2016/06/07

りゅうたまリプレイ 第四話前編「銀の輝きが呼ぶ翅蟲」 【キャンペーン】

どうされましたか、竜の君、どこか眠たそうに見えますが。
ふむ、旅が順調なのは良いが、刺激が足りない、と。
確かに彼らは私の予想を超えて実力を付け、ちょっとした障害は物ともしていませんね。
そういうことなら、今回の旅物語は丁度良いでしょう。
ある意味で、彼らにとって初めての「試練」となった物語をお聞かせしましょう……。

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第四話前編「銀の輝きが呼ぶ翅蟲」



ゴレンに到着し、私はしばらくの間、ニーナさん達の旅物語を書いている竜人、リーズさんの元におりました。
流石の彼らと言い、あの長旅の後です、今日は宿から動かないだろうと思っていたためです。
リーズさんからは、ニーナさんと、供に旅をしているクレールさんという方について色々とお話を聞かせてもらいました。
2人は元々同郷の生まれで、ニーナさんが旅に出るということになったのでクレールさんも同行することにしたのだと言います。クレールさんにもクレールさんなりの目的があると言いますが、それはまたの機会に。
クレールさんは金色の髪をした、小柄なファーマーの女性です。小柄、と言ってもトリシアよりは少し背が高いでしょうか。




さて、そんな話をしていると、俄に外が騒がしくなってきました。何が起こったのかと思い窓に近付いてみると、すぐに背後でドアを叩く音が聞こえました。

クレール「はい、どうかしましたか?」
町の男「あ、ああ、旅人さんたち、いてくれて良かった。ちょっと広場まで来てくれないか、緊急事態なんだ」
クレール「ニーナ、どうしましょう」
ニーナ「行きましょう。休むのは後でもできますから」
クレール「そう言うと思った。……分かりました、一緒に行きましょう」

ニーナさんとクレールさんは、そうして町の男について広場へと向かって行きました。私とリーズさんもそれに続きます。広場にはすでに町の者達が大勢集まっていました。中心には一際体格の大きな、筋肉質な初老の男性が立っていました。
姿から見るに、ゴレンの鍛冶職人であるようです。

初老の男「皆集まったな!先ほど、見張りから連中が動き出したと報告があった!手筈通り、手分けして蔵の守りについてくれ!だが、無理はするなよ、危なくなったら退いていい!銀より、作り手のお前らの方が貴重だ!」
町の男「ディストさん!ニーナさんとクレールさんを連れて来ました!」
初老の男「おお!着いたばかりですまない、姉ちゃん達!急に賊達が動き出したみてぇだ、危ないから俺の工房の方に避難していてくれ!」
クレール「ですって?」
ニーナ「全く、クレールにはお見通しね。……ディストさん、私達も旅人の端くれ、滞在する町に協力するのも旅人の仕事の1つです。私もクレールも、魔法が使えます。足手まといにはなりませんよ」
初老の男「それは助かる……!この町で旅を経験しているのは俺ぐらいだ。他の連中はできれば戦わせたくねえ。一緒に来てくれ!」
ニーナ「はい、もちろんです。……それと、もう1つご提案が。実はつい先程到着した旅人の方々がいます。私の見たところ、皆十分な力を持っています。呼んできてもよろしいでしょうか?」
初老の男「何、他にも旅人がいたのか!竜の導きかもしれん、呼んできてくれるか?」
ニーナ「はい、すぐに」

ニーナさんが私の旅人達の泊まっている宿の方へと向かって行きましたので、私もそれに同行することにしました。
私の見ていない所で場所を聞いていたのか、真っ直ぐと宿へ到着し、そのドアを叩いていました。
すると、トリシアがすぐさまドアを開けました。どうやら彼らにも外の騒ぎは聞こえていて、警戒をしていたようです。

トリシア「なんじゃい!どったんや!」
ニーナ「お休みの所すみません、少し広場まで来て頂けませんか?」
ジョルティ「夕飯ですか!?」
ティエ(ジョルティが寝ぼけていますね……水でも掛けましょうか?)
ノーティ「了解しました、行きましょう、皆さん」
トリシア「へいへい」
ティエ「はーい」
ジョルティ「ニーナさん、そんなことより僕とご飯に行きませんか?」

彼らはすぐに道具をまとめて、ニーナさんの後に着いて行きました。唯一、パワーだけは爆睡しており、声を掛けても起きそうになかったため、そのまま置いていく事になったようです。(都合が合わずPL不参加)
ニーナに連れられて人が集まった広場まで向かうと、先ほどよりも彼らは慌ただしそうにしていました。

初老の男「おお、呼んできてくれたか!着いたばかりらしいが、すまんな旅の方々」
ノーティ「どうしました?町が騒がしいようですが」
初老の男「それがな、ゴレンの町の周りには、ゴレンの銀製品を狙う盗賊団が居座っているんだが……見張りによるとそいつらが動いたらしい。もしかすると旅のお方にも危ない目を見せてしまうかも知れんと思って、呼んで来てもらった」
ノーティ(盗賊?根絶せねば)
トリシア(盗賊……!銀製品を貯めこんでいる可能性が!)
ジョルティ(盗賊は食えないなあ)
ティエ(悪人に人権はないって地方のお姉さんが言ってた)
初老の男「奴らは[銀針の蠍]と名乗る盗賊団だ。不思議な事に、これまで銀しか盗られたことはねえが……」
ジョルティ「蠍は毒を抜けば唐揚げが美味いよ」
初老の男「いやいや、人間だよ人間」
ジョルティ「なんだ……そうか……」
トリシア「で、そいつらはぶっ倒しても問題ないの?」

どうやら、彼らは避難しているつもりは全くないようです。長旅の後だというのに、なんとも元気なことです。誇らしいやら疲れるやらですね。

初老の男「もちろん、倒してもらえるのが一番だが……戦力として期待して良いのか?」
ノーティ「盗賊団の規模はどのくらいですか?」
初老の男「人数はそれほどでもない。俺がツラを見たことがあるのは10人くらいなもんだ」
トリシア(ヅラ?)
ティエ「盗賊の強さの程は?」
クライブ「ついでに町の戦力もだ」
初老の男「基本的にあまり練度の高い連中じゃない。首魁だけは飛び抜けているが、他は素人に毛が生えた程度だ。……だが、こちらも同様だ。俺以外の連中はほとんど戦えない」
ジョルティ「町の入口は?」
初老の男「奥は鉱山で塞がれちゃいるが、他の部分は囲いがあるわけでもない。大通しだ」
トリシア「ま、指を咥えて見ててもしょうがないし、やるしかないんじゃないの」
初老の男「こちらもある程度被害を抑えるために、蔵を3つに分けて銀製品を保管している」
ジョルティ「3つか……多いな。蔵の規模に違いは?」
初老の男「ない、それぞれが囮としての役割も持たせてある」
ノーティ「戦闘は始まってしまえば一瞬です。蔵に見張りを置くだけというわけにも行かないでしょうね」
初老の男「そういうことだ。もし手伝ってもらえるなら、俺らそっちの姉ちゃん達と一緒に一箇所を守る。あんた達で二箇所を守ってもらえないか?」


男がそう言うと、ニーナさんとクレールさんが小さく礼をしました。私の旅人達も、戦闘に加わる決心をしたようです。

初老の男「そうだ、名乗るのを忘れていた。俺はディスト、この町で鍛冶屋の頭領をしている」
ジョルティ「ほう、鍛冶屋の……武器も作ってらっしゃる?」
ディスト「ああ、銀製専門だがな。銀は不死の物に良く効く、良い武器になる」
ジョルティ「しかし、人間相手だと心許ないな……」
ディスト「まあな……しかし、そうだな、タダで働いてもらおうなんてムシのいい事は言わん。もし奴らを撃退してくれれば、鉄の武器と同じ値段で銀の武器を打ってやるよ」
ジョルティ「……あと、美味しい特産品とかないかな?」
ディスト「残念だが無いな、この辺りは荒れた山ばかりで、さしたる食材がない」
ジョルティ「解散!」
ティエ「やる気出して!」

ディスト「ともかく、奴らが来る、手伝ってくれるか」
トリシア「あっ、はい」
ティエ「はい」

そうして、ディストはニーナさんとクレールさんと共に、蔵の一つへと向かって離れて行きました。それから、彼らも作戦会議を始めます。

ティエ「とりあえず、今の体調の報告を。宿について休みましたし」

〈コンディションチェック:1日目〉
クライブ:9
ティエ:8
ノーティ:10(絶好調)
トリシア:4
ジョルティ:8

ティエ「それじゃ……どう分かれましょうか」
ノーティ「戦力の事を考えると、まずジョルティさんとトリシアさんは分かれた方が良いかと」
ジョルティ「そうだな。俺達が主火力だ」
トリシア(一服中)
ティエ「自分で言うのも何ですけど、私はあんまり戦力にはなりませんよ」
クライブ「……なら、俺はティエのいる側に入ろう」
ノーティ「人数が少ない方にヒーラーの私が入るべきかと思います」
ジョルティ「そうだな、じゃあ俺とノーティが組む」
クライブ「了解」
ティエ「分かりました」
トリシア「決まった?」

防衛班分けは、すんなりと決まったようです。トリシア・クライブ・ティエが一班、ジョルティ・ノーティが二班となりました。それぞれが、担当する蔵の前へと向かっていきます。私は、化身して上空から見守ることに致しましょう。

[第一班]
トリシア達が一つ目の蔵の前に着いた時、丁度盗賊と思われる人影が駆け寄ってくるのが見えました。人影は2つ、数からして旅人達の方が優勢ですね。

小柄な盗賊「チッ、守りがいやがる!しかたねえ、蹴散らすぞ!」
弓持ちの盗賊「後方支援するぞ」

《戦闘開始》

〈イニシアチブチェック〉
クライブ:11
ティエ:8
盗賊1:6
盗賊2:6
トリシア:6

〈ラウンド1
最初に動いたのはクライブでした。クライブは小柄な盗賊に接近し、先手必勝とばかりに剣を振ります。剣は目論見通り命中し、盗賊の体に大きな傷を付けました。

ティエはまず、戦闘に馴染むように息を整え始めました。

小柄な盗賊はクライブを、弓持ちの盗賊はトリシアを攻撃しましたが、どちらの攻撃も命中することはなくすり抜けました。

トリシアも、ティエと同様に息を整えました。2人とも、これで十分な落ち着きを取り戻したようです。

〈ラウンド2
ティエ:14
クライブ:11
トリシア:11
盗賊1:6
盗賊2:6

十分な落ち着きを取り戻したティエは、前にいる小柄な盗賊に向けて短剣を振るいます。短剣は命中し、小柄な盗賊に確かな傷を付けました。

クライブももう一度剣を振るい、小柄な盗賊に斬りかかります。今度は浅く入り、それほど大きな傷とはなりませんが、もはや満身創痍であることは間違いありません。

トリシアは狙われた恨み全開という様子で、弓持ちの盗賊に向けて矢を放ちました。矢の当て方を教えてやるとでも言わんばかりの一撃は、盗賊の太ももに命中し、大きな傷を与えました。

こうなると、もう2人の盗賊は大慌てという状態です。再びクライブとトリシアに攻撃を行いますが、全く命中することはありません。

〈ラウンド3
ティエ:14
クライブ:11
トリシア:11
盗賊1:6
盗賊2:6

この戦闘を終わらせるべく、ティエは短剣で小柄な男へと攻撃を行いました。満身創痍な彼に対しても全く容赦はなく、彼はその場に倒れ伏しました。幸か不幸か、命は失っていないようです。

もはや、残された弓持ちの盗賊も勝ち目がないと悟り、逃げ出そうとしていますが、彼らの眼光の前にそれもできません。

トリシア放った矢がその背中をかすめ、クライブがそれとは逆側に駆け寄って剣を振り下ろしたことで、弓持ちの盗賊も気を失いました。

《戦闘終了》

ティエ「大したことありませんでしたね。私でも戦えましたし」
クライブ「……そうだな」
トリシア(一服中)

[第二班]
時を同じくして、ジョルティとノーティももう一つの蔵の前に守りに付きました。2人ということもあり、ジョルティは首魁が来ることだけを警戒していましたが、こちらにも第一班を襲ったのと同じような者達が現れました。

ノーティ「戦闘では期待していますよ、ジョルティさん……!」
ジョルティ「食えないからなあ」

小太りの盗賊「見ない顔がいるな……!構わねえ、やることは同じだ!」
背の高い盗賊「やっちまおうぜ!」

《戦闘開始》

〈イニシアチブチェック〉
ジョルティ:9
盗賊1:6
盗賊2:6
ノーティ:3

〈ラウンド1
真っ先に動いたジョルティは、後方にいた弓を持った背の高い盗賊に向けて矢を放ちました。矢は一直線に飛んでいき、その肩を捉え大きな傷を与えます。

痛手を受けた盗賊も、前にいる盗賊も、ジョルティの方を睨みつけています。

しかし、小太りの盗賊は動きが遅くジョルティを捉える事ができず、背の高い盗賊の放った矢も怪我のせいで勢いが落ちたのかさしたる傷を負わせることができません。

ノーティは戦闘開始時につまずいて靴が脱げてしまっていたので、それを履き直していました。まだ、多少慌てているようでしたが。

〈ラウンド2
ジョルティ:9
盗賊1:6
盗賊2:6
ノーティ:5

ジョルティは再び背の高い盗賊に向けて矢を放ちますが、今度は物陰に阻まれて命中させることができませんでした。

そして、再び盗賊達がジョルティに向けて攻撃を行いますが、今度は両者共に攻撃を外します。ジョルティはあくびをしているようでした。

ノーティは精神を集中させてシューティング・スターの魔法を放ち、背の高い盗賊を気絶させることに成功しました。

小太りの盗賊「勝ち目がねえ……!」

小太りの盗賊は遁走し、ジョルティとノーティも2人であることからそれを引き止めることはせず背中を見送りました。

《戦闘終了》

ジョルティ「逃げたか……向こうも気になるし、深追いはしないでおこうか」
ノーティ「ジョルティさんの戦闘力……いえ、戦術眼には目を見張るものがありますね」

こうして第一班も第二班も、自分の担当する蔵の防衛に成功し、広場へと戻ってきました。

第一班は二人、第二班は一人、気絶した盗賊を捕縛して引きずってきています。
私も化身を解き、広場へと戻ります。

すると、三つ目の蔵に向かっていたディストやリーズさんとその旅人達も戻ってきました。

ディスト「そちらも問題はなかったようだな。こっちも姉ちゃんたちのおかげで何ともなかった。改めて礼を言うぜ」
ジョルティ「みんな無事かー、こっちは楽勝だったぜ」
ディスト「こいつは約束のお礼だ。銀の鍛冶をする約束の証だと思ってくれ」

ディストはそう言って、ジョルティに自分の工房の名前が入った小さな銀板を渡しました。

ジョルティ「そうだった、忘れてた、コイツらもいい物持ってないかなーっと」
トリシア「迷惑かけた分は返してもらわないとね」

〈材料加工(追い剥ぎ)〉
トリシア:10
ジョルティ:3

トリシアとジョルティの二人は、連れてきた盗賊たちの懐を探り始めました。トリシアは100G、ジョルティは30Gを見つけて、自分の懐にしまいました。

ジョルティ「しけてるな!」
ディスト「強かな連中だな……」

強かというか、容赦がないという方が正しい気もしますが……。

ティエ(まずい、心証が)
ノーティ「わ、我々も厳しい旅路ですので」

フォローしているノーティも苦笑いの表情を隠せていません。

ディスト「まあ良いさ、コイツらの持ち物は元はといえば盗んだもんだ。遠慮するこたあない。当然の報いってもんだ」
ジョルティ「貰えるものは貰う、それがサバイバルの基本だからな!」
ティエ(なるほどそういうものか)
ディスト「しかし、着いたばかりだってのに働かせて悪かった。今日は助かった、俺はこの町の奥にある工房に詰めてるから、用があればいつでも来てくれ」
ディスト「ああ、そうだ、他の町に比べれば大したもんじゃないが、一応この町なりに美味いもんを届けさせる。腹の足しにしてくれ」
ジョルティ「美味いものないって言ってたのに……!ディストさん、抱いて!」
ディスト「ハハハ、それじゃあ、俺は帰るぜ」
ニーナ「私も宿に戻ります。巻き込んでしまってごめんなさい、お疲れ様でした」

ディストとニーナさん達は、そう言って各々の宿へと戻って行きました。
彼らも同じく、自分の宿へと戻っていきます。私もそれについて、宿へと戻ることにしました。
宿では、盗賊騒動について、お互いの班の情報を照らしあわせ始めていました。

ジョルティ「そういや、盗賊の頭領は見当たらなかった感じ?」
トリシア「ただの雑魚っぽかったよ」
ティエ(頷く)
ノーティ「我々の方にもリーダーらしき人物はいませんでしたね」
トリシア「明日、酒場か広場当たりで盗賊について聞いてみようかー」
ティエ「そうですねー、できるんなら壊滅させた方が後顧の憂いがなくなりますが……」
ジョルティ「ふーん、じゃあ暫く町中でも各自警戒、単独行動は控えるようにしようか」
トリシア「それに、盗賊のアジトにならいい物一杯あるかも!」
クライブ「……路銀は多くて困るものでもなし」
ティエ「そろそろ新たな荷運び動物も欲しいですしね」
ジョルティ(俺が言うのもなんだが血気盛んな奴らだなあ)

暫くすると、ディストが注文してくれたらしい料理が届きました。確かにカナセの川魚料理に比べると少々劣りそうでしたが、それでも十分に美味しそうな料理でした。
そして、遅くならないうちに皆眠りに付きました。

翌日、目を覚ますと外はすでにジリジリとした暑さとなっていました。私も暑いのは苦手ですが、人間である彼らにとっては尚更のことでしょう。

〈コンディションチェック:2日目〉
クライブ:Fumble(絶不調)
ティエ:Critical(絶好調)
ノーティ:9
トリシア:6
ジョルティ:8

トリシア「おはようさん」
クライブ(胡乱な目をしている)
ノーティ「大丈夫ですか?」
トリシア「拾い食いもほどほどにね」
ジョルティ「拾い食いのコツは悪いものを見分けることだ。今度コツを教えようか」
クライブ(顔色が悪く返事をする余裕がない)
ノーティ「治療しましょう」
クライブ「……頼む」

〈応急処置:目標4
ノーティ:14

ノーティは慣れた手付きでクライブに処置を行いました。クライブもとりあえず動ける程度にまでは回復したようです。

ティエ「どうしましょうか、どこで情報収集します?」
トリシア「とりあえず、工房に行く?」
ジョルティ「そうだな」

一通り準備を済ませると、彼らはまずディストの工房に行くことにしたようです。ディストの工房は町の奥まった、鉱山の入り口に近い場所にありました。外観は少し古そうでしたが、銀で作られた看板は一際輝いていました。

ディスト「お、早速来たな。ようこそ、ディストの工房へ」
ジョルティ「ディストやーん、約束の話と、後普通の装備も安く作ってもらえたりしない?しない?」
ディスト「普通の装備っていうと、鉄の装備か……?うーむ、素材さえあればできんことは無いが、ゴレンの鉱山は銀鉱山でな、鉄は出ねえんだ。俺の使い古しの斧ぐらいしかないな……」
ジョルティ「そっかー」

ノーティ「今日は、盗賊団についてお話を伺いに来ました。ここから盗賊団の拠点まで、どれぐらいの距離があるか分かりますか?」
ディスト「拠点……?まあ、アテはついちゃいるが……そんなこと聞いてどうすんだい?」
ノーティ「無茶を言っているかも知れませんが……盗賊団の殲滅を視野に入れて考えています」
ディスト「殲滅……いや、確かにそれができれば一番だが……。首魁の奴は強いぞ。……いやしかし、昨日の働きを考えれば……できないことは無いかも知れん」
ディスト「[銀針の蠍]は、この町の近くの山にいることは分かってる。それほど距離もねえ、あんた達みたいに旅慣れた連中なら、1日とそこそこで着くはずだ」
ノーティ「なるほど。ちなみに、もし盗賊団の壊滅を行うとすると……ディストさんは同行されますか?」
ディスト「いや……俺は離れられねえな。昨晩も言ったが、この町で戦えるのは俺ぐらいなもんだ。ガラ空きにはできねえ」
ノーティ「そうですね……どうしましょうか、ニーナさんたちは付いてきてくれるでしょうか?」
ティエ「とりあえず、声を掛けてみましょうか」
ディスト「あの姉ちゃん達かい?朝方、工房に来る途中に見かけたぜ、多分まだ近くにいるんじゃねえかな」
トリシア「じゃー呼びに行ってみようか」

ジョルティ「じゃあディストさん、とりあえずライトアーマーと、銀の弓を……」
ディスト「銀製でいいならお安いご用だ」

そうして彼らは、ディストの工房から出て、ニーナさん達を探しに行くことにしました。それで広場の方へと戻っている途中、丁度ニーナさん達と遭遇しました。

ティエ「おはようございまーす」
ニーナ「あら、こちらに来ていたんですね。おはようございます。」
ニーナ「そういえば、昨夜は紹介できませんでしたね。こちらが、言っていた友人のクレールです」
クレール「初めまして。ニーナのこと助けて頂いたようで……ありがとうございました。グリフォンの事も聞きました、私も残るべきだったと反省しています」
ニーナ「私達も丁度ディストさんの所にお話に行こうと思っていたところでして。皆さんもそうでしたか?」
ノーティ「ええ、ちょうど話と買い物を終えてきたところです。……ところで、盗賊団を完全に潰しに行こうと言ったら、あなた方はどうされますか?」
ニーナ「潰す……ですか。そうですね……私達がディストさんに話に行こうと思っていたこともそれに関係しているのですが……」
ティエ「ほう、どのような?」
ニーナ「町の防衛に関することです。昨日は私達やあなた方がいましたからなんとかなりましたけど……この方法を続ければ、今後も被害が出続けることになります」
ティエ「そうですね」
クレール「……ですが、私達はあまり直接彼らに手を出そうと思ってはいません」
ティエ「理由を伺っても?」
クレール「私達の出身の村も、昔夜盗に襲われたことがありました。村として反撃をしたものの……結果的に、被害が大きくなってしまいました」
クレール「もちろん、この町の話は別です。ですが……やはり気になってしまって。ニーナの恩人なのに、協力できずごめんなさい」
ノーティ(消極的な共存関係を築くことを考えているんですね)
ティエ(まあ、無理に連れて行く訳にもいきませんし)
ニーナ「……すみません。それでは、私達はディストさんのところへ話に行ってきます」

そう言って、ニーナさんとクレールさんは礼をしてからディストの工房の方へと向かって行きました。彼女たちの後ろにいたリーズさんも、私に軽く会釈をしてそれに続きました。
一緒に行けないのは残念ではありますが、それぞれの物語がありますから、仕方がないことです。

ノーティ「どちらの選択肢も考えられますね……酒場にでも行って、この町の皆さんの意思を聞くのも手ですが」
クライブ「……まだ朝だ、酒場に人はいないだろう」
トリシア(えっ?)
ジョルティ(えっ?)
ノーティ「確かにそうですね……では、どこで情報を得ましょうか……」
ジョルティ「不安要素は排除しておきたいけどな。……昨日の連中に話を聞くのは?」
ティエ「その手がありましたね。それじゃ、昨日の奴らが捕まっている場所に向かいましょうか」

彼らは情報を得るために、昨日捕まえた盗賊たちが投獄されている鉱山近くの詰め所へと向かいました。
そこでは牢番代わりの鉱夫が見張りをしていましたが、こちらに気付いて小さく礼をしました。

牢番の鉱夫「おう、コイツらの話を聞きたいのか。目は覚してるから、好きにしていいぜ。ま、殺さん程度に頼むよ」
ジョルティ「ま、とりあえず事情聴取と行こうか」

ジョルティはまず盗賊の一人を連れ出し、皆で囲ませました。

背の高い盗賊「お前ら昨日の……!やめろ、俺たちはもう何も持っちゃいねえぞ!」
ティエ(小銭盗ったのバレてますね)
ジョルティ「いやいや、ちょっと話を聞きたいだけだぜ。アジトの場所やら、お前らの情報やらな」
盗賊「ふん、話すことはないね」
ジョルティ「あ、そう」

ジョルティは意外にもそれ以上話を聞くのをやめ、その盗賊を元の場所に戻して、今度は別の小柄な盗賊を連れて来ました。
ジョルティ「さてと、洗いざらい話してくれないかな?さっきの人は話してくれたよ、確認がしたいんだけどな」
小柄な盗賊「アイツが言った?フン、まあ、そうだろうな、俺らはそんなもんだ。……いいぞ、答えてやる、何が聞きたい」
ジョルティ「残りの仲間の人数、頭領の風貌、それにアジトの場所だな」
小柄な盗賊「残りの人数は……3人、いや、4人だな」
小柄な盗賊「ボスの風貌って言っても難しいな、体がデカいのは間違いなけどよ、顔はいつも隠してるから俺らもほとんど見たことがねえ。剣を佩いてるが、他のことは分からん」
小柄な盗賊「アジトはこの北の山の洞窟だ。これで十分か?」
ジョルティ「じゃあ最後に。町から盗んだ銀はアジトにおいてあるのか?」
小柄な盗賊「盗んだ銀?昨日はお前らが邪魔したせいで成果ナシだったからな、大したもんはねえよ」

小柄な盗賊がそう答えると、トリシアがジョルティを押しのけて目の前に立ちました。手には一服していたと思われる、タバコが紫煙を上げています。

トリシア「今までの、ものに、決まってるでしょ」

ジュウ、という音と共に、トリシアのタバコが小柄な盗賊の額に押し付けられました。……やっぱり人選間違ったんじゃないでしょうか私。いえ、今までもモンスターに対して容赦のない姿を見ていましたが……。
……見るに、クライブとジョルティも呆れたような顔で見ていたので、私の感性もそこまでずれていないのだと思います。
まあ、考えるのはやめましょう。見守るのが竜人の仕事です。


小柄な盗賊「何しやがる、このアマ……!よく聞けよ、「大したもんはねえ」って言ったんだ、分かんねえのか!?」
小柄な盗賊「手足縛られてロクに寝てもいねえんだ、聞きたいことが終わったなら出てってくれねえかなあ!?」
トリシア「なんで盗賊ごときがゆっくり寝れると思ってんだハゲ」
小柄な盗賊「まだハゲちゃいねえよ!喫煙者の方がハゲやすいから注意しろよアマ!」
トリシア「ああん?どこの情報だそりゃ」
ジョルティ「何の話してんだ。じゃあ今度こそ最後に、盗品はどこに流している?」
小柄な盗賊「流し先?銀なんて元々価値があるもんだ、特別な流し先なんて必要ねえよ」
ジョルティ「さんきゅー、邪魔して悪かったな。これに懲りたら足洗えよ!」

そして彼らは盗賊から離れ、牢番の鉱夫に一礼して詰め所を去りました。そして、その後どのようにするのかの相談を始めます。

ジョルティ「さてと、狩りに行くか?こっちも旅の途中、禍根は残さない方が賢明だと思う」
クライブ「……任せる」
ノーティ「私は盗賊の頭領を取ることで、問題に終止符を打つことかできると考えていますが……ニーナさん達の提案もあります、そのまま放っておくのでも一応問題はないのかもしれません」
ジョルティ「俺たちから見ればリスクは半々だな」
ティエ「クライブさんはどう思います?リスクはあるわけですけど」
クライブ「……まあ、路銀はあっても困るものでもなし。だが、ここで誰かが脱落するリスクのことも考えなければならないな」
ノーティ「私の魔法にかけて、脱落者は出しません」
ティエ「ニーナさん達の村で起こったことを教訓にするなら……やるなら徹底的にやるべきでしょうね」

そんな様に話をしていると、そこにニーナさんたちと話を終えたらしいディストが顔を出しました。

ディスト「おう、やっぱりここにいたか」
ティエ「なにかあったんですか?」
ディスト「さっき姉ちゃん達が、町の作りについて色々話をしに来たぜ。いい案ではあるが、ありゃ一朝一夕にできることじゃねえ。ついでに言えば金もかなり掛かる。……ということでだ、ここはアンちゃん達に改めて盗賊の壊滅をお願いしたい。俺はついていけないが……もちろん礼はする」
ジョルティ「具体的には?」
ノーティ「まあ、それは後でも良いでしょう」
ディスト「元々銀のおかげでそこそこカネはある町だ、ある程度は出せる」
ジョルティ「美味い飯も付けてくれよ」
ディスト「それぐらいはお安い御用だ。昨日のよりもいいものを用意させよう」

ノーティ「話は決まりましたね」
ティエ「ええ。場所もさっき聞きましたし、行きましょうか」
ジョルティ「ま、パワーさんが寝ている間にちゃっちゃと片付けて帰ってこようぜ」
ディスト「今日は暑い、倒れる前に水を飲むんだぞ。できれば塩分も一緒にな」

そうして、彼らは北の山へ向かうことを決めました。山への登り口は町のすぐそばにあり、そこからの出発となります。私はというと、また山か……と少し陰鬱な気分になっておりました。

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こちらは、2016/6/4に行ったオンラインセッションのリプレイです。
今回のシナリオは今後の戦闘バランスを考えるために、戦闘を中心にしたものとしていました。
そのために分割戦闘なども取り入れてみましたが、分割は片方を処理している間もう片方が暇になってしまうので、下策だったようにも思います。(特にやっているのが夜なので、誰か寝ないもんかと心配でした)


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