~冬の月 7日~
皆がレパーリア領主と約束した翌日の朝を迎えました。今日の朝、街の東門の前で待ち合わせをすることになっています。
悪魔と呼ばれる存在はいかなるものなのでしょうか。あるいは、私と竜の君の力が必要になるかもしれない、と決意を新たにしていました。
第二十三話後編「悪魔の玉座」
〈コンディションチェック〉
クライブ:10(絶好調)
ティエ:Fumble
ノーティ:15(絶好調)
トリシア:5
エルデ:13(絶好調)
……当日の朝になったのですが、パワーとジョルティは起きてきません。昨日の夜が少し遅くなってしまったので、それで寝坊しているのでしょうか?(パワーPLは不参加、ジョルティPLは遅刻)
クライブ「全く…こんな日にもこの調子か」
ルー「おはようございます。どこか行かれるんですか?」
クライブ「ん…まぁちょっと面倒事を片付けにな」
トリシア「鬼退治?」
ルー「鬼退治…あ、もしかして夜の魔物の…?」
ノーティ「まあ、そんなところですか。ルーさんは待機されることでよろしいですね?」
ルー「は、はい、多分足手まといになってしまうと思いますし…。あの、気を付けて下さいね」
クライブ「ま、そうそう大それたことにはならんだろうさ」
ノーティ「もちろん、無事で帰ってきますよ。さて私の準備というと、ハーブと魔法くらいですか」
ティエ「私も飲んでおこう」
ノーティとティエは、備蓄の月下ノ雪割草を飲みました。今日一日の魔力消費を抑えるためのハーブです。どうも変わった甘みがあるのが特徴のハーブですね。
ティエ「にがあまい」
ノーティ「これが癖になるんですよこれが。これのためにマジックユーザーやってます」
……ノーティにそんな変わった性癖があるとは知りませんでしたが。
クライブ「とりあえず俺はちょっと出てくる。武器に魔法を付けてもらうことにしよう」
その後、朝食を終えてもまだパワーとジョルティは起きてきませんでした。ちなみに、少し東門の近くに様子を見に行ったところ、エルデはすでに待っているようでした。…こちらもこちらで、一人で月下ノ雪割草を飲んでいました。
ティエ「とりあえず…門行きます?」
トリシア「ほい」
クライブ「そうだな、それしかなかろう…。場所は分かっているはずだ、遅れても合流できるだろう」
こうして、お寝坊さん2人を置いて4人で東門の方へと向かいました。…この流れ、どこかの蔵で魔物狩りを依頼された時と同じ気がして嫌な予感しかしないのですが。
東門に到着した時には昼前の10時頃になっていました。
ノーティ「待たせて申し訳ありません、欠員が出ておりまして作戦会議もままならぬ状態で」
クライブ「すまんな、遅れた」
トリシア「2人はビビりかもしれない。夜泣きしてたかも」
いないのを良いことになかなかな事を言っている気がしますが、まあ、気にしないでおきましょう。……約束をしている日に寝坊をすることがないようにしないといけませんね。
エルデ「…おはようございます、皆様」
エルデ「欠員、ですか。大丈夫でしょうか…」
クライブ「まぁ、俺達だけでもなんとかなるだろう…戦闘になるだけの人数は揃ってる」
ノーティ「どうでしょう……相手の勢力規模はいかほどと推察されますか」
エルデ「内部は分かりませんが…城の物見に数体の魔物の姿が確認されています」
ノーティ「そこだけでそれだけいるということは、中は数倍数十倍いてもおかしくないのでは?」
エルデ「もちろん可能性はあります。」
エルデ「しかし、先代様からの話によると、悪魔はあまり集団では行動しないと聞いております。高位の悪魔に数体の従者、という形を取ることが多いと…」
クライブ「とはいえ、結局足踏みしていても状況が悪化していくだけだしな…やるしかあるまい」
クライブ「遭遇自体が初だしな…まぁ、そうだというならそうだと思っておいたほうが気は楽だ」
クライブは、そう言いながらも少し楽しげな目をしていました。強敵の予感を感じ取り、戦いの楽しさを隠せないのかもしれません。
ノーティ「出来る限りの準備はしておきましょう。まだ、時間は大丈夫ですよね」
エルデ「ええ、日が昇っている間であれば。城はすぐ近くですから」
ノーティ「それでは、幸運の魔法を掛けておきましょう。トリシアさん、クライブさん、エルデさんの3名で良いですかね」
〈ノーティ:春魔法「ラック・ラック・ラック」→クライブ・トリシア・エルデ〉
発動判定:6
エルデ「…ありがとうございます。これで少しは力になれると思います」
クライブ「とりあえずこれで一通りは終わり…か?」
エルデ「城の見取り図を持ってまいりました。中が今もこのままかは分かりませんが…」
エルデが城の簡単な見取り図を開いてみせます。周囲は湿地になってしまっている、と説明をしていました。
トリシア「中もやっぱり立派っぽいっすなー」
クライブ「広いな…面倒そうだ」
エルデ「城の周りは足場が悪いので、城門の前には跳ね橋があります。長らく上がっておりましたが、息子達が攻めた時におろしたようで、今は橋がかかっています」
クライブ「…その息子さんが有る程度露払いしてくれていることを祈ろうか」
エルデ「…一矢は報いてくれていると信じたいですが」
そんな話をしている所で、ようやくジョルティが合流しました。
〈コンディションチェック〉
ジョルティ:12(絶好調)
ジョルティ「おまたふぇもごもご」
クライブ「…ようやく起きて来たか」
ジョルティ「いや美味しそうな露店が…」
ノーティ「いやいや…」
ノーティは頭を抱えていました。…自由すぎるのも考えものです。
エルデ「城近くには小規模ながら木立があります。様子を窺うことができると思います」
ティエ「じゃあその木立ぐらいまで移動しましょうか」
ノーティ「バレない位置まで移動しましょう」
〈薬草取り:湿地:目標10〉
ノーティ:12
東の門を出て、城壁近くの木立までに近づく間で、ノーティはアカツキ紅花を1輪摘んでいました。抜け目ない。
程なくして城門南西の木立に到着します。こちらからは城の様子を伺うことができるようでした。
〈動物探し〉
クライブ:8
〈察知〉
ティエ:15
〈捜索〉
ジョルティ:16
各々が違った方法で城壁の様子を伺います。城壁の様子が見えてきました。
城壁から接続されている角櫓には、それぞれ弓を持った魔物が見張っています。また、城の本丸の櫓からも視線を感じました。
クライブ「目が合ったか…?いや、気のせいか」
ジョルティ「いっぱいおる」
城壁自体は8メートルほどの高さがあります。エルデの話していたとおり跳ね橋は降りていますが、城門は閉められていました。
ノーティ「こちらにおびきよせて各個撃破が得策と考えますがいかがでしょう」
ジョルティ「おびき寄せる手段が思いつかん」
クライブ「…とりあえず見えている魔物の様子を探ろう。何者か分かれば対処がし易い」
ティエ「そうですね、見てみましょう」
〈知見〉
クライブ:13
ティエ:3
ノーティ:16
クライブとノーティが角櫓の弓の魔物を観察します。本丸櫓の魔物は遠くみることが出来ませんでした。
トリシア「どんな魔物だったー?」
クライブ「…そこまで強くはなさそうではある。…が、近付いたら射られるだろうな」
ノーティ「持っているのは毒矢のようですね。具体的な毒性は分かりませんが…」
ジョルティ「ちょっと近付いてみる。湿地に伏せていけば視界に入らないだろう」
〈隠密〉
ジョルティ:13
クライブ:13
ティエ:13
ジョルティは湿地に伏せて身を隠しながら、城壁の北西部まで接近しました。高いところにいるためか、角櫓の魔物はその接近には気付いていません。
ティエとクライブはジョルティとは逆側から接近し、城壁の南西に接近します。城壁に近づいてしまえば高所からは死角となり、見つかることはなさそうでした。
クライブ「…ここからなら登っても奴の背後、見つからずに仕留められるな」
ティエ「念には念を入れておきましょう。ハヤブサ、掛けます」
〈ティエ:呪文魔法「ハヤブサ」〉
発動判定:7
クライブ「助かる。行ってくる」
〈登攀運動:体力+体力〉
クライブ:9
ジョルティ:14
ジョルティとクライブはそれぞれ城壁の上に向かってロープを投げ掛け、城壁の上へと登りました。2人の見込み通り、見張りの魔物は西方、城門の方向に目線を向けており、背後から城壁に登った2人には全く気付いていません。
期せずしてピッタリのタイミングで、ジョルティとクライブがそれぞれの角櫓の魔物を背後から強襲しました。
〈暗殺(クリティカルダメージ判定)〉
クライブ:15+17=32ダメージ
ジョルティ:18ダメージ
ジョルティは矢尻で、クライブは剣でそれぞれ見張りの魔物を一撃で沈めました。魔物は声を出す暇もなくその場に倒れ、サラサラと砂になるように消えました。
本丸櫓の魔物の視線は城壁の方に向いており、角櫓の二体がやられたことにも全く気付いていないようでした。
ノーティ「上手くやっているようですね」
トリシア「そうだね。櫓のがいなくなったみたいだし、そろそろ私らも近付こっか」
ノーティ「そうですね、問題なさそうです」
エルデ「……ええ」
角櫓の二体がやられたのを見て、木立に残っていた三名も南東の城壁へと近付きました。見られることもなく接近することができました。
その時、ジョルティとクライブが城壁の上から、本丸櫓の魔物の様子を視界に入らないように注意しながら観察します。
〈知見〉
クライブ:13
ジョルティ:9
その魔物は黒いローブを目深に被り、じっと前を見つめていました。手元には小さな杖を持っているようです。
クライブ「…ちっ。魔法使いか」
ジョルティ「中も降りたら狙い撃ちか…」
クライブ「……とりあえず、後顧の憂いは断っておこう。南東櫓の魔物も倒して置くべきか」
ジョルティ「北東の奴も邪魔だな、やっておくか」
それぞれ北西と南西におり、意思疎通ができないにも関わらず、やろうとしていることは完全に一致していました。城壁通路沿いに東側の角櫓に近付き、先程と同じように東を向いている魔物を背後から強襲します。
〈暗殺(クリティカルダメージ判定)〉
クライブ:17ダメージ
ジョルティ:11ダメージ
クライブは一撃で南東の魔物を討ち倒しましたが、ジョルティの攻撃は少しだけ浅く、一撃で仕留めることができませんでした。魔物は振り返り、大きな声を立てようとします。
〈追撃(ダメージ判定)〉
ジョルティ:5
ジョルティは咄嗟に追撃を行い、魔物が声を出す前に仕留めることに成功しました。本丸櫓の魔物にも気付かれていません。これで、城壁の角櫓を見張っていた魔物が全滅しました。
ジョルティ「ふぃー、危ない」
クライブ「…よし、終わったな。下の連中に合図しておくか」
クライブは城壁通路を伝って城壁の南西に向かい、下で待っているティエ達に向けて短剣を落として合図をしました。ティエが上を向くと、城壁の上でクライブが登ってくるように指で合図をしています。
トリシア「マダムはどう考えます?城壁から侵入できますか?」
エルデ「館と違い、こちらの城には虎口や隠し通路のようなものはなかったはずです」
エルデ「あの魔物の視線がある場所は、内側に繋がっているはずなので…そこから進入するか、正門を破るしかないかと思います」
トリシア「だってさー」
ノーティ「なら、城壁からあの魔物のいる場所に近づくことができれば問題はありませんね」
ティエ「じゃ、行きましょうか」
〈ティエ・ノーティ:呪文魔法「ドラゴンフライ」〉
ティエ:13
ノーティ:14
ティエとノーティがドラゴンフライの魔法によって空に飛び上がりました。ティエがトリシアを、ノーティがエルデをそれぞれ掴み上げ、共に城壁の上へと登ります。これで、全員が城壁の上に登りました。
ティエ「ここからなら…あの魔物が見えますね」
〈ティエ:呪文詠唱:オープンドラコニカ〉
発動判定:13
ティエが呼び出したドラコニカがページを捲っていきます。捲られたページには「マジック・インプ」という魔物の情報が書かれていました。
どうやら魔法を扱う下級の悪魔のようです。
ティエ「そこまで強いわけではなさそうですが…」
クライブ「やはり先に脅威を始末するほうがいいな…」
ティエ「先にジョルティさんを回収してきます」
クライブ「…ああ、そうだったな」
ティエはドラゴンフライの時間が残っている間に、城の上を通過して北側に向かい、手持ち無沙汰にしていたジョルティを回収して南の城壁通路へと戻りました。
皆が合流し、城内に侵入する計画を立て始めます。
クライブ「やはりあの魔物を倒し、そこから侵入するのが良かろう」
ノーティ「ですがどうやって?一度おりてロープで登りますか?」
クライブ「まだ飛べるだろう、あそこの屋根の上まで連れて行け。窓から始末する」
ノーティ「分かりました 上に載せる形になりますよ」
クライブ「それでいい。音を立てずにな」
ノーティがクライブを掴み、ドラゴンフライで本丸南西櫓の屋根にクライブを降ろしました。音もなくおりたクライブは覗き窓になっている部分から魔物の背後を取り、剣を突き立てます。
〈暗殺(クリティカルダメージ判定〉
クライブ:13
しかし、その一撃では魔物は倒れません、クライブの方へと振り返り、反撃に出ようとします。その瞬間--
ジョルティ「トドメだ」
〈攻撃(ダメージ判定)〉
ジョルティ:4
--城壁から放たれたジョルティの矢が振り返り際の魔物を貫きました。2人の攻撃で魔物は動かなくなります。ただ、角櫓の魔物と違いその体が灰のようになって消えることはなく、そのまま残されていました。
ジョルティ「危なかったな」
クライブ「…すまんな。これでここは開いたわけだ。」
クライブ「…こいつは外にいた連中と違って残ってるな」
ここで、ティエとノーティが城壁に残っていた皆を今魔物を倒した櫓の元に運びます。櫓の中はエルデの言っていたとおり城内へと繋がっており、ここから入り込む事ができるようでした。
〈材料加工〉
トリシア:12
ジョルティ:13
到着したトリシアとジョルティは早速倒れている魔物から使えそうな道具を見繕って手に入れます。小さい枝の杖と、黒いローブがまだ使えそうでした。
ノーティ「消えたという外の魔物はまやかしでしょうか?
いずれにせよ内部の魔物にはより一層の注意が必要ですね」
ジョルティ「おっちゃん杖もって」
クライブ「俺が持ったところで仕方ないだろう…マジックユーザーが持てばいいんじゃないか?」
ノーティ「私は自作の杖がありますので、ティエさんが使ったらどうですか?」
ティエ「まあ…一応貰っておきます」
ジョルティ「黒いマント格好いいから貰っちゃお」
クライブ「…良いんじゃないか。まあ、とりあえず入るか。ここから入れるようだ」
櫓から城内へと入ると、そこは昼間とは思えないほど暗くなっていました。窓には真っ黒いカーテンが掛かっており、完全に外の光が遮断されています。
入った場所は一階部分と二階部分を繋ぐ廊下となっており、下を覗き込むとロビーには羽根のある石像が二つ置かれていました。
ノーティ「趣味の悪い……という感想は筋違いでしょうね。さて、どこから始末しますか」
ティエ「先に四隅の残り三体の奴倒す?」
クライブ「…後顧の憂いは断っておくべきだな」
ジョルティ「降りてきたら面倒くさいしね」
まずは通路を渡り、他の櫓に残っていた魔物たちを倒して回りました。……具体的な倒し方を説明するのもインクが勿体無いほどだったので、結果だけということで…。
全ての櫓の魔物を倒し、改めてロビーの石像を見下ろしました。
ティエ「エルデさん あの石像って元からあるんですか?」
エルデ「いえ…おそらくあのようなものはなかったと思います」
トリシア「ちなみに暗い場所で戦ったりとかって安全だと思いますかマダム」
エルデ「分かりません…悪魔は闇に親和するとは聞きますが…」
トリシア「いっそ明るくする手段を考えるのも悪い手ではないんじゃないだろうか」
〈知見〉
クライブ:8
ティエ:8
ノーティ:Critical
クライブ「ただの石像じゃないか?」
ティエ「そう見えますね」
ノーティ「いえ…よく見ると石像の回りに黒い染みのようなものが…」
ノーティ「どうして石像やその周囲に黒い染みができているんでしょう……お気づきになられました?」
トリシア「暗くてよく見えないです」
ジョルティ「見えません」
エルデ「よくお見えになられますね…」
クライブ「見えんな」
ジョルティ「暗くて見えません」
ノーティ「…どうやら私は夜目が効くようですね」
ティエ「怪しいものはとりあえずドラコニカで見ておきましょう」
〈ティエ:呪文魔法「オープン・ドラコニカ」〉
発動判定:23
ティエの呼び出したドラコニカがページを捲っていきます。開かれたページには「ガーゴイル」の情報が書かれていました。
ティエ「高位の悪魔によって作られる魔法生物で、石の翼を持つ。重さに関わらず俊敏に動き、視界に入ったものを無差別に襲う、とのことです」
ジョルティ「えーじゃあ高位の悪魔どっかにおるやーん」
ノーティ「外にいた弓兵もこうやって作られていたものなのでしょうかね。やはり強者の予感」
エルデ「悪魔…」
クライブ「…さて、どうする」
ティエ「せーので壊す?」
石像は正門の方を向いており、通路上から背後に近付けば視界に入ることはなさそうでした。それを考えて、ジョルティとクライブが背後からそれぞれの石像に近付きます。
クライブ「…ハヤブサを。即座にケリをつける」
トリシア「わたしも後ろから撃つよ」
エルデ「…私も弓の嗜みがあります」
〈ノーティ:呪文魔法「ハヤブサ」→クライブ〉
発動判定:12
〈ティエ:呪文魔法「ハヤブサ」→ジョルティ〉
発動判定:14
〈暗殺(クリティカルダメージ判定):ガーゴイル1〉
クライブ:22
トリシア:11
〈ラック・ラック・ラックによる振り直し〉
トリシア:8
〈暗殺(クリティカルダメージ判定):ガーゴイル2〉
ジョルティ:14
エルデ:21
ジョルティとエルデの攻撃したガーゴイルはその場で亀裂が入り崩れされました。しかし、クライブとトリシアが攻撃したガーゴイルは大きく損傷したもののまだ崩れ去ってはおらず、ぐるりと振り返って攻撃の体勢に入りました。
エルデ「リオの仇…」
ジョルティ「母は強し!?こなごなだー」
クライブ「ちぃ…残したか!?」
トリシア「もう一発!」
〈命中判定〉
トリシア:10(失敗)
クライブ:15
〈ダメージ判定〉
クライブ:14
クライブ「…そのまま堕ちろ!」
トリシアの矢はガーゴイルを掠めましたが、クライブが振り返り際にガーゴイルの首を落としました二体のガーゴイルは動きません。もはや、ただの石材となっているようです。
クライブ「…とりあえず沈黙したか」
二体のガーゴイルを倒し、ロビーに降りてみると、ガーゴイルの近くの黒い染みは血の染みであることが分かりました。
エルデ「……リオはここで死んだのでしょうか」
ジョルティ「人の血ですね…」
ノーティはその場で黙祷を捧げています。私も、少しだけそれに倣いました。
トリシア「ここで死んだにしては古そうな痕じゃないですかね?」
エルデ「…確かに、完全に黒くなっているようですね…」
トリシア「仮にも腕に自信あったようだしさすがにこんな入ってすぐには…」
エルデ「…そうですね、せめて、そうあって欲しいものですが」
クライブ「さてな…まぁ、終わったことを考えても仕方あるまい。今は先の奴を考えねばな」
ティエ「とりあえずカーテン開けておきますかね」
クライブ「そうだな、そうるするか」
ジョルティ「暗いしね」
ジョルティはそう相槌を打つと、近くにあったカーテンをビリビリと引き千切り、投げ捨てました。
ティエ「あ、 破った!」
ティエ(後で売れるかもしれないのに)
ジョルティ「閉め直されたら意味ないでしょ」
ティエ「…確かに」
ジョルティがカーテンを引き千切ったことで、外の光が差込み城内の視界が確保されました。見たところ、ロビーにはこれ以上なにもないようでした。
ティエ「じゃあ上りましょう。ここは何もないようです」
ノーティ「登りましょうか」
ジョルティ「…こうなると黒マント逆に目立つな…」
カーテンを開け終えると、皆で上階へと登りました。上階には金細工が施された豪華な作りの扉がありました。廊下にも窓があり、ここも黒いカーテンで遮光されています。
クライブが廊下のカーテンを片っ端から徹底的に開けていきました。特に引き千切ったりはせず、普通に開けています。カーテンが全て開けられると、廊下に光が満ちました。
クライブ「よし。…あとは中の様子が分かれば良いんだが…とりあえず気配だけでも探ってみるか」
〈動物探し〉
クライブ:14
クライブ「気配はあるか…が、動いてはいない」
ティエ「じゃあ扉開けて扉固定しますか」
ジョルティ「細かい作業得意な人…エルデさん頼めますか?」
エルデ「…扉を少し開ければ良いのですね?」
〈精密作業〉
エルデ:11
ジョルティに頼まれて、エルデがそっと扉を開け、その隙間から中を覗き込みました。小さな隙間から通路の光が差込み、中が僅かに見えました。
扉の正面には玉座があり……その玉座には首の無い人の死体が座っていました。エルデはそれをみて動揺し、そのまま扉を明けて中に入って駆け寄ろうとしました。
クライブ「…やはりここにあったわけか」
ノーティ「危ない!」
〈運動:対抗〉
ノーティ:7
エルデ:4
中に入ったエルデをノーティが追いかけて手を掴み動きを制止します。エルデは強く抵抗することはなく、動きを止めました。
ノーティ「危険です!
一旦落ち着きましょう」
エルデ「……すみません。動揺してしまいました」
ジョルティ「なにあれこわい」
エルデ「……リオ、こんなところにいたのですね…」
ジョルティ「ひょっとしてあれ…息子さん?」
クライブ「…まあ、随分と悪趣味だな」
ノーティ(趣味の良い悪魔もそうそう居ないでしょうが……)
〈察知〉
ティエ:7
クライブ:6
ノーティ:8
〈捜索〉
トリシア:Fumble
ジョルティ:11
ティエ、クライブ、ノーティは察知をしようとしましたが、何かを察知することはできませんでした。また、ジョルティは中に魔物がいないか様子を探りましたが、やはり何かしらの気配こそ感じるもののその姿を捉えることは出来ません。
トリシアは同じく魔物を探している時に蹴躓き、体を打っていました。
クライブ「…何も感じないな」
ジョルティ「何か、いそうな…いなさそうな…」
ティエ「警戒しながら進みましょう」
ジョルティ「何にせよ、親玉はこの向こうだろ。行くしか無いな」
中の様子を探ることはできなかったため、皆は警戒しながら部屋の中へと入っていきます。部屋に入る前にクライブが短剣を取り出して玉座の前へと投げつけました。しかし、特に何かに反応しているようすもありません。
ノーティ「ちょっと!」
クライブ「特に何もないか…どうしたノーティ」
ノーティ「いやいや。外したらえらいことですよ。亡くなっているとは言え、息子さんに当たったら…」
クライブ「死んだ人間に配慮して自分の身を危険に晒して意味があるか?」
ノーティ「それもそうですけど…」
エルデ「…ありがとうございます。でも、構いません。その通りだと思います」
ノーティ「…エルデさんがそう言うなら」
ジョルティとティエは部屋の中に入ると、急いで柱の影に隠れました。他の4人はまっすぐ正面から部屋へと入ります。正面の首のない死体の座った玉座の後ろには、大きなカーテンが引かれています。
全員が部屋に入ると、その瞬間背後で扉が閉まる音がしました。今入ってきた扉が閉まり、部屋の中が闇の中に鎖されました。
ジョルティ「しまった!!」
クライブ「…進むだけだな」
クライブが闇の中で剣を抜きました。ジリジリと玉座の方へと近付いていきます。
〈ティエ:呪文魔法「ピュア・クリスタルライト」〉
発動判定:23
ティエはピュア・クリスタルライトの魔法をニーナさんから貰ったレパーリアの香り袋に掛け、前方に投げました。細かい所までを見られるほどではありませんが、部屋全体の場所を把握できる程度の灯りが確保できました。
ティエとジョルティは変わらず柱を影にしながら、他の4人は玉座に向かって敷かれている赤い絨毯の上をまっすぐと進んでいきます。
ジョルティ「おじちゃんリオ君の体調べてよ」
クライブ「自分で調べろ」
ジョルティ「ビビリめ」
クライブ「…黙れ。斬るぞ」
ジョルティ「普段は格好付けてるくせに!」
……黒くて格好いいと言う理由で剥ぎ取ったローブをその場で着ていた人にはクライブも言われたくないと思うのですが。
クライブとエルデは玉座から4メートルほどの距離まで近付いています。ティエとジョルティも柱の陰から様子を探りながら近付いていっています。
…その時、玉座に座る首のない死体から、何か呻き声のようなものが聞こえてきました。言葉にならない、苦しみを発露したような声が室内に反響します。
クライブ「…不死化しているか?」
エルデ「…こんな、苦しそうに…」
ジョルティ「エルデさん!それはもう息子さんじゃない!気をつけて!」
エルデ「…はい。リオは、息子はもう死にました」
クライブ「…下がれ。息子相手に弓は向けられまい。後ろから魔法で援護してくれ」
クライブはエルデの前に庇うように割り込み、ティエは不死を成仏させる魔法の詠唱準備を始めました。…その瞬間、突如として玉座が燃え上がりました。
首のない死体もすぐさま炎上し、同時に玉座の真上から不愉快そうな声が響いてきました。
不愉快そうな声「面白くない…もっと取り乱す姿を見たかったというのに…」
ジョルティ「何者だ貴様!名を名乗れ!」
不愉快そうな声「我が名はバーフォメット…悪魔の一席にしてこの城の城主である」
クライブ「趣向が面白くないな。俺達の首の幻覚でも並べておいたほうが多少は驚いたんじゃないか?」
クライブ「他人の城に居座っておいて随分な立場だな。そっちのほうが驚きだ」
クライブは心底軽蔑したような声で吐き捨てました。その声に反応するように、玉座の上に黒い光が蒐まっていきました。その光は次第に人のような形を取りました。
大きな曲がりくねった角、黒い肌に赤い目、鋭い牙を持ち、両手には大きな鎌を抱えています。
バーフォメット「まとめて相手をしてやろう……」
〈戦闘開始〉
ピュア・クリスタルライトの灯りが照らす薄闇の中、バフォメットの赤い眼光が皆を捉えています。大きな鎌が妖しい輝きを放っていました。
〈ラウンド1〉
エルデ「…リオの仇を取らせてもらうわ…」
バーフォメット「我は火の粉を払ったのみ」
クライブ「知るか、死ね」
バーフォメット「元はといえばこの地は我ら悪魔の地…。そう簡単に明け渡すものか」
ジョルティ「じゃあ城建てた時どこいってたんだ」
【エルデ】
エルデ「ええ、知ったことではないわ…そんなものはもう関係がない」
〈夏魔法「ウズライ」→バーフォメット〉
発動判定:5(失敗)
ウズライは、彼我に同等のダメージを与える自爆的な攻撃魔法です。…失敗したために共に損傷はありませんでしたが…。エルデは、自分の身を省みるつもりがないのでしょう…。
エルデ「くっ…こんな時に限って…!」
ジョルティ「エルデさん落ち着いて!!」
エルデ「私が…私がやらなければ…」
【ジョルティ】
〈春魔法「スプラウト」→ジョルティ(敏捷)〉
発動判定:
7
【バーフォメット】
バーフォメット「我が世界へと誘おう…」
〈呪文魔法「ウォー・メタフィールド」〉
発動判定:13
悪魔バーフォメットが結界を張ったことで、城内にあった様々なものが失われた何もない空間へと引きずり込まれてしまいました。
ノーティ「先に…!」
ジョルティ「結界か…」
【トリシア】
〈知見〉
成功判定:15
トリシア「大体の能力はこんなところかな。…当てられないとね」
〈フェイント→バーフォメット〉
成功判定:18
イニシアチブ-1
バーフォメット「小賢しい…!」
トリシア「褒めてる?」
【クライブ】
〈攻撃→バーフォメット〉
命中判定:15
ダメージ:3(防護3)
クライブ「ちっ…状況がよくないな」
バーフォメット:今の人間はこの程度の力か…!」
【ノーティ】
ノーティ「結界を打ち消します!」
〈呪文魔法「ウォー・メタフィールド」〉
発動判定:9
ノーティが悪魔バーフォメットと同じ魔法を唱えました。悪魔の張っていた結界魔法をノーティの張った結界魔法が相殺し、どちらの結界も張られていない、元の城へと戻りました。
ノーティ「ここは悪魔の住んで良い土地ではない……!」
バーフォメット「フフフ…悪足掻きを!良いだろう、正面から相手をしてやろう…!」
【ティエ】
ティエ「自分じゃ何もできないな…トリシアさん頑張って!」
トリシア「わたし?」
〈呪文魔法「ハヤブサ」→トリシア(敏捷)〉
発動判定:13
2回攻撃付与
〈ラウンド2〉
バーフォメットの体表を赤い光が覆い始めました。蠢くような邪悪な雰囲気を感じさせる光です。
【エルデ】
エルデ「今度こそは…!」
〈夏魔法「ウズライ」→バーフォメット〉
発動判定:5(失敗)
エルデ「何故…!何故当たらないの…!」
トリシア「マダム落ち着いて。当たるもんも当たらないよ」
エルデ「……そうですね」
【ジョルティ】
ジョルティ「落ち着いたようで何より!」
〈攻撃→バーフォメット〉
命中判定:10(失敗)
ジョルティ「あるぇー?」
クライブ「お前も落ち着け」
【バーフォメット】
悪魔バーフォメットは標的を決めんと周囲を睥睨し、クライブに視線を合わせました。
バーフォメット「お前が…一番我らに近い」
クライブ「…いいぞ、来るなら来い!」
〈攻撃→クライブ〉
命中判定:4(失敗)
クライブ「…はっ!ご大層なことを言う割に外したなァ!?」
バーフォメット「フフ…小手調べというものだ」
【トリシア】
トリシア「くらえー!」
〈攻撃→バーフォメット〉
命中判定:Critical
ダメージ:17
〈ハヤブサ2回攻撃→バーフォメット〉
命中判定:13(失敗)
トリシア「一発だけだけど手応え十分!」
ジョルティ「仕事したな!」
トリシア「知見もフェイントもしてるんだけど?」
トリシアの矢がバーフォメットの赤い光を通過した瞬間、バーフォメットの大鎌に赤い光が宿りました。
トリシア「何だろ」
ジョルティ「嫌な予感がするが…」
【クライブ】
〈攻撃→バーフォメット〉
命中判定:9(失敗)
〈ラック・ラック・ラックによる振り直し〉
命中判定:12(失敗)
クライブ「なっ…!?」
バーフォメット「ククク…そちらも小手調べかな?」
クライブ「かもな!」
……なんだかクライブが悪魔と仲良さそうな雰囲気にすら見えます。……いえ、両者とも激しい殺気ではあるのですが。
【ノーティ】
〈様子見〉
イニシアチブチェック:6(変化なし)
ノーティ「あまり状況が読めませんね…」
【ティエ】
ティエ「トリシアさんがんばってー」
トリシア「まかせろー」
〈呪文魔法「エンハンスド・レッドハンド」→トリシア〉
発動判定:3
命中判定+1
〈ラウンド3〉
バーフォメットの体表を覆う光が、赤から青に変わりました。何を意味しているのかは分かりませんが…。
【エルデ】
エルデ「…私では倒せそうにありません。援護に回ります」
〈呪文魔法「ハヤブサ」→ジョルティ〉
発動判定:8
2回攻撃付与
ジョルティ「物凄い速さだ!」
【ジョルティ】
〈攻撃→バーフォメット〉
命中判定:14
ダメージ:12(防護3)
〈ハヤブサ2回攻撃→バーフォメット〉
命中判定:23
ダメージ:14(防護3)
ジョルティ「喰らえ!」
バーフォメット「ククク…ハハハハ やればできるではないか人間!」
ジョルティ「強がりやがって!」
【バーフォメット】
バーフォメットが、赤い光の宿った大鎌を横に薙ぎました。薙ぎ払われた大鎌から赤い光の一閃が放たれます。
〈赤い閃光→全員〉
命中判定:3
ティエ「!?」
ノーティ「!?」
トリシア「何が起こったんだ!?」
クライブ「…なんだこれ」
ジョルティ「痛く…ない?」
バーフォメットの振るった赤い光は、ジョルティの与えた大きなダメージのためか大きく逸れました。皆の背後にあった扉に命中してそれを破壊し、中に陽光が差し込んできました。玉座に差し込む光りに、バーフォメットは一瞬怯んだように見えました。
【トリシア】
トリシア「隙だらけだぞ!」
〈攻撃→バーフォメット〉
命中判定:20
ダメージ:8(防護3)
〈ハヤブサ2回攻撃→バーフォメット〉
命中判定:17
ダメージ:6(防護3)
トリシアの放った矢が、バーフォメットの胸に命中しました。バーフォメットは黒い血液を吐き出して、高笑いと共に灰となって消えました。
クライブ「…なんだこいつ」
ジョルティ「なんだこの口だけ悪魔」
ノーティ「ええと……やりましたね……」
エルデ「……本当に、これが悪魔だったのでしょうか…」
確かに、悪魔は口ぶりやその風貌の割に、強力だったというわけではありません。…いえ、確かに能力自体は高かったようですが、全くその実力を活かすことができなかったようにみえました。……これも、あるいはエルデ達の息子が与えた傷のせいだったのかもしれませんね。
……そういうことにしておきましょう。
〈戦闘終了〉
戦闘が終了してしばらくして、トリシアがハヤブサの副作用によって大怪我を負いました。……思い返してみると悪魔との戦いでこちらが負った損傷はこれだけなのですが。
トリシア「ぐえー」
ノーティ「大丈夫ですか?アカツキ紅花、使って下さい」
〈トリシア〉
コンディションチェック:7(変化なし)
トリシア「ぐえー」
ノーティ「治ってない!しょうがないですねぇ」
トリシア「マダムエルデ!夏魔法で治して!」
〈ノーティ:応急処置→トリシア〉
成功判定:16
トリシア「マダムエルデ!いらなくなりました!」
エルデ「……は、はぁ。大丈夫、ですか?」
クライブ「はぁ…なんだかな」
クライブは拍子抜けという様子で、柱に寄りかかって寝ていました。……気持ちはわからいでもないですが。
ノーティ「今後はこの城を悪魔に明け渡さないようにしなければですね」
ノーティ「何にせよ一旦街は安全になったと見て良いでしょう」
エルデ「ええ…。地盤を補強して、維持できるように致しますわ」
エルデ「…とかく、皆さんのおかげで仇を取る事ができました。ありがとうございます」
ジョルティ「え、あ、うん、そうですね」
クライブ「…なんでもいい。さっさと戻るぞ」
エルデ「ええ…戻りましょう」
ジョルティ「そういえば、このカーテンの裏は?」
ジョルティが玉座の裏に引かれていた黒いカーテンを取り払いました。長年積み重なったホコリが舞い上がったその向こうには、巨大なステンドグラスがありました。
太陽と月の昇る空の画が描かれていました。
ジョルティ「昔は大層立派なお城だったんだろうな…」
ノーティ「これからまた発展していくに違いありませんよ」
エルデ「…ええ、そうしていかなければなりません。リオのためにも」
クライブ(…割ったら何か言われるかね)
ティエ(割りと価値が高そう)
2名ほどの邪念を受信しましたが……まあ、聞かなかったことにしておきましょう。こうして彼らは城を後にして、レパーリアの街へと戻ったのでした。
第二十三話「闇夜に影と踊れ/悪魔の玉座」 完
と、今回はこのような話になりました。……竜の君は悪魔という存在をご存知でしたか?私は寡聞にして初めて聞き及びました。
……今回の悪魔、バーフォメットはたまたまそれほど強い力を発揮することができなかったようですが…恐ろしい存在であることは間違いないようですね?
今後も、もしかすると邂逅する機会があるかもしれません。気を抜かずにいかなければ、なりませんね。それでは、次回は今回の件の締めがどうなったのかについてお話します。
【MVP:クライブ・ティエ】
こちらは、2016/10/28に行ったオンラインセッションのリプレイです。
言うべきことは1つ、GMのダイス運が悪すぎるということです!!!!なんですか、このクソ雑魚悪魔は!?おかしい!ステータスは間違いなく強かったんですよ!本当です!無理やり強敵感をでっち上げましたが無理があります!なんて言っても命中判定4と3ですからね!
もちろん目的は旅人たちを叩きのめすことではないのですが……何にせよ、一番ラック・ラック・ラックの魔法が必要なのはGMなのではないか?と強く思った回でした。
それでは、次回は報酬処理となりますが、暫くお待ち下さい。(ちょっと仕事が忙しくて遅れ気味で申し訳ありません)
【参考サイト】
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