃないか」
ヴィルフランシュ「魔法に間違いがあったことはすまなかったな。残念ながら魔法を教えるようなことはできないが……可能な範囲で協力はしようじゃないか」
ノーティ「色々とお世話になりました。これからが願わくば最後の旅になると思われます」
ヴィルフランシュ「うむ……よい旅にならんことを」
ジョルティ「お詫びになんかくれ、魔法でもいい」
ヴィルフランシュ「……律儀なのか不逞なのか分からんな君達は」
ティエ「そういえばこの青い水晶……一部地域でだれでも魔法が使える便利なアイテムなんですけど。これ個人の魔力で使えるようにならないもんですかね?」
ヴィルフランシュ「…魔法結晶のみならず、魔晶まで持っているのか」
ヴィルフランシュ「青水晶……ふむ、それならば、書き替えぐらいならばしてやれるが……」
ノーティ「今はスプラウトが入っているんでしたっけ?」
クライブ「スプラウトだな」
ティエ「そうですねー」
ティエ「でも個人の魔力で使えるようにならないと別に書き換えはフリーグゼルに行けばできますし」
ヴィルフランシュ「個人の魔力で使えるようにするのは難しいだろうな……これは特別な仕組みのものだ」
クライブ「うまく使えるようにできんのか。まぁいいけど」
ジョルティ「爺達者で暮らせよ」
ヴィルフランシュ「……うむ。そちらもな」
ノーティ「お元気で」
ティエ「お元気でー」
パワー「達者でくたばれ!」
こうして、皆はヴィルフランシュの小屋を後にしました。……うちの旅人がすみません。
リーズ「終わりましたか?」
リーズ「準備がよろしいなら、道を繋ぎますよ」
ティエ「はーい」
ノーティ「お願いします」
リーズ「はい、分かりました」
リーズ「それでは、秋の竜の元へ導きましょう。……寝ていたら小突いてやってくださいね」
そういうと、リーズさんが秋の竜の棲家へと竜の道を繋ぎました。私達一行は皆そちらに入り、リーズさんたち秋の旅人たちはクレインに残りました。
そして、皆が入ると、リーズさんが外側からその道を閉じました。私も、竜の住処に入ったので再び見えるようになりました。
今度は、秋の竜も起きており、こちらの来訪にそれほど驚いている様子もありません。……が、突如としてジョルティが走り出したかと思うと、秋の竜の尻尾に噛み付きました。
秋の竜「な、なんですか急に!」
ジョルティ「もう遅いわ!! かじかじ」
秋の竜「やめなさいやめなさい」
秋の竜は驚いたように尻尾を振り払い、ジョルティを振り落とします。
ジョルティ「落ち葉の味がする…ペッペ」
秋の竜「その上その反応!」
ジョルティ「これじゃない!」
秋の竜「めちゃくちゃですねこの人」
ジョルティ「俺の求めてた味じゃない!!」
秋の竜「ちゃんと言い聞かせておいて下さいよぉ、春の竜人さん……」
「あ、はい、ごめんなさい。でも私の尻尾も食べられる予定なので、良いかなって」
秋の竜「……大変なのね?」
「そこそこ」
ノーティ「こほん……ご報告します。この魔法水晶の起動には成功しました。すると、『書は世界樹の頂きに開く』と文字が浮かび上がって」
ノーティ「世界樹というもののところに行かなければいけないようですが、どうしたものか……というところで、魔法周りにお詳しいという秋の竜の君にお尋ねしようと思いまして」
秋の竜「なるほど、リーズから聞いたのですね」
秋の竜「世界樹……ですか。久しぶりに聞いた言葉ですね」
秋の竜「遥か昔、私達季節の竜の力は世界樹を通して世界に分配されていました」
秋の竜「しかし、ある時からその機能が失われてしまったようで……今はそれぞれの季節の竜がバランスを取るようにして力を使うようにしています」
秋の竜「……まあその結果、冬の竜の力が強まりすぎると言うような問題が起こったのですが」
秋の竜「私達季節の竜は直接この場所を動くことができませんから、実際の世界樹がどこにあるのかまでは分かりませんね……」
秋の竜「少なくとも、過去の竜人が世界樹の場所に至ったことはありませんでした」
ジョルティ「力の流れてく方向でなんとなく方向とかわからんのん?」
秋の竜「力の方向……ですか、これもかなり昔のことなので確実なことではありませんが、当時は北に向かっていたと思います」
ノーティ「多分冬の竜に聞いたら西って言うでしょうし、春の竜に聞いたら南って言うでしょうし……」
ノーティ「細かい所は分からないということですね」
秋の竜「そうですね、残念ながら。」
秋の竜「……しかし「書は世界樹の頂きに開く」ですか。世界樹についてはこれ以上のことは分かりませんが……」
秋の竜「書というのは、叡智の書という魔法のことではないかと。これは過去に聞いたことがあります」
クライブ「コレか?」
クライブはそう言うと、荷運び動物から喋る歩くノートをつまみ上げて見せました。
秋の竜「……多分違うのではないかとー」
喋る歩くノート「自分でいうのもなんだが、違うと思うな」
秋の竜「それはそれで人の魔法の智の結晶だとは思いますけどねー」
クライブ「そうか。違うのか」
秋の竜「え、ええ、残念ながら」
秋の竜「私にわかることはこれぐらいですかねぇ……?」
トリシア「有難う御座います」
ノーティ「叡智の書というと、選ばれし者に知恵を授けるという。我々が選ばれし者でなかったら徒労ですが……それはおいといて、困りましたね」
秋の竜「……世界樹については困りましたね……。季節の竜で私より魔法を好む人はいないと思いますし……」
トリシア「諦めるべきなのでは」
クライブ「とりあえず行けばいいんじゃねえの」
ジョルティ「爺は役に立たなかったしな」
秋の竜「ただ、選ばれし者に知恵を授ける、ということなら、案外成り行きでたどり着けるかもしれませんよ?」
ノーティ「え? そ、そうですか……?」
秋の竜「まあ、ロマンチックな考え方ですけどね。私は割りと、好きなんですよ、運命論みたいなのって」
ジョルティ「そんな行き当たりばったりな!旅舐めてんのか!」
秋の竜「ふふふ、まあ舐めてはいませんよ、食べてはいますけどね」
ジョルティ「こちとら毎日命がけだぞ!!」
トリシア「秋の竜様ごめんね?」
トリシア「ほんとごめんね? そいつ好きにしていいからゆるして」
秋の竜「いえいえ、良いんですよ、旅人と直接話す機会なんて珍しいですから」
秋の竜「リーズと違っておとなしい竜ですからね、私は」
秋の竜「おっと、秘密ですよこれ。あの子、根に持つんで」
トリシア「似たような事リーズも言ってたよ」
秋の竜「今度帰ったら痛い目を見せてやりますよリーズ」
秋の竜「おっと、そうじゃなかったそうじゃなかった。北に行くということなら、どこかにお送りしましょうか?」
ノーティ「そうですね……」
ノーティは少し考えるようにすると、これまでに書いてきたノートを近くの木に貼り付け、そこにナイフを投げました。そのナイフは地図上のカナセを示す場所に突き刺さりました。
ノーティ「ではカナセで」
秋の竜「カナセですね、ちょうど竜脈はつながっているようです。カナセで宜しいですか?」
ノーティ「それは何とも都合の良い。皆さんがよろしければ、お願いします」
ティエ「イキマショー」
クライブ「任せた」
パワー「草食わせろ」
ジョルティ「うぇーい」
秋の竜「……では、皆さんお元気で」
ジョルティ「世話になったーまたー」
秋の竜「竜の加護のあらんことを」
そういうと、秋の竜は皆を包むように竜の道を繋ぎ、即座にカナセまで移動させました。こうして、我々は1年以上ぶりに、釣りの村カナセに到着したのでした。
第三十五話 第三部「虹結晶の序文」 完
と、この辺が良い区切りですね。こうして、私達はカナセへと戻ってきました。
思い返せばこのカナセは、皆の旅で最初に訪れた村です。なんとも感慨深い気が致しますね。秋の竜ではありませんが、これも一種の「運命論」でしょうか?
竜の君はどうですか? 運命を信じますか? ……なんですかその顔、良いじゃないですか、私だってロマンチックな気分になることもあるんですよ。ふふ。
……まあ、何にせよ、次の旅物語までもうしばらくお待ち下さい、竜の君。
【MVP:パワー】
こちらは、2017/2/17,18125に行ったオンラインセッションのリプレイです。今回は秋の竜と蒼の竜人の物語……となったようななっていないような。
ニーナとクレールは実はこのキャンペーンを始める前にクライブとトリシアのPLと行ったテストプレイの際から登場しているという、何気にこの世界で最も歴史あるキャラなのでGMとしては愛着があります。(キャラクターは随分違っていましたが……)
ちなみに、新しく「魔法結晶」が登場しましたが、これはフリーグゼル編で登場した「魔法水晶」とは違うものです。紛らわしいですが……。
さて、残す七つの旅も後4つ、本格的に近づく旅の終わりに些かならず寂寥を感じるものの、しっかり終わらせられるようにもう暫く頑張ります。
それでは、もう少しだけお付き合いくださると幸いです。
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