おはようございます、竜の君。
実はまだ旅物語にするほどのことはないのですが…少し不可解なことが起こりまして、その報告にきました。
……まずは、私の日記をお聞かせします。それから、”不可解な件”についてもお話致します。
第二十四話「霧霞の城」
ライナの元に「美しくかわいい高品質扇子」の試作品を届けた後、宿を取って眠ることになりました。宿は特に何か特別なものではありません。個室ではありますが、一般的な宿です。
慣れない式典で疲れたためか、あるいは試作品作りで疲れたためか、食事から戻ると皆すぐに寝てしまいました。
~冬の月 9日~
今日は晴れやかな晴天となりました。レパーリアの新しい門出を、晴れの竜が祝ってくれたのかもしれません。勝手にそういうことにしておきましょう。
〈コンディションチェック〉
パワー:5
クライブ:9
ティエ:14(絶好調)
ノーティ:7
トリシア:Fumble
ジョルティ:9
ルー:7
〈荷運びスキルによる振り直し〉
クライブ:16(絶好調)
皆が起床し、朝食を摂っていると、何か空の方から魔力の反応があることに気が付きました。私も彼らと一緒に、窓から空に目を向けます。すると、西の空に何か文字が浮かび上がっているようでした。
ティエ「あれは、ドラゴンサインですね」
ジョルティ「まだ朝飯食ってるのに!」
空に浮かぶ文字は、次のように書かれていました。
“カレン姫意識恢復の由、急ぎお報せ申し上げます”
ノーティ「これはめでたい」
トリシア「そっすね」
クライブ「ほう、意識が戻ったか」
ルー「お知り合いですか?」
ノーティ「ええ、旅の途中で出会った方でして--」
ノーティが、カレンとアージェントでの出来事について掻い摘んでルーに話していました。
カレン、アージェントの姫君でしたね。父親を死の魔法で繋ぎ止めていた張本人で、その後昏睡してしまっていました。……思えば、アージェントでの出来事は晩春のことですから、もう随分と時間が経ったものです。
それにしても、意識が戻ったというのは良いことですね。これで、アージェントも少しずつその姿を取り戻していくことになるでしょう。
それから1時間ほどして、もう一度西の空にドラゴン・サインが上がりました。
“こちらは安定を取り戻しつつあります。厳冬のみぎり、ご自愛を。”
ティエ「あ、続ききたよ」
クライブ「…もう少し要領よくやれないのか、あいつ」
ノーティ「何かお返事しましょうか?」
ティエ「返事書く?」
トリシア「なんて送るのー?」
ジョルティ「厳冬おにぎり?おにぎり食べたいっすね」
クライブ(何言ってんだこいつ)
突然ダジャレを言い出す枠が2人に増えると追いつかないのでパワーとどちらかだけにして貰えませんか?
トリシア「何文字書けるんだっけ?」
ティエ「30文字ですね」
トリシア「30文字かー」
クライブ「”了解した、皆様のご健康を旅人一同お祈りしております” でいいんじゃないか」
ティエ「分かったー」
ティエ「”了解しました、皆様のご健康を旅人一同お祈りしております”」
〈ティエ:呪文魔法「ドラゴン・サイン」〉
発動判定:6
それからさらに1時間ほど後に、もう一度返事がありました。"ご壮健のこと、何よりです。ご武運をお祈りしております。"という内容でした。
ティエ「なんでロイさんしかマジックユーザーいないんでしょう、あの街」
トリシア「一応リンちゃんも魔法使えたはずだけど…。ヴェルガもできそうだよね」
ヴェルガ、隕鉄の匕首の場合、直接脳内に話しかけてきそうではありますが…。
クライブ「まぁ、その辺はよかろう。で、買い物は全員済んでいるのか?終わっているなら予定を立てたほうがいいだろう」
パワー「早く行こうぜ」
ノーティ「特別買うべきものもありませんが」
トリシア「特産品買ったっけ」
ティエ「昨日仕入れておきました。でもちょっとまだ準備したいものがありますので、街に出てきますね」
ティエ達、用事がある者達は街に出て、色々と買い物を済ませに行きました。街中の人たちは昨日の式典で彼らのことを知っていたらしく、普段よりサービスが良かったように思います。
その途中、エンチャント師の所に向かったティエが突然おかしなことを言い始めました。
ティエ「パワーさーん、喋るノート、歩けるようにしてみない?」
パワー「良いよ!」
喋るノート「良いのか!?」
ティエ「じゃあお借りするねー」
パワー「ノートの癖に歩けるようになるとか最高だな!」
歩く喋るノート「どんどん有能になっていく俺…!」
……何だか不思議な生物が誕生したような。魔法の力は末恐ろしいものですね。いや、歩けるようにしてどうするんでしょう…?
他にも色々なものにエンチャントをつけたり、新しくゴーグルを購入したりしながら、一日が過ぎて行きました。ちなみにパワーはお金がなかったのでジョルティに食事を奢ってもらっていました。
ルー(皆お金持ちだなあ。私も頑張らないと)
それから、宿に戻って床に就きます。久しぶりの、何事もない一日が終わりました。
~冬の月 10日~
目を覚ますと、今日も綺麗な晴れ模様でした。ただ、少しおかしなことがあったのです。クライブが眠る前には持っていなかった、「金色の王笏」と「金色の鍵」を持っていました。それに、皆も何か変なことを話しています。
ティエ「おはよーございます」
トリシア「おはよう。やっぱり日付が変わっていなかったね」
ジョルティ「膝まだいてーぞ!!」
ノーティ「ルーさんはいらっしゃいますかね?」
ルー「おはようございます、みなさん」
ノーティ「おはようございます。ルーさん、昨日の式典のこと、おぼえてらっしゃいますか?」
ルー「式典は一昨日ですよ?」
ノーティ「あれ、そうでしたっけ。あ、でも、そうか……じゃあさっきのは……」
トリシア「そういうことだね」
ルー「どうかされたんですか?」
トリシア「世の中には旅してると色々起こるねーって」
クライブ「なんか茶を飲みはぐった気がする」
トリシア「ルーちゃんにもいずれ分かるときが…来たり来なかったり?」
ルー「?よく分からないですけど、楽しみにしておきますね!」
パワー「よくわからんけど草取りに行ってくるぞ!」
〈薬草取り:湿地:目標10〉
パワー:14(アカツキ紅花入手)
パワー「美味そうな花だムシャムシャ」
ルー「あっ、その花は食べちゃ…遅かった…」
ノーティ「こういう人なんです……」
ジョルティ「縄でベットに縛りつけないと…」
ティエ「えーっと、じゃあまずとりあえずこの王笏を売る?返す?」
クライブ「売ったらまた面倒だろ…」
ティエ「そうですね、返しますか」
ノーティ「返すのが道義かと思いますが、まあ任せますよ……」
ティエ「じゃあいきますか」
ティエ「ルーさーんやーい」
ルー「はい、なんでしょう?」
ティエ「実はですね、昨日…というより今日…いや、やっぱり昨日?ちょっと変わったことがありまして。そんなこんなで託されたものがあるので、王城に返しに行かなきゃならないんですよ」
ルー「はい、お城に行くんですか?」
ティエ「片付け終わった城見学ツアーでもいかが?」
ルー「一緒に行っても良いんですかね…?」
ジョルティ「もちろんさ!」
ルー「ならご一緒します!」
ノーティ「では向かいましょうか」
こうして彼らは王城へと向かいました。何が起こっているのかよく分かりませんけれども……。その王笏、何なのでしょう?
王城の跳ね橋は降りており、門も閉まっているものの、門番が立っていました。
ティエ「こんにちはー」
ジョルティ「ご苦労!!」
門番「お疲れ様です、皆さん。領主に御用ですか?」
ジョルティ「いえすざっつらいと」
ティエ「そうなんですちょっと用事が、割りと重要なんです…」
門番「承知しました、それではお通り下さい。皆さんであれば通すようにと言われておりますので」
クライブ(ザルだなあ…)
城に入ると、改築作業をしている人達が見受けられました。その中に、自ら指示を出している領主ライナの姿もありました。
ティエ「おはようございまーす」
ライナ「おや、皆さん、おはようございます。どうかなされましたか?」
ジョルティ「ライナさーん、ちょっとこっちへ」
クライブはそれほど興味がないとばかりに柱に背を預けて居眠りをしています。……寝不足なのでしょうか?
ライナ「?何か御用がおありなのですね?」
ノーティ「お早う御座います、領主殿。ちょっとした忘れ物をお返しにあがりまして」
ライナ「わかりました、では二階へ。玉座の間でお聞きします」
ライナに誘われ、ティエ、ノーティ、ジョルティは二階の玉座の間へと向かいました。クライブもティエに呼ばれて露骨に面倒そうにそれに続きます。
トリシアはルーと共に改築中の一階ロビーの様子を見学していました。
玉座の間に入ると、早速ノーティがクライブから預けられていた王笏を取り出し、ライナの前に見せます。ライナは驚いたような表情でその王笏を手に取りました。
ライナ「これは…」
ジョルティ「知っているのか?」
ライナ「先代が失くしたと言っていた王笏、ですね…。なぜみなさんが?」
ティエ「へぇ…なくした…」
ライナ「ええ、そのように聞いていますが…」
ジョルティ「実は昨日、死の竜の遣いとかいうのに返却を頼まれましてな」
ノーティ「まあ……過去のことは良いでしょう。とにかく何の問題もなしに返していただきましたが……」
ライナ「……死の竜の遣い、ですか…。俄には信じがたい話しではありますが…」
ライナ「実際に、この王笏があるので、事実なのでしょうね…」
ノーティ「”死の魔法に用があるなら呼ぶが良い”とのことです。なんとなくは察して頂けるのではないでしょうか」
ノーティ「深くは立ち入りませんが……」
彼らは何の話をしているのでしょうか?死の竜の遣い?私の知らない所で何が起こっているのでしょう?申し訳ありません竜の君、私、何かを見落としたのかもしれません。……一日寝ていたのに気付かなかったとかでしょうか……?
ライナ「……死の魔法に用、ですか」
ライナ「いえ……分かりました。皆さんには度々ご迷惑をおかけして申し訳ありません」
ライナ「死の魔法の話は…エルデには黙っておくことにします」
クライブ「……下らない魔法だ」
ライナ「ともあれ、お返しいただき、ありがとうございます。名実ともに、城が戻ってきたのだと思います」
ライナ「…今後、なにかお困りのことがございましたら、何なりとお申し付け下さい。出来ることであれば、微力ながらご助力申し上げたいと思います」
ノーティ「この王笏には何か特別な由来や力でも?」
ライナ「城が作られた時…今から3代前の領主が併せて作ったものです」
ライナ「特別な力などがあるわけではありません。当時にしては、高度な鋳造技術が使われていますが、今からすると大したものではありませんから……」
ノーティ「なるほど。ありがとうございます。ところで、この先の旅についてなんですが--」
その後、ノーティを中心にライナに道を尋ね始めていました。その後の帰り道で、彼らは終始階段の裏側を気にしていました。……特に何もなかったのですが。
……話が繋がっていない、ですか。いえ、本当にその通りです。私としても全く意味がわからなくてですね……王笏や鍵についても皆特に触れませんし、トリシアやノーティも色々なことを話していましたが、掴みどころがなく……。
そう思っているとですね、不思議なことに、私がまだ書いていないはずの日記の次のページから、何かが書き込まれていたんです。明らかに私の筆跡ではありませんでした。
竜の君なら分かるかもしれませんので……その部分もお聞かせしますね。
~冬の月 10日~
彼らが目を覚ますと、外は真っ白い霧に包まれていた。いや、真っ白い霧で包んでいた、という方が正しいか。
〈コンディションチェック〉
パワー:11(絶好調)
クライブ:13(絶好調)
ティエ:9
ノーティ:15(絶好調)
トリシア:5
ジョルティ:14(絶好調)
皆、起き上がるとまっすぐに宿の食堂へと向かっていった。残念ながらそこに人はいない。食事も提供されることはない。
宿の者だけでなく、他の利用客などもここにはいない。
ティエ「あれ、ご飯がない」
ノーティ「なんと、また事件ですか……?」
クライブ「さて、人がいないとはどうしたものだ」
ティエ「ジョルティさんや。御飯がないよ」
ジョルティ「ガッデム!!!」
ノーティ「とりあえずルーさんを呼びに行きましょうか?起きてきていないみたいですし」
トリシア「まだ朝じゃないか。おやすみなさい」
ノーティ「霧がすごいですが朝ですよ。嫌な予感がしますが、とりあえずはルーさんを呼びましょう」
クライブ「面倒だから任せた」
ノーティ「じゃあ、ちょっと呼びに行ってきます」
ティエ「私も行きます」
トリシア「私も行くー」
クライブ「皆で行けば良いだろう」
ジョルティ「俺は飯があるから!!」
(1人を除いて)一行は背の低い女の部屋の隣に向かっていった。……誰か一人、取りこぼしたか?いや、春の竜の旅人は6人だったはずだ。あるいは、加護のない旅人が紛れていたのか?
ノーティ「おはようございまあす、ルーさーん、起きてますかー?」
学者風の男がドアをノックしているが、当然返答はない。中に誰もいないのだから、返事があるはずもないが……。
ティエ「おはようございまーす」
何度もノックと挨拶を繰り返しているが、何も返ってくることはない。痺れを切らして、ドアを開けて確認してみることにしたようだ。
ティエ「開けてみる?」
ノーティ「いないみたいですね?どうでしょう?」
ノーティ「着替え中などではないでしょうが」
ティエ「でもそれならノックで反応がないのはおかしいよ?」
ここで鍵が開かず、一悶着あるのも面倒だ。とりあえず私の力で鍵は開けておいた。
ノーティ「あれ、開いてる……」
ティエ「でも、いない」
ノーティ「いません、ね」
ティエ「一旦戻って報告する?中に入って探索する?」
トリシア「なんだろ、変な夢かなー?」
ノーティ「まあ、隠れる理由もないでしょうからいらっしゃらないのでしょうね」
〈捜索〉
ティエ:10
ノーティ:5
〈動物探し〉
クライブ:5
その後、思い思いの方法で部屋の中を探していたが、結局見つかることはなかった。いないのだから当然なのだが。荷物などはそのまま残っており、それが彼らに失踪したという意識を植え付けてしまったようだ。
これは私にとっては少々誤算であった。
ティエ「荷物はそのままかな?」
クライブ「…人の痕跡が無し、か。どういうことだ」
ティエ「荷物はあるから遠出じゃなさそうなんだけどなぁ。置き手紙もなにもないし」
ノーティ「ですよね、自分の意志で出て行くには不自然な状況です」
このままでは、彼らは連れ合いを探すことに終始してしまいそうだ。本当はただ待っていたかったが、少々面倒になった。鐘の音で呼びつけてやるとしよう。
私が鐘を鳴らすと、その音は拡散して街中へと響いた。彼らの元にも高い鐘の音が聞こえたことだろう。
ティエ「ウワッ」
ノーティ「なんでしょう、やはり何かが起きていると見て間違いないのでは」
これでもまだあまり動きが見られない。強硬策として、霧を室内にも入れてやることにした。すぐに濃霧が室内を満たし、視界を真っ白に染め上げていく。
ノーティ「毒じゃないですよね……?」
クライブ「…霧から離れるぞ」
ティエ「なんかヤなかんじですね」
ノーティ「これに呑まれたらまずいでしょうか?
」
ティエ「窓から離れよう」
皆、霧から逃れるように上へ上へと向かっていく。しかし、すぐに霧は宿の中を埋め尽くした。気付けば、朝食に執心していた者も合流しているようだった。
ティエ「うーむ。外に居てもここに居ても霧につつまれそうですねえ」
ジョルティ「魔力感知出来そうか?」
〈魔力感知:知力+知力〉
ティエ:12
ノーティ:7
ジョルティ:6
彼らは私の霧から魔力が感じられないか試しているようだったが、何も成果は得られなかったようだ。この霧は魔法によるものではなく、私の持つ「天秤」によるものなのだから感知できなくて当然だ。
ティエ「ん?タダの霧?」
クライブ「ではなかろう…明らかに尋常ではない…気がする」
ジョルティ「魔法の類じゃねーのか」
ノーティ「超自然現象とでもいいましょうか、皆の失踪と何か関わりが?」
ここで、私も痺れを切らして、少し強く鐘を鳴らすことにした。彼らの東の方から鐘が鳴っていること分かりやすくする意図だ。
ティエ「どうしましょうこれ」
トリシア「この鐘、城の方から鳴ってる?」
ジョルティ「この鐘も気になるな。とりあえず鐘鳴らしてる奴に会いに行くか?」
ノーティ「異変と云えば、先からずっと鳴り響いている鐘が怪しいですね。向かいましょうか?」
ノーティ「行きましょう。人が鳴らしているかも怪しいものですが……」
なるほど、鋭い着眼点を持っているものだ。
クライブ「そうだな、全員準備は出来ているだろう?」
こうして彼らは漸く宿の外へと踏み出した。外は一層の濃霧で見通しが立たないが、大きな城だけは街中からでも見えるようになっている。彼らの動物たちも連れてくるのを忘れていた。なんとも手落ちが多くていかん。
ティエ「城に向かいましょう」
ノーティ「この濃霧では…一応地図を見ておきます」
〈方向チェック:濃霧の街:目標7〉
ティエ:17(サポート成功)
ノーティ:14
ティエ「ついでに濃霧の歌でも一つ。魔除けになるかもしれませんし」
〈音楽:濃霧の歌〉
発動判定:16
ティエ「濃霧ー 酷い濃霧ー 土の精霊はー 特に関係ないー ノームー」
……旋律はともかく、作詞センスはいかがなものかと思うが……。春の竜は音楽の加護は与えられなかったようだな。
〈職業知識(マーチャント)〉
ティエ:14
少年は歌いながらも、私の鐘の音について分析しているようだった。
ティエ「聞いたことが無い金属の音ですね…」
ノーティ「問題を解決したかと思えばこれですか。不運が続きますね、この都市も……」
ティエ「何が鳴ってるの?火事になったら鳴る奴?」
クライブ「さてな…音のほうに行けば分かるだろ」
鐘の音や濃霧について談義を交わしながらも、彼らは城の前に到着した。予定より些かばかり時間が掛かってしまったが、それほど大きな問題ではない。それから、どのようにして城に入るかを協議しているようだった。
ティエ「飛んで入ります?」
トリシア「正面突破しよう」
ノーティ「中と外で分担した方が良くありませんか?」
クライブ「面倒だ。真正面から行く」
ティエ「じゃあノーティさんと私で外周を見てみましょう。皆さんは少し待っていて下さい」
〈呪文魔法「ドラゴン・フライ」発動判定〉
ティエ:11
ノーティ:4
少年と学者風の男の2人は魔法を使って飛び上がり、城の周囲を観察するが、特に変わったことを見つけられなかったようだ。まあ、外部は何も変えていないのだから、それが分かった彼らは十分優秀だと言えるだろう。
ティエ「特に何もなかったです」
ノーティ「こちらも。特に変化はありませんでした」
クライブ「そうか、なら入るか」
パワー「扉は任せろ!!」
そういえば、正門は閉まっているのだった。これも忘れていたな……ここも鍵を開けてやろうと思ったが、扉を破りたそうにしている者もいることだ、任せることにした。無用な力を使わずに済むならそれに越したことはない。
〈扉破り:体力+体力:目標8〉
パワー:5(失敗)
……ちゃんと開けてもらわないと困るのだが。その図体で何故失敗する。
パワー「ぐえー!足首くじいたー!」
〈扉破り代理:体力+体力:目標8〉
クライブ:16
もう1人に代わりにに扉を破ってもらえて助かった。
こうして彼らが城内に入った。最早これ以上鐘を鳴らしておく必要もない。鐘を鳴らす手を止める。城内も元のものと変わっていないはずだ。一点を除いては。
クライブ「…幻覚の類か?この前のクソやかましい不死と似たようなもんなのか?」
ノーティ「霧そのものに魔力は感じられませんでしたが……」
トリシア「だから夢なんじゃないの?って」
クライブ「しかし…またカーテンが掛かっているな」
ジョルティ「これはひどい。暗いぞ」
ノーティ「しかし、ガーゴイルはいませんね。そこは安心しました」
〈???:知力+精神:目標9〉
パワー:6(失敗)
クライブ:5(失敗)
ティエ:10
ノーティ:20
トリシア:4(失敗)
ジョルティ:Fumble
ティエ「なんか城が綺麗なんですけど」
ノーティ「ですね、リフォームでもされたかのようです」
ティエ「というより、新しい感じがしますね。石材も劣化してない」
……また見落としたか?当時の城を思い浮かべていたせいでどうにも齟齬があったようだ。50年も前のことだから仕方がないか……大勢に影響はないだろう。
……ついでに、朝食男が何もない所で転んでいた。そんな仕掛けはしていなかった筈だが。
ティエ「とりあえず上ります?玉座に何かあるかも」
クライブ「そうだな、進めば分かるだろう」
トリシア「上に登ろう」
ティエ「一応なにか無いか見てみますね」
クライブ「先登ってるぞ」
〈探索〉
ティエ:10
少年はキョロキョロとその辺りを見回していた。そこで、上に続く階段の裏にある扉に気付いたようだ。
ティエ「クライブさーん、階段の真下になんかあるよ」
クライブ「む?下か…?」
階段を中ほどまで進んでいた灰金髪の男が降りて確認をしにくる。他の皆も階段裏に集まった。
ティエ「何の扉だろう……鍵は、掛かってないですな」
ティエ「行きますか?」
トリシア「進もう」
クライブ「しかないだろう、行くぞ」
ノーティ「怪しいですね この前もこんなものがあったかは覚えていませんが」
ティエ(せっかく歩けるようにしたんだし、喋るノートに偵察させればよかったかな?)
歩く喋るノート(やめて)
ティエ「パワーさん、扉を開けてもらっても?」
パワー「おうとも」
〈扉破り:目標なし〉
パワー:16
巨体の男が扉に思い切り力を込めると、簡単に開く。中には地下に通じる階段が伸びている。
トリシア「ノート、光るエンチャントもしておけばよかったね」
ティエ「そうだねえ。帰ったらやる? でもあれ常に光るから邪魔っちゃ邪魔よ?」
パワー「燃やせば明るくなるぞ?」
歩く喋るノート「俺のこと何だと思ってんだ!」
ノーティ「常時光っていては不便な時もあるでしょう、それはともかく」
クライブ「行くぞ。もうここまできたら進むしかないし考えるのも面倒だ」
パワー「俺も行くぞ!」
巨体と灰金髪が先頭になって階段を下ってくる。階段の下は暗く、階段を降りている間には視界を得られまい。自分の周囲を除いては。
〈ティエ:呪文魔法「ピュア・クリスタルライト」→香り袋〉
発動判定:13
ティエ「明かり作りました。どうぞ」
クライブ「助かる……が、なぜだか見えんな」
ティエ「何でしょう……」
ノーティ「安全そうですか?」
クライブ「知らん」
ノーティ「まあ安全そうですし、一緒に下りましょう」
こうして、全員が18段の階段を下ってきた。皆纏まって降りてくれて助かる。ここで、彼らが下ってきた階段を消しておいた。
玉座から、彼らの下ってきた階段のあった場所まで、真っ赤な絨毯が伸びている。絨毯に沿うような形でいくつかの燭台が置いてある。おっと、忘れずに燭台にも真っ赤な火を灯しておこう。歓迎の精神は大事にしなければ。
トリシア「このパターン前にもあったような」
ティエ「なんかここ既視感があるんだけど」
ノーティ「上階の玉座と全く同じですね」
クライブ「ほう、下にも玉座ね」
そして、その玉座には私が座っている。大きな角に大きな牙を持ち、赤く爛々とした目を光らせて、薄笑みを浮かべてみせる私が。左手には王笏を持ち、この城の真の王であることをこれ見よがしに伝えてやる。
すると、灰金髪の男が急に懐から取り出した短剣を投げつけてきた。なんとも血気盛んなことだ。迫る短剣はとりあえず不可視の力で落としておいた。
「ようこそ、我が城へ」
ここで漸く彼らに呼びかける。悪魔の姿をした私に、彼らはどんな反応をしてくれるだろうか。
トリシア「呼んだ?」
ノーティ「 どなたですか?」
ジョルティ「何度も出てきて恥ずかしくないんですか?」
朝食男はどうもバーフォメットと私の事を勘違いしているようだ。失礼な、あんな低級悪魔と見間違うとは。私だって人間の見分けぐらいは付くぞ。
「我が名はマスティマ。この城の本来の持ち主である」
トリシア「そうなのかー」
クライブ「それで?」
歩く喋るノート「いるんだよなあ、いきなり所有権主張しだす奴」
ジョルティ「ヤギもおんなじ事やってたんだよなぁ…」
……春の竜よ、どうにも肝が座りすぎではないか彼らは。危機感がないのではないか?
「諸君らがバーフォメットを倒したのだろう?賓客として招かねばならぬと思ってな」
クライブ「そうか、じゃあ茶を出せ」
パワー「どうせお前も倒されるんだぞ」
「フフフ、思った以上に肝が座っているな」
本当にな。
パワー「お前は座ってないでとっととこっち来いよ」
ノーティ「もしや我々を打倒しようなどというつもりではないでしょうね?」
パワー(あれ、こいつ倒すんじゃないの…?)
トリシア「喧嘩ふっかける理由がさっぱりわかんねえ」
「こちらから諸君らを相手にする理由はない。だがな、この城を我が手に取り戻すにはまだ一手足りていなくてな」
クライブ「そうか、大変だな。茶を出せ」
何だこの男……そんなに喉が乾いているのか…?
「どうだ諸君、私に協力しないか?あとはこの城に巣食うあの人間達さえ追い出せば名実ともにこの城は私のものだ」
ジョルティ「それ俺達にメリットはー?」
クライブ「そうか、茶を出せ」
「私に協力をするなら、この城以外の街全域はお前達にくれてやろう」
パワー「は?世界の半分も差し出せないくせに生意気じゃね?」
ジョルティ「ちっさ!」
「協力するなら最高級の茶を用意しようじゃないか」
クライブ「ブランデーたっぷりな」
しかも要求しているのは普通の茶ではないのか……。いや、もう気にしないでおこう、本題が逸れる。
「街など要らんというなら、望むだけの財貨も出してやろうじゃないか」
ジョルティ「偉そうに悪魔してるくせにスケールちっさ!!」
ジョルティ「あーじゃあ、竜の肉とか持ってない?」
「竜の肉?随分酔狂なものを欲しがるな。協力するというなら、手伝ってやろうじゃないか。竜狩りを」
……春の竜よ正気か。とんでもない旅人が混じっているぞ?安全なのか此奴。
ジョルティ「まじかよ!!」
ノーティ「お言葉ですが、お金を無限に出すという悪魔に碌なものはいませんね」
トリシア「別に人がこの城使っても不自由なくね…?」
「気分が悪いではないか。シロアリの住む家で安心してし暮らせるか?」
人にも分かりやすいようにと思って喩えてみたが、少々卑近過ぎたような気もする。
クライブ「無理だな。まぁ、面倒だ。話が決まったら教えてくれ。俺は寝る」
あろうことか灰金髪の男はその場で寝だした。私の目の前でだ。……危機感がないというか、もしかして私を馬鹿にしているのか?
トリシア「領主と相談したらどうすっすかね」
「残念ながら、私は彼らに直接干渉ができん」
トリシア「案外大したことないね」
ノーティ「そんな理由で人攫いとは、悪魔って案外器が小さいんですね……」
「人攫い?何の話だ?」
改めて確信したが、全員纏めて私のことを下に見ているな?全く、バーフォメットにも困ったものだ、悪魔の品位を下げられては困る、仕事がしにくくて堪らん。
ティエ「ま、交渉決裂ってことで。帰してくれません?戦うの面倒なんで」
ジョルティ「うむ、そうだな」
パワー「なんでだ!殴らせろ!」
……言葉遣いや行動の指針にこそ数多の疑問があるが……結論は決まったようだ。彼らは私の交渉を断った。それどころか、朝食男以外は全く耳を貸そうともしていない。……確かに、見る目はあるのかもしれんな、春の竜よ。
「そうか、受けないか。街や財宝、自らの目的となるものさえ対価としても、受けないというのだな」
ノーティ「?
とにかく、我々にはこの城をどうこうする権限はございませんので」
ジョルティ「相談に乗れなくて悪いね」
「……良いだろう」
トリシア「帰っていいかな?」
ジョルティ「よし撤収しよー」
ティエ「帰り道ないんだけど」
「まあ待ち給え。まさか本当に断るとはな……」
私の顔は自然と笑みを浮かべていたことだろう。最も、この姿では可愛げがなかったことだろうが。
トリシア「わたしたち、たびびと。目的はたびをすること。OK?」
もう、これ以上この姿でいる必要もなくなった。本当の話をするのにはこの姿は不向きだ。本来の姿に戻ることにしよう。
白いカクテルドレスに身を包み、頭には角が、背中には黒い羽根がある白長髪の女性、それが私の本来の姿だ。左手には先程と同じく金の王笏を持ち、右手には金の天秤を持っている。
この天秤は君たちが言う所の「アーティファクト」だ。主から賜ったもので、「好きな場所に竜の領域を作る」力を持っている。
ジョルティ「よし、まずは領主からやるか?」
トリシア「なにこいつきもい」
……朝食男改め女好き男と呼んでやろうか。そう即座に翻られたのでは私の立場がないではないか。
「いやはや、流石は旅人。この程度の誘惑では靡かないか」
ジョルティ「女性が困ってたら助けるのが紳士ってもんだろう!!」
トリシア「誘惑ってのは魅力的な物で誘われて初めて誘惑って言うんだと思うんですが…?」
「なるほど、街も財宝も誘惑にならないか?」
トリシア「旅終わってからかなー。今は別に困ってないです」
「フフフ、なるほどな。筋金入りの旅人というわけか」
とりあえずお茶を濁しておいたが……私のリサーチ不足の問題か?いや、しかし、これで靡かない相手に何を提案すれば良いのかも正直分からん。今度教えてくれ春の竜よ。
ティエ「クライブさん。なんか見た目変わったよ」
クライブ「ん…あん?なんだ?終わったのか?」
ティエ「いや、終わって無いんだけどさ。ほれ見てみ?」
クライブ「おお、変わったな。すごいすごい。そっちで話しかけたほうが勝算高かったんじゃないか?」
「悪魔の目の前で寝ているとは肝が座りすぎではないか?」
ジョルティ「使い魔に!なってくれれば!考えます!」
…勝算に関しては同意せんでもないが。まあ、良い、いずれにせよ彼らは私の誘惑を断った。重要なのはそこに尽きる。
「まあ、先程の話は丸ごと忘れてくれたまえ。実は領主を襲うつもりも、襲わせるつもりもないのさ」
クライブ「んじゃどうするんだ。このまま引きこもるのか?」
トリシア「回りくどいのは皆嫌いだぞ」
「そもそも悪魔というのも真実ではない」
トリシア「悪魔だったら全力でまずうちら潰しにきてそうだよね」
……この低身長の女はなかなか鋭い目を持っているようだな。
「私の名前はオルクス、死の竜に遣わされた竜人の一人」
そういうわけだ、以後お見知り置きを、春の竜。
トリシア「そりゃ竜もいたら竜人もいるでしょうな」
クライブ「宮仕えは大変だな」
ノーティ「死の竜…竜人…ですか」
ジョルティ「えー死の竜は食ったら即死しそうだからいらない」
「誰もやるとは言っていないのだがな?」
受け入れが早すぎないか?順応力に満ち溢れすぎだ。
クライブ「まぁ、いい…変わったのは分かった。話が動いたら教えてくれ」
そしてしまた寝始める灰金髪男。寝不足なの?
トリシア「うちらに竜の加護ついてるって聞いてるけどほんと?」
「まあ、そうだな、加護と言うべきか、呪いというべきかは分からないが」
私の主の加護は間違いなく呪いだろうが……春の竜の加護はどうだろうな?
「こうして回りくどい方法で呼びつけたのは、この王笏を返すためでな」
ノーティ「返す?」
ティエ「誰に?」
「この王笏は、元々今の領主の先代から受け取ったものだ。君たちから今の領主に返してくれないかね」
クライブ「ん、城は諦めたのか。まぁいい。返しておいてやる、ほれ」
起きたらしい灰金髪男が無警戒に近づいてきて手を差し出してくる。私はその手に王笏を渡した。
「今から50年ほど前、今の領主が生まれた直後に病で生死の境をさまよったことがあった」
「その時、この城を代償に、私の死の魔法で助けてやったのだ。その後、契約を反故にしようとしたのでな、悪魔に譲り渡したのだが」
ジョルティ「契約って?」
「城を対価に命をつなぎとめることだ。その後も城に住み続けようとしていたものでな」
「まあ、その悪魔が倒されたわけだ。契約は終わったということで良いだろう。直接悪魔を倒した君たち次第で、返してやろうというわけだよ」
クライブ「…契約を違えたがあいつらというのが真実ならお前ら悪くないだろ。んじゃもらっておいてよかったんじゃないか」
「別に私はこんな城に興味はないよ。「誠意」の対価が欲しかっただけだ。先代が泉下に冥した以上、もはや今の領主に関わりはない」
トリシア「誠意は大事だよな」
ジョルティ「オルクスちゃん可哀想」
馴れ馴れしい奴だな……。
「何、その分勝手に悪魔に譲ったのだからな、お互い様だ」
「というわけだ、だからこの王笏を持っていってくれ」
ジョルティ「王笏は了解したけど、その天秤の方はなんぞや?」
「これは元々の私の持ち物だよ。死の竜の遣いとしての仕事で必要なものだ。こっちは譲れんぞ?」
「これは元々の私の持ち物だよ。死の竜の遣いとしての仕事で必要なものだ。こっちは譲れんぞ?」
ジョルティ「ウィッス」
トリシア「まあ領主直じゃないのも旅人云々じゃないとって前にもあったねそんなこと」
ティエ「あ、そうだ。折角なので聞きたい事を幾つか宜しいですか?白い霧で人が居なくなったんですけどどうにかなります?それと、クライブさんの持ってる青い宝石、魔力?魔法?溜めたり出来るらしいんですけど、使い方とか知ってます?」
「ああ、白い霧のことなら問題はない。これは私が君たちを呼び出すための霧だ。一晩寝れば元通りになる」
ティエ「なるほど…」
そして、少年の言葉に応じて、王笏を受け取った灰金髪男が青い宝石を取り出して見せてきた。なんとも、懐かしい物を持っているものだ…。
「…随分と懐かしいものを持っているな」
クライブ「…なんだ、見覚えあるのか」
「これでも年寄りなものでね。それに魔法を封じ込めるためには、専用の装置が必要だったはずだ。そのままでは使えないだろうな」
ティエ「そうなんですか…」
クライブ「ほーん、そうか。まぁ別にこれはこれでいい」
トリシア「あれ心なしかオルクスちゃんって温泉街で会ったアリアちゃんって子に似てるような…」
……やはり、この低身長の女は鋭い。気を付けたまえよ春の竜人、いずれ見えるようになるかも知れんぞ?
「フフ、世界にはよく似ている者が3人はいるという」
この場は誤魔化しておいてやろう、貸し1だ。
「こっちは礼だ、持っておきたまえ。いずれ、必要になる時が来るだろう」
私は懐から白い宝石付きの、金色の小さい鍵を灰金髪男に投げ渡した。春の竜ならば何か分かるだろうが……竜人には黙っておくと良い、その方が面白い話が聞けるだろうさ。
クライブ「おっと、鍵か?」
「では、王笏の件、頼んだぞ」
クライブ「そうか。またな」
「ああ、そうだ、返す時にでも伝えておいてくれ。死の魔法に用があるなら呼ぶが良い、とな」
クライブ「…望まれても困るがな。そのときはケツの毛までむしりとってやれ」
これ以上、彼らをここに閉じ込めておく理由もない。消していた階段を再び顕し、帰り道を促すことにした。
ティエ「おお、出た」
トリシア「うちらにも用あったりするかな?」
「フフフ、君たちも死の魔法に用があるなら、その時は呼ぶが良いさ」
クライブ「ないな。断じてない。そんな魔法はいらない」
トリシア「カレンちゃんには用があったかもしれない」
……カレンという名を聞いてハッとした。ここで私は初めて彼らがカレン・アージェントの件にも関わっていると知ったのだ。全く、邪魔ばかりされて困ったものだ。
「カレン……なんだ、そっちにも関わりがあったのか」
トリシア「やっぱり関わりあったー」
「死の魔法が望まれることがあれば、私はそれを手伝うだけだ」
ジョルティ「死の魔法って結局なんなん?何が出来るの?」
「死生に関わるあらゆることを」
クライブ「そんな!魔法は!いらん!! …行くぞ」
クライブ「貴様個人に恨みはないが、そんなクソみたいな魔法に用はない!」
「フフフ、そう不要と言われると寂しい気がするがな。ま、関わらないのが一番だ」
「ではな、旅人たち。死の竜の加護は……要らないか」
“死”への見方というのは、人間と我々とでは随分違うものだ。特に死の竜の遣いたる私からすれば、生も死も一体、大した違いはないものだが……。
思わず溢れた自嘲的な笑みと共に、私は彼らの前から姿を消すことにした。
……このような所だ。そのままにしておいたら困ると思ってな、勝手だが日記を借りたぞ若き緑の竜人よ。いずれ、直接相まみえることがあるだろう。その時を楽しみにしている。
Orcus
第二十四話「霧霞の城」 完
……と、このような内容でした。死の竜にその遣い、竜の君なら心当たりがありますでしょうか?
王笏については謎が解けましたが……彼女の渡した小さな鍵はなんなのでしょうか?……面白そうだから黙っておく、という顔をしていますね竜の君。
……分かりました。私としても竜の君により興味深い旅物語を届けられるならその方が良いのですから。……ちょっとだけでも、教えてもらえませんか?
……駄目ですか。残念。
【MVP:クライブ】
【ルー・フィオーネの日記】
〈冬の月 9日〉
晴れ☀
今日は朝食を食べている時に、ドラゴン・サインという魔法で皆さんの知り合いの方から連絡がありました。
なんでもご病気の方が目を覚まされたとか、私は知らない人ではありますが、良い報せでよかったです。
皆さんの方からも返事をしていました。旅で出会った懇意な方なのかもしれません。
その後は、みなさんと一緒にレストランや雑貨店、エンチャントショップなどを回りました。私にはどれも高価で手が出ませんでしたが、見ているだけでも楽しかったです。
いつかは自分でお金を稼げるようになって、色々とやってみたいと思った一日でした。
明日も良い日になりますように。
〈冬の月 10日〉
晴れ☀
朝目を覚ますと、皆さんの様子がどこかおかしいようでした。
遠くを見ているような、何かに思いふけっているような様子でした。
詳しくは教えてもらえませんでしたが…いつか私にも分かる時が来る、私の番が来る、と言っていました。
何のことかは全く分かりませんが…旅をしていればいつか意味が分かるのでしょうか?
その後、皆さんは領主様に忘れ物を届けに王城に行くと言っていました。
私も同行させてもらいましたが、皆さんが領主様と話している間、私はトリシアさんと一緒にロビーを見て回っていました。
(続く)
こちらは、2016/11/12に行ったオンラインキャンペーンセッションのリプレイです。物語を大詰めへと推し進める、そんな一話となりました。
思えば第五話番外編「蒼き竜人の憂鬱」以来の「アリア以外の視点」でしたね。実際のプレイの際にはGMは普段通りだったので、リプレイ向けの再編成と言う形ではありますが、語り口が書いていて楽しかったです。
それでは、まだまだ続く彼らの旅、続きをお待ちくだされば幸いです。
【参考サイト】
wikipedia|マスティマ
アージェントの方とも話が繋がる、何とも興味深いストーリーですね。
返信削除死の魔法の話をされたクライブの胸中はいかなるものか……。
それにしても、「旅人の事を個人的に良く知らない竜人」の視点で地の分を書くのはなかなか難しそうですね。
登場人物の名前を使わずにきっちりと動作や情景を描写出来ているのは凄い事だと思いました。
コメントありがとうございます!
削除全体を考えたストーリー構成の、第一歩という感じになりました。クライブは背景設定をかなりちゃんと考えてくれているので、GMとしても構成がしやすくて助かります。
地の文はリプレイで完全に書き下ろしですが、かなり楽しく書けました。お褒めに預かり光栄です!